テッサ【雷】

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• ヒストリー(1)
  ねぇ、あたし、テッサ。ロリポップをくわえてるとはっきり聞こえないらしいから、とりあえずくわえずに話すけど、あんまり長く話させないでくれる？でさぁ、ダイナが言ってたんだけど、ここって仕事あるんでしょ？で、どんな仕事か教えてくれない？…ついでに言うとさ、他の人なら報酬次第では受けないけど、ダイナの紹介だから…それにここ、なんだか面白そうじゃん。割引してあげてもいいよ…あ？お金がない？チッ！じゃあいいよ、お金のことはさ。住む所用意してくれればいいよ。あ、そうそう。あたしの部屋にはロリポップを多めに置いておくの、忘れないで。
  で、だからさぁ、どんな仕事か教えてくれない？…電流装置の付いた設備の修理？…ってか、あたしのこと何だと思ってんの！？修理屋！？

• ヒストリー(2)
  ああ、あたしのこの能力のこと？小さい頃に覚醒したんだよね。初めはさ、リチャードに店の電動工具を修理するくらいしか使い道がないって笑われたんだよね…ああ、リチャードってのはあたしの育ての父親のこと。4歳の時に親を暗鬼の襲撃で失くしてさ、お隣さんだったリチャードが身寄りのないあたしを引き取って、暗鬼に囲まれた影ノ街からあたしを連れて逃げ出したんだ。リチャードのおかげで、あたしは安全な環境で健康に育ってこれた。でさ、戦争が終わって、影ノ街の再建が始まったから、あたしたち、戻って新しい生活を始めようとしたんだ…
  穏やかな暮らしが続くって思ってたのにさ…もしリチャードのあの友だちがいなかったら、リチャードがあんなに白夜城に恨みを抱いてたなんて、今でもあたし、知らなかったかもね。今でもはっきり覚えてるんだ。貴族の私兵につかまった時、そいつがリチャードの罪を一つ余さず数え上げたんだけど、あたしはその時初めて、リチャードが何人も暗殺してたって知ったんだ。それが正しいとか正しくないとか、そんなことはわかんないけど…あたしに対する恩とか家族の情とか、それは本物だったんだ。

• ヒストリー(3)
  あたしの能力が本格的に目覚めたのも…その時の事件がきっかけだよ。
  あの日、リチャードが突然あたしとゲームしようって言ってきてさ。あたしをクローゼットの中に入れて、ロリポップを無理やり手に握らせ、何が聞こえても出てくるんじゃないよって言い聞かせた。あたしは大人しくクローゼットの中でロリポップをくわえてた。外から騒がしいわめき声と叫び声がずっと聞こえてきて、直感で何かあったってわかったけど、あたしは涙目のまま声も出せずにいたんだ。ちょうどその時、クローゼットが乱暴に開けられて、驚いた拍子にロリポップも口から床に落ちちゃった。兵士は荒っぽくロリポップを踏みつけて、血で染まった手を伸ばしてあたしをつかまえようとした…外を見ると、リチャードは全身血だらけでクローゼットの前に倒れて、意識を失ってた。その時、頭の中が真っ白になって、うまく言えない感情が胸に突き上げてきたのだけは覚えてる…
  その後？その後のことなんて、覚えてるワケないじゃん。確かあたしの力が爆発して、白夜城の監獄に入れられちゃったんだったかな。その後は、あのシャドウマスターに引き取られて、まあ、いろいろあったけど…それはみんな後の話だよ。

• ヒストリー(4)
  シャドウマスターのところで働いてた頃はやっぱ楽しかったな。でも、あたしの目的はさ、シャドウマスターの力を借りてあることを調べたかったんだよね。リチャードと白夜城のどっちが、いわゆる「正義」なのかってね。もちろん、あたしはリチャードを信じてるよ。情って面でも、道理ってヤツからも、あたしにとってリチャードは「善人」なんだ。そしてその頃だよ、シャドウマスターについての噂を聞いたのは。なんでもシャドウマスターが「白夜城とある取引を交わし」て、でもって、白夜城に協力して影ノ街を治めることになったっていうじゃないか…そんなの、あたしの性格からして、何が何でも問い詰めなきゃ気が済まないに決まってんじゃん！あたしは自分を救い出してくれたシャドウマスターを信用してたんだ。だから、内心否定してくれることを期待してた。それがあっさり、噂が本当だって認めるなんてさ…あたしにはそんな取引、受け入れられなかったし、「遅かれ早かれお前にもわかる」って言葉も理解できなかった…裏切られた気持ちになって、振り返りもせず、イスタバン組を離れたってワケ。
  それからのことは、あんたの知ってる通りだよ。ダイナに出会って、同僚になったんだ。私の力は、ダイナ組を守るだけじゃなく、自分のことだって守れる。でもあの年のあの事件から、あたし、ロリポップが手放せなくなっちゃったんだよね。もし誰かが無理やり奪おうとしたら、そいつは一瞬で消えちゃうだろうね。