琵琶の仙女と憂愁なる調べ/会話

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堕姫

さっきは「邪悪なる王子と人間共」などと、
わらわの妹分が暴言を吐いて、
本当に済まなかったの、王子よ。

操られていたから仕方ない……？
……いいや、あれは王妃人の本音でもあろう。

王妃人とわらわが出会ったのは、邪仙郷にて、
わらわが無理やり協力させられておった頃じゃった。
ふふっ、あやつも邪仙に拾われた身の上での。

しかし不承不承邪仙に従っておったわらわと違って、
王妃人は、そも人というものを嫌っておった。
あやつの生まれゆえ、仕方のないことじゃが……。

王妃人は、長く楽師に愛され、
年月を経た琵琶より生まれた、
付喪神なる妖怪じゃった。

あやつも、かつての持ち主と同じく、
音楽で人々を癒そうとしたのじゃろうな。
しかし、あまりにも状況が悪かった。

魔物が復活し、誰も彼もが明日をも知れぬ世を、
うつむき、怯えて歩いていた頃じゃった。
そんな街に妖怪のあやつが現れては……。

妖怪が現れた、音楽で俺達を惑わす気だと、
怯えた街の者達に石を投げられたそうじゃ……。

街の連中にも悪気は無かったとは思うがの。
それでも、王妃人は深く心を傷つけられ、
放浪していたところを、邪仙にその力を見出された。

幸か不幸か、わらわも妖怪じゃったからの。
あやつと打ち解けるのは実に早かった。
表沙汰には出来ぬものの、楽しい日々だったものよ。

無理やり従わされておったわらわと違って、
あやつは実力を認められて邪仙郷に入った者じゃ。
他の者に関係が知れぬようにと、苦心はしたが……。

ほれ、厄介者と親しいとなれば、
あやつも邪仙郷で生きてゆけぬじゃろう？
ゆえに、秘密の関係というものだったのじゃ。

－－しかし心を操られ、わらわのもとへ来たとなれば、
おそらく邪仙の手による計略に違いなかろうて。

もう二度と会うこともないじゃろうと
覚悟は決めておったが、こうなっては見過ごせぬ。
王子よ、どうか王妃人を助けてはくれぬか……？

…………うぅ、さすがはわらわの惚れた男よ。
恩に着るぞ、王子よ。
なればさっそく、王妃人を探すとしようぞ！

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