クロスデスティニー(X運命)◆UO9SM5XUx.氏 第028話

Last-modified: 2016-02-15 (月) 23:30:11

第二十八話 『世界に示したいのだよ』
 
 
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フォースインパルスとアカツキが、黄昏の黒海を行く

『あーあ、それにしても最近、艦の風紀もなにもあったもんじゃないわねぇ・・・・・
  ねぇ、シンさん?』
「うぐっ・・・・」

ルナマリアから通信が入ってくる。あの大浴場でステラを抱きしめていた時のことを、
言っているのだ

『まぁ、コーディネイターは出生率が低いから、無駄撃ちしてればいつかは当たるかもしれませんけどねぇ・・・』
「ったく・・・・それぐらいで勘弁してくれよ、ルナ。一応、任務中だろ」
『じゃあ、一つだけ質問に答えてよ』
「なんだよ・・・・」
『あの子、彼女なんでしょ? そろそろはっきり言いなさい』
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
『変なところで、優柔不断なんだから。ステラが抱えている事情は私たちも聞いてるわ
  でも強化人間って言ったって、人間なんでしょ?』
「・・・・正直に言えば、わかんないよ、俺も。ステラは半分子供みたいなもんだからな
  恋とかどうとか、多分わかってないんだと思う」
『でも体は大人でしょ?』
「もういいだろ、ルナ。最近のおまえ、なんか変だよ。俺がどうとかより、
  心配しなくちゃいけないのはDXやガロードだろ? ん・・・・・ロドニアのラボが見えてきた」

海を越え、森に囲まれた場所につく。これまで、動いているものはほとんど見つけられず、
ゴーストタウンの様相を示していた。本当に連合軍はここを放棄したらしい

インパルスとアカツキが、ラボの前に着地する。周辺にMSなどは愚か、人影一つない
もしも残敵がいたら排除するよう言われていたが、その心配はないようだ

シンがアカツキから降りる。ルナマリアもインパルスから降りてきていた

「シン、あれ」

ルナマリアが指差す。ラボの一部が、大きく破壊されていた

「・・・・なんだ、誰かがここを攻撃したのか? それとも俺たちに施設を使われたくなかったとか・・?」
「どうかしら。証拠隠滅とか、そういうもののためかもしれないわよ」
「・・・・・ステラがここにいたらしいから、だいたいどんな研究所なのか、見当がつくのが嫌だよな・・・・
  とりあえず、破壊された部分だけでも見てくるよ。ルナ、インパルスで待機しててくれ」
「ええ。でも無茶するんじゃないわよ。すぐにヤタガラスも来るんだからね」

シンはアカツキに乗り込むと、空を飛んで破壊された場所の上空に移動した
先日の戦いで半壊したが、今はすっかり修復されている
キッドの腕は、かなりのものだと思う

(・・・・・・なんでここだけ、破壊されてるんだろ)

アカツキで近づいていく。計画的に破壊されているわけじゃなくて、
むしろ襲撃を受けたかのような破壊のされ方だった。それも気になる

(あれ、ここ・・・・研究所っていうより、工場みたいな・・・・)

上空からではあまりよくわからない。破壊された屋根はぎりぎり、アカツキが通れる
そこへ着地して、シンは研究所の中に入った

非常灯を手に、破壊された場所を見回す。普通、証拠隠滅をするなら書類とかそういうものを
破棄するかあるいは、ラボごと破壊するのだと思うが、なぜここだけが破壊されているのだろうか

「あ・・・・!」

シンは施設の隅に、じりじりと音を出してショートしているパソコンを見つけた
なにかデータが生きているかもしれないと思い、近づいていく

「・・・・・ダメか」

パソコンは破壊されていて、ハードディスクも粉々になっていた
ショートしているのはディスプレイだけだ。だが、よく見るとディスプレイに文字が焼きついている

    ・・・・・・・・デス・ィニー・・・・・・・・・・・・F・・・・・・

 ・・・・・・・・レジ・ンド・・・・・・・ニ・・タ・・・・・・

  ・・・・・・・テ・・ァ・ア・・ール・・・・・・・A・・・・・

        ・・・・・・・・ラエ・・・・・・・・・ザ・・・・・・・

「デスティニー? レジェンド・・・・? どういうことだよ・・・・・あいつら地球軍なのか?
  こんなもんじゃぜんぜんわかんねぇ・・・・」

ギィ・・・・

「!」

物音がしたので、シンは反射的に銃を引き抜く

カタン・・・・

扉の近くに、人影が立っていた。子供のようだ。遠くからではよくわからない
どさりと、その人影が崩れ落ちる

「な・・・んだ?」

銃を構えたまま駆け寄る

「・・・・・うっ」

子供は腹の部分が大きくえぐられていた。内臓が見える。あやうく、シンは吐きそうになった

死臭がする。扉が、風にあおられてかたかたと音を出している
シンは見た。見てしまった

扉の先には、無数の死体が転がっていた。ほとんどが、子供のものだった

「な・・・・なんなんだよ、ここはッ!」

シンの叫び声が、夕陽沈む死の世界にこだました

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ヤタガラスが、ロドニアの飛行場に着陸する。それからザフトにロドニア制圧を伝え、
軍を回してもらうようにする

アスランは手続きを終えるとすぐにヤタガラスを降り、何人かのクルーを引き連れてラボに向かった
自爆装置の撤去などがなされ、安全は一応確認されている
もしもオーブに有用な情報や技術、あるいは施設があるのなら、ザフトより先に接収しておきたい

「・・・・ひどいな」

先行していたシンやルナマリアと合流し、
ラボに足を踏み入れたアスランは、真っ先にそうつぶやいた
子供や研究員らしきものの死体が廊下に転がっていて、死臭がひどい
ただ死体の腐敗が進んでいないので、あまり死後から時間は経過してないようだ

「あ・・・・ああ・・・・うぐ・・・・! ううっ・・・・! ああああーッ!」

そんな時だ。連れてきていたレイが突然うずくまり、叫び始めたのは

「レイ・・・・? どうした、チッ! シンゴ、レイを外に運び出してくれ!」
「は、はい・・・・! 大丈夫か、レイ。しっかりしろ!」

シンゴに命じて、状態がおかしくなったレイを外に運び出させる
アスランはそれを見届けると、周囲を見回す

「本当にひどいな、これは。あのレイがおかしくなるのも、無理はない」
「はい。私も逃げ出したいほどです」

ルナマリアがそんなことを言う。冗談のつもりなのだろうが、まったく場はなごまない

周りにある情景はそれほど異様だった。研究者たちは例外なく銃撃を受けて死亡しており、
子供たちも銃で死んでいるの多かったが、ガラスケースの中に入れられている子供や、
ホルマリン漬けにされている子供までいる。もちろん死んでいた

(人間のやることじゃないな)

アスランは胸の中が苦くなった。たとえオーブに有用な技術があったとしても、
こういうたぐいのものなら持ち帰るまい。そう決意していた

ラボの電源は死んでいた。すでに周囲は夜なので、懐中電灯で捜索をする
やがて資料室を見つけ、ヤタガラスのクルーはその中に入った

「くっ・・・・ひどい・・・・・」

中に入った途端、シンがつぶやく
資料室にあったのは、壁一面にある脳のホルマリン漬けである

「・・・・・なんのためにこんなことを」

アスランは中央に置いてあるパソコンを見つけた。持ってきた補助電源にそれをつなぎ、
電源を入れる。データはまだ生きているようだ

パソコンの前に座り、アスランは検索を始める

「64年7月、11廃棄処分3入所。8月、7廃棄処分5入所・・・これは」
「艦長? どうしたんですか?」
「メイリン・・・・・。ラボの入室記録だな、これは」
「え・・・・。じゃあ廃棄処分って、まさか・・・・」
「考えたくないが、おそらくはな・・・・。『廃棄処分』、か。人間をタンパク質の集合体とでも思っているのか・・・?」

アスランはそれでもキーボードを叩き、情報を検索する。メイリンがそれを補佐して、セキュリティなどを解除していく
名簿や、日誌などが発見された

「9月7日、�bP127、1128、1129、1130を戦わせる。1130が勝利。1127、1128、1129を廃棄」
「ひどい・・・・」

ディスプレイを見つめる、メイリンの顔色が変わっていく。日誌にあったのは、『教育』の記録だった
一定の戦闘訓練をほどこした子供を、ナイフや銃で戦わせ・・・・殺し合わせている

「生き残った�bP130を、『ステラ・ルーシェ』と名づける・・・・・」
「なんだって!?」

シンが寄って来て、パソコンのディスプレイをのぞき込んで来る

「どうやら、ステラはこのラボ出身のようだな・・・・」
「そんな・・・・なんだよ、なんだよこれ・・・・・毎日毎日訓練させて・・・同居の子供たちで殺し合わせて、
  殺すことと殺されることしか教えてなくて・・・・・ステラはずっとこんな・・・・・・・・・・・」
「・・・・このラボの出資元は、ブルーコスモスか・・・・。『青き清浄なる世界のために』、
  いくらでも子供を殺して改造するのはいいんだな・・・・・」
「・・・・悪魔め・・・!」

気持ちはわかるが、シンのように感傷にひたっている暇はない。アスランは周囲を見回し、つぶやく

「しかし奇妙だな・・・・・。研究員も子供も、すべて死んでいるのか?
  どういう成り行きでこうなったかはわからんが、ガスなどが使われた形跡がない以上、
  一人ぐらい生き残りがいてもよさそうだが・・・・・。」
「逃げたのではないでしょうか? ここにいればザフトに逮捕されるのは、間違いないですし」

メイリンが推測を告げる。確かにそれが一番ありそうだが・・・・

「なら、子供の一人ぐらい残っていてもよさそうだがな・・・・。一体なにがあって、
  ラボはこんな全滅状態になっているんだ・・・? 少し前までは連合軍が駐屯していたのだろうに・・・」
「あの・・・・・艦長」

ルナマリアが、おずおずと手をあげる

「なんだ、思うところがあるなら言ってみろ、ルナマリア」
「はい・・・・。『口封じ』ではないでしょうか?」
「・・・・・・・・・・・。」
「ラボの一部が、なにかで襲撃を受けたように、破壊されています
  多分、ここには外にもれてはまずいような情報があったのではないかと思います」
「・・・・・・この強化人間の記録だけでも、十分まずい情報だと思うが・・・・
  どうだろうな・・・・。ありえない話ではないが・・・不自然だ・・・・」

不意に、アスランは襲撃してきたデスティニーを思い出した
そういえばなぜ、ニコルは黒海にいたのか

「艦長、俺、破壊された場所で変なもの見つけました
  なんか工場みたいなところで、レジェンドとか、デスティニーとか書かれたディスプレイが・・・・」
「なんだと・・・・!? なら、ニコルはここにいたのか・・・?」

アスランは顔を引きつらせた。どういうことなのか。ここはブルーコスモスの施設である
そしてニコルはコーディネイターだ。つながりはないはずである
なら、ここを襲撃したのはニコルで、
ここで開発されたレジェンドやディスティニーを奪った・・・・・・いや、それもおかしい

(ニコル・・・・ロドニアで最高のCPUと呼ばれた少女・・・・洗脳・・・・・・・『口封じ』)

なにかがつながりそうな気がした。ただ、パーツの完成にはいくつかの矛盾がある
それをどう証明すればいいのか、アスランにはわからない

それにどちらにしろ、すべては推測の域を出ないのだ

「ひとまず出るか。ありったけのデータを、ヤタガラスに積み込め
  今日は終わりだ。明朝から再捜索を行う。帰艦するぞ」

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ハイネは地球よりも、宇宙の方が好きだった。生まれ育った場所に、
帰ってきたという感じがするからだ

ミネルバはオーブ首脳会談の後、宇宙に上がっていた
ただ、戦況はこう着状態で、小競り合いが続いている
ミネルバは、あちらこちらで移動するデュランダルの護衛に、その任務を変えていた

「暇だねぇ・・・・・」

ミネルバの食堂で、ハイネはのんびりとコーヒーをたしなむ。砂糖は四杯、甘い方が好きだった

「同感でありますなぁ、ハイネ殿」

同じようにコーヒーを口に運びながら、ディアッカが言う。隣ではイザークがいらだったようにテーブルを指で叩いていた

「そういらだつな、イザーク」
「別にそういうわけじゃありません、ハイネ」

ハイネは、軍でも呼び捨てあう方が好きだった。だから名前にさんとか、殿とかつけるのを好まない
ただ、ディアッカだけは茶化すように『ハイネ殿』と言うのだった

「まぁ、こうも戦局が動かないとな。はやる気持ちもわかるが、ここは休暇を楽しんだ方が無難だぞ?」
「・・・・・・・・・」
「それにしても、地上ではアスランが凄いみたいだな。敵連合艦隊の主力を、降伏させたとか
  おかげでザフトはだいぶ優勢だな」
「・・・・それに比べたら、俺はなにをやってるんだ・・・・・」
「おいおい、イザーク。デュランダル議長の護衛も、俺たちの立派な仕事だろうが
  議長もジュール隊の能力は認めてくださっているぞ?」
「それはわかりますが・・・・・最初の宇宙戦で、苦戦した自分が許せません・・・・
  あの赤い二機に邪魔さえされなければ・・・・!」
「おいおい、隊長さん。俺たちその赤いのに負けただろうーが」
「負けてない! あれは撤退命令が出ただけだろう!」

そんな風に吠えるイザークを尻目に、ハイネはコーヒーを口に運んだ
やはり甘い方がいいと思う。お茶請けのオーブ土産、『センベイ』を口に運んだ
少し固いが、これも味があってなかなかうまい

「ジュール隊長、ここにいらっしゃいましたか」

食堂に一人の赤服を着た女性が入ってくる。ディアッカと並ぶジュール隊の二枚看板、
シホ・ハーネンフースだ

「シホか・・・・どうした?」
イザークが首をそちらに向ける
「いえ、デュランダル議長がプラントに戻られるので、いったんミネルバから離れるそうです」
「わかった。見送りに出るか」

イザークが立ち上がる。ディアッカが続く。ハイネも最後のセンベイを口に放り込むと、
コーヒーでそれを流し込んだ。少しむせる

四人でMSデッキへ向かう。すでに発進準備はできており、小型艇が発進準備に入っていた

「ハイネ、イザーク、ディアッカ、シホか。うむ、ミネルバでは世話になったな」

こちらを見つけると、デュランダルはそう言って笑う。近くには艦長のタリアがいた

「議長。それは、しばらくはミネルバに戻られない、ということでしょうか?」
ハイネが聞く。デュランダルはうなずいた
「うむ。幸い、戦局はザフトに優勢だ。そろそろ私も、政治家に戻るべきだろう」
「はい。俺も、前線ではないとはいえ、議長が戦場におられることにひやひやしておりました」
「フッ、心配をかけたな、ハイネ。だが、そういう風に戦場を回ることで、
  兵士は士気を上げてくれる。ミーアの正体をさらした以上、私はそれをやらねばならないさ」
「いえ、ミーアも頑張っておりますよ。ラクス・クラインではなく、
  ミーア・キャンベルとして戦場で歌うその姿は、ザフトの心の慰めになっております」
「そうだな。私はラクス・クラインを必要以上に恐れていたのかもしれん
  そういえば、ヤタガラスがアークエンジェルを撃墜したと聞いたが・・・・」

言われて、ハイネは思い出す。確かにオーブから、アークエンジェル撃墜の報せはあった

「はい。しかしラクス・クラインの生死までは確認できておりません」
「こうなれば生死など些細なことだ。それに私は驚いているのだよ
  キラ・ヤマトを、シン・アスカとガロード・ランで倒したことをね
  ・・・・・諸君、君たちへの信頼の証として、一つ伝えておこうか」

デュランダルは一旦、言葉を区切った。ハイネは思わず身構える。イザーク、ディアッカ、シホらも同じようだ

「議長・・・・」
「ガロード・ランはナチュラルだ」
「なんだと・・・・!?」

イザークが声を張り上げていた。ハイネの体にも衝撃が走る。ザフトはほとんどの場合において、
コーディネイターである。そこにナチュラルがいるのも異端であるのに、
それがDXという途方もない兵器を操っているのは驚き以外のなにものでもない

「しかしな、私は思うところがあるのだよ。ナチュラルのガロード・ランが、
  最強のコーディネイターであるキラ・ヤマトを倒した。これは我々コーディネイターにとって、
  みずからの優位性に疑問を投げかける一事ではないかね?」
「確かに・・・・・。我々コーディネイターは、心のどこかに必ず、
  自分たちはナチュラルより優れているという感情があります」
「これはその『コーディネイターが誰もが持つ常識』を、真っ向から否定する事実だ
  どういう形になるかはわからないが、いつかはガロード・ランがナチュラルであることを私は発表したい
  遺伝子が決めることが、必ずしも『運命』を決めるわけではないことを、世界に示したいのだよ」

言って、デュランダルは小型艇に足を向ける。ハイネは敬礼してそれを見送った

デュランダルの言ったことは、かなり危険なことだ。コーディネイター過激派は、
この意見に腹を立てるだろう。ひょっとしたら暗殺さえ企てるかもしれない
だがコーディネイターの心からナチュラルに対する優位性を崩し、
同時にナチュラルのコーディネイターに対する劣等感を崩すには、
ガロード・ランという存在はうってつけになる

ハイネは発進する小型艇を見つめた。ここはザフトの影響下であるし、プラントは目と鼻の先なので、
デュランダルに危険はない

おそらく、ザフトは勝つだろう。しかし一番難しいのは、勝ってからの話だった
それにクライン過激派という、爆裂弾をプラントは抱えている

どちらにしろ、ギルバート・デュランダルはこれからが正念場だと、ハイネは思った

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プラントが見えてくる。長い旅行を終えた後、自宅を見るとなぜかほっとするように、
デュランダルは少し気を抜いていた。その時だった

四機のMSが突如、空間から出現する。しかもその傍らには、
デュランダルが乗っているのと同じ小型艇があった

デュランダルは反射的に立ち上がり、緊急用のノーマルスーツに手をかけた
その時だった

ドォォォン

閃光が走り、デュランダルの乗った小型艇は爆発した

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サザビーネグザス

ザフトのザクウォーリアを『極度に発展させた』MSである
だがそれは理論的には現在の技術を十年は発達させなければ完成できぬMSであり、
この世界のMSとは一線を画したMSだった。また、操縦機構も変わっていて、デュランダルにしか扱えない
デュランダルがサザビーをこの世界の兵器ではないと断ずる理由だった

デュランダルはサザビーネグザスの中で、閃光に消えたもう一人のデュランダルに語りかける

「さぁ、デュランダル。おまえの運命は、私が引き継ごうか
  おまえが消えた以上、私にとって障害は、ラクス・クラインとヤタガラスぐらいだよ・・・・
  フフッ・・・・まぁ、それもあくまで『障害』でしかないがね・・・・」

無理をしないことを前提に、レジェンドとデスティニーをヤタガラスに当たらせてみたが、
幸運にもDXを破壊できた。ならばレジェンド、デスティニーを上回る性能を誇る、
サザビーネグザスに対抗できるMSは、もうこの世界にはない

それにヤタガラスはあくまでもオーブの国益で動く戦艦だった
それならば、動きも読みやすい

動きが読めないのは、ラクス・クラインだった。なにをしてくるかわからないという恐ろしさは、
彼女の方にある。そして依然として彼女は、キラ・ヤマトという切り札を握っているのだ

「ティファ、調子はどうだね?」

レジェンドのコクピットへ通信を回す

『あなたは・・・・・・・・・滅びます・・・・』

キッとした目線で、ティファがこちらを見つめてくる。デュランダルはそれを見て微笑んだ

「君は勘違いしているな。私は私の命などどうでもよいのだよ
  ただ『デスティニープラン』さえ完遂されればよい。そのために私は、デュランダルなのだからね
  それよりもあまり自我を保ちすぎない方がいいぞ? 心が壊れるからね・・・・
  どちらにしろ君は、私の命令には逆らえないようになっているのだからな」

言いつつ、デュランダルはサザビーネグザスから、小型艇に移った
これでデュランダルの入れ替えは綺麗に終わったこととなる

ニコルのデスティニーが、サザビーを確保してミラージュコロイドを展開、消えていく
小型艇には先に旧ザラ派の人間が乗り込んでおり、無言で発進していく

「デュランダル・・・・世界に示したいのだよ、私もな・・・・」

そしてデュランダルは、入れ替わった

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すべてが終わり、四機が去った後、物陰からひょこりと一機の青いMSが顔を出した

「んだぁ? 今の・・・・。ジャンク拾いに来てたら、とんでもないもん見ちまったぜ・・・
  お・・・?」

青いMSのパイロットは、宇宙で回転しているなにかを見つけた
よく見るとノーマルスーツを着た人間である

「あの小型艇に乗ってたのか・・・・。生きてんのか? 死んでんのか? ・・・・・・ま、ちょっと見てみるか・・・」

そして青いMSは、ノーマルスーツを着たその人間を確保した