やがみけ_番外7

Last-modified: 2008-05-16 (金) 22:50:25

この物語は、未来編ですがやがみけ本編とリンクするとは限りません。
番外編と思って読んでください。

 

鬼ごっこ編
「鬼ごっこって、何で?」
仕事場でききなれぬ単語に、ライトニング分隊隊長のフェイトは顔をしかめた。
今は昼休み時間でライトニング隊長フェイト、副隊長のキラは久方振りに一緒に昼食をとっているところである。
「う~ん、僕に聞かれても困るんだけど……。因みにはやてちゃん提案だよ。
24時間耐久鬼ごっこ」
「24時間!?」
ギョッとするフェイト。じゃが芋にフォークを刺し損ね、キラの皿の上に飛んでいった。
「うん、因みにそれをやるのは新人四人。
僕らは鬼役だね」
「鬼役は何をするの?」
先程飛んできたじゃが芋にフォークを突き刺し
「もちろん、逃げ回る四人を捕まえるんだけど……。
捕まった新人には罰を受けてもらうことになってる」
じゃが芋を口に放り込む。
「罰って……どんな?」
不安げな顔をするフェイト。
「準備ははやてがしてるみたいだし……、罰の詳細は僕にも分からないんだ」
「そっか……」
フェイトは呟き、つい先程キラによって手渡された資料に視線を落とした。
『新人フォワードたちの緊急育成カリキュラム』
と、そう書いてある。
大まかなスケジュールと注意事項。
因みに、注意事項が特に大きく
『非殺傷設定厳守』
と記されてるのを見て、フェイトは何だか怖くなった。

 

機動六課、新人緊急育成カリキュラム当日、午前7時半。
前日に休暇を与えられたスバル、ティアナ、エリオ、キャロの四人は指定された場所に集まり、準備運動しながら休暇の土産話に花を咲かせていた。
それにも飽きてくると、本日の訓練の真意について議論をかわす。
「ていうか『長時間任務における集中力、危機察知及び危機回避能力の向上を第一に、現在のスタミナ持続時間の限界を測定するのを目的とする』で何で鬼ごっこになるわけよ?」
正直に思ったことをティアナは口にした。
「まぁ訓練が鬼ごっこなら楽しいじゃん」
前屈しながらスバル。
「まぁあんたが言う鬼ごっこが正しければ楽しいものなんだろうけど……」
「僕は正直、楽しみですよ」
二人の会話に入って、エリオ。
「私も、早くは走れないけど……こういうの初めてなんで楽しみです」
何だか興奮気味のキャロが目を輝かせてそう言った。

 

「皆、おはよう」
威厳ある声で集合場所にやって来たのはアスランだった。
「あれ? 今日はアスランさんなんですか?」
ふとした疑問を口にしたのはティアナである。
隊長格のなのは、フェイトキラ、シンが来るとばかり思っていたので、アスランが来たのは意外だった。
「あぁ、隊長たちは準備中。だから代わりに俺が来たんだ」
「準備中ってじゃあ、鬼って」
四人一同顔を見合わせる。
「隊長格はもちろん色んな人に手伝ってもらってこの遊……ゴホンッゴホンッ
新人緊急育成カリキュラムは成り立っているんだ。
しっかり学ぶんだぞ?」
さて、とアスランは四人を会場まで案内する。
「室内訓練施設みたいね」
到着して開口一番、ティアナが言った。
同意するかの様に他三名はその何でもない室内を眺めている。
ただ、室内中央には何故かコタツが設けられていて、籠に入ったみかんと、人数分の携帯酸素が置かれていた。
「四人ともルールはもう分かってるな?」
用心のため、確認するアスランに真顔で頷く四人。
今回、24時間鬼ごっこを開始する際に四人にはいくつかルールが科せられていた。
第一、バリアジャケットを必ず着用すること。
そのため、現在四人ともバリアジャケットを纏い、それぞれのデバイスを手に持ち、装着している。
第二、捕まったらおとなしく罰を受けること。
四人ともそのつもりである。捕まったら捕まったで自分の至らない証拠だ。
第三、逃走中、個々の魔法を使用することを許可する。
また、鬼への妨害行為も許可する。
以上三つだ。
「じゃあ、八時になったら始まるから、それまで準備体操、しっかりな?
じゃ、俺はこれで」
時刻は七時五十分。
アスランは退場し、何だか落ち着かないよう妙な雰囲気を抱えたまま四人は体操を始める。
視界の隅、室内の隅に設置された真っ黒な『鬼登場口』を警戒しながら。

 

さて、同じころ鬼スタッフは待機室ではやてとの打ち合わせをしていた。
まず、バリアジャケットは現在の形態をバックアップしつつ、今一時だけ、全身真っ黒に包むものに変更。
無論顔までである。
そして胸部、または額に白文字で罰ゲーム名を書くそうな。
「さて、もう皆分かっての通り、これはただの訓練やない。
遊びに見えるかもしれんけど、この訓練をフォワードたちが乗り越えたとき、きっとあの子らは真のストライカーズになるはずや!
皆、24時間、がんばって行こう!」

 

午前8時、『24時間鬼ごっこ』開始。
秒針が頂点に登りつめた刹那、真っ黒な鬼登場口から煙幕の激しい噴射音とともに真っ黒な何かが、エリオ、キャロ、スバル、ティアナの前に姿を現す。
白煙を吹き飛ばす桜色の魔力光。
「あれって……」
「なのはさんよね?」
機動六課の中で桜色の魔力光といったらなのはさんである。
「ちょっ、スバルさん、ティアさん、なのはさんの胸元見てください」
鬼がなのはさんなのにあんたはどこ見てんのよ!
と言いたくなったティアナだったが、なのはの胸元、黒いバリアジャケットの上半身に
『ディバインバスター』
と標記されていた。
「これって捕まったらなのはさんのディバインバスターを受けるってこと……ですよね?」
キャロの言葉に一同、顔面蒼白になった。
「一緒に逃げよう! ティア」
幻術の使えるティアナと組めば生存確率が高まると思ったスバルだったが、残念ながら親友の姿はすでになかった。
『ウィングロード』
危険を察知したスバルのマッハキャリバーが天を駆ける道を作り、スバルに回避行動を取らせた。
スバルを捕まえようとしていた腕が空振った。
それを高位から見てホッと一息のスバルだったが
『アクセルフィン』
レイジングハートの音声が聞こえた刹那、スバルは肩を叩かれた。
「はい、スバル罰ゲーム」
桜色の閃光がスバルを包み込んだ。
煙の尾を引き、スバルは床に落ちてきた。
そこにブザーが鳴り響き、名残惜しそうになのはは退場。
「スバルッ!!」
「スバッ!!」
再び煙幕。
黒鬼が煙を突き破り出てきた。
スバルに駆け寄ろうとしていたティアナ、エリオ、キャロはターンを開始。
反対方向に向かって全速力で駆け出した。
ちなみに、標記文字は対装甲散弾である。
「た、対装甲散弾って誰でしょうか?」
キャロが呑気にそんなことを聞いてくる。
「えぇっと、確か陸士108部隊のディ……ディ」
「ディアッカ・エルスマン一等陸尉!!」
なかば怒鳴るようにしてティアナは言うと、エリオ、キャロから離れ、一人での逃亡を試みる。
これも逃走手段の一つではある。
二手に分かれることで相手の判断を送らせることができるはずだったのだが
「へぇ~、覚えててくれたんだ? 名前」
何故か迷わずティアナを追ってきた。
しかも、バズーカの様にデカイデバイスを二つも持っているのに案外駿足だ。
正直、ティアナは移動速度に間してはあまり優秀とは言えない。

 

「ていうか、なのはさんといい、ディアッカさんと言い覆面かぶってる意味ないじゃないですか」
シュートバレットを放ち、ひた走るティアナ。
もちろん狙いなんて関係ない。
というか、狙いはクロスミラージュに任せた。
ヒュウッ
と口笛が聞こえる。
「やるじゃん? ティアナ。けど……」
ディアッカに捕まり、観念してその場にへたりこむティアナ。
緑色の閃光がティアナを包み込んだ。
「そんなんじゃ、俺は落とせないってね」

 

ディアッカが去り、静寂を取り戻す会場。
「ティアさん、スバルさん!」
「大丈夫ですか?」
エリオとキャロが駆けてくる。
「だい……ひょうぶ」
とちっとも大丈夫でない様子で立ち上がるスバル。取り合えず、キャロにヒーリングで癒してもらうことに。
「ティアさん」
うつ伏せに倒れたまま煙の尾を引くティアナに駆け寄るエリオ。
激しく上下する背中。
全力失踪の後、魔力ダメージを喰らったのだがら一気に疲労がピークに達したのだろう。
ティアナはエリオから酸素を受取り、会場に設置された時計を見た。
八時三分。
まだ開始から三分しかたっていなかった。

 

午前八時半
この約三十分間の間、鬼が出現することはなく、しかもアスランが運んできた朝食が室内中央の机の上におかれる。
おにぎり、卵焼き、味噌汁である。
「これ24時間も続くとか、考えられないよ」
とかなんとか言いつつ、スバルは次々におにぎりを頬張っていく。
「朝から全力疾走して食べられるあんたの胃袋が羨ましいわ」
ぼやきながらティアナは味噌汁だけを食べていた。
「そう言えば、まだライトニングの二人は捕まってないよ?」
「えぇ、まぁ……はい」
掌に着いた米粒を舐めとりながらエリオ。
「でも、あとにはフェイトさんにキラさん、シンさん、はやて部隊長とか控えてますよ……」
少しばかり青ざめた顔色でキャロ。
どうやら朝食はゆっくりと食べさせてくれるらしい。
だが、午前九時
これから想像を絶する地獄が始まるとはティアナも、スバルもエリオ、キャロも誰も予想しえなかった。

 

エリオは全力でストラーダのフォルム2を操った。
推進機構から怒濤の勢いで噴射されるバックファイアがその圧倒的なスピードを容易に想像させる。
その背後に迫る黒鬼。
白文字で『この、バカヤロー』
と書いてある。
「アスランさんでしょぉーー!?」
なかば、悲鳴に近い声でエリオ。
ティアナとスバルがやんちゃしたときにアスランがそう叫びながら二人を蹴り飛ばしたのを覚えている。
だが目の前の男は否定した。
「アレックスだ!」
怒声とともにとっ捕まり、
「このバカヤロー!!」
と、グリフォンブレイドで蹴り飛ばされる。
「うわぁぁ!!」
しこたま体を床にうちつけ、エリオが転がっていった。
時刻は午前十時を過ぎたころ。
四人は既にぼろぼろだった。ただ一人を除いて。
「大丈夫、エリオくん」
無傷なその人、キャロは他三名の治療に忙しんでいた。

 

鬼待機室。
モニターの光だけが頼りのこの場所に八神はやての声が響いた。
「なぁ、何でみんなキャロ狙わへんの」
やがみけ一同召集をかけ、はやてはいつもよりも幾らか低い声色でそう言った。
「なのはちゃんはスバル、エルスマンさんがティアナ。
二人とも捕まえられそうな人から捕まえていたけれど……。
明らかにキャロを無視してアスランはエリオを狙ったよね?」
たじろぐアスラン。
「なんでなん?」
「いや、そのなんといいますか……、やりづらいというか……すみません」
しょぼんと縮こまるアスラン。
「じゃあ、レイがキャロで行こうか?」
「私が……ですか?」
表情にこそ出さないが、レイもあまり気が進まなさそうだった。
年齢的に昔のはやてとダブるのだろう。
返答に困っていると、肩を叩かれた。
「キラ?」
「僕が……行くよ」
「でも、キャロは…」
アスランが考え直せと、キラの肩を掴む。
「いいんだ。例えこの訓練のせいで嫌われることになっても、主の為なら騎士としての誇りも捨てると決めた僕だから……」
「いや、そこまで真剣に悩まんでも……」
はやての言葉も聞かずスタンバるキラ。

 

そして

 

施設中央に設けられたコタツを囲み、四人でこの鬼ごっこをどう切り抜けるか相談していた。
「キャロがやられるのは不味いわね」
携帯用酸素を口に当てながらティアナが言った。
「どうしてですか?」
当の本人はエリオをヒーリングしつつ、不思議そうな顔をする。
「一度の攻撃で完全なノックダウンってことはないと思うけど……、治療魔法が使えなくなるとこの先地獄よ?」
「ティアの言うとおりだね。この中でヒーリングができるのキャロだけだし……。
できるだけ、守ろう」
キャロを除く三人がうなずいた刹那、鬼登場口から甲高い破裂音とともに煙幕が吹き出した。
四人の間に走る緊張。すぐさま鬼から距離をとり、様子を探る。
罰ゲームは……
煙幕が鬼の飛翔魔法の衝撃で吹き飛ぶ。
蒼い魔力光を放ち、象る鋭利な十枚の翼。
というか覆面かぶる意味はあるのだろうかと思うエリオ、キャロ、スバル、ティアナの四人だった。
ちなみに胸には『HMATFB』とかかれている。
「(ティア、HMATFBって何?)」
「(そんなこと聞いてないでちゃんとキャロを守んなさいよ!)」
「(だって気になるし!)」
「(たぶんですけどHigh Maneuver Airial Tactical Full Burstの略ですよ。
キラさんに聞きました。
高機動状態を保ったまま大砲撃を放てるらしいです。)」
キャロの手を引き走るエリオ。その姿は実に微笑ましいが、残念ながら微笑ましいだけでは鬼から逃れることはできない。
グングンと距離を縮めて行く黒鬼ことキラ。
狙うはキャロのみ……。
しかし、
「クロスファイアァ、シュート!!」
放たれる閃光の槍が横合いからキラの行く手を阻む。
急停止、クロスファイアの間を縫うようにして華麗にかわす。
「リボルバー! シュゥウート!」
背後から迫るスバル不可視の衝撃波がキラを襲う。
唯一の回復要員を失うまいと必死である。
だが、スピードはフォワード四名よりもキラの方がン倍上である。
うまいことディフェンスをすりぬけたキラがキャロへと迫る。

 

終わった……。

 

フォワード四人はそう思った。訓練ではなく地獄と化すと……。
「やめろぉぉおお!!」
不意に響いた大声に、フォワード四人は顔をあげた。
『シャイニング・エッジ』

 

キャロの目の前に閃光の刃が走り、キラを怯ませ、その間に間合いを詰め、肩をぶつけ、白い衣装を纏った何者かがキラを吹き飛ばした。

 

お助けマン
白地に黒でそう書いてあった。
「ッ!?」
想定外の事態にキラは動揺を隠せない。
それでも尚、キャロへと向かうがお助けマンによるディフェンスに妨害され、近付くことはできなかった。
「やめるんだキラ!」
「アスラン!!」
外野そっちのけで二人の一進一退の攻防が続く。
「まさか、君ははやてを裏切るのか?」
「裏切るんじゃない、これはお前のためだ! 訓練とは言え、これは明らかにやりすぎだ!
戻るんだキラ!」
スターズ、ライトニングからアスラン支持の声があがる。
「これから成長しようとする四人に圧倒的な力の差を見せつけて一体何になるっていうんだ!!
彼等を成長させるにはもっといい方法があるはずなんだ!」
「わかるけど……、君の言うこともわかるけど!!
だけどはやては退屈してるんだ!!
誰かがやらなきゃ欲求は満たされないんだぞ!
なぜ君にはそれがわからない!!
なら僕は……」
キラは一度アスランから距離を取り、構えを取った。
「君を討つ!!」
「うっ!? くそぅ!!」
放たれる斬撃は同時。
互いの障壁が互いの攻撃を防御する。
「アスランさん!」
『Boost up brade power』
キャロのブーストアップデバイス、ケリュケイオンから供給される魔力。
それを受けてパワーアップしたアスランはキラを力で退けた。
「うぁぁぁ」
声と共に失速。
同時にブザーがなり響き、キラは鬼待機室に姿を消した。
「ありがとうございます。アスランさん」
ティアナが駆け寄ってくる。
「助かりました」
ホッと一息、エリオとキャロ。
「強いんですね! アスランさん」
近付いてくるスバル。
「あれ? 何か衣装解れてますよ?」
スバルが解れた糸を千切ろうと勢いよく引っ張るとシュルァァと言う音共に、白い衣装が足元に落ちた。
一瞬裸になったかと顔を背けたティアナだったが、スバル、キャロ、エリオの三人は口をあんぐり開けたまま硬直した。
「のせられてるなぁ……俺も」
アスランがキャロへ向き直る。
「そんな、アスランさん……」
一歩あとずさるキャロ。
「まさか……」
エリオがキャロの前に身を出し、スバルも同時に後退する。
『ハイパーフォルティス』
黒地に白でそう記されていた。
「アスランさん、裏切るつもり?」
「裏切るも何も、俺の主はもとからはやてだけだ」
ティアナの問掛けに、アスランは平然と言ってのけた。

 

午前十時十五分
キャロは正義のデバイスを持つものの裏切り行為に寄って初めて床の上をボールのように転がっていった。
キャロはがんばった。
がんばって走ったのだ。
勿論、スバルやティアナ、エリオだってキャロを守ろうとした。
エリオはソニックムーブまで使った。
けれど、(恐らくはセイバーフォーム)のアスランのスピードが僅かばかりに援護三人のスピードを上回り、あえなくキャロはとっつかまってハイパーフォルティスを喰らう羽目になったのである。
帽子は形を乱し、キャロの元気なアホ毛はもはや髪を焼いたかのごとく縮れてしまっていた。
メンバー三人の顔が険しくなる。
「まずいわね」
カートリッジを取り替えるティアナ。
「うん、ここからはキャロを絶対守らなきゃ」
スバルは拳を握り、エリオはキャロに肩を貸して立ち上がらせた。
瞬間、再び煙幕が吹き出す。
びくりと肩を震わせる四人。
しかし、誰もでてこなかった。
「誤作動かな? ティア」
「……わかんない」
「油断はしないほうがいいですよ、スバルさん、ティアさん」
気を張り、周囲を警戒するエリオ。
キャロは生唾をゴクリと音を立てて飲み込んだ。
知らず知らずのうち呼吸が乱れ、荒くなっていく。
汗ばんだ額から滴が頬を伝い、フロアに落ちる。
五分経過。
「誤作動……みたいね」
クロスミラージュを下ろし、脱力して盛大に息を吐くティアナ。
「びっくりさせないで欲しいよね、エリオ、キャロ」
にこやかにスバルはライトニングFをみやる。
「「「ですよねぇ?」」」
沈黙。
スバルの思考が一時停止した。
「え~とぉ、右からエリオ、キャロ、誰?」
緑色の天然パーマとでも言えばいいのだろうか?
くりくりっとした巻き髪がどこぞのお坊っちゃんを連想させる。
優しそうな顔立ちでキャロと肩を組んでいる。
でもやっぱり、黒い服を着ているわけで。
正体はニコル・アマルフィー査察官である。
ミラージュコロイドというレアスキルの持ち主らしい。
『ネオジェネシス』
しかし、白文字ではそう書かれている。
キャロをバインドで固定し、ニコルは姿を消した。
変わりに、鬼登場口から不気味な音が響き、リフトアップ台からデュランダルの姿が徐々に露になる。
「私も……本当はこんなことしたくはないんだがね」
そう言いつつ頭上には環状魔法陣を展開。
さらに膨大な魔力の塊が露になっていた。
「いけるかね? メサイア」
『Yes』
「あんなの食らったら、もう回復する余力なんてキャロにはなくなるわよ?」
「キャロ!!」
ティアナ、エリオにスバルも叫ぶ。
絶句し、慌て出す三人。
キャロは諦めたようにうなだれていた。
「これが君達の運命なんだよ」
『NEO GENESIS』
閃光が施設内を照らし尽した。