燃え尽きた店の前で白い犬――シュシュがちょこんと座っていた
悲しそうな、そして悔しそうな目をして。
ステラは近づいて話しかけた。
「……シュシュ……どうしたの……?」
なぜか犬の言葉が分かるステラのことはさておき。
さっき、『猛獣使いのモージ』と名乗っていた変な髪形の男がライオンを連れて店に入ろうとした。
ルフィをふっとばしたのを見ていたシュシュは、店に入られるのを止めようとした。
しかし、ライオンと小犬では――当たり前だが――まるで話にならず、赤子の手を捻るように蹴散らされた。
それでも店を守ろうと立ち向かった。
結果はボロボロ、去り際に放火までされた。
町の皆は避難所にいるため、周りには人もいず消火もできない。
なすすべもなく店――思い出の宝物――が焼け崩れ、真っ黒の炭と化していくのを呆然と見ることしか出来なかった。
それを聞いたステラは怒った。そんな事を平然と出来るのは“あいつら”しかいない。
会話していたステラとシュシュに、戻ってきたルフィが何かを持ってきた。
「わりぃな。これしか取り返せなかった!」
もっていたのはペットフードの箱。
ボロボロだったが中身は少し残っていた。
それを受け取ったシュシュは1回ほえた。
「ワン!!」
「おう!! お前も頑張れよ!!」
「ワン!! ワン!!」
シュシュは最後に2度ほえて、去っていった。
「シュシュ……ありがとなって」
「そっか」
ルフィとステラは立ち上がった。
その瞬間、
ドォォォォォン!!!
後ろの一直線に並んだ家がまとめて吹き飛んだ。ゾロが寝ている家も一緒に。
「あっ!! ゾロが寝てんのに!!」
すると、ガレキの山から何かがむくりと起き上がった。それに向かってステラは声をかけた。
「ゾローー大丈夫ーーー?」
「あ―――、目覚めの悪い目覚ましだぜ」
それを見たナミが「なんで生きてんのよ……」とぼやく。
胸に手をあてた町長さんがうめいた。
「……! 胸をえぐられる様じゃ…!!! こんなことが許されるものか! 2度もつぶされてたまるか! わしは町長じゃ!わしの町で勝手な真似はさせん!」
「って無謀すぎる!! 1人でかなうわけ……」
「無謀は承知!!!!」
そう叫んだ町長さんは走り出した。
「あの町長さん……泣いてた……」
「そうか? オレには見えなかった」
「わたしもみえなかった」
「なんだかおもしろそうなことになってんな」
「そうなんだ。しししし」
「笑い事か!!」
「早くいこっ!!」
ようやく4人が揃ったようだ。
「あのオッサン好きだ!! 絶対死なせない!」
「腹の傷より、傷ついたおれの名の方が重傷だ。いこうか!」
「あいつらに、シュシュの痛みを思い知らしてやる!」
「あきれた……」
異論はない。4人はバギー一味の元へと向かった。