キラ様第16話

Last-modified: 2009-10-31 (土) 23:56:21

爆発音と銃声が奏でる壮大なオーケストラ、これが戦場の空気だ、素晴らしい。戦場では人の命は
とても安価、クルーゼの名言を俺はフト思い出した。まぁ種キャラの命なんて元々安価な事に違いは無いが。
ざっと辺りを見渡した感じでは、どうやらレジスタンス優勢の状況の様だ。しかし戦況など脆くも
崩れやすい、MSが出て来てザフトが体勢を立て直せば、あっと言う間に逆転されてしまう。
とりあえず俺は近くに居たレジスタンスの小隊長に話しかけた。
「状況はどうだ!?」
「あ、大尉!既に居住区、格納庫、及び対空兵器は制圧完了しました。後は司令部なんですが・・・
敵の抵抗が激しく、現在足止めを喰らってる状況です!」
「よし!上出来だ、増援の車両チームは?」
「現在基地警備のバクゥに進行を妨害されている模様です」
やはりサイーブ率いる車両チームでは混乱に乗じてもバクゥには手も足も出ない様だ。格納庫を
押さえたのならMSが出てくる心配は無いが、あまりのんびりしていられる状況でもない。司令部は
レジスタンスに任せ、俺はさっさとストライクを取り返しに行こう。俺は背負っていたアイシャを
小隊長へ預け、小隊長からNジャマー下でも使えるというゴツイ無線機を受け取り、カガリの手を引き
格納庫へ向かった。途中、ウィーンという凄まじいチェーンガンの銃声が居住区の方から聞こえた。
そういえばサイがチェーンガンを持って行ったな。こういう状況だと逆に奴らも頼もしげだぜ。
一応格納庫一帯は既にレジスタンスの制圧下にあったが、それを取り返そうとザフト兵の反撃も凄まじい。
それに対し応戦するレジスタンスだったが如何せん数は向こうが上という事もあり格納庫に立てこもるだけで
精一杯の様子だ。このままでは遅かれ早かれ奪い返される・・・。
俺は物陰から通信機を使い、AAへ通信を入れた。
「俺だ、アークエンジェルの現在の位置は?」
「ヤマト大尉、ご苦労様です。本艦は現在予定進路を航行中、後数分で車両チームと合流出来るかと」
「いや、多分車両チームは全滅だ、あいつらは放っておけ。それより基地内部がかなり混戦してる
ストライクをゲットしたら、暴れるだけ暴れて一旦帰るからアークエンジェルは直接こっちに来てくれ」

 

「了解しました」
「それと兄貴もこっちに向かわせといて」
「了解しました」
「それからラゴゥすぐ出れる様にしといて」
「了解しました」
「あと、バジルール中尉レイプしといて」
「了解しました」
俺はアークエンジェルと通信を終了し、今度は兄貴のスカイグラスパーへ通信を入れた。通信コードは
予め入れてある、周波数を合わせ、無線機に話しかけた。
「兄貴、今どこ?」
「・・・・坊主か?クッ、俺とした事が・・・・・、左エンジンやられちまったぜ・・・」
「出てきて早々にかよ・・・、相手はバクゥか?何機居た?」
「いや、相手はヘリだ」
「おい!お前戦闘機だろ?!」
「・・・もう帰りたいんだが・・・いいか?左の翼から煙が結構出てんだ・・」
「じゃあこのまま敵が固まってる所に突っ込め」
「おいおい、俺に死ねっていうのかよ、冗談キツイぜ」
「死んでくれても結構だが、突っ込む直前に脱出すればいいだろ?」
「な~るほど、そいつは名案だ!」
「やるなら格納庫前の敵布陣に突っ込んでくれ、それとやる前にソードストライカー切り離せよ?」
「オッケー!どいててくれよ皆さん!!」
どいてたら駄目だろ・・・。通信を切り、俺は持っていた銃のマガジンを代えた。チラリと物陰から
顔を出して見る。敵歩兵部隊はどうやら格納庫地区を完全に包囲した様だ、MSを取り返して状況を
優位に進めようって腹か。何とかあの包囲網を突破して、格納庫内までたどり着かねば・・・。
俺の横ではカガリが相変わらず青ざめた顔をしている。青ざめた上に汗まみれで、もういつ爆発しても
おかしくないのだろう下半身は、内股で足をガクガクさせている。どう見ても、もう走れそうも無い。
こいつは足手まといになるのでここに置いていくか、それじゃあ、行こうか!俺が物陰から走り出そうとした
正にその時、兄貴のスカイグラスパーが上空より現れた、左の翼からかなりの煙を吹いている。
ナイス兄貴!良いタイミングだ、そのまま敵の塊へ突っ込め!しかしスカイグラスパーの様子は
どこかおかしい、上空へ来たはいいがそのままグルグルと旋回している。俺はスカイグラスパーへ
通信を入れてみた。

 

「おい、早く突っ込めよ・・・」
「・・・・なぁ、脱出装置ってどのボタンだ?」
「知るかっ!」
「嘘だろ坊主?・・・頼むから教えてくれよ・・・」
「いや、ホントに知らない」
「それと、何かさっきからコクピットの中がビービー五月蝿いんだが・・・」
その時、どこからか放たれた敵の歩兵携行対空ミサイルがスカイグラスパーのエンジンを直撃し
爆発を起こした。急激に失速していくスカイグラスパー、これってやばくね?
「お~い、兄貴大丈夫か?」
「クソッ!脱出させろ!脱出させろ!」
「兄貴、落ち着け!良く探せば、どっかにあるかもしれない!諦めるな!」
ムウはスカイグラスパーのコクピット内のボタンを全て押したのだろう、いきなり機銃とミサイルを
乱射し始めた。それらが敵、味方関係無く双方へ降り注ぎ、辺りは一瞬で地獄絵図と化した。
辺り一面火の海、肝心の格納庫もボンボン燃えている、恐らく篭城していたレジスタンスは
全滅だろう・・・、しかし同時にザフトにもかなりの被害が出た様だ。これで格納庫へ行ける。
あの程度の炎ならストライクが燃え尽きるはずが無い。しかしそこへ失速したムウのスカイグラスパーが
突っ込んでくる。
「おい!ここに突っ込むの中止だ!中止!やるなら他へ行け!」
「・・・・ヘヘッ、やっぱ俺って・・・・可能を不可能に・・・」
最後の最後で自分の無能さを悟ったムウは、スカイグラスパーで綺麗に格納庫へ神風を決め、大爆発を起こした。
凄まじい熱風が辺りを襲う。物陰に隠れていた俺は何とか凌いだが、あの辺りの生物は死滅しただろう。
何で戦闘機一機の特攻であれだけの爆発が・・・?そうか、格納庫内の弾薬なんかにも引火して・・・。
あの爆発では、恐らく兄貴は・・・。いや、奴は死なない、どうせ仮面被って出てくるだろ。
そうだ、奴の心配は無用だ、それよりストライク、あの爆発の中じゃ流石にヤベェんじゃないのか・・・?
俺は熱さを我慢しながら炎を避け、燃えさかる格納庫へ入った。中にはバクゥやジンの残骸が燃えながら
散乱している、これで敵のMSは全滅した、とりあえずこの戦での負けは無いだろう、しかし肝心の
ストライクが見当たらない。跡形も無く、木っ端微塵になったか・・・?しかし熱い、流石に体が
限界だったので俺はこの場を後にした。外に出るとやたらと涼しく感じる、こうなればパイロットスーツを
着てまた中に捜索に、だがあまり時間も無い、俺がそう考えていた時、突然格納庫の壁が崩れ落ち
そこからなんと灰色のストライクが姿を表した。ストライク!?無事だったのか!?しかし・・・・誰が
乗っている?ストライクは、そのまま仰向けに倒れると、仰け反った格好で手足で体を浮かせブリッジの
体勢を組み、PS装甲を展開させるとそのまま砂漠へ逃げていった。あれは・・・・、スパイダーウォーク。
あんな気持ち悪い動きをするのは・・・。スパイダーウォークで俺はあれに誰が乗っているのかすぐに
分かった、やはりあの場に放置せずに始末するなり、アイシャと一緒に連れてくるなりすれば良かった。
追おう!今すぐ追おう!でなければ取り返しのつかない事になるのは火を見るより明らかだ・・・。

 

しかし・・・、格納庫の敵MSは全滅し、辺りには敵か味方か判別不能の焼死体が散乱している。
追いたいけど、追えない。・・・・いや、まだだ!まだ終わらんよ!俺はそばに落ちていた通信機を拾い
アークエンジェルへ通信を入れた。
「おい!今どこだ!?」
「大尉?ご無事でしたか、少佐のスカイグラスパーの機影がロストしました」
「知ってる!んなこたぁどうでもいい!どこに居る!?」
「後30秒でそちらへ到着します」
「じゃあ着いたら誰か整備員を乗せてラゴゥをカタパルトで強制射出しろ!多少痛んでも構わない!
現在地は・・・・・元格納庫前だ」
「了解しました」
「それからストライクが敵の手に落ちた!乗ってのは砂漠の虎だ!位置を確認しておけ!絶対ロストするな!」
「了解しました」
ラゴゥの機動力なら今からでも追いつけるはず、しかしあまり長くあいつをストライクのコクピットに
乗せておきたくは無い。早く来い来いアークエンジェル・・・。俺はこの時まで完全にその存在を
忘れていたが、横でドレス姿のカガリがドレスのスカート部分を捲り上げようとしていた。
こいつ我慢しきれずにここでうんこする気か?一方のカガリも後ろからの視線を感じたのか、急に
振り向き、俺が見ている事を確認するや否や、その動作を止め、何事も無かったかの様な振る舞いを見せた。
「あんまり我慢すると体に悪いよ?」
「・・・・何がだよ・・・・。私は何も・・・」
いつもの冷静さを装っていたカガリだったが、足はガクガクと震え、顔は相変わらず青ざめている。
そこへお待ちかね、どこからともなく飛来したラゴゥが勢い良く俺達の前に着地した。来たか・・。
コクピットのハッチが開き、中から整備兵Aが出てきた。
「大尉、お待たせしました!さぁコクピットへ、自分がガンナーを務めます」
「おおご苦労!それじゃあ早速・・・」
俺が言葉を言いかけた瞬間、どこからとも無く放たれた銃弾が整備兵Aの眉間を撃ち抜いた。整備兵Aは
脳漿を撒き散らしながらコクピットの外へ投げ出された。誰だ撃った奴は!!!俺は辺りを見回したが
誰も居ない・・・。畜生!ガンナー居ないと飛び道具ゼロじゃねぇか・・・。ぶっちゃけガンナーは
あんな東南アジアの売春婦でも出来るんだし、きっと誰でも出来るはず。そうだ、誰か居れば・・・。
横を見た俺はカガリと目が合った、カガリの目はか弱く、今にも泣き出しそうな目をしている。
「なぁカガリ、その、物陰で済ませて来いよ・・・、覗いたりしないから、っつーか見たくないけど・・」
「・・・・・嫌だ・・・・」
「なぁ頼むわ、ピンチなんだよ、この俺が、分かるだろ?この状況?あん?分かるよな?
虎がこのまま遠くに行っちゃっても、ザフトと合流されてもヤバイんだよ・・・」
「・・・うぅぅう・・・・そうだな、でも私なんかに操縦できるのか・・・・?」
「いや、操縦は俺がするから砲手をやれ、でもその前にうんこしていけ!」
「・・・・・嫌だ・・・・」

 

話がループし振り出しに戻る、このままではいけない、このままでは。正直、もはや合流、ロスト
うんぬんでは無く、俺はあの基地外虎をあまり長い時間ストライクのコクピットに乗せたくは無かった。
焦りが思考を鈍らせ、判断を曇らせる、俺はこの時間違った選択をしたのかもしれない、いや
ここでどう抗おうが、結果は恐らくあまり変わらなかったのかもしれない、それは誰にも分からない。
「ゴリラ!もう時間が無い!行くぞ!、戦闘が終わるまで我慢しろや!」
「・・・・・うぅう・・・本当に乗るのか・・・?」
「あぁ!誰でも出来るはずだ!行くぞ!モタモタすんな!」
俺がラゴゥへ急いで乗り込み、その後に続いてカガリがヨロヨロと重たい足取りで乗り込む。
後部座席がメインコクピット、前部座席がガンナー、俺は後ろの座席に座り、シートベルトを締める。
カガリは尻を押さえながら座ろうとしているが座りきれずに、中腰のままプルプルしている。
「おい!早く座れ!」
「・・・・こっ、このままでいい・・・、大丈夫だ・・・・撃てる・・・」
「ならいい!しっかり掴まってろ、絶対漏らすんじゃねぇぞ!!」
「・・・・・あぁ・・・」
ラゴゥは勢い良く飛び上がり、着地と同時にスラスター全開でダッシュを決めた、想像以上に
凄まじいGがかかる、それだけの高機動力、それは陸上戦の王者たる所以なのだろうか。
これならば相手がアスラン達でも負ける事は無いだろう、案外いい勝負が出来ると思う。
だがしかし、それでもストライクは必要不可欠だ。この後には水中戦や海上戦が控えてる・・・。
俺がそう考えていると、レーダーに機影が表示された。見つけたぞ・・・。ストライクは
蜘蛛の様にがんばって砂漠を横断している、思ったよりも速度が速い。その速さが
逆に不気味だった。俺がどうしたものかと考えていると、ストライクのバルトフェルドから通信が入った。
「ききききみの相いいいい手は私だだっだっだだよ、奇妙ななななパイイイロットくっくん」
バルトフェルドはそう言うと、いきなりこちらへ向けてイーゲルシュテルンを撃ち放ってきた。
高速で直進していたラゴゥは回避できず、それをモロに浴びた。機体が酷く揺れる。だが機体に対した
ダメージは無かった、しかし強いて言えばダメージはあった、カガリに。今のカガリはどんな小さな
揺れでもそれが致命傷へ繋がる、今の揺れでカガリはその場に座り込んでしまった。俺はとりあえず
カガリに立ち上がりストライクの脚部を撃ち、動きを止める様に指示を出した。しかし、カガリは
固まって動かない。
「おい!しっかりしろ!」
「・・・・もう・・・・そろそろ・・・限界だ・・・・」
「何?」
「・・・あぁぁ、もう駄目だぁぁ!!」
カガリはそう叫ぶと、その場でドレスのスカートを巻くり上げ、下着を下ろした。中腰で尻を丸出しにし
俺が後ろに居るにも関わらず、その場で脱糞を開始した。凄まじい音と悪臭が機内を襲う。後部座席に居る
俺はカガリの肛門が丸見え、同時に脱糞も・・・。俺は何だか段々と気分が悪くなってきた。

 

こんな事になるなら初めから野糞でもすればよかったんだ・・・・それをわざわざシートの上に・・・・。
カガリの脱糞はまだ止まらない、凄まじい音と共に延々とひり出し続けている。俺はこのまま糞ゴリラを
コクピットから蹴りだしてやろうかとも思ったが、それをすればコクピット内に糞尿が散乱し糞塗れに
なるだろう、それは流石に・・・。泣きながらまだ脱糞中のカガリを他所に、俺はストライクへ通信を入れた。
「いいか良く聞け、お前のイカレ具合は最高だ!気に入った、殺さないでおいてやる。だから、降伏しろ、な?」
「ででででは、つつつき・・・・付き合ってくれ!!」
「嫌だよ!意味分かんねぇよ!助けてやるからとりあえずもちつけ」
「まっまっまだだだだだだだぞ。しょ、しょ、少年!」
「ストライク返せやゴラァ!!!」
全く話にならない、虎は逃げていたくせに何故か戦う気マンマンであった。・・・どうすればいい?
コクピットだけを狙えるのか?いや、コクピットはマズイ、やるなら両手足を破壊して乙武状態だ
胴体さえ残っていればマードックならきっと完全に修復してくれるはず。まずは奴の動きを止める。
しかし・・・。このままビームサーベルで急加速→攻撃はマズイんじゃないか・・・?
だって、加速すればカガリのうんこが飛び散る・・・。俺がそう考えていると再度バルトフェルドが叫ぶ。
「まままままだぞ!少年!!」
「もういいよ!!」
「言ったったったはずだだだだぞ!戦争にににには明確ななっななっ終わりののの
ルールールールなどなどなおおどないいいと!」
「もう何言ってるかワカンネェよ!!早くギブアップしろや!!」
「たったた戦うしかななななかろう。互いににににに敵である限り!
どちちちちらかががっ滅びるままmまでな!」
言葉とは裏腹に相変わらず逃亡を続けるバルトフェルドに対して、俺はもう放つ言葉を持ち合わせて
いなかった。壊れてしまった砂漠の虎、チョッパーになり損ねた兄貴、恐らく壊れるだろうカガリ
今頃はブリッジクルー全員に陵辱されているだろうナタル、もう彼らの本編通りの勇姿を拝む事は二度と叶わない。
ならストライク・・・せめてお前だけでも助けてやる!!!二人で変えよう!この狂った世界を。
俺は覚悟を決め、ラゴゥの操縦桿を握り締めた。その時だった前方をスパイダーウォークで走行中の
ストライクが突然舞い上がった砂煙と同時に姿を消したのだ。一瞬の出来事で俺は目を疑った。消えた?
ミラージュコロイドか?・・・いや、バカな!どこだ?ストライク!!しかし次の瞬間、ストライクの
消えた理由がすぐに分かった。前方に巨大な大穴が開いており、ストライクはそこへ落ちたのだった。
何でこんな所に穴が・・・・。ついさっきまでこんなの無かった・・・・、待てよ・・・。そういえば
この辺りは確かアークエンジェルの砂漠での初陣・・・。こいつは糞ゴリラが仕掛けた罠じゃねーかぁ!!
そう、俺はレジスタンスの協力無視でバクゥ隊を全滅させたので、このトラップは使われる事は無かった。
それが、今頃・・・しかもこれって確か・・・。嫌な予感は的中するものである。何かの拍子でスイッチが
入ってしまったのだろう。いきなり穴の中は大爆発を起こした。穴の中から燃えた金属片が飛び散り
それがラゴゥへ降り注ぐ、破片になってしまったストライク、そこにはもう昔の俺の愛機の面影は無かった。
コクピットの中では泣きじゃくるカガリの泣き声と、排泄物の異臭が漂っている。カガリのうんこと泣いている
姿を見ていたら俺まで何故か泣けてきた、こんなに頑張ったのに・・・、こんなに、こんなに・・・。
俺はコクピットの中で叫んだ。
「俺は・・・・俺は・・・・殺したくなんか無いのにィ!!!!」

○つづく