リリカルクロスSEEDAs_第11話

Last-modified: 2007-12-28 (金) 10:38:33

「夜天の書!」
キラが闇の書に向かい本当の名前で呼ぶ。しかし、闇の書は何も答えずにいた。
その瞬間、地面が割れ巨大な化け物が現れ、触手がなのはとフェイトを縛り上げる。
「なのはちゃん!フェイトちゃん!」
「私は、主の願いを叶えるだけだ」
「ふざけるな!こんなのがはやてちゃんの願いなわけない!そして、君の願いでもないだろう!」
「こんなことをしてはやてちゃんは本当に喜ぶの?心を閉ざして何も考えずに主の願いを叶えるための道具でいて」
なのはたちはその姿がフェイトの昔の姿に見えた。そして、それがどれだけ悲しいことか知っていた。
「「あなた(君)はそれでいいの(か)!!」」
キラとなのはの叫びに闇の書は目に涙をため答える。
「我は魔導書、ただの・・・・道具だ」
「だけど、言葉を使えるでしょ!心があるでしょ!」
「そうじゃなきゃ・・・・なんで・・なんで君は泣いているんだ!!」
なのはとキラは尚も闇の書に語りかける。
「この涙は主の涙。私は道具だ、悲しみなど・・・・・ない」
その言葉を聞き黙っていたフェイトが拳を握る。
「バリアジャケット、パージ」
『Sonic form.』
カートリッジを一発消費し、バリアジャケットの魔力が分散させて縛っていた触手を消し去る。
「悲しみなどない?そんな言葉をそんな悲しい顔で言ったって誰が信じるもんか!」
フェイトは闇の書の悲しみが一番理解できる、闇の書が悲しんでいることが分かる。
「あなたにも心があるんだよ。悲しいって言っていいんだよ」
「はやてちゃんはそれにきっと答えてくれるから!」
「だから、はやてを解放して、武装を解いて・・・・お願い!」
お互いの間に沈黙が訪れる、闇の書は三人を見つめたまま動かなかった。

 

そんな時、結界の中が地響きを立て始める。
そして、地面が割れ、至る所から炎の柱が上がっている。
「早いな、もう崩壊が始まったか。私もじき意識をなくす。そうなればすぐに暴走が始まる。意識のある内に主の望みを叶えたい」
『Blutiger Dolch.』
その瞬間、なのはたちの周りをブラッディダガーが囲む。
「「「!?」」」
「闇に・・・・・沈め」
三つの爆発が起こるが、フェイトとキラはブラッディダガーが当たる前になのはを抱え回避していた。
「この・・・・駄々っ子!」
『Sonic drive.』
「言うことを・・・・・・」
ソニックフォームの各所の小さな羽根が大きくなり、フェイトはバルディッシュを構える。
『Ignition.』
「聞けぇっ!!」
フェイトが高速で闇の書に向かっていく。
「お前も、我が内で眠るといい」
闇の書はフェイトから自分と同じような感覚を受けたのだろう、闇の書はフェイトにページを翳す。
「はあぁぁぁぁぁっ!」
バルディッシュは闇の書の防御魔法で簡単に防がれる。
その瞬間、フェイトの体が光に包まれていく。
「!?・・・・・フェイトちゃん!」
なのはが叫び終わると、フェイトは消えていた。
『Absorption.』
「全ては・・・・・安らかな、眠りのうちに・・・・」
その光景にキラとなのはは動けなかった。
「エイミィさん!」
キラがすぐにエイミィにフェイトの状況を聞く。
(状況確認、フェイトちゃんのバイタル、まだ健在。闇の書の内部空間に閉じ込められただけ、助ける方法現在検討中)
「我が主もあの子も覚めることない眠りの内に、終わりなき夢を見る。生と死の狭間の夢、それは永遠だ」
「永遠なんて・・・・・・ないよ。皆、変わってく・・・・変わっていけなきゃいけないんだ!」
「「僕(私)も君(あなた)も!」」
「僕たちはどんなに苦しくてもどんなに幸せであっても、変わらない世界は嫌なんだ!」
「「だから変える!この運命を!!」」
キラとなのはは闇の書に向かっていった。

 

フェイトは夢を見ていた。
そこにはアルフ、死んでいるはずのアリシア、リニス、そしてプレシアがいた。
フェイトは戸惑っていた、死んでいる者が生きていて、プレシアが自分に優しいことを。
だがそれは自分が一番、欲しかった時間だった。
「今日は皆で街に出ましょうか?」
「わぁ~」
「いいですね」
「フェイトには新しい靴を買ってあげないとね」
この会話も・・・・・。
「あ~、フェイトばっかりずるい」
「魔導試験満点のご褒美ですよ、アリシアも頑張らないと」
「そうだぞ~」
「う~」
この時間も・・・・・。
「フェイト、今度の試験までに補習お願い」
「う、うん」
欲しかった。
何度も何度も夢に見た時間。
その瞬間、フェイトの目から涙が溢れてくる。
これは夢だから、どんなに願っても叶うことのない夢だから。

 

キラが闇の書の拳をシールドで防御する。
しかし、一瞬のうちにシールドが破壊されてしまう。
「なっ!?」
『Schwarze Wirkung.』
闇の書がもう一方の拳を握る、その拳に黒い魔力が集束する。
「しまっ・・・!?」
キラは翼を自分の前で交差し、拳を受けるがそのまま吹き飛ばされ海に落ちる。
「キラくん!」
『Blutiger Dolch.』
なのはがキラを見てしまう隙にブラッディダガーがなのはを囲む。
「!?」
「穿て、ブラッディダガー」
(避けられない、防御を・・・・間に合って!)
ブラッディダガーが動き出そうとした時、海の中から蒼い魔力の弾丸が全て撃ち貫いた。
海からキラが飛び出してくる。
「キラくん、大丈夫?ありがとう」
「はぁ、はぁ・・・・なんとか・・・ね」
(リンディさん、エイミィさん。戦闘位置を海に移しました。市街地の火災をお願いします)
(大丈夫、今災害担当の局員が向かっているわ)
アースラからリンディがモニターを見ながら答える。
(それから闇の書・・・・・夜天の書は駄々っ子ですけど話は通じそうです)
(もう少し、私たちにやらせてください)
なのはとキラは頷きあうとお互いのデバイスに声を掛ける。

 

「いくよ、レイジングハート!」
『Yes, my master.』
「フルーダム、やれるね?」
『Yes, of course.』
なのはとキラはお互いマガジンをセットする。
『『Reload.』』
「マガジン残り三本、カートリッジ残り十八発。スターライトブレイカー撃てるチャンスあるかな?」
「僕の装備は一つずつじゃ火力が足りない・・・・・もっと火力のある装備がないと」
『『I have a method.』』
二つのデバイスが主の疑問に答える。
『Call me "Excellion mode."』
『Call me "Meteor mode."』
「ダメだよ、あれは本体を補強するまで使っちゃダメだって・・・・・」
「ミーティア・・・・使えるんだね。でも・・・・フリーダムは大丈夫なの?」
「私がコントロールに失敗したらレイジングハート、壊れちゃうんだよ?」
『『Call me. Call me, my master.』』
二つのデバイスはそれを望んでいる、自分たちを信頼し、命を賭けてくれる。
なのはとキラは決意する。

 

はやては真っ暗の中にいた。
凄く眠かった、いつ瞼を落としてもおかしくなかった。
誰かの声が聞こえる。
「そのままおやすみを、我が主。あなたの望みは全て私が叶えます」
目の前に白い髪の女の人がいた。
(私の・・・・望み?)
「目を閉じて心静かに夢を見てください。」
(私は・・・・何を・・・・望んでたんやっけ?)
「夢を見ること、悲しい現実は全て夢となる。安らかな眠りを」
(そう・・・・なんか?)
自分にそれを問いかける、眠い頭でうまく頭が回らない。それでも必死に考える。
「私の・・・・ほんとの・・・望みは・・・・」

 

「お前らも・・・・・もう眠れ」
「いつかは眠るよ、だけどそれは今じゃない。今ははやてちゃんとフェイトちゃんを助ける。それから、あなたも」
「だから・・・・・僕らは戦う!」
レイジングハートとフリーダムがカートリッジを消費する。
「レイジングハート、エクセリオンモード!」
「フリーダム、ミーティアモード!」
「「ドライブ!!」」
『『Ignition.』』
レイジングハートが変形し、エクセリオンモードへと変わる。
キラはバリアジャケットと蒼の翼の上に白の甲冑が付き、両腕に大きな篭手が付く。
「繰り返される悲しみも悪い夢もきっと終わらせられる」
「僕らには運命を変える力がある!」
『Photon lancer, genocide shift.』
フェイトの魔法の雷の魔力の矢がいくつも闇の書の周りに作られる。
キラとなのはは魔方陣を展開し、構えを取った。

 

フェイトは夢の中で幸せな時間を過ごしていた。とても優しくとても温かい時間。
アリシアと二人で外に出る、やがて雨が降り始め二人は雨宿りをする。
この雨が今の自分の心を映しているような気がした。
「ねぇ、アリシア。これは夢、なんだよね」
その言葉にアリシアは無言でいた。
「私とあなたは同じ世界には・・・・いない。あなたが生きてたら私は生まれなかった」
「そう・・・だね」
アリシアはその言葉に悲しそうに頷いた。
「ねぇ、フェイト。夢でもいいじゃない。ここにいよう、ずっと一緒に・・・・」
フェイトは無言だった。心の中がぐちゃぐちゃだった。
「私、ここでなら生きていられる。フェイトのお姉さんでいられる。母さんとアルフとリニスと皆と一緒にいられるんだよ」
本当にここにいれば自分は幸せだろう、自分が何度も夢見たのだから・・・・。
「フェイトが欲しかった幸せ、皆上げるよ」
フェイトの心は何が良いのか悪いのか、分からなかった。
そんなフェイトに昔聞いた一人の男の子の言葉が聞こえた。
『フェイトちゃん、始めるんだ。今から君を・・・・・・・一緒に始めよう』

 

「私が・・・・・欲しかった幸せ」
「えぇ、愛する者たちとのずっと続いていく暮らし」
ヴィータ、シグナム、シャマル、ザフィーラ、全員の顔が浮かぶ。
「眠ってください、そうすれば夢の中であなたはずっとそんな世界にいられます」
その時だった。
『大丈夫だよ、はやてちゃん。だから負けないで、そして逃げないで』
男の子の声が聞こえた気がした。
そして、はやては闇の書の言葉に首を横に振った。
「せやけど、それはただの夢や」

 

「フォトンランサー、ジェノサイドシフト」
「エリナケウス、フルバーストシフト!ターゲット、マルチロック!」
『Erinaceus. Full burst shift. Target multi lock. 』
カートリッジを消費し、キラの周りに小さな魔方陣が大量に現れる。
「いけ」
「当たれぇぇぇぇっ!」
闇の書とキラの魔法がぶつかり合い、お互い相殺する。
「ディバイン・・・・・」
なのははすかさずに闇の書に照準を合わせる。
『Blutiger Dolch.』
「!?」
一瞬のうちになのはをブラッディダガーが囲い込む。
「穿て」
爆発の中からなのはが飛び出してくる、咄嗟に障壁を張ったがダメージを受けてしまう。
「一つ覚えの砲撃で通ると思っているのか?」
「通す!レイジングハートもフリーダムも力をくれてる。命と心を賭けて答えてくれてる」
レイジングハートとフリーダムがカートリッジを二発消費する。
「泣いてる子を救ってあげてって!」
「だから、僕たちもそれに答えないといけない!」
『A. C. S., standby.』
『High power saber mode ,standby.』
なのはの足元にはピンクのキラの足元には蒼の魔方陣が展開する。
レイジングハートは6枚の光の羽根を大きく広げ、キラの両篭手からは巨大な魔力刃が出現する。翼からは蒼い魔力が強く輝きながら噴き出す。
「アクセルチャージャー起動、ストライクフレーム!」
『Open.』
先端に半実体化する魔力刃「ストライクフレーム」を形成する。
「エクセリオンバスター、A.C.S!」
「ミーティア、ハイパワーサーベル!」
「「ドライブ!!」」
キラが先攻し、両篭手からの巨大な魔力刃で闇の書の防御障壁に十字のキズを付ける。
なのははその十字の中心にストライクフレームを突き刺す。
「届いて!!」
その瞬間、ストライクフレームが障壁を突き破る。
レイジングハートは四発のカートリッジを消費する。
「ブレイク!」
レイジングハートの先端に魔力が集まっていく。
「まさか!」
「シューーーーーーット!!」
なのはが叫んだと同時に魔力の大きな爆発が起こった。
爆発に巻き込まれたなのはは左肩を抑えながらもどうにか無事だった。
「なのはちゃん!」
キラはすぐになのはの傍に行く。
「ほぼ零距離、バリアを抜いてのエクセリオンバスター直撃・・・・これで・・・ダメなら」
『Master.』
なのはとキラは上を見上げるとそこにはキズ一つ付いていない闇の書の姿があった。
「もう少し・・・・頑張らないとだね」
「うん」

 

「私、こんなん望んでない。あなたも同じはずや、違うか?」
「私の心は騎士たちの心と深くリンクしています。だから騎士たちと同じように私もあなたを愛おしく思います」
闇の書は目を瞑り、はやてに話す。
「だからこそ、あなたを殺してしまう自分自身が許せない」
「!」
「自分ではどうにもならない力の暴走。あなたも侵食することも暴走してあなたを喰らい尽くしてしまことも止められない」
「・・・・・・覚醒の時に今までのこと少しは分かったんよ。望むように生きられへん悲しさ、私にも少しは分かる」
シグナムたちと同じ、ずっと悲しい思い、寂しい思いをしてきた。
「せやけど・・・・忘れたらあかん」
はやては手を伸ばし、闇の書の頬に触れる。闇の書は目を見開いて驚いた。
「あなたのマスターは今は私や、マスターの言うことはちゃんと聞かなあかん!」
はやての足元に白い魔方陣が現れる。

 

「ごめんね、アリシア。だけど、私は行かなくちゃ」
私はもう自分を始めたから、みんなのおかげで始めることができたから。
「うん」
涙をためるフェイトにアリシアは手を差し出す。
「あ・・・・」
そこにはバルディッシュがあった。
フェイトは涙を流しながらそれを受け取り、アリシアと抱き合った。
「ありがとう、ごめんね。アリシア」
「いいよ、私はフェイトのお姉さんだもん。待ってるんでしょ、優しくて強い子たちが」
「うん」
アリシアは顔を上げるとフェイトに笑いかける。
「じゃあ、いってらっしゃい。フェイト」
「うん」
フェイトが答えた瞬間、アリシアは光となって消えていった。
(現実でもこんな風にいたかったな)