リリカルクロスSEEDW_クリスマスはやて

Last-modified: 2007-12-26 (水) 21:06:52

「なんや皆に悪いな~」
「そんな事ないよ。はやてが一番頑張ってるんだから、皆だってそう思ってるよ?」
キラとはやては海鳴の街を一緒に歩いている。街はクリスマスの装飾でキラキラと輝いている。
2人が街を歩いている理由はこうだった。
クリスマスが近づいてきているため、はやてはなのはたち第97管理外世界の面々にクリスマス休みをプレゼントした。
しかし、隊長陣全員がいなくなるわけにもいかない。そのため部隊長としてはやては残る予定だった。
そのことを聞いた騎士たちはその意見に反対、自分たちが残るからはやては休めということだった。
もちろん夜には隊舎に戻って八神家メンバーで祝う予定である。
 
「でも、キラ君が私に付き合ってくれるとは思わんかったな~」
「そうかな?」
キラはクリスマス当日、シグナムたちにはやてが1人で寂しくないように付き合ってやってくれと頼まれていたからだ。
その言葉にキラは快く頷いていたのだった。その後、はやてに買い物に誘われたというわけだ。
「お互い独り身同士やし、寂しいクリスマスやなくて良かったな~」
「あはは・・・・」
はやてとキラはそんな会話をしながら笑いながら街を歩いた。
「今日キラ君を誘った理由話してへんかったよな?」
「うん」
そこではやては騎士たち全員にプレゼントを買って上げたいそうだが、色々迷ってしまいそうだったので相談相手が欲しかったらしい。
「なるほど、僕を誘ったのはそういう理由だったわけだね。もちろんOKだよ」
キラはそうやって微笑むが、はやてはボソリと呟いた。
「それだけやないんやけど・・・・」
「うん?どうしたの、はやて」
「ううん、なんでもないよ。OK貰ったことやし、行こうか」
そう言って進むはやてにキラは?マークを出しながら付いていった。

 

しかし、プレゼント探しは難航していた。
「う~ん、皆何が欲しいんやろ?」
「難しいね」
はやてとキラはお互いに頭を捻るが、良いプレゼントが思いつかない。
キラは騎士たちが何が欲しいかと聞かれた時のことを想像してみた。
(はやての幸せ)
そう本気で答える全員の姿がすぐに思いついてしまった。そのことを考えると少しフッと笑いながらはやてを見てしまう。
「ん?どうしたん?キラ君」
キラの視線に気付いたのか首を傾げるはやて。
「ううん、はやては皆が大好きなんだなって思ってさ」
「当たり前や、大事な家族なんやもん」
はやてはとても幸せそうに、そして嬉しそうに笑った。その笑顔をキラはとても綺麗だと思い見惚れていた。

 

「見つからないね」
「そうやね~」
キラとはやては散々歩き回ったがいいものが見つからず、とりあえず昼食を取ろうということで喫茶店に入った。
「あら?はやてちゃんにキラ君?」
いきなり呼びかけられて2人は驚きながらも声の方向を見た。
「あ、石田先生」
「どうもお久しぶりです」
近くのテーブルで昼食を取っていた石田先生が声をかけてきていたのだ。2人はすぐに近くに行って挨拶をした。
はやては石田先生の隣に座り、キラは2人の正面に座った。
「本当に久しぶりね」
石田先生は嬉しそうに笑いながら、はやてとキラを見比べるとはやてに小声で話しかけてきた。
「もしかしてデートの邪魔しちゃったかしら?」
「へ!?」
その言葉にはやては驚いて声を上げてしまう。キラはそんな2人を不思議そうに見ていた。
はやては自分の口に手を押さえる、どうやらキラの様子から石田先生の声は聞こえていないようだ。

 
 

「ち、違います。ヴィータたちのプレゼント選びに付き合ってもらってるだけです」
はやては少し顔を赤くしながら小声で反論する。
「そういうのもデートって言うわよ?」
「わ、私たちはまだ付き合ってないし、デートは好きなもの同士がするもんやし・・・・・」
はやては人差し指をあわせて呟いている、その頬は真っ赤だった。
「ねぇ、キラ君」
そんなはやてを見て石田先生は少し笑うとキラに話しかけていた。2人がコソコソ話していたためキラはいきなり話を振られて驚いていた。
「何ですか?」
「キラ君ってデートしたことあるかしら?」
「デート・・・・ですか?う~ん、なのはやフェイトと出掛けることはありますけど、あれってデートなのかな?」
どうやらキラ自身もはやてと似たような考えの持ち主のようだ。
重要なのは相手がデートをしたい人間であるかないか、が問題である。
はやてが意識していても、キラが意識していなければデートの意味がない。
「じゃあ、キラ君。はやてちゃん、可愛いわよね?」
「ちょ、ちょっと石田先生!」
さすがのはやても石田先生の服を引っ張って顔を赤くしながら小声で抗議する。しかし、石田先生はそれを無視した。
キラはまた突然で返答に困る質問をしてきた石田先生を不思議に思いながらも考えた。
最初はやてと話していたとき、騎士たちの会話をしたはやての顔がとても印象に残っていたのを考えると頷いていた。
「そう・・・・ですね」
「っ!?」
キラの言葉にはやては顔全体が赤くなり俯いてしまう。湯気が出そうなくらいだ。
はやてはあのキラが自分を可愛いといってくれたことが素直に嬉しく、そしてとても恥ずかしかった。
「はやてちゃんに彼氏がいたらその人幸せそうよね~」
「そう・・・思いますけど・・・・なんでこんな質問するんですか?」
さすがのキラもこうポンポンと質問が飛んでくれば疑問に思ってしまう。
「いいえ、別になんでもないわよ。気にしないでね」
そう石田先生は笑って答えるが、キラは納得がいかないのか首を捻っていた。
「良かったわね、はやてちゃん」
そう小声で話しかけてくる石田先生の言葉にはやては何も返せず顔を赤くしたまま俯いていた。

 

「はやて?」
「・・・・・・・・」
「はやてってば」
「・・・・・・え?あ、どうしたん、キラ君」
「大丈夫?ボ~ッとして顔が赤いし風邪引いたんじゃないの?」
そう言ってキラははやての額に自分の額に当てている。はやてはそんなキラの行動に固まってしまっていた。
「やっぱり熱がある。大丈夫、はやて?」
額を離してキラは心配そうにはやてを見るがはやては顔を真っ赤にしたままコクコクと頷いた。
「だ、大丈夫!うん、大丈夫や!キラ君は心配性やな~」
そう言ってはやては赤くなった顔を見せたくないのか先を進み始める。キラはまだ心配そうだった。
「でも、ありがとな。キラ君のおかげでプレゼント決まったし」
「どういたしまして」
はやてはまだ少し赤い顔をしていたが笑顔でキラを見た、キラも笑い返していた。

 

そして、数時間後
「それじゃこれは僕から八神家の皆へのプレゼントだよ」
キラははやてと隊舎に戻った後、八神家のクリスマスパーティーに参加させてもらっていた。
ヴィータたちもキラの参加を予想していたのか、キラの分も準備してもらっていたのだ。
そんなはやてたちにキラは自分が持ってきたプレゼントの箱を渡し、はやてが蓋を開ける。
「これって・・・・・」
「オルゴール?」
そこには結構大き目のオルゴールがあった。
しかし、みんなの視線はすぐにそのオルゴールの上に乗っている人形に注がれる。
「これは・・・・・」
「私たち?」
そんなはやての言葉にキラは嬉しそうに頷いた。
中心にはやての人形とそれを囲むようにリインフォース、ヴィータ、シグナム、シャマル、ザフィーラ、リインフォ-スⅡの人形があった。
全部の人形がとてもよく出来ていて、そして嬉しそうに笑っていた。
「すごい、すごいです~」
リインⅡはそれを目をキラキラさせながら眺めている。他の皆もとても嬉しそうだ。
「気に入ってくれたかな?」
「もちろんや!」
キラの質問にはやてが全員を代表にしてとても嬉しそうに頷いた。

 

翌日
「まったく・・・・だから風邪じゃないか?って聞いたじゃないか」
キラはベッドに顔半分を布団で隠して申し訳なさそうなはやてを叱る。
「ごめんなさい」
はやては素直に謝っていた。
実は昨日のクリスマスパーティーの終盤ではやては倒れてしまったのだ。
原因は日々の激務の疲労、そして外で冷えたり熱くなったりをした所為で風邪を引いたらしい。
「今日もはやてはお休み、いいね?」
「はい」
キラはすっかり落ち込んでしまっているはやての頭を撫でながら言った。
「僕も今日はお休み」
「え?」
キラの言葉にはやては顔を布団から出してキラを見る。
「今日は1日はやての看病をするよ」
「何で?」
はやてはそんな言葉を言ってしまう。本当はそんなこと言いたくはない。嬉しい、ありがとう、そう言いたかった。
でも、その言葉の方が先に出てしまっていた。
「一緒にいたいから」
「・・・・・・え?」
キラが笑顔で答えた言葉にはやては耳を疑ってしまった。今、キラは何と言ったのか?一緒にいたいと聞こえたけれど・・・。
「はやてと一緒にいたいんだ、ダメかな?」
そう聞いてくるキラにはやてはフルフルと首を横に振った。しかし、言葉が全然出てこない。
キラはそのことに気にしないのか、昨日のプレゼントのオルゴールを持ってきていた。
「ねぇ、はやて。僕ははやてと一緒にいたいんだ・・・・・好きって意味で」
「・・・・・・・・」
「これからも一緒にいて・・・・いいかな?」
はやては頭が真っ白になりながらも頷いていた。いつの間にか涙も零れていた。
「良かった、じゃあこれを・・・・・」
キラはそう言うと自分のポケットから小さい何かを取り出していた。
それをはやては見て呟いた。
「キラ君の・・・・人形?」
「うん、これを・・・・ここに・・・・っと」
そう言うとキラの人形ははやての隣に手を繋ぐように置かれた。
はやては最初プレゼントを貰った時、そのオルゴールに違和感があった。バランスが悪い気がしたのだ。
しかし、キラが自分の人形を乗せるとその違和感が消えていた。
それを見てはやては思った。もう自分にとってはキラは一緒にいてもらわないと困る人間だったようだ。
「一緒なんやな」
そう呟いたはやての言葉にキラは笑顔で頷いた。そっとはやての涙を拭ってあげた。
キラが決意した時は、はやての笑顔を見たときだった。こんな笑顔をずっと見ていたい、そう思えたのだ。
一緒にいたい、一緒にいてはやての笑顔を見たい。自分の大好きな人の笑顔を。
そう思ったキラは頼んでいたオルゴールを急いで改造して人形を作ってもらったのだった。
「ずっと一緒だよ」
「うん!」
そう言ってはやての幸せそうな笑顔を見てキラは嬉しそうに微笑んだ。やっぱりこの笑顔をずっと見ていきたい・・・・・・と。
その部屋にオルゴールの幸せそうなメロディーが流れていた。

 

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