リリカルクロスSEEDW_クリスマス

Last-modified: 2007-12-25 (火) 11:27:15

「そういえばフェイトと2人だけってのは久しぶりだね」
「そ、そうだね」
キラは笑いながら淹れたコーヒーをフェイトへと渡した。ハラオウン家のリビングにはキラとフェイトの2人しかいない。
アルフもリンディもエイミィも急な用事が入ってしまい、外出中なのだそうだ。クリスマスだというのに・・・・・・。
「せっかく久しぶりに皆で集まってお祝いできると思ったんだけどね」
「う・・・うん」
「どうしたの?フェイト。落ち着きないよ?」
キラはハラオウン家に着いてからフェイトが妙にそわそわしていることが気になっていた。
いつものフェイトらしくない、それが正直な感想だった。
「え!?そ、そんなことないよ!?」
「・・・・・・?」
慌てた様子で顔を赤くして手と顔をすごい勢いで横に振るフェイトを見てキラは?マークを浮かべていた。

 

フェイトが落ち着きがなかったのは1日前からだった。
せっかくのクリスマスだからということではやてから休暇をもらった隊長陣は思い思いのクリスマスを過ごすことにした。
フェイトはキラにハラオウン家でクリスマスを祝うと話し、キラも来ないかと誘ったのだ。
キラ自身も長い間住んでいた家だし、久しぶりに帰るのもいいねと笑って頷いてくれた。
「そういうわけだから、母さん。明日、キラと一緒にそちらに帰りますね」
そして、その旨をリンディへと連絡しておくことにした。
「ねぇ、フェイト」
今まで口に手を当てて黙っていたリンディが口を開いた。
「何?母さん」
「フェイトはキラさんのこと好きよね?」
「なっ!?」
いきなりそんな言葉を直球で聞かれて、フェイトは顔が一気に真っ赤になり、慌てて周りを確認する。周りに人がいないことにホッとする。

 

「いきなり何てこと言うの、母さん!」
「まぁ、聞かなくても分かるし、フェイトちゃんのその反応見たら尚更・・・・・ねぇ?」
「お、お義姉ちゃんまで」
リンディの近くで聞いていたのかエイミィがモニターから顔を覗かせる。フェイトはそう言われ、顔をまた赤くする。
「だったら、このチャンスを活かしなさい」
「チャンス?」
「そうよ、クリスマスにキラさんと2人だけで過ごせるのよ。こんな機会滅多にないでしょう?」
確かにこの頃はお互い隊長職なため忙しく、2人きりになることはなかった。
それにクリスマスもキラと過ごすことはあってもそこには家族または友達と祝う形であって2人きりはなかった。
「なのはさんとはやてさんには悪いけど、2人から1歩リードするチャンスだわ」
「1歩リードだなんて・・・・そんな」
「それじゃあ、なのはちゃんとはやてちゃんがキラ君を意識してないと思う?」
エイミィにそう言われてしまうと、フェイトは言葉を返せなくなってしまう。
今回のクリスマスだって私が誘った後、なのはがキラを誘ったらしい。はやても誘っていたかもしれない。
多分、自分が一番早くキラを誘わなかったら2人のどちらかとクリスマスを過ごしていただろう。
「ここでキラさんとの仲を一気に縮めるべきよ。私もキラさんなら安心よ」
「で、でも・・・・・どうすれば・・・・・」
「はいは~い、そんな時はお義姉ちゃんにまかせなさい」
エイミィが胸を張って答え、リンディ、エイミィによって作戦が立てられた。
そんなことが昨日あり、そして今に至る。

 

「それじゃあ、乾杯しようか?」
「そうだね」
そう言って2人はお互いグラスを手に持ち、笑い合う。
「メリークリスマス、フェイト」
「うん、メリークリスマスだよ。キラ」
料理は冷蔵庫に用意されていた。(リンディとエイミィが昨日のうちに下準備を終わらせていたもの、何故か2人分だけ)
それをキラとフェイトは軽く調理するだけでよかったのだ。
「料理まで準備してたのに急な用事なんて残念だね」
「う・・・・うん」
実際にリンディとエイミィに急な用事などはない。今、リンディたちがいる場所といえば・・・・・・。

 

「うふふ、こうやって見るとカップルにしか見えないわね~」
「そろそろ指示を出してもいい頃ですかね?」
「・・・・・・母さん、エイミィ、何やってるんだ?」
我が母親と我が妻がモニターを見てニヤニヤしているのをクロノは溜め息をついて見るしかなかった。
モニターにはキラとフェイトが食事している様子が映し出されている。
それを見てクロノは2人の考えが読めてさらに溜め息をついてしまった。

 

『フェイトちゃん、フェイトちゃん!』
(な、何?エイミィ?)
エイミィの通信にフェイトはおっかなびっくり返事をする。どうやら指示が出るらしい。
その指示を聞いたフェイトは顔を赤くしてしまう。
「どうしたの、フェイト?」
キラの問いかけに我に返ったフェイトは顔を赤くしたままフォークに刺したチキンをおずおずとキラに差し出す。
「・・・・・・・・あ~ん」
「・・・・・・・・へ?」
「あ、あ~ん」
そうして顔を真っ赤にしてフォークのチキンをキラの口元まで運んでくる。そんなフェイトにキラは目が点になっていた。
「・・・・・・・・・・」
そのまま黙ってしまうフェイト。キラは状況が全く分からなかった。しかし、このままにしておくわけにもいかない。
「あ、あーん」
キラはどうにかそれを口にした。味なんて全く分からない。自分がやった行動にキラもフェイトも顔から火が出そうだった。

 

「いいわね~、初々しいわね。ねぇ、クロノ?」
「フェイトちゃん、可愛いすぎだよ。ねぇ、クロノ君?」
「同意を求めないでくれ」
クロノは楽しげに喋る2人に溜め息をつくしかない。そして、フェイトとキラを気の毒にと思っていた。

 

それからお互い顔を赤くしたまま何も喋らずに食事は終了した。
フェイトの「あ~ん」は何度かあったが慣れることはなく、2人とも顔が真っ赤なままだった。
キラはリビングでぐったりした状態でソファーに潰れていた。フェイトのあの行動に精神的にダメージを受けていたのだ。
「フェイト・・・・・どうしたんだろ?」
フェイトは風呂に入っているから部屋にいないためキラはそんなことをボヤいていた。
あの行動を思い出しそうになり、キラは首を振るとテレビを付けた。

 

「あれ?キラ?」
風呂から上がったフェイトはテレビを付けたままソファーで眠っているキラを見つけた。
どうやら自分が落ち着くまで風呂に入っていたら長湯になっていたようだ。
「キラ、風邪引くよ?」
「う・・・ん・・・・あ、フェイト。ごめん、寝ちゃって・・・・・・て?」
キラは目をこすりながらソファーから起き上がるとフェイトを見上げ、絶句した。
「えっと・・・・・似合う・・・・かな?」
そこにはミニスカサンタのフェイトがいた。フェイトがそんな服を着るわけがない。しかし、頬を引っぱってみると痛い、夢じゃない。
そして、湯上りの所為かさらに色っぽく見えてしまい、キラは焦ってしまう。
「う・・・うん・・・・に、似合ってる」
そう言ってコクコク頷くキラにフェイトは真っ赤な顔をしたままだった。
「お、お風呂入ってくるね!」
キラはその場からそそくさと退場する・・・・・というか逃亡した。
「とりあえず着替えて!」
それだけを大声で叫びながら・・・・・・。

 

「今度、フェイトちゃんにプレゼントしようとしたのが役立ってよかった~」
「それにしても何でミニスカサンタなの?」
嬉しそうにモニターを見ながら喋るエイミィにリンディは質問した。
「これを使ってキラ君をクリスマスに誘惑してみたら~ってプレゼントするはずだったんです」
「なるほど、その出番がこんなにも早く回ってきたわけね」
「そして風呂上りの色っぽさとのコンボ!」
「・・・・・2人とも完全に楽しんでる」
クロノは母親と妻の行動に頭を抱えてしまっていた。

 

「・・・・・あの・・・・・フェイト?」
「な・・・・なななな・・なに・・・かな?」
「どうして僕の部屋に?」
風呂から上がるとフェイトの姿はなく、部屋に戻って寝たと思ったキラは自分の部屋にフェイトがいることに驚いていた。
言われたとおりフェイトはいつも着ている寝巻きを着ているわけだが・・・・。
「あの・・・・キラ・・・・話が・・・あるの」
「話?」
フェイトは顔を真っ赤にしながらも頷いている。キラも何だか緊張してしまう。
「あの・・・・私・・・・わた・・・・」
顔がさらに赤くなっても何とか言葉を伝えようとしたフェイトだったが・・・・・。
「・・ふぅ・・・・・」
そのまま顔を赤くしたままぶっ倒れてしまった。
「わぁ~っ!?フェイト!?」
いきなり倒れたフェイトにびっくりしながらもすぐにフェイトの元へと駆け寄る。どうやら気を失ってしまったらしい。

 

「あちゃ~、緊張しすぎてフェイトちゃんが倒れちゃうとは・・・・」
「もうちょっとだったわね~」
リンディとエイミィは今までの溜まりに溜まった緊張でダウンしてしまったフェイトを見ながら苦笑いを浮かべてしまう。
さすがにキラの部屋に行かせて告白させるのは急すぎたのかもしれない。
「あ~、クリスマスだってのに何をしてるんだろうな」
そう言ってガックリと肩を落とすクロノを七面鳥を頬張りながらアルフが肩にポンと手を置いていた。

 

夢を見ていた。それは昔の夢、今の夢・・・・。
プレシア事件でフェイトを助けるために戦ったキラ。最後にいなくなってしまった時は悲しかった。
闇の書事件でキラが帰ってきたときは嬉しかった。そして、キラは最後まで諦めず戦った。
所属が分かれてしまってもフェイトやみんなの心配をしてくれた。
そんなキラを自分は・・・・・・・。
目の前にキラの顔があった。
フェイトは何の躊躇いも疑いもなく・・・・・・・。
「私はあなたの・・・・・キラのことが好き・・・なんだ」
その言葉が自然と出た。
目の前のキラは少し驚いた顔をしたが、やがて穏やかな笑顔で答える。
「僕もだよ」
二人の距離が縮まった。

 

『それで、関係は順調?』
「う・・・うん、今から一緒に出かけることになってる」
あれからキラとフェイトの関係は一気に縮まり、順調のようだ。
あの時、フェイトは自分が目が覚めていることに気が付くと盛大に慌てたが、それも少しだけだった。
やがて、キラと目を合わせるとお互いにっこりと笑い合っていた。想いを伝え合うことができ、2人とも嬉しそうだった。
そして、その様子を観察していたリンディとエイミィは万歳をし、クロノは溜め息をつきながらも口の端を少し持ち上げて笑っていた。
「フェイト?準備できたかな?」
部屋の前からキラの声が聞こえてきた。
「うん、今行くよ。それじゃあ、母さん行ってくるね」
『えぇ、いってらっしゃい』
そう言って微笑むフェイトの顔は幸せそうだった。