死竜と復讐の魔導司祭

？？？

倒しても次から次へと湧いてくる……。
いっそ、いっぺんにかかってこられた方が
楽なんだが……。

アンナ

王子、あそこで魔物と戦っている方が！
加勢いたしましょう！

？？？

あなたたちは……？

アンナ

私たちは敵ではありません。
魔物達の侵攻を防ぐために、戦いを続けている者です。
私たちも助力いたします。

？？？

（今でも魔物と戦い続けている者たちがいるとは……）
こちらとしてもありがたい。感謝する。

（この人たちと協力すれば……。
もしかしたら奴を討つことも
できるかもしれない……！）

カボチャの魔物

魂ハコベ！　沢山ハコベ！

アンナ

カボチャの、魔物！？
あれは一体……。

？？？

あれは手下だ。奴のな……っ。

アンナ？

奴？

？？？

とにかく、今は話している余裕はない。
まずはあのカボチャの魔物を倒してから、
ゆっくり話そう。

アンナ

よかった……。
なんとか倒すことができましたね。

？？？

そうだな。
だが、恐らくまた現れるだろう。

アンナ

もし、何か事情をご存知でしたら、
お話を聞かせていただけませんか？

エターナー

私の名はエターナー。
先ほどは力を貸してくれたことに感謝する。

あのカボチャの魔物だが、やつらは
人間の魂をうばい、その者の体を抜け殻に
してしまう力を持っている。

そして、その奪った魂を集めて、
ドラコリッチという魔物に渡しているんだ。

ドラコリッチはドラゴンがリッチ化した魔物だ。
元々は、破壊と混沌をもたらす邪悪な竜、
『黒竜セヴルヴルム』だった……。

セヴルヴルムは魔物の復活に呼応して活動を始め、
突然私の国を襲ってきた。

私は仲間とともに、セヴルヴルムを迎え撃ち、
なんとか倒す事ができたはずだったんだが……。

どういう手段を使ったのかは分からないが、
やつはリッチとして蘇り、
復讐を果たすべく再び私たちの前に現れたんだ。

私たちは、蘇ったセヴルヴルムを
命をかけてもう一度倒そうとした。
だが……。

蘇ったやつの強さはそれまでとは次元が違った……。
結局やつを倒すことは出来ずに仲間は全員倒され……。
私は……、一人生き残ってしまった……ッ！！

殺されていった仲間の為にも、
私は必ず奴を倒さなければならない……！

リッチ化したセヴルヴルムは、人間の魂を糧にして
その強大な力をさらに高める事ができる。
そうなればもはや誰も奴を倒す事など出来ないだろう。

もしセヴルヴルム……今はドラコリッチと呼ぶべきか。
あの強大で邪悪な存在を倒すことに
手を貸してくれるなら、私は協力は惜しまない。

アンナ

エターナーさん、先ほどお話していたドラコリッチに
ついてなんですが……。同じくアンデッドと化した
ドラゴンゾンビとはなにか違いはあるのでしょうか。

エターナー

ドラゴンゾンビは、生前の肉体的な強さを
引き継いではいるけれど知性はないし、
動きも鈍いという弱点があるんだ。

それに比べてドラコリッチは、
生前の知識を受け継いでいて
自ら考えて行動することができる。

そして、物理的にも魔力的にも
生前の能力をはるかに上回るんだ。

アンナ

なるほど……。つまり、
ドラゴンゾンビよりも厄介な相手というわけですね。
そんな魔物がさらに力をつけたら……。

エターナー

そういう事だ。
私は急ぎドラコリッチの居場所を探る。
何かあったら報告しよう。

あと、カボチャの魔物は魂を奪う為に、
人の住む場所に現れる。この近辺の集落には
目を配っておいた方がいいだろう。

アンナ

わかりました。
どうかお気をつけて。

兵士

報告！　領内に魔物の侵入を確認！
こちらに迫ってきています！

アンナ

またあのカボチャの魔物でしょうか……！？
王子、戦闘の準備を！

アンナ

なんとか倒すことができましたが……、
他の集落も襲われている可能性があります。

急ぎ確認しに参りましょう、王子。

アンナ

これは……！
王子、住民が魂を抜かれて抜け殻になっています！
一体どうすれば……。

カボチャの魔物

バァッ！

アンナ

きゃぁっ！

カボチャの魔物

クヒヒ！　驚イタ？　驚イタ？
魂はカエサナイヨ！　ダッテ沢山必要ナンダモーン。
魂ハコベ！　沢山ハコベ！

アンナ

く……。
王子、あのカボチャの魔物は住民の魂を
持ち去るつもりです！　取り戻しましょう！

カボチャの魔物

クキィー！　コイツラ……！
ボク等の邪魔をしないでよネ！

もうオコッタ！
ナイト様にきてもらうんだからネ！

アンナ

王子、この辺りの魔物は何とか倒せたようです。

ですが、あの新手のカボチャ、鎧を着てましたね……。
まさか武装する事ができるとは思いもしませんでした。
この先も充分気を付けておきましょう。

兵士

報告！
カボチャの魔物が現れたことを確認！

アンナ

この町にもあの魔物の手が……。
王子、魔物を倒して住民の魂を取り戻しましょう！

？？？

ハイハーイ！　ソコマデカボ☆
ボクね、喧嘩は良くないと思うカボ。だからね、
魂をアツメルのをジャマしないでほしいカボ。

アンナ

……！！
カボチャが王冠を……被っている……！？
貴方は一体何者なんですか！？

？？？

ボク？　ボクはカボチャ達の偉大なる王……。
パンプキンキング様カボー☆

アンナ

パンプキン……キング……。
まさか、カボチャ達に、王様がいたなんて……。

パンプキンキング

クヒュヒュヒュヒューーーー！！
驚いてるカボ！　嬉しいカボ！
ご機嫌カボー！

クヒュヒュ。もっと驚きたいって？
うん、やっぱりそうだよね。

じゃあボクの炎のマホウを見せてアゲルカボ！
ぜんぶぜーんぶヤキ払っちゃうカボーー！

パンプキンキング

悔しいッ！　悔しいカボーー！！
このままじゃドラコリッチに渡す魂の数が
足りないカボ。もう遊んでられないカボ……。

もっと、もっと人間がいる場所に行くカボ。
さぁカボチャ達！　移動するカボ。
レッツ……

カボチャの魔物

カボーーーーーーー！

アンナ

王子！　カボチャの魔物たちが行ってしまいます！
後を追いかけましょう！

ユユ

あれ？
何だろうー、あのカボチャたちの隊列はー！？
ひょっとして、何かのお祭りなのかなぁ！

あたしも仲間にいーれて♪

カボチャの魔物

仲間！　仲間！
ボクたちの仲間！

ユユ

えへへ。あたしもカボチャ持ってるから仲間だよ！

カボチャの魔物

アレ？
でもキミのカボチャ、ボクたちとなんか違うネ。

キミが生きてるからかな？
うーん、じゃあ魂とってあげるネ！

ユユ

きゃー！　ちょっとまって！
貴方たちってもしかして魔物なの！？
誰か助けてっ！！

ユユ

カボチャが魔物だったなんて……ショックー！

アンナ

無事でよかったです。
お怪我はありませんか？
あと、そこのカボチャは……。

ユユ

ちょっと！　私のカボチャは魔物じゃないってば！
……もう！
でも、ありがとう！　助かりました！

アンナ

エターナーさん！
ご無事でよかった……。

エターナー

王子たちも。
しかし……、予想以上にドラコリッチの手下に
足止めをくらい、中々進めずにいてな。

アンナ

見たところ、この街には他よりもたくさんの
カボチャの魔物がいるようですが……。

エターナー

恐らく各地から奪われた魂が、ドラコリッチの下に
運ばれてきているんだろう。

ドラコリッチがこの街に巣食っているのは、
カボチャの魔物の多さから見てもまず間違いない。

アンナ

だとすれば……
ドラコリッチが強大な力を手にする前に
食い止めなければなりませんね。

奪われてしまった住民の魂も取り戻しつつ、
先へ進みましょう。

エターナー

よし。ようやく街の奥へと進めるな。

アンナ

時間がありません。
先を急ぎましょう！

カボチャの魔物

オ城！　オ城！　もうすぐオ城！
ドラコリッチサマに、魂ハコベ！

アンナ

王子！　カボチャの魔物が住民の魂を
奪おうとしています！　急ぎ阻止いたしましょう！

パンプキンキング

ちょっと待った！　ここは通さないカボ！
魂を取り戻したくば、我を倒してから進め！

な～んて、ボクらしくない事言っちゃったカボ☆
クヒュヒュヒュ！　クヒュヒュヒュ！

アンナ

パンプキンキング！
それに、他のカボチャの騎士たちまで……！

パンプキンキング

クヒュヒュ！　遊びはここまでカボ！☆

エターナー

貴様！　私たちは遊んでなどいない！

パンプキンキング

なんなの君。真面目って言われない？
すっごくつまんない。君も僕やドラコリッチサマ
みたいに新しい体を作ってもらった方が良いカボ。

エターナー

新しい……体を作る……！？
一体誰がそんな事を！

パンプキンキング

おっと！　こんなところでお喋りしてる暇は
なかったカボ！
君たち大人と話しててもちっとも面白くないしね！

ボクの大好きな子供だったら
たくさんお喋りしたい所だけど☆

さぁカボチャたち！
早く魂をドラコリッチサマのところに運ぶカボ！

そしてその他のカボチャたち！
そこにいるつまんない人間を倒してしまうカボ！
レッツファイト！！

エターナー

よし。なんとかここも片付いたな。
先を急ごう。

アンナ

そうですね！

パンプキンキング

ワァ。こんなところまできたんダ！
根性すごイ！
ドラコリッチサマの怖さを知らないんだネ！

エターナー

ドラコリッチはやはりここに……！
殺された仲間の無念、果たす時がやっと……！

パンプキンキング

クヒヒ！　元気ダ元気！　いいネ、いいネ！

元気な人間の魂は、ドラコリッチサマが
すごく喜ぶんダ！

みんな、いケーーッ！！

アンナ

王子、ドラコリッチです！

エターナー

この時を待っていた！
私を覚えているか！　ドラコリッチ……、
いや、黒竜セヴルヴルム！

ドラコリッチ

その姿……、あの時の……。
まさか一匹殺し損ねていたとはな。

あれ程の力の差を見せられてなお、
我を追ってくるとはな。ドラコリッチとして蘇った
私の力にまだ抗おうというのか。

エターナー

貴様！　なぜ蘇ることができた！！

ドラコリッチ

ふむ。どうせお前たちはここで我に倒される身。
冥途の土産に教えてやろう。私をドラコリッチとして
蘇らせたのは、死者を統べる魔神「ビフロンス」だ。

蘇る為に魔神の力を借りるなど、我のプライドが
許さぬ所だった……が、しかし、貴様らのせい
で死にかけていた我に残された道は他になかった！

屈辱だがそれ以上に貴様らに屈することの方が、
我にとっては許されざることだったのだ！

そしてそれまでのドラゴンとしての名を捨て
ドラコリッチとして蘇った。
魔神に命を握られているのは忌々しいが……。

ビフロンスは我の思うままにさせてくれるのでな。
復讐を果たした今では、この状況に満足してはいる。
やはり人間の血肉の味は忘れられぬしな。

エターナー

く……！
お前のせいで……、どれほどの仲間が……ッ！！

ドラコリッチ

ふん。
貴様もすぐに仲間と同じところに送ってやる。
ビフロンスへのいい手土産になろう。

アンナ

王子、向かってきます！

ドラコリッチ

ククッ……。なかなか……やるではないか。

今回はここまでとしよう。ドラコリッチになった
我の魂は生き続ける……。

魂が生き続ける限りは何度でも甦るのだ。
その時は必ずや貴様らを葬ってやる。
せいぜいその時までその命を惜しむことだな……。

エターナー

何度でも、だと……！
ふざけたことを抜かすな！

ドラコリッチ

さらばだ。

アンナ

……もう返事がありませんね。
ですが、ドラコリッチの話していたこと。
嘘だとは思えません。

それに、魔神ビフロンスの事も気になります……。

エターナー

あぁ。そうだな。
……だが、とりあえず魂の器となる体を壊すことは
できた。再生するとしても時間がかかるだろう。

とはいえ、いつどこで復活するかわからない。
私はこのままドラコリッチを追うことにする。

アンナ

ですが、お一人では到底困難に思えます。
よろしければ、私たちと共に行きませんか？

仲間になっていただければ、私たちも協力できます！
ドラコリッチが復活した時にも、駆けつけることが
できます。

エターナー

しかし……。

アンナ

大丈夫です。私たちは、そう簡単には死にません。
もうあなたを一人にすることはありませんから。

エターナー

……。
（この方たちなら本当に……。
みんな、私は――）

……了解だ。
私も共に戦わせて欲しい。
よろしく頼む。

アンナ

こちらこそ、よろしくお願いいたします。

パンプキンキング

はぁ……。
魂集められなくてドラコリッチには怒られるし、
もう散々カボ……。

子供たちとお話して元気出したいカボ……。

アンナ

あれは……！
王子、カボチャの魔物たちです！

パンプキンキング

そうだ！　いいこと考えたカボ！
みーんな子供にすればいいカボ！

トリック・トリック・パンプキ～ン、
みんな子供になるカボ！

アンナ

……！　これはっ、体が縮んでしまっています！

これでは思うように力が出せません……っ、
王子、お気を付けください！

アンナ

体が……、元に戻っています。
よかった……。

これで安心ですね。
王子、城に戻りましょうか。