むと「とりあえず、あたりを見回ってくるわね。」
フェナリア「大丈夫だよ。この周囲には今は何もいないから。」
むと「え・・・どうしてわかるの?」
フェナリア「・・・お姉ちゃんなら信じてくれるかな・・・」
そう言うと、フェナリアは目を閉じた。
そこに、魔力を感じた。
むと「・・・あなた、魔法使いなの?」
フェナリア「・・・うん。ボクの能力は、自分の周りがよくわかるんだ」
その後、フェナリアは自分の力をむとに説明する。
むと「・・・つまりあなたの能力は、自分を中心として一定の半径内にいる生物、無生物、構造、地形、
大きさがわかるのね。便利じゃないの。」
フェナリア「うん!このおかげで、あいつらから逃げられたんだ・・・
それにね、出口も見つけたんだよ!」
むと「嘘!出口があるの!?じゃあなんで家に帰らないの?」
フェナリア「うん・・・ボクはここで探し物をしてるんだ・・・」
むと「・・・探し物?」
フェナリア「よく・・・覚えてない。でも、大切なものなんだ!」
フェナリアがここに迷い込んだのは、1週間前。
その際魔物に襲われ、無くし物をして、ショックで何を落としたのか忘れてしまったらしい。
むと「・・・それでも、お父さんが心配してるでしょう・・・」
フェナリア「・・・ボク、寮だから・・・両親いないんだ・・・」
むと「あ・・・ごめんね・・・じゃあ、探すの手伝ってあげる。」
フェナリア「ほんとに!?やった!ありがとう!」
そして、2人で町へ出る。
むと「どの辺りで落としたの?」
フェナリア「よくわからないんだ・・・あ!」
突然、むとの手を掴んで路地裏に引き寄せる。
フェナリア「誰かいる!」
むと「魔物?」
フェナリア「違う・・・人だ!」
むと「待って。悪いヤツかもしれないわ・・・その人が通り過ぎたら、そっと背後から見てみましょう。」
フェナリア「わかった・・・」
そして、しばらく待つ。
人影が、2人の前を通り過ぎた。
むと「・・・よし!」
顔だけ出して、その人影の後ろを見る。
むと「・・・あ」
その人影は、見知った人物だった。
???「!!」
その顔が、こちらを振り向く。
むと「むー!」
むー「む・・・むと!?お前、今までどこに・・・ッ」
フェナリア「え・・・お姉ちゃんの、知り合いなの?」
むと「ええ・・・幼馴染よ。こいつはむー。」
むー「こいつって・・・この女の子は?」
むと「フェナリアって子。最初に行方不明になった子よ。」
そして、むとはむーにこれまでの経緯を説明した。
むーも、現実世界の様子、先ほどの天の使いについても説明する。
むと「・・・やっぱり大事になってるか・・・うう」
むー「探し物も大事だが・・・いったん帰って顔を見せてておかなきゃ・・・騒ぎが大きくなるぞ?」
むと「・・・そうね。フェナ、出口に案内してもらえる?」
フェナリア「うん。こっちだよ!」
そこは、何の変哲も無い、裏路地。
むー「ここ・・・俺が探してた場所じゃねえか」
フェナリア「あれ・・・そんな・・・」
むと「どうしたの?」
フェナリア「出口が・・・開かない!」
むー「な・・・何だと!?」
むと「開かないって・・・どういう事?」
フェナリア「さっきまで開いたのに・・・開かないんだ!」
その後、あれこれとフェナリアは試していたが、出口は開かなかった。