超古代尖兵怪獣ゲイツ、超古代尖兵怪獣ゲイツR、機械珍球ハロジロー 登場
─ミネルバブリーフィングルーム─
ファントムペインを撃退し、総監のお膝元と呼ばれるアプリリウスに到着して一週間。ミネルバではウルトラマンの戦力分析を行っていた。
「このウルトラマンは、現在までに青・赤・緑・灰色の4タイプが確認されています。ストライクとの主な違いは基本的な能力の差と、エネルギーがなくなった時のみ変化する灰色のタイプが存在することです。他のタイプの長所は・・・」
クルー達がアーサーの話に聞き入る中、シンは一人別のことを考えていた。
─数日前・・・シンはアプリリウスを発つカガリとアスランの見送りに来ていた─
「では世話になったな」
「もうお帰りになるのですか。もっとゆっくりしていっていいのですよ?姫」
「私には仕事もあるからな、のんびりしてはいられぬ」
「それは残念ですな・・・アレックス君、君はどこへ行くつもりだい?」
「はい、少し考えましたがやはり一度基地に戻ろうと思っています」
「何!?一緒にオーブへ行くんじゃなかったのか!」
「(ひそひそ)・・・俺はこれでも軍人なんだ、そう簡単には行かないよ。それに変身者のことを調べるなら君だけで十分だろ?」
「それはそうだが・・・」
「・・・ということです。それではお世話になりました議長。それにシン、君も。助かったよ」
「ふん・・・お礼言われることなんて・・・」
「・・・そうだ、ミゲルによろしく言ってくれ。それじゃあな」
─ミネルバ─
「ミゲルって・・・誰だよ」
まさにどうでもいいことを考えているシンの耳にアーサーの声が届く。
「ちなみに技の名前はそれぞれヴァジュラ光線・エクスカリバー・ケルベロス光球となっていて・・・」
「ガクッ・・・な、なんだよその名前は!?」
アーサーの言った技名に驚くあまり、椅子から転げ落ちるシン。彼の質問にはルナが答えた。
「アーサーが全部決めちゃったのよ。アーサーって名前からして神話・伝説オタクだからねーw」
「OTL」
これからはアーサーに技名を決められるのか・・・と落ち込むシンに構わずアーサーは説明を続けた。
「インパルスはストライクよりも能力が軒並み上回っており、3タイプそれぞれの優れた部分はフリーダムのそれに匹敵します」
「へえ凄いじゃないか。そこらの怪獣なんて楽勝だな」
感心するハイネ。しかしレイは浮かない顔だ。
「ウルトラマンは強くなっている・・・なのに俺達は怪獣一体倒せないとは」
レイの言葉に俯く隊員たち。それを見たタリアは立ち上がり言った。
「もちろん、我々も強くなっているぞ!これを見ろ!」
その言葉と共にモニターに新たな映像が映し出される。それは三機合体したザフトイーグルであった。
「我々の攻撃力不足補うべく、イーグルに新たな武器を搭載した!それがこのトルネードサンダーだ!」
トルネードサンダーとは・・・三機のエネルギーを集中して撃ちだす、ザフト最強の必殺武器である。
「い、いつの間に・・・艦長、何故私も開発に関わらせてくれなかったんですか」
「お前が関わるとまた変な名前をつけられるからな・・・これは三機以上が合体していることが使用条件だが、その威力は折り紙つきだ」
「へえー、これならスフィア合成獣だって倒せるかもな!」
沸き返るクルー達。そこへデュランダルからの緊急通信が入った。
『緊急事態だ。地球に向かって直径200キロメートルの彗星が接近している。君達には至急この彗星を爆破して欲しい』
「200キロ!?どうして太陽系に来る前に壊さなかったんですか!」
『・・・これは非常に不可解なことなのだが、彗星の破壊に向かった艦が何者かに襲われたという報告が入っている』
「!」
『そこで君達の出番というわけだ。これはミネルバにとって初の正式任務となる。頼めるかね?』
「了解しました!・・・ミネルバ、発進!」
「ラジャー!!」
─月面基地ガロワ・アスランの自室─
「ふう・・・結局帰ってきてしまったな・・・」
ここは月面基地ガロワ。月面にはいくつもの基地があるがアスランはここでテストパイロットとして働いている。
「やはり今の俺では・・・ん、これは届け物か・・・キラから!?・・・俺へのプレゼントだって?」
包装紙を破き少し大きめな箱を開くアスラン。そこにあったものは・・・
「テヤンデェーイ!ゴヨウダゴヨウダ!!」
・・・あまりにも目に痛い色をした球体だった。
「うわっ!これハロじゃないか!まさかキラが作ったのか?・・・なになに、『君のを真似て作ったよ。名前はハロジローです』だって!?」
「テヤンデーイ!ハロハロー!」
ピョンピョン飛び跳ねるピンクの球体。アスランはキラのセンスに絶望しながら静かなマイルームに手を振った・・・
─ミネルバ─
「指定の位置に着きました!」
アプリリウスを出発して数時間。ミネルバは他の破砕部隊の待つ宙域へ到着しようとしていた。
「時間がない、早く他の艦と連絡を取れ」
「了・・・艦長!大変です!味方艦が攻撃されています!」
すぐさま出された映像には、次々と爆発するザフト艦が映っていた。
「!・・・ザフトイーグル発進準備!メイリン敵の正体を!アーサーは残っている艦と連絡をとれ!」
次々と命令を下すタリア。そこへメイリンから敵の情報が入る。
「艦長!動きが早すぎてよくわかりませんが、この姿はおそらくゲイツです!」
ゲイツ。地球を恐怖の炎で包んだシグーが宇宙に順応進化したもので、獰猛な気性と細身ながら強靭な体躯をもつ古代怪獣である。
クルー達に衝撃が走る。そんな中、真っ先に走り出そうとするシンをタリアを見逃さなかった。
「シン!どこへ行く!」
「俺にアイツをやらせてください!アイツやシグーに俺は・・・!」
拳を握り締めて懇願するシン。しかしタリアがその願いを聞き入れることはなかった。
「シン、いつにもまして冷静さを失っている今のお前では確実に死ぬ。ここで待機しろ。ルナ・レイ・ハイネ!出撃だ!」
「・・・ッ!」
「死」という言葉にひるむシン。その後ろをレイたちが走っていった。
─ミネルバ艦外・戦闘宙域─
「早く奴を倒さないと味方が全滅だ!短期決戦だ、トルネードサンダーを使う!」
「ぶっつけ本番ね・・・面白いじゃない!」
「ハッ、こいつのお披露目に相応しい相手だぜ!」
一直線にゲイツ目がけて飛ぶザフトイーグル。ゲイツもそれに気付いたのかレイ達へ向かってきた。
「注意すべきは口からの光弾と腰部の触手だ。一気に上昇して奴の射線から外れ、降下と共に仕留める!」
「わかったわ!」
レイの言葉に従い、機首を上げて上昇する。しかしゲイツも反応して上昇を始めた。
「させるかよ!」
そこをハイネが照明弾で妨害する。その隙に上昇したイーグルはすぐさま反転、ゲイツに向かって急降下を始める。ゲイツがその首を上に向けた。
「今だ!トルネードサンダー、うてえっ!」
トリガーを引くルナマリア。イーグルの先端から発射されたエネルギーの塊は確実にゲイツの胸を撃ちぬいた。
「ヒギアアーー!」
ゲイツは反撃すらできないまま吹き飛ばされると、近くの岩石にぶつかりピクリとも動かなくなった。
─ミネルバ─
「ゲイツの生命反応、消えました」
「よし!よくやった!」
歓声に包まれる室内。その中でじっとモニターを見つめているシンにタリアが諭すように言った。
「シン。お前は故郷をあれの仲間に焼かれたそうだな・・・確かに怒りは大きな力となる。しかし戦いには怒りを抑える理性が必要なのだ」
「・・・・・・」
シンは何も言い返さずタリアと目も合わせない。
「・・・ふう・・・これより我々は予定通り彗星破壊に向かう。救助者は残った味方艦に・・・」
タリアが溜息をつき次なる命令を下そうとした時だった。
「・・・どういうこと!?艦長、死んだはずのゲイツが・・・蘇っていきます!」
再びモニターに目を向ける。そこには翼が抜け落ち細部の形状が変化したゲイツが見えた。
─戦闘宙域─
「どうなってるんだ!?確かに奴は一度倒したはず・・・」
目の前の光景にさしものレイも驚きを隠せなかった。
「まるでゾンビ・・・グワアーッ!」
「ハイネ!?レイ、ハイネの機体が被弾したわ!アイツの腰部の武器が光線系に変わってる!」
「くそっ、ハイネ機を分離しろ!このままでは俺達の機体までやられる!」
「Z・I・G!」
「ちょ、おま、それはあまりにも」
口答えするハイネだったが時既に遅し。
「ザフトイーグル、スプリット!」
─ミネルバ─
「イーグルは宙域を一時離脱!ゲイツは・・・本艦に向かってきます!」
「くそっ迎撃しろ!」
「駄目です!動きが早すぎて照準が・・・!」
近づいてくるゲイツ。慌てふためくクルー達。シンは一人ディレクションルームを出た。
─ミネルバ内・通路─
「・・・確かにさっきの俺は何も考えちゃいなかった。だけどもうあの時のようなのは嫌なんだ、誰も死なせたくない・・・だから・・・」
深呼吸をし、吐く息と共に思いっきり叫ぶ。
「だから力を貸してくれっ!インパルース!!」
掲げたマユケーから光が漏れ出す。その光はミネルバから飛び出すと怪獣の前に立ち塞がった!
─宙域─
「ピギャアアアッ!?」
「デアッ!」
いきなり現れた光に思わず手で目を覆うゲイツ。その隙を見逃さずウルトラマンは容赦なくハイキックを叩き込んだ。
「ガッ・・・!」
一撃でグロッキーになるゲイツ。。続けてインパルスは額の前で腕を組む。額のブライトスポットから湧き出した光がインパルスの体を真紅に染めていく。
「ウ~、デアッ!」
パワーと剣技に優れた形態ソードインパルスになったシンはゲイツの尻尾を掴むと思い切り振り回した。
「ダアアアーーッ!」
そして不意に手を離す。振り投げられたゲイツは回転しながら宇宙空間を舞う。
「ヒアアア!」
しかし敵も然るもの。投げられた勢いそのままに急旋回すると、インパルスへと突進してきたのだ。
「ウルトラメタモルフォーゼ!」
すかさず両腕に輝く刃フラッシュエッジを形成、投げて迎撃する。しかし
「ヒギヤァー!」
ゲイツの右手の爪が伸び、それを弾く。さらにゲイツはウルトラマンを貫こうとそのまま爪を前に突き出してきた。
(やばい!・・・・・・いや・・・)
焦るシンの頭に、タリアの言葉が蘇る。怒りを抑えつける冷静な判断。下手な迎撃などしない。精神を集中し、一瞬に全てを賭ける!
「ヒギアアア!」
ゲイツの爪がギラリと光り、今にもインパルスの喉下へ届こうとしたその時
「ハッ!ダアアーッ!」
迷いのない右拳が、ゲイツの腹部へズブリとめり込んでいた。
「ヒ・・・ギア・・・ア」
最後の力とばかりもがくゲイツだが、その自慢の爪は左のフラッシュエッジによって既に受け止められていた。
(うおおおおーっ!)
「ダアアアアーッ!」
突き刺した右手に力を込める。光が腕を伝い、拳へと流れていくと同時に、ゲイツの体から光が溢れ出す。そして。
「ヒャガアア――!」
爆発四散するゲイツ。ウルトラマンは敵にエネルギーを注ぎ込み内部から破壊したのだ。ゲイツの破片は光の粒子となり宇宙の闇へ還っていった。
─ミネルバ─
「ゲイツの消滅とウルトラマンの消失を確認。戦闘時間は32秒・・・」
目の前の光景に見惚れていたのか、呆然とつぶやくメイリン。
「そ、それより彗星はどうなった!?アーサー!」
いち早く冷静になったタリアが彗星の状況を聞く。アーサーが慌てて確認をとるが・・・
「やりました艦長!ウルトラマンがゲイツと交戦中に他の味方艦が彗星を砲撃、破壊には至らぬものの軌道を変えることに成功したそうです!」
安堵の息をついて椅子に座りなおすタリア。だがその直後メイリンから悲痛な叫びが聞こえてきた。
「艦長ーっ!大変です、彗星は軌道変更し・・・」
「それはわかっている。今のを聞いてなかったのか」
「そうじゃないんです!軌道変更した彗星は・・・地球ではなく、ユニウスセブンに向かっているんです!」
コズミック・イラ2017。
今、人類に最大の危機が迫っていた。
次回「世界の終わる時(前編)」