クロ編1
上陸した一行は、ウソップという男に出会った。目的は海賊船だが、それ程に大きな船を持つ人間は、村1番のお金持ち、カヤというお嬢様だと言っていた。
そこまで案内してもらう事にした。しかし、そこでウソップはカヤの執事――クラハドールと名乗る男――に自分の父を侮辱されたことに怒り、勢いよく屋敷を出て行った。
あてが無くなったので、しばらく道で雑談していると、ウソップがモノスゴイ形相で目の前を走り去った。
日が暮れはじめた頃、村の方からウソップが力なく歩いていたかと思うと、突然明らかに無理した様な笑い声を上げ、ピーマン達に何か言った。すると、3人は何か失望したかのようにウソップを見て、帰ってしまった。
―――夜。
ルフィ、ステラ、ゾロ、ナミはウソップの今日の行動の説明を聞いた。
カヤの執事――クラハドールが、実は数年前に処刑されたはずの海賊「百計のクロ」―――1600万の首の大物海賊―――であること。
そして、明日に起こる海賊達の村への襲撃、カヤの殺害。
長い沈黙の後、ウソップはこう切り出した。
「オレが甘かったよ……。オレはウソツキだから、はなっから信じてもらえるわけなかったんだ」
自嘲気味に吐いたが、その目には決意のこもったものがあった。
「だが、ヤツらは必ずやってくる。でも、村の皆はいつもどおりの1日が来ると思ってる……。
だから俺はこの海岸で海賊達を迎え撃ち、この一件をウソにする!
それがウソつきとして、俺の通すべき筋ってもんだ!!
・・・・・・腕に銃弾ぶち込まれようともよ、ホウキもって追いかけ回されようともよ、ここは俺が育った村だ。俺はこの村が大好きだ、みんなを守りたい・・・! こんなわけもわからねぇうちに、みんなを殺されてたまるかよ・・・・・・!」
4人はウソップを見て、笑って言った。
「とんだお人よしだぜ、子分まで突き放して一人出陣とは・・・」
「よし、おれたちも加勢する」
「大丈夫、私達にもやらせて」
「言っとくけど、宝は全部私のものよ!」
ウソップは涙を流して4人を見た。
「お、お前ら……」
・ ・ ・
海賊進行阻止作戦は、1本の村につづく坂道を死守するということになった。油を坂一面にしいて、その上から迎撃する作戦だ。
しばらくたって、一同は向こう側の海から光が漏れ始めたことに気づいた。
夜が開けたのだ。しかし、いくら待っても海賊団は姿を現さない。
そこで、ナミは耳を手にあて、奇妙なことを言った。
「ね、ねえ……気のせいかしら…北の方からオーッて声が聞こえるんだけど……」
「き、北!?」
「ほんとだ…聞こえる…どういうこと!?」
「ま、まさか、北の方に上陸したのか!?」
なんとまあ、海賊団は北の方に上陸したようだ。今村に攻め込まれたらなにもかもがパーになる。
「海岸間違えたのか!?急がないと村にはいられちまうぞ!どこだそれ!」
「こっから北にまっすぐいけば3分で着く!地形は――」
「ステラ、20秒でそこに行くぞ!!」
「うん!!」
ウソップの説明を最後まで聞かずにルフィとステラは走り出した。――そして着いた。…村に。
「あれ!?村に出ちまったぞ!?」
「え!?寒い方角にいけば北にいけるんじゃないの!?」
どっか頭のネジがとんでる2人。その後も、林、川、絶壁と、全く的外れな所に着いたりした。
「北ってどっちだあーーーー!!」
迷子になった2人。そこでステラは気づいた。
「ルフィ!あっちからナミとウソップのにおいがする!!」
「なにぃ!?あっちか!!」
林の中を進め2人。その途中でゾロが走ってた。―――2人と逆方向に。
「ゾロ!何してんの!?ナミ達はあっち!ていうかなんで油まみれなの!?」
「アホかゾロ!油くせえぞ何してたんだ!」
「うるせえ!あの女に……ってんなこた今はどうでもいい!!あっちだな!?」
しばらくしてようやく海岸が見えてきた。それと同時に海賊達が見えた。
「「「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」」」」」
「「「邪魔だお前らぁーーーーーーー!!!」」」
3人は思いっきり海賊達を吹き飛ばした。
「はぁーーー、やっと着いたぁ」
「なんだぁ?今の手ごたえのねえのは」
「知るか!こんなんじゃ気がはれねえ!」
「ナミてめえ!よくもおれを足蹴にしやがったな!?」
「ウソップこの野郎!北ってどっちかちゃんといえぇ!!」
「そーよ!ちゃんと教えておいてよ!!」
口論している5人。吹き飛ばされた海賊達が起き上がり、催眠術士の所に集まった。
「なにやってんだあいつら」
「きっと催眠術よ。思い込みで強くなろうとしてろんだわ。バッカみたい!」
ナミがそう言い終えた時だ。
「「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」」」」」
海賊達は立ち上がり、狂暴な雄叫びを上げた。
「えっうそ!?さっきまであんなにフラフラだったのに!!」
ビキビキビキッドスゥーーーン
1人が崖を抉り落とした。ものすごいパワーだ。それ程のヤツらが何十人もいるなんて。
「2人とも上に上がってろ。ここは俺達がなんとかする。おいルフィ、ステラ!!」
「……………」
「……………」
ゾロの声に2人は返事しない。不審に思ったゾロはもう1度呼んだ。
「おい、2人とも……!?」
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
そこにいたのは、催眠にかかった2人の狂戦士(天然又はバカ)だった。
「「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」」」」」
「「ウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」」
「おいルフィ!ステラ!」
ゾロの静止に声も聞かず、2人は狂暴な雄叫びを上げ、海賊達に向かって走り出した。
「"ゴムゴムの銃乱打"!!!!」
無数にふりかかるゴムの拳。ステラは高々と跳躍して、海賊達に斬り込んだ。
――獲物に狙いを定めて高速で飛び込む鷹の如く――
「"鷹爪斬り"!!!!」
1人残らず吹っ飛ばした2人は、海賊達に向かってまた走り出した。
「「ウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」」
「「「「「いやーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」」」」」
海賊達を追い抜いていくルフィとステラ。すると、ルフィは海賊船の船首をもぎ取り、ステラはバカデカイ岩を持ち上げた。
「船長~~~~~!!なんとかしてください~~~~っ!!」
「"ワンツージャンゴ"で眠くなれ!!"ワン・ツー……"」
「「ウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」」
「"ジャンゴ"!!」
「「すかー」」
ルフィとステラは気を失い、ルフィは船首の下敷きに、ステラは岩にもたれかかり、眠った。