パトリック・レポート◆ヴァンダムセンチネル氏 01

Last-modified: 2016-03-04 (金) 01:05:46

『その1』
 
 
私の名前はパトリック・ザラ、所謂死人だ。
こういうと裏の住人のように聞こえるかもしれないが、本当に死んで…信じがたいことだが『幽霊』というやつになったようだ。
その証拠に意識がハッキリした時に目の前にいたのが、かつての友の顔だった。

私「う…ここは?(視界がハッキリしてきて)シーゲル!?」
シーゲル「…ここはジェネシス『だった』場所だ。我々はどうやら幽霊になったようだ」
私「な、なんだと!?」
シーゲル「そうとしか説明がつかないのだ、パトリック」

周りは残骸だけで、ノーマルスーツなしでは生きられない宇宙空間で話せる状況が真実でしかないと痛感した。

私「…シーゲル(言いにくそうに)」
シーゲル「何も言うな、お前はお前なりにプラントを憂った末の行動だったのだから」
私「(首を横に振りながら自嘲的に)いいや……ジェネシスを撃った時には私は憎悪しかなかったよ」

死んだ時になって熱病が冷めたか如く、冷静になれた。

シーゲル「でも今は違うだろう?」
私「どうしてそう思う?」
シーゲル「私もラクスのことや、プラントの未来をことを思うと心残りでならなかったが、
     死んだ後はその重さが軽くなったのだよ、なぜか」
私「…お前もそうだったのか?」
シーゲル「宇宙は生きるには厳しい所だ。しかし、死んだ我々には苦痛にはならず、
     むしろ優しく包まれていると感じたよ。
     単にしがらみがなくなったからだからかもしれないが」
私「優しく包まれる…か、お前らしいな」

思えば、厳しい宇宙で生きるしかない我々は急ぎすぎていたのかもしれないな。

シーゲル「パトリックこれから、私はラクス達を見守るが…お前はどうする?」
私「アスランを見守ることにするよ。あいつは私に似ず、意思が弱く、頼りないからな。」
シーゲル「そうか…では、また会おう」(姿が消える)
私「行ったか……(しばらく考え込んで)
  しかし、見守るだけでは退屈でならないが……(自分の服のポケットを探る)  
  あった!」

私が日ごろから重要なことを記録するための小型PCを取り出す。
特注の羽ペン型のタッチペンを作るほどに思い入れのあるものが手元に残っていたのは幸いだった。

シーゲル「(突然、現れる)ああ、言い忘れていた。
     見守るのが飽きたら会いに……(PCを凝視する)」
私「……だめだぞ、これは私のだ」

物欲しそうなシーゲルの視線を浴びながら、年を取ると子供に戻るものなのかと
感じつつも私の幽霊生活が始まったのだった。
  
(つづく)