リリカルクロスSEEDAs_第07話

Last-modified: 2007-12-28 (金) 10:28:04

学校の休み時間なのはたちはフェイトが使う携帯を選んでいた。
キラは怪我で動けないうちに買ってもらっていたので選ぶ必要はない。
パンフレットを見ながらフェイトは唸っている。
「な、何だかいっぱいあるね」
「まぁ、最近はどれも同じような性能だし、見た目で選んでいいんじゃない?」
アリサが助言をしてあげるとなのはも続く。
「でも、やっぱメール性能の良いやつがいいよね」
そして、すずかも加わる。
「カメラが綺麗だと色々楽しいんだよ」
三者三様の言葉にますますフェイトは唸ってしまう。
「でも、やっぱ色とデザインが大事でしょ」
「操作性も大事だよ~」
「外部メモリが付いてると色々便利でいいんだけど」
「そうなの?」
「うん、写真とか音楽とかたくさん入れておけるし。そうそう、メールに添付してお友達に送ることも出来るの」
「あぁ~、そうだよね~」
「結構使えるよね~」
三人が話している間、フェイトは会話に入っていないキラにも聞いてみることにした。
「キラはどう思う?」
「僕?フェイトちゃんが気に入ったのでいいんじゃないかな?」
「気に入ったもの・・・・」
「もう決まってるんでしょ?ページが全然動いてないよ」
「あ・・・・・」
キラの指摘にフェイトはびっくりしてしまう。
「気付いてたの?」
「まぁね」
キラは優しそうに笑った、そんなキラをフェイトは周りをよく見ているんだなと思った。

 

学校が終わり、リンディと合流したなのはたちは携帯ショップへ向かった。
「フェイトさん、はい」
リンディが店から出てくると袋を渡す。
「ありがとうございます、リンディ提督」
フェイトはそれを嬉しそうに受け取るとなのはたちのところへ向かう
「おまたせ」
「いい番号あった?」
「うん」
「えぇ、何番?」
「えっとね、これ」
「おぉ~」
そんなフェイトたちをリンディは嬉しそうに見ていた。
「フェイトちゃん、すっかり馴染んでますね」
キラはリンディの隣に歩いてくると言った。
「えぇ、いいことね。キラさんはどうかしら?」
「そうですね。あの子達を見ていると優しい気持ちになれます」
「そう、これからもフェイトさんやなのはさんたちをよろしくね」
「はい」
キラとリンディはフェイトたちのほうを向き直るとお互い優しそうに彼女たちを見ていた。

 

アリサやすずかと別れ、なのははフェイトたちが住むマンションに来ていた。
フェイトの部屋でなのはたちはおしゃべり、キラは教えてもらった通りにカートリッジを作っている。
キラのデバイスはモード毎に二発分消費し、武装も多いため燃費が悪い。
だから、支給されているとはいえ少しでも多くしておきたいのだ。
「たっだいま~」
ちょうど三個目が終わったところで買い物に出ていたエイミィが帰ってきた。
エイミィが買ってきたものを冷蔵庫に入れるのをフェイトたちと手伝ってながら会話を聞いた。
「艦長、もう本局に出掛けちゃった?」
「うん、アースラの武装追加が済んだから試験航行だって、アレックスたちと」
「武装ってーと、アルカンシェルか。あんな物騒なもの最後まで使わずにすめばいいんだけど」
「クロノ君もいないですし、戻るまではエイミィさんが指揮代行だそうですよ?」
なのはがエイミィに告げる。
(せきにんじゅうだ~い)
ビーフジャーキーを咥えながらアルフはエイミィを冷やかす。
「うっ・・・・それもまた物騒な・・・・」
「自分で言わないでくださいよ」
キラは呆れながら冷蔵庫を閉じる。
「まぁ、とはいえ早々非常事態なんて起こるわけが・・・・・」
その瞬間、部屋に警報が鳴り響いた。

 

モニター室に移動した、エイミィたちは映し出された映像を見ている。
「文化レベル0、人間は住んでない砂漠の世界だね」
そこにはシグナムとザフィーラの姿があった。
「結界を張れる局員の集合まで最速で四十五分・・・・う~ん、まずいな~」
モニターをじっと見ていたフェイトとアルフが顔を合わせて頷くとエイミィに言った。
「エイミィ、私が行く」
「私もだ」
「・・・・・・うん、お願い」
エイミィの言葉に二人は返事をして、フェイトは自分の部屋に行きカートリッジを取りに向かう。
「フェイトちゃん」
そんなフェイトをキラが呼び止める。
「キラ?」
「気を付けてね、いってらっしゃい」
キラはそう言うと笑った。
「うん、いってきます」
フェイトはその言葉に頷きながら部屋を出ていった。
「なのはちゃんとキラ君はバックス。ここで待機して」
「はい」
フェイトはカートリッジを持つとバルディッシュに言った。
「行くよ、バルディッシュ」
『Yes, sir.』
モニターの向こうではシグナムが巨大な化け物に捕まりやられそうになっていた。
そのとき、その化け物を幾つもの雷の刃が突き刺さった。
フェイトのサンダーブレイドだ。
『ブレイク!』
フェイトがそう言った途端、刃が爆発し爆煙をあげる。
「フェイトちゃん!助けてどうするの、捕まえるんだよ!」
そんなフェイトにエイミィが注意する。
『あ・・・・ごめんなさい、つい・・・・』
キラはそんなフェイトを優しく見ていた。
「フェイトちゃんらしいね」
なのはが少し笑いながらキラに話しかける。
「うん、でも僕も・・・・多分同じことするだろうけど」
「私もかな」
なのはと笑い合うのをやめるとモニターに目を戻す。
そこではフェイトとアルフの戦いが始まっていた。

 

そんな中、また新しい反応が見つかり警報が鳴る。
「な!?もう一箇所?」
モニターには闇の書を持ったヴィータが映っていた。
「本命はこっち・・・・なのはちゃん!」
「はい!」
「キラ君は二人のどちらかに何かあった時のために待機!」
「・・・・分かりました。なのはちゃん、気を付けてね」
「うん、大丈夫」
そう言って、なのはは部屋から出ていった。

 

モニターでは三人の戦いの様子が見れた。
どちらも互角の勝負をしているようだった。
なのはに至ってはディバインバスターによりヴィータに直撃させたように見えた。
しかし、そこにはクロノが言っていた仮面の男の姿があった。
「なのはちゃんのディバインバスターを防ぎ切った?デバイスなしに?」
その光景にキラは驚いていた。
「エイミィさん、あの人!」
「うん、今やってるんだけど・・・・・・何で?」
エイミィが必死で作業をしている中、なのはは長距離からのバインドに捕まり動けない。
その間にヴィータは次元転送で逃げ、なのはがバインドを解いた時には仮面の男も消えていた。
「・・・・・・・・・」
キラは内心嫌な予感がしていた。
フェイトのモニターを見ると戦いも終わりが近づいていた、その時だった。
また先ほどの仮面の男が現れ、フェイトの胸を腕で貫いていた。
「フェイトちゃん!!」
どうやら魔法により直接貫かれている様子ではなかった。
男の手から黄色のフェイトのリンカーコアが見えた。
「エイミィさん!僕、行きます!!」
「お願い!」
キラはすぐに出れるように近くに置いていたフリーダムとカートリッジを持つと部屋を飛び出した。

 

転送された先はフェイトたちの真上の空だった。
下を見るとフェイトの魔力を蒐集されているところだった。
キラはすぐに急降下してフェイトのところへ向かう。
ライフルを連射、それに気付いたシグナムやヴィータ、仮面の男がすぐに避ける。
素早くフェイトのところに着地し、フェイトを見る。
大分、リンカーコアから魔力を吸われた所為か顔色が悪い。
「貴様は!」
シグナムがレヴァンティンを抜き、斬りかかる。
仮面の男も無言のまま拳を突き出してくる。
キラの中で何かが弾けた。
「・・・・・・」
キラはレヴァンティンをサーベルで男の拳をシールドで防ぐ。
ぶつかり合った瞬間、砂漠の砂が舞い上がるほどの勢いだったのに対しキラはピクリとも動かない。
キラは両腕にさらに力を入れ、二人を力で弾き飛ばす。
シグナムと仮面の男はすぐに態勢を立て直す。
その様子を見ていたヴィータが呟く。
「こいつ・・・・・あの時のやつか?全然デバイスも強さも別人じゃねぇか」
仮面の男は少し考えるとヴィータとシグナムに言った。
「お前らは行け、こいつは私がやる」
「だが・・・・」
「今の消費した状態お前らではこいつには敵わない」
「・・・・・・・分かった」
「シグナム?」
「戻るぞ、ヴィータ。テスタロッサのリンカーコアをあれだけ取れた。気に入らないがな」
キラを見るとシグナムが言った。
「テスタロッサにすまないと伝えてくれ」
そう言うと仮面の男を睨んでから空に飛び立つ、ヴィータも後に続いた。
「え?・・・・・・待って!」
キラはシグナムたちを追いかけようとするが、仮面の男が向かってくる。
「チィッ!?」
すぐに仮面の男にライフルを放つが当たらない。
仮面の男の蹴りをシールドで受け止める
『Load Cartridge.』
両腰部のクスィフィアスの黄色の魔力弾が零距離で男に放たれるが、それすら避けられる。
次の瞬簡には後ろに回りこまれ拳を繰り出されるがキラはそれを身を捩ってかわす。

 

「速い!フリーダム!」
『Load Cartridge. High MAT mode. Set up.』
両翼から二発のカートリッジが消費される。
キラの翼から蒼の魔力が溢れスピードがさらに上げる。
しかし、うまく距離を取らせてくれないためサーベルを抜き接近戦になってしまう。
(スピードは僕の方が上だけど・・・・この人、接近戦がかなり強い)
キラがスピードが上でも当たらなければ意味がない。
「スピードも反射神経もここまであるとは、さすがコーディネーターといったものだな」
「!?・・・・何故それを!!」
キラの目に光が戻るが、すぐに戦闘に集中する。
この男の相手に一瞬の隙でも付かれると負けてしまう気がしたのだ。
しかし、キラはここに来て疑問に思っていた。
何故、男が魔法を使わないのか。
なのはの時は長距離から強力バインドを一瞬で扱えるほどだ、並大抵の魔導師じゃないはずなのだ。
「・・・・・いくぞ!」
仮面の男が飛び込んでくる、キラも同時に飛び出す。
二人が交錯し、互いが飛び出した場所に着地する。
「く・・・そ・・・・」
あの戦いの交錯の瞬間、いきなりサーベルを持った手にバインドをかけられてしまった。
警戒していたはずだった、しかし相手は魔法を使った素振りが全くなかったのだ。
強引にバインドを解除して振り抜いたが一歩及ばなかった。
そのままキラは倒れてしまう。
「そのままぶつかり合えば私が負けていたな」
そう言った瞬間、男の仮面が真っ二つになった。
しかし、キラからの角度では顔は見えることはなかった。
エイミィからは見えているだろうか、応答がないから何かあったのかもしれない。
男は仮面を拾い上げるとすぐにどこかへ飛んでいってしまった。
キラは悔しそうに砂を握り締めていた。
また自分は守れなかった、負けてしまったのだと。
キラは体を引きずりながらフェイトを抱える。
治ったあばらが痛んだ、またヒビでも入ってしまったのだろうかと考えるが、まずはフェイトが先決。
「早く・・・・フェイトちゃんを・・・・転送しないと・・・・」
『キラさん!フェイトさん!』
リンディの声だ、どうやらアースラでここの近くまで来たようだ。
「フェイト!キラ!」
なのはが空から下りてくるのが見える。
「アルフ・・・・さん、フェイトちゃんを」
「分かってる!キラも!」
三人の下に次元転送の魔方陣が展開される。
そして、アースラに転送されると同時にキラは気を失っていた。

 

「うっ・・・・」
「気が付いた?」
「リンディさん、僕は・・・・・!フェイトちゃんは!・・・」
「大丈夫、リンカーコアにダメージを受けてるけど命に別状はないわ」
「そうですか・・・・・良かった」
「キラさんのほうはあばらにまたヒビが入ってるみたい、せっかく治ったのに」
「大丈夫です、それくらいは・・・・」
「私はこれから会議だからキラさんはどうするの?」
「僕は・・・・フェイトちゃんのところに行ってきます。やっぱり心配ですから」
無事といわれても自分の目で確認しないと仕方ないようだ。
「分かったわ、無理しないようにね」
「はい」
リンディにフェイトの部屋にキラを案内すると会議室に向かった。
「・・・・・・・」
フェイトはぐっすり眠っている。
「・・・・・ごめんね、守れなくて・・・・ごめんね」
キラはフェイトが無事で安心したことと、自分の不甲斐なさに泣いた。
キラの涙がフェイトの頬を伝った。
守ると決めていた、新しい剣で守りきってみせると誓った、でも守れなかった。
あばらの骨が痛んだのか心が痛んだのか分からなかった。
だが、何故だろうか。
あのシグナムたちのことを恨むことができない。
シグナムたちの目は自分と同じようだった、守りたいと思う目。そんな目だ。
「僕は・・・・どうしたら・・・・」
恨めば楽になるだろう、だがその戦いをキラは間近で見てきた。それを止めたいと思った。
キラにはこれからの戦いの意味が分からなくなってきていた。
本当は何と戦えばいいのか、今のキラには分からなかった。