エイリアン124氏_第01話

Last-modified: 2008-01-06 (日) 15:38:17

「エイリアンのような狂暴な生命体が、何故野放しになったのか?」

 

写真家兼ジャーナリスト見習となっていたミリは、ディアッカの心配を他所に、
独自の路線で調査を進めていた。
そこで行き着いたのは、CEでも巨大な規模を誇る通信バックアップ用データベース、
通称「おふくろさん」だった。
戦争が起きる前から国家・人種に関わらず、どんな通信障害が起きようとも、
例え重要機密だろうが、ただの個人メモだろうが、世界中の色んな通信情報を保護してきた。

 

もし、エイリアンの出現に人の手が加わっているのなら、前後に何らかのアクションがある筈ー
この御時世に当たって、唯一不可侵な聖域ともいえる「おふくろさん」にどうやって、
アクセスするか?その答えは、技術に詳しいマリューが急いで組んだ侵入プログラムだった。

 

ミリは、世界に幾つかある「おふくろさん」の管理施設に向った。
後はラクス経由で手に入れたパスで、取材と称し直接端末に行くだけだ。
嫌な予感がすると無理矢理付いて来た、ディアッカは休憩室に置いて来て、
後は実行あるのみだ。

 

人の良さそうな管理者に連れられ、殺風景な個室にミリは入っていった。
「ここが直接端末です。ここから直におふくろさんと話が出来ます。
 あーただし、性質上機密情報もありますから、資格が無い限り、大した事はできませんよ。」
ミリはいかにも承知してます。と言わんばかりの笑みを浮かべた。

 

試しに自分の個人的な通信情報を見てみたいからと、管理者を個室から追い出すと、
ミリは監視装置の死角を縫って、プログラムを走らせた…

 
 
 
 

膨大な情報が音声や画面という形で現れる。
神経を集中して、エイリアンの情報を検索していく。
そして「おふくろさん」との果てしない問答の末、遂に見つけた。「ノストロモ号」通信ログ。
そこの画像には、貨物船が、宇宙で偶然入手したエイリアンの卵と被害者が載っていた。
これが始まりだった。

 

船員達の廃棄と救急班の要請に、親会社はすぐに快諾した。
そして機密扱いの通信が一つ、船の技術・医療担当宛に入っていた。
内容はこうだ。「船員達を犠牲にしてでも、“ソレ”を持って帰れ。」
かくて一人を除いて、ノストロモ号はエイリアンによって全滅した。
-そして地球もそうなりつつある。

 

その後は語るまでも無い、地獄が始まったのだ。
そして最初に犠牲になった船員達の画像を見ると、ミリはある事に気付いた。
「…この技術・医療担当のアッシュって…」

 

「説明が必要ですな。」
死んだアッシュとそっくりな顔をした先程の管理員が、人の良さそうな笑顔を浮べ、
いつの間にかミリの背後に立っていた…

 

122 名前:通常の名無しさんの3倍[sage] 投稿日:2008/01/03(木) 02:04:49 ID:???
「-後は簡単な話しでねー後始末や検疫を潜り抜けるのは多少の金額で済んだし、
 医療団体や動物保護団体を名乗れば、卵や犠牲者の移送はあっさりとうまくいった…」

 

突然、恐怖にかられ個室から逃げ出すミリに、背後から管理者ーいやアッシュはとうとうと顛末を語った。
この未曾有の災害を引き起こした事を、日常業務を話すように言うアッシュは余りにも非人間的だった。
長くくねった廊下を全速力で駆け抜けながら、ミリは思わずディアッカの名を呼んでいた。

 

息を切らしながら、休憩室に着くと、ディアッカはそこに…いなかった…
「……嘘」ミリは身体の力が抜けへたりこんだ。
突然ミリの首根っこを強力な手が捕まえた。アッシュだ。無表情で、もがくミリをソファに放り投げる。
苦痛と苦しさでゲホゲホと咳き込むミリを、アッシュは再び捕まえると、
ミリの必死の抵抗も意に介さず、手近にあった雑誌を丸めるとミリの口の中に押し込んだ。

 

「んーッ!んーッ!」窒息の苦しみに、涙や体液を垂れ流し、手足を痙攣させるミリに、
アッシュは冷酷にも、雑誌を更にの喉の奥に…

 
 
 
 
 
 

バシャッ!!
自動販売機で買った冷凍炒飯がアッシュの頭にぶつかった。
アッシュが頭を向けると、激怒したディアッカがそこにいた!!

 

「手前ッ!!ミリに何してるんだよッ!!」
ディアッカはそう叫ぶと、物凄い勢いでアッシュに飛び掛った。
軍人として鍛えられた筋肉をフル動員して、ミリからアッシュを引き離そうとする。
アッシュは何も言わず、ディアッカを簡単に振り払った。
しかし、へこたれる暇は無い。灰皿の付いた金属製のスタンドを力任せにアッシュに、
何度も叩き付ける。その内スタンドが折れて、首に深く突き刺さった。
それを思い切り引き抜いた瞬間、血ではなく、白い体液が盛大に噴出した。
同時にアッシュは急に立ち上がり、出鱈目な動きを始めた…

 

その不気味な光景を止めようと、ディアッカは傷口を中心に、折れたスタンドで殴り続けた。
傷口が裂け、首が落ちた瞬間、其処から露出したのは人工の器官。
ーアッシュは人間ではなかったのだ。

 

白い体液にまみれながらもディアッカは、雑誌をミリの口の中から抜き取った。
そして泣きながら咳き込むミリを、訳も分からず抱きしめた…

 

ミリはぼんやりしながら、グロテスクなダンスを踊るアッシュの断末魔を見て、
一人悟った。
(…あいつ“人”じゃなかったんだ。…だからあんな酷い事が出来たんだ…)