シロ ◆lxPQLMa/5c_番外2

Last-modified: 2009-12-03 (木) 17:57:21

番外2 パッション

 

 高町家という牢獄から辛くも脱出したユーノは病院敷地内に入り込んだ後、地球からど
う脱出するかについて考えを巡らせていた。それにしても前回結局ユーノに対する応援の
レスはなかった。だからだろうか、ひどい倦怠感が彼を包んでいた。
 もし誰かが祈ってくれるなら、たった一人の祈りがあれば自分は・・・いややっぱり応
援されてもやりたくなんぞなかった。

 

 「ほんとどうしようかな・・・ちょっと前の僕何かっこつけてたんだよ。何が責任だよ。
未来の僕のこの苦しみが分かってるのか・・・」

 

 どうにもならない苛立ちからか次第にその発言は愚痴に変わっていた。そのためだろう
彼は背後の気配に気づくのが遅れてしまった。

 

                    ***

 

    キュピーーーーーン!!

 

 「はっ!・・・なんか、行かなきゃいけないような気がする。」
 偶然か必然か愛の成せる業か! モラシムにはまたしてもNTのごときひらめきが訪れ
ていた。それがただの勘違いとかそんなことは考えない。愛が告げた奇跡だと信じてる。
信じることは力だもん。

 

 “今すぐ行く!”
そうと決めたら全力疾走。モラシムは窓を開け放ち夜へその身を躍らせた。

 

    バッ
月に浮かぶ優美なシルエット。スカートさえはいていなければ完璧だった。
    スタッ、コヒュゥゥゥゥゥッゥゥゥ
着地し獣のように沈み込んだ体に大量の空気が吸い込まれていく。
 「フンッ!!」

 

    ドドドッドドッドドドッドドッドドドッドオドド・・・

 

 そのあまりに力強い走りは例えるならまさに蒸気機関車の如し。彼…女を表すのにこれ
ほど適したものもそうはあるまい。その足、車輪が回転するかの如く、止まることなど想
像もできない。彼女にふさわしいのは静より動。文化的というより野性的。

 

 決して短くない距離を短距離スプリンターのような猛烈な勢いをもって、土煙を巻き上
げて疾走する。

 

 わずかに数分・・・たったそれだけの時間で目の前には槙原医院が見えていた。迷うこ
となく嗅ぎつけたモラシム、もはや野生の勘が働いたとしか思えない事態だった。
 永久機関のように止まることなど想像もできないほどに力強くめまぐるしく動いていた
野太い脚は病院を前に唐突にぴたりとその運動を止めた。

 

  ききーーーーーーーーーーーずざざざああああああぁぁぁ・・・モクモクモク・・・

 

慣性を殺しながら巨体は地面をすべる。
 大量の土煙が舞いあがったその奥に巨大な人影が・・・ズシーン・・・揺らめく
   ゥォ…ォォォォン
地響きが・・・その雄たけびが、敵の心どころか味方の心まで揺らす。砂塵の奥にそびえ
たつ圧倒的な存在感。作業機械を連想させるその巨体は悠然とそびえ立っていた。

 

 何という・・・少女の貫録

 

 「あばばば、何で来れたの?! ていうか怖いめちゃ怖い! エヴァの暴走がかわいら
しく見えるもの。もう僕が何もしなくてもこの程度の輩なんとかしちゃいそうなんだけど。」
 ユーノとジュエルモンスターが恐怖に慄いた。

 

モラシムがすぐさま怯えるユーノに駆け寄る。
 「こんなに怯えて・・・よほど怖い目にあったんだね・・・」
 「はい、それはもう。」

 

    ――守りたい・・・この小さな同居人を――

 

 (えっ 同居!!?)
偉大な決意を胸に大きな少女は、未知の怪物の前に立ちはだかった。
 「君は死なない! 君は私が・・・私が守るから!」

 

 何という・・・少女の勇気(でもシンがちょっとイラつきました)

 

 「いくぞぉぉ!」
    ドス!・・ドスドスドスドス・・・

 

 「やっべこいつつえーー!!!」
 ジュエルモンスターは唐突に現れたモンスターを前に、嫌悪感から本気で近寄らせない
ようその触手を駆使しモラシムを殴打する。殴られ続けるモラシムから生理的に嫌な音が
聞こえてきた。
   ベキッ   バキッ   メコッッッ!!       ・・・イヤーン!!
 「そ、そうだよね! 忘れがちだったけど一応モラシムさんも人間だもんね!」
そうしてモンスターはモラシムにとどめをさすべくその身に備わった触手でその四肢を縛
りあげ空中へと吊るし上げた!

 

 「モラーーーーーー!!」

 

なんと! このまま触手プレイが始まってしまうのか!!

 

外野  「なんと! こんなうれしくない触手プレイが存在したのか!!」

 

 モラシムが股を閉じようと必死にもがく。
 「う、う~~ん!」

 

外野  「「「「誰も狙ってねえぇぇ!!!」」」」

 

 貞操を守ろうと顔を真っ赤にして抗うモラシム。その様子は見る者の神経をひどく逆なで
した。

 

 外野の連中も壁に爪を立て感情を殺そうともがいている。感情というものがここまで人
を苦しめるとは・・・。その光景は感情が欠落しているはずのジュエルモンスターにさえ
おぞましさを感じさせるものだった。

 

 そのグロい光景を止めるべくモンスターはモラシムを投げ飛ばす。だがあまりにも胸や
けがひどく追撃ならずその場にうずくまった。外野はいつしかジュエルモンスターの方を
応援していた。がんばれ、がんばるんだァ。ここでもう最終回にしてくれぇ

 

 だが死んで欲しい一人と不運な一匹は隙を見てなんとか病院の敷地外へと逃げ出してし
まっていた。

 

外野 「「「「何やってんだ馬鹿! 早く追え! 今ならとどめがさせる!」」」」

 

 並走する一人と一匹。よく見れば(あまり見たくないが)、モラシムのあちこちがへこん
でいる。だが彼女はそんな事を気にした様子もなく唐突に切り出した。
 「変身だ。」
 「ちょっとぉ何をライダーみたいにかっこよく決めてんですか! ていうか僕、状況説
明一切してないんですけど、加えて助力を頼んでもいないんですけど! むしろ全部ほっ
といて逃げようとしてたし・・・」

 

 色々な過程をすっ飛ばされ混乱したままに言い訳を連発するがふと気付く、確かに細か
く問答している状況ではない・・・でも、

 

 「やっぱり無茶ですよ! 大体僕を見つけたのはただの勘で、モラシムさん魔力なんて
一切ないじゃないですか!」
 「その辺はお互いの努力とあとユーノが魔力を捻出するという事でなんとか。」
 「それ僕しか努力の跡が見られないんですけど!! それにまだ怪我が・・・」
 「いくぞーーーー!!」
 「お願い、聞いて僕の言葉! 会話はキャッチボールなんですよ。あなたキャッチした
ことないじゃないですか。僕だけ顔面キャッチしてるのに、僕が投げたのはスルーですか?
それもうただの千本ノックだよ。」 

 

 だがいくら言い募っても聞いちゃいない。それどころか見つめあう形になってしまって
いる。こいつはうまくない。
 「ちくしょうやったらーー! 僕に続いて呪文を!」

 

契約なんたらかんたら
      風は空に、星は天に、主役はシンに、出番はディアッカに・・・
                           エロイムエッサイムエロイムエッサイム・・・

 

シン  「何だモラシムイイ奴じゃないか。おれ誤解してたよ。」
 「おまっ!!」
ヴァ  「なんで呪文におまえらの個人名が出るんだよ! 俺のも入れてくれ!」
 「てめ、裏切り者!」

 

――ラブロマンスはヴァイスに・・・エロイム・・・――

 

 「ホントに入った!! ありがとう!」

 

――エロイムエッサイムエロイムエッサイム・・・みんな髭生えろ・・・――

 

外野  「「「何言ってくれてんだ!!」」」

 

――イメージするのは敵を殴り倒す杖――
 「それどう贔屓目に見ても棍棒ですよ。なんで殴り倒すイメージしちゃうの!」

 

――身を守る衣服――
 「なぜエッチな下着を!! それドラクエならともかく実際は守備力なんてゼロに等し
いよ! いや守備力なんてこの際どうだっていいんだ!」
 「覚悟完了!」
 「待って、再考してください!!」

 

 「リィィリカルゥチェイ~~ンジ!!」
 「やめてーーーー!!!!」
人差し指を空に突き上げ宣言する。オーイエ。

 

どこからか音楽が流れ始めた。
    ちゃちゃちゃらちゃらら~~~~~~

 

 超越時空楽屋裏ではシン、レイをはじめとした外野たちが思い思いの楽器を手にとりテ
ーマ曲をかき鳴らしていた。熱く激しく己のすべてをただ叩きつけるように音楽で表現し
ようとする。どうせ出番はないのだからと腐らずに
           “己の出番があるわずかな時間でもそこにすべてをかけよう”と
そんな決意が見て取れた。出番的になんとも“アレ”だった彼らはその大切さを誰よりも
知っていた。地の文に私見を出すなど愚の骨頂でしかないだろうがぜひ言わせていただき
たい、私は彼らを尊敬する。

 

 輝ける宝石のごとき魂を叩きつけた荘厳な旋律が天まで届けとばかりに辺りを埋め尽く
して圧倒的な存在感を知らしめる。こいつを聞けと鳴り響く! それは人の胸をうち自然
と涙があふれるほどのものだった・・・見事・・・ただそう言うしかない。

 

 そんな美しい曲の中、モラシムが “バッ!” 両手両足を大の字に広げた!

 

そうすると
    “パオーン”
いやな擬音と共に服が消し飛んだ!! 消し飛んだ服は光の糸へと変わりそのままモラ
シムは光の繭のようなものに包まれていく。そしてその輝きに包まれる中ビルダー生唾モ
ノのマッシブな体があらわになった。(読者サービス)

 

外野  「「「「「おいオッサンオッサン!!!!!!」」」」」
外野より驚愕に満ちた声が上がる。丸出しだったのだ・・・彼らはすぐさま局部にモザイ
クをかけた。

 

 新体操の選手のようにつま先をピンと伸ばし天高く足を差し出す。そうすると魔力がリ
ボンのように形状を変え、その美脚に引き寄せられるように巻きつき人を惑わす魅惑の輝
きを発した。

 

外野  「「「「「おいこらモラシム!!!!!!!」」」」」
外野より怨嗟の声が上がった。

 

 そして魔力を奪われ続けるユーノがどういうわけかモラシムのバリアジャケットに吸い
寄せられていく。ふわりと宙に浮く体・・・
 「えっあれっ??!」
戸惑いの声を上げ小動物の姿は光の繭の中へと消えた。

 

光が消えたとき
モラシムの胸の中心にユーノの顔ががっしりと縫いつけられていた。さまざまな角度から
映し出されるその雄姿!
 腕や足は動けないように固定されている。役割はまさにマスコット兼魔力タンク! 胸
に動物の顔、それはまさに勇者系ロボの王道!! ・・・でも魔法少女じゃ番外ですね。

 

 「ああーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
ユーノの絶叫と共に変身が完了する。

 

プリティなお鬚 ウインクを一つ 
              「魔法オッサン・・・風少女 リリカルモラシムゥゥゥ」
両の拳を打ち合わせ火花が舞い散る
              「熱き想いに応えてただいま参上!!!」
パンチラぎりぎりに足を振り上げ変身完了のポージングを決める!

 

                  サーーービィィィス

 

今ここにバイオレンスの嵐が吹き荒れる変身がようやく・・・終わりを告げた。

 

                     ***

 

 ごぷっ・・・(吐血)

 

 みんなの精神がウインクのあたりで一切の抵抗を許されず粉砕された!! 全身から筋
力が失われることで涎は垂れ誰もがその場でうなだれた。当然そこにはいやらしい意味な
どかけらもない・・・あるはずがない。

 

 意識が、ホワイトアウトする。例えるならあれは知性あるものを侵食するウイルス。精
神的重症でその場にいた全員が例外なく死にかけた。髪は白く染まり、目も白目をむいて
いる、そして漂白される意識・・・もう・・・真っ白だった。

 

 「ふ、ざけるなよ・・・読者は文章だけで済むけど俺たちはリアルな映像を突きつけら
れてるんだぞ。耐えられるわけないだろ・・・」
 「・・・この変身場面だけで、敵・・・倒せるんじゃないですか?」
シンとエリオが力を振り絞った突っ込みをいれ、そのまま精神を守るために気を失った。
 モザイクがかかってる変身シーンなど初めての出来事であった。だがもっと顔含めて全
身隠すくらい大きなモザイクでやれとの苦情が後日彼らのもとに殺到することになる。

 

 それでも諸君はユーノに感謝すべきだった。彼が目の前で起ころうとしている暴虐に立
ち向かって、あの恐ろしい服装へ改竄プログラムを割り込ませたため衣装は原作のものが
ミニスカになる程度の被害ですんでいたのだ。だから決して作者に苦情を送ってはならな
いのだ。

 

                           ***

 

 「うそ~なんなのこれ?エッチな下着は~?」
書いていて殺意を覚えるなど作者にとっても初めての経験であった。

 

モラ  「ようやくわかった、自分にできる事自分にしかできないこと・・・これだった!」
ユー  「全然これじゃねえよ。」
ぼそりとユーノがつぶやくが当然誰にも届かない。たぶん誰にも届かないと悟っていたの
で若干口調も荒くなっていた。お前は今泣いていい。

 

 「う、う~~ん・・・」

 

 全員が倒れた後、入れ替わるようにある一人の男が目を覚ます。彼は最初に意識を手放
していたことが幸いした。色の黒いあの男である。

 

 目覚めたディアッカは呆然とした。なぜか体中が痛いのだ。
 「ぐおおおお、俺に何があったんだ!!」(ヴァイスとシンに無数にビンタされてました)

 

 「イタイ、イタイーーーーーーー!」
この状況下、なぜかそう言わなければいけないような気がした。しかし本当に痛い。しば
し演技なしで痛みに転げまわる。     ・・・ウギャアアアアアシンジャウヨ~~・・・

 

 しばらくしてようやく落ち着いた彼は上の文章を読み驚愕した。
 「へっ? 何考えてんだ!」
  待て待て待て!
 「こんな詳細な変身シーンどこの団体からも求められてねえだろ! 需要がねえよ、需
要がねえのになんで供給すんだよ! 引き取り手がいねえ! だいたいこの小説内、なの
はたちでもまだ変身シーン披露してないのに、もしかして最初で最後がおっさんの変身
か?!」

 

頑張って一人突っ込むディアッカだが、事態はディアッカを置き去りにし動いていた。

 

モラシムがほえる
 「俺たちは一つだーーーーーーーーーーー!!」
 「是非とも二つでいましょうーーーーーーーー!!」
ユーノも負けじと吠える。
 「そんなのだめだーーーーーーーー!!」
 「ちくしょーーーーーーーーーーーーー!!」

 

ディアッカが呼んだ救急車内で点滴を受ける外野陣
エリ  「まさかと思いますが変身シーンってことはこれを毎回見なきゃいけないんです
か? I want toスキップ機能。」
レイ  「グッドな発音だ。それはともかくこんな最下層の話でそんな気の利いたこと起
こるわけがないわけない。万が一シリーズ化したらとりあえず文字数稼ぐために毎回はい
るぞ。」
シン  「どんな拷問だよ・・・ほんとに読んでもらう気があるのか? 少なくとも俺は
もう読みたくない。」