ウルトラマンデスティニー_第15話

Last-modified: 2007-11-17 (土) 03:56:24

凶悪怪獣ギャビッシュ、宇宙寄生獣サイクロメトラ、人造黒狼怪獣ガイヤン、特別捜査官ヨップ 登場





─浜辺─



「はあ、はあ・・・」

戦い終わり浜辺で息を整えるシン。辺りはうっすらと暗くなっている。

周りには巨人と怪獣の生々しい傷跡ならぬ足跡が残っていた。

「何とか守れたな。でもアスラン達は見失っちゃったか・・・ん?」

肩を落としたシンが見た物。それは・・・







─ミネルバ─



ミネルバではルナマリアから送られたデータを元に怪獣─コードネーム、アッシュ─

の分析にかかっていた。

「スペクトル分析の結果、この怪獣はグーンやゾノと言った海中に生息する怪獣が進化したものである可能性が高いです」

「進化だと・・・?アーサー、シン達が直前に遭遇したと言う宇宙人のことについては何か分かったか」

「はい。我々がオーブに到着した夜、湾岸部のレーダー基地で司令部が撤退するという騒ぎがありました」

「その隙に地球に紛れ込んだ可能性が高いということか・・・全くどうしてこう次から次へと」

報告を聞いたタリアは、椅子に座り直すと目を指で押さえる。

クルー全員が長い夜を予感していた。







─孤児院の裏山─



うっそうとした木々が生い茂る森の中を、アスランは一人歩いていた。

肌寒い夜の空気を吐き出してひたすら歩を進める。

「月が明るくて助かったな・・・ん?」

利き手に持ったペンライトで前方を照らす。

その光の先には木に寄りかかっている奇妙な服の男がいた。

ヨップだ。

「ようやく見つけたと思ったら・・・オイ!どうした?」

慎重に走り寄って声をかける。が、ヨップは逃げる素振りも見せない。

代わりに弱々しい声が彼の口から漏れる。

「わ、わたしはまだ、この星の大気には順応していない。少し動けば激しく体力を消耗してしまう・・・」

「そんな体でどうして・・・」

弱ったヨップに警戒を解き、話をしようとするアスラン。

しかしその背後の茂みで何かがガサリと動く音が。

「だ、誰だっ!?」

「お、おい待ってくれよ!俺だよ俺!」

茂みの中から現れた者。それはミネルバ隊の服を着た見慣れた顔の少年だった。

「シン!無事だったのか!一瞬詐欺の一種かと思ったじゃないか。それにしても早く追いついたな」

「へへ、なんかわからないんだけどコイツが道案内してくれたんですよ」

そう言ってシンは手に持ったモノを得意げに見せ付けた。

それは丸くてピンクで耳がパタパタ動いてて・・・

「うっ、うわあーっ!なんでハロがここにいるんだ!?基地を出た時宇宙葬にしたはずなのにー!」



シン達のいる場所から離れた山の中をフラフラと走る少女がいた。

腕には小さなカプセルをしっかとかかえている。

「はあはあ・・・あっ!」

孤児院を出て数時間。慣れない山道で既に疲れは限界に達していた。

遂に足を捻らせこけてしまう。

「うう・・・っ?・・・だっ、だれえ!?」

そんな彼女に近寄る足音。それは後ろから来るようにも前から迫るようにも聞こえる。

少女は恐怖を堪えてカプセルを抱き締めた。

「本当にあの子の居場所がわかるんだろうな?」

道なき道を歩きながら、シンがヨップに尋ねる。ハロは途中の川で流された。

どうせ戻ってくるだろうに無駄な努力だ。

「あの少女の持つカプセルからは電波が発せられている。それを辿ればいずれは・・・」

シンの後ろでヨップが答える。いや、正確に言うとシンの背中でだ。

先を歩くアスランが振り返りながら言う。

「疲れたヨップを背負ってやるとはシンも結構いいとこあるな。それから、女の子の名前はエルちゃんだぞ」

「エルちゃんか・・・やっぱり、あの子も怪獣災害で?」

「あの子は七年前、怪獣に両親や友達を奪われたんだ・・・ウルトラマンにも、助けることができなかった・・・」

その言葉に、重い沈黙が流れる。

この雰囲気はマズイと思ったか、アスランが突然言った。

「あっ、そう言えば名前を教えてなかったな!ヨップ、俺はアス・・・じゃなかったアレックス・ディノだ。よろしく」

「自己紹介ですか?まあいいけど・・・俺の名前はシン・アスカ。ヨップ、お前を連れているのはあの子を探す為だからな」

「すまない・・・しかし服装を見る限り、君達も捜査官なのか?」

「・・・俺達はザフトっていう軍に所属していて、そこの服さ。まあこの星を守る兵士ってとこさ」

「兵士・・・ソルジャーか。わかった。改めて礼を言おう、ソルジャーシン」

「いや、普通にシンでいいよ・・・それだと超能力に目覚めて宇宙を放浪することになりそうだ・・・」

「ハハハ・・・なあヨップ。さっき言ったギャビッシュ、そしてサイクロメトラの事を詳しく教えてくれないか」

アスランの単刀直入な質問に、ヨップの顔が強張る。しかし隠すつもりはないらしくすぐに話し始めた。

「ギャビッシュは凶暴な宇宙生物だ。私はヤツを捕らえ、ブラックホールへ移送していたがその途中。ヤツらは脱走をした。

逃げた三体の内、二体は殺した。だが一体目の体内のサイクロメトラは逃げ出した。それがさっきの怪獣を変異させたのだ」

「何だって?どうしてわかるんだ!」

「体内から反応も出ていた。あの怪獣に寄生したのは死んだようだがサイクロメトラには生物を進化させる力がある。」

「それと同時に凶暴化させるってか・・・予想以上にヤバそうだな。一度ミネルバに報告した方がいいか・・・」







─アプリリウス・執務室─



回転椅子に腰掛けたデュランダルは、ロード・ジブリールとモニターを介して向き合っていた。

「先日の戦闘での援護、感謝します。まさかドミニオンが来てくれるとは・・・」

『私は地球平和を一番に考えているのです。

 それより、ユニウスセブンでの勝利も巨人の力が大きかったらしいですね。

 ・・・こんなことで地球を守れるとは思えません。やはり我々には巨人に代わる力が必要なのではあ りませんか?』

次第に声が大きくなる。

デュランダルは何か言いかけたがミネルバからの通信が来ていることに気付いた。

「・・・ご忠告感謝します。それでは緊急の用が出来たのでこれで失礼・・・」

『・・・今度のサミットが楽しみですね』ブツッ

「・・・私だ。どうしたタリア」

ジブリールに代わってタリアの顔がモニターに映し出される。その表情はどこか不安げに見える。

『ギルバート、少し困ったことになったわ・・・かくかくしかじか・・・』

「なるほど・・・オーブ軍は?」

『今は首長達もいなくて指揮を取れる人が少ないわ。それにシンに聞いたところ今度の敵はかなり危険な可能性が・・・』

「・・・わかった。オーブには私が伝えておこう。君達は安心して戦ってくればいい」

『感謝します。では』

それきり通信は切れる。デュランダルは椅子に掛け直すと独り呟いた。

「やれやれ・・・これは予定を繰り上げる必要がでてきたかもしれんな」







─裏山─



「お姉ちゃん、もう、休ませて・・・」

エルが心底疲れたと言った顔で訴る。

エルの手を引く少女は、少し考えた後に、頷いた。あれから半日が過ぎようとしていた。

「ここに座って」

少し開けた場所を見つけ、二人並んで腰を下ろす。やけに寒い。

どうやらかなり高くまで来てしまったようだ。

『上の話ではあれはサイクロメトラと言って便利な生物らしい。出来るだけ素早く持ち帰ってくれ』

少女はネオが言った事を思い出した。

カプセルを奪うべきかもしれない。だが、ギャビッシュはエルを離れたくないらしかった。

「ママも、パパも、友達も、みーんなエルを一人にしちゃったんだ。でも君はずっと一緒にいてくれるよね」

エルの言葉にうん、と言うかのごとく首を縦に振るギャビッシュ。

エルはそれを見て笑みを浮かべると横の少女に向き直った。

「ねえ、お姉ちゃんはお友達いる?」

「・・・トモダチ?」

「うん。いつも一緒にいて、遊んでくれて・・・エルねえ、そんないいお友達がずっと欲しかったんだあ」

しかしそれに答える声はない。

会話を諦めたエルが再びギャビッシュに話しかけ始めた時、細い光が彼女らを照らした。

「いた!・・・あっ!お、お前はアーモリーワンの!」

エルと少女の前に飛び出してきたのはシンだった。

その目がエルの横にいる少女、ステラを捉えて見開かれる。

更にその後ろからアスランに肩を借りたヨップも現れた。

ステラはエルの手を掴み立ち上がり逃げようとする

「やめろ!君が何者かは知らないがその子が持っているのは危険な怪獣だぞ!」

アスランの説得じみた話を聞き流し、斜面の淵へと向かう。

シンがこなくそと後追い走る。

「くっ、オマエ・・・!」

追いつかれると思ったステラは、エルを放しシンと対峙した。

さっきまでエルを掴んでいた手には鋭利なナイフが握られている。

その後ろ、エルは振り向かず、その場から逃げるように林の中へ走り出した。

それと同時にステラがシンに飛び掛る。

「わっと!?・・・こいつは俺に任せて、早くエルちゃんを!」

ステラのナイフを交わしつつシンが叫んだ。

逡巡する間もなくヨップがエルの行った方向へ走り出しアスランも続く。

「うえーい!」

逆手、順手を巧に切り替え斬り付けるステラ。

だがシンも然るもの、刃を避けると同時に得物を持った手を掴み上げた。

「このっ、やめろーっ!」

腕を離せと力任せに暴れだすステラ。

思わずシンも体勢を崩す。山頂も近く平坦な場所などほとんどなかった。

「わ、うわああああっ!」「!!」

縺れながら斜面を転がっていくシンとステラ。

元の場所にはステラの手からこぼれたナイフだけが残された・・・



「エルちゃん!そのカプセルを渡してくれ!」

シンを置いてエルを追いかけていたアスランたちは疲れて足を止めたエルと向き合っていた。

「いや!この子は一人ぼっちのエルに神様がくれたお友達なんだよ。悲しくてもこの子が慰めてくれるもん・・・」

「それは違う!」

それを聞いた途端、大声で否定の言葉を言うヨップ。エルの体がビクリと固まる。

「友達は、誰かがくれるものじゃない、自分で作るものなんだ!悲しみだって・・・」

「そんな、じゃあどうしたらいいの?エルには誰もいなくなっちゃう・・・」

「・・・私も、妻と娘を怪獣に奪われた。娘は君と同じ位の年だった。悲しかった・・・だけど悲しみに囚われちゃいけない。

大丈夫、悲しみや苦しみは乗り越えていける。仲間や友達、大切な人がいれば必ず・・・」

「だけどエル・・・・・・えっ!?」

その時突然ギャビッシュの目が光ったかと思うと、カプセルが消滅した。

「マズイ!この星の大気ではカプセルはもう持たないんだ!逃げろ!」

ヨップが叫ぶがもう間に合わない。

外に出たギャビッシュは一気に成長しエルの手には収まらないほどになった。

「ヴォオオオウ・・・!」

赤ん坊サイズからあっという間に大人以上の背丈になったギャビッシュは瞳から出した光線でエルを包み込む。

「え・・・キャアーッ!」

そのままエルの体は小さくなり、ギャビッシュの目の中へ吸い込まれる。

そしてギャビッシュは更なる巨大化を始めた。





同じ頃、ステラは瞼に微かな光りを感じて目が覚めた。

木々の間から微かな陽光が漏れている。

「大丈夫か?」

ステラが横を見ると、心配そうな顔のシンがいた。

自分の体を見渡すと足に包帯が巻かれている。

「オマエが?」

「・・・オマエじゃない。シンだ。血が結構出てたからな、包帯しただけだよ。そっちこそ名前は?」

怒ったような口調で答えるシン。

ステラはそれと対照的に、無表情なまま黙したままだ。

「なんだよ、別に名前ぐらい教えてくれたっていいだろ?おかしなこと聞くわけじゃないし」

機嫌を損ねたようなシンの声。

ステラは自分の体を見て、自由に動けることがわかるとぼそりと話した。

「・・・名前、ステラ」

「ステラか・・・アーモリーワンで一緒にいた奴らはどうしたんだ?」

「一緒・・・スティング、アウル、ネオ・・・」

「そうだ!あの、キャオス・・・緑色の怪獣に乗ってた奴はどうなったんだ!?無事だったか?」」

「スティング・・・?アウルが、見つけた・・・」

「そ、そうか・・・無事だったのかあ・・・」

ホッとしたように表情を緩めるシン。その時、山の上のほうで甲高い獣の叫びが響いた。

「なんだっ!?・・・・あっ、おい!」

声のした方へ顔を上げたシンの脇をすり抜けるステラ。

怪我にも構わず麓へ走り出す。同時に、頂上付近に巨大な影が出現した。

「あいつ!くそぅ、なんかで縛っとけばよかった・・・!ってそんな場合でもないか」

下と上をせわしなく見ていたシンだが、意を決したようにケータイを取り出し空に突き出した。



「ハアッ!」

朝焼けの空の下、立ち昇る光と共に現れたウルトラマンは巨大化したギャビッシュと対峙する。

「キシャゥオオー!」

青い体毛を震わせるギャビッシュ。

長く伸びた角と不気味な赤目、突き出た鼻先はまるで悪魔を思わせる。

「デヤッ!」

その悪魔にインパルスは果敢にも掴みかかった。

肩を押さえ引き寄せると、その腹に右膝を叩き込む。

「キシャアッ!」

相手が前のめりになったところを、強引に振り投げる。ギャビッシュは木々をなぎ倒しながら転がっていく。

「ハッ!・・・!?」

追撃をすべく拳を握りなおすインパルス。

だがその動きが急に鈍る。巨人の白い目はギャビッシュの顔を凝視していた。

「・・・ヴォフフフフ・・・ギシャヴァア!」

それを見たギャビッシュは笑うような声を出すと、大きくジャンプ、インパルスに飛び蹴りを浴びせかけた。

「フッ!・・ウワッ!?」

単調な動き。見切ったという風に余裕で避けるインパルス。

だが後からついてきた尻尾がその顔に命中した。

しかしその程度では倒れない。

右足を一瞬引くと首目掛けハイキックを打ち出す。

だが敵は屈むとキックの軌道に頭を乗せた。

「!?ッグ!」

ギャビッシュの頭スレスレでその足先が止まる。

ギャビッシュは素早く顔を上げると口から無数の光の針を撃ち出した。

「グワアーッ!」

至近距離でそれを食らい、悲鳴を上げて顔を覆うインパルス。

その頃、ヨップ達はギャビッシュの足元へ走っていた。

「ウルトラマンはエルちゃんが捕まってることを知ってるんだ!卑怯な怪獣め・・・!」

「人質をとるのはギャビッシュの常套手段だ。早く助け出さなければ!」

「どうするつもりだ!?」

「私はテレポーテーションが出来る!この星の重力では遠距離からは不可能だが近づけば・・・」

「そんな無茶な・・・あ!あれは!?」

未だ昇り切らない太陽。それを隠すように黒い狼が立っていた。

ステラ駆るガイヤンである。



「敵・・・倒す!」

殺意を込めた目でウルトラマンを睨むと、その背にガイヤンで飛び掛る。

前後からの攻撃にインパルスは対応できない。

「クグ・・・ハアッ!」

間合いを取るべく背を向け離れるインパルス。

そして振り返ると両手に集めたエネルギーを青白い刃にして放った。

(これで首を切れば!フラッシュサイクラーッ!)

溜めの少ない早撃ち。

しかしその光刃はギャビッシュの目から出た赤色光線に吸収されてしまう。

「ヴヴヴ・・・ギシャヤアー!」

更に取り込んだエネルギーを胸の部分でスパークさせ口から撃ち返す。

自分の光線を受け吹っ飛ばされるインパルス。

そして立ち上がろうとするところへガイヤンの追撃。爪と牙が巨人の肌に食い込む。

「ワアーッ!」

ガイヤンに押さえられ動けないインパルス。その首にギャビッシュの尻尾が巻きつく。

「キシャーッ!」

その尻尾に黄色い光が流れたかと思うと、電撃が迸る。

ガイヤンは慌ててウルトラマンから離れた。

「ワアアアアーーッ!!ウワアー!・・・・・・グ・・・」

ひとしきり絶叫した後、ウルトラマンの目から光が消える。

そして糸の切れた人形のように、その巨体を地面に横たえた。

「ウルトラマン・・・そんな・・・おい、ヨップもう無理だ!避難しないと!」

それを近くで見ていたアスランの口から絶望の息が漏れる。

だがヨップは足を止めない。

「大丈夫だ、ギャビッシュは気絶させた獲物に必ずトドメを刺す。その時がチャンスだ!」

ヨップの言うとおり、ギャビッシュは倒れたウルトラマンにじりじりと近づいていた。

その目が一層赤く光る。

「もういけるか?・・・アスラン。奴はおそらく私を狙う。私が戻ってきたらあの子を連れて逃げてくれ・・・頼んだぞ!」

「何だと!?あっ、オイ待つんだ!」

アスランの声を聞かず、握り締めた左拳に力を込め、目をつぶるヨップ。

そして彼の姿は掻き消えた。

「・・・トモダチ・・・?」

ステラは、ガイヤン頭部の球体の中でエルの言った言葉を思い出していた。

「トモダチ・・・これが・・・?」

エルが友達と言った相手は目の前で野蛮な雄たけびを上げている。

そしてそれは自分が捕らえようとしている生物だ。

『いいかいステラ。この怪獣とその体内にいる生物はこちらの作戦に必要になる・・・』

「必要・・・?」

友達と慕う少女を人質にして、暴れまわる凶暴な怪獣。

こんな奴が何に必要なのか、ステラには皆目検討がつかなかった。

「・・・ギシャ?」

その時、ギャビッシュの目から赤い球体が飛び出した。

それは地面に降りると人の形となる。ヨップだ。

彼の両腕には目を閉じたエルが抱かれている。

どうやら気絶しているようだった。

「ッ、ハアッハッ・・・アスラン!早く!ギャビッシュが気付いた!」

人質を奪った泥棒を見逃すギャビッシュではない。

ヨップたちのいる場所目掛け、光の針を無数に吐き出す。

「この子をっ!ぐわあーっ!?」

そしてそのうちの一本がアスランにエルを手渡したばかりのヨップの胸に突き刺さった。

どたりと倒れるヨップ。

「おいっ!しっかりしろ!」

「その子を連れて・・・逃げろっ、強く・・・生きろと・・・」

そう言うとヨップの体は身に着けたものごと粒子化し、朝の空気に溶けていった・・・





「ヴォオオオウ・・・ヴォ?」

未だ鼻息荒いギャビッシュ。そこへイーグルが遅れて到着した。

「くっ、ウルトラマンが・・・だがやることに変わりはない!これより攻撃を開始する!」

イーグルを三機に分離させ怪獣を取り囲む。

しかしレイ達が攻撃を始める前に、ギャビッシュの皮膚に火花が散った。

「!?あ、あいつは!」

ギャビッシュを攻撃した者。それは同じ怪獣のガイヤンであった。

肩のビーム砲から光が発射される。

「ごめん、ネオ・・・でも・・・」

何故かはわからない。

しかしステラにはこの怪獣が嫌だった。

とても自分達と相容れるものではないと、そう思ったのだ。

「仲間割れか?レイ、どうする!」

「・・・・・・俺達の任務はサイクロメトラを持つ怪獣の撃破が最優先だ。ギャビッシュを攻撃する!」

その声に始まり、ルナとハイネが波状攻撃をかける。

ガイヤンはまんまと距離を詰めていく。

「はあーーっ!」

背中のビームブレイドで切りかかる。

しかしギャビッシュは足に力を入れるとジャンプしガイヤンを飛び越した。

「あの怪獣、大した身体能力だな・・・ルナマリア、ハイネ、合体するぞ!トルネードサンダーを撃つ!」

「ラジャー!」

空中で合体したイーグルはエネルギーを急速チャージ。

ギャビッシュの頭部をロックする。

「奴は光線を目から吸収するらしい。いいか、ガイヤンが接近した時に撃て!」

左右にステップを繰り返すギャビッシュをガイヤンは捉えられずにいた。

逆にカウンターをもらいダメージが増える。

「くう・・・」

動きを止めたガイヤン。その鼻先にギャビッシュが飛び降りた。

ガイヤンの攻撃を誘ってカウンターを狙っている。

「今だ!撃てーっ!」

レイの掛け声でイーグルの機首から光線が発射され、ギャビッシュはそれを吸収すべく顔を上げた。

前にはガイヤンがいるというのに。

「っ、でやああーっ!」

ステラが叫び、ガイヤンが跳ぶ。

グリフォンビームブレイドが輝き、その光の切っ先が、ギャビッシュの首を刈り取った。

ボト・・・ゴロンと転がるギャビッシュの頭。

二つに分かれたギャビッシュの体を青い炎が包んでいく。

「・・・」

これで終わったと、刃を納めるガイヤン。

だが、その油断を突いて燃え上がる胴体から何かが飛び出した。

サイクロメトラだ!

「ガイヤンに取り付く気か!?くそ、トルネードサンダーの後ではエネルギーが!」

もう誰も止められない。

そう思った時、サイクロメトラを青い光が貫いた。

光の来た先にいたのは、ウルトラマンインパルス。

「・・・シュアッ!」

ウルトラマンはガイヤンを一瞥し、暁の空に飛び立つ。

ガイヤンはそれを見上げると、大きく一跳びして走り去った・・・







─海辺の孤児院─



その翌日。

シンはアスランと共に再び孤児院を訪れていた。

迎えた子供達の中にはエルの姿も見える。

「もう大丈夫なのかい?」

「うん。お兄ちゃん達が助けてくれたからもうどこも痛くないよ」

元気な顔をシン達に向ける。しかしその目はどこか寂しげだ。

申し訳なさそうな顔をする二人。しかしエルは言った。

「エルね、自分の力で友達を作るって決めたの。おじちゃんが言ってたから。そうすればどんな悲しみも平気だって。そうだよね?」

「エルちゃん・・・!あ、ああ・・・そうだよ、仲間がいれば悲しみも苦しみも乗り越えていけるさ・・・強く生きるんだよ、エルちゃん!」

「うん!」

二人に初めて笑顔を見せたエル。

心の傷は消えないかもしれない。

それでも、取り戻せた微笑みだけは守りたい。

そうシンは思うのだった。









オーブを出港することになったミネルバ。

しかしその前に最大の敵が現れる。





次回「血に染まる海」