リリカルクロスSEED_番外編

Last-modified: 2007-11-17 (土) 18:50:49

「うっ・・・・」
キラは目を覚ます。
「僕は・・・・一体・・・・」
段々頭がクリアになり色々と思い出してくる。
「そうだ!ジュエルシードの反応があってフェイトちゃんと向かったんだ」
キラは辺りを見回すがフェイトの姿がない。
「フェイトちゃん?フェイトちゃーん!」
大声でフェイトを呼んでみるが返事がない。周りにはいないようだ。
「一体どうなってるんだ?」
先ほど自分たちに起こったことを思い出す。

 

今から数十分前・・・・・・・。
「キラ、新しいジュエルシードを見つけた。まだ発動はしていないみたい」
「分かった、行こう。アルフさんは結界を」
「まかせな」
キラとフェイトたちは管理局に見つからないようにジュエルシードを集めていた。
今回三人が向かった先には病院だった。
「発動した!アルフ!」
「あいよ」
アルフに結界を任せ、キラとフェイトは一つの病室に行き着いた。
そこには酸素マスクを付けた一人の女の子が眠っていた。
隣には絵本が置いてあった。
「この子が発動させたのか?」
「気をつけてキ・・・・」
フェイトが言い終わらないうちにキラとフェイトは光に包まれた。

 

「これはジュエルシードが願いを叶えたってことか」
キラは一通り思い出した後、周りを確認する。
なにやら視線が高くなっていることに気が付いた。
「あれ?何で元に戻っているんだ?それにバリアジャケットまで着てる」
キラは自分の体が小さくないことに驚いた。
今まで小さい体になっていたため何か少し違和感がある。
「これもジュエルシードの影響なのかな?」
しかし、今のキラにはそれ以外考え付かない。

 

「そうだ・・・・ストライク?」
『Yes, sir.』
ストライクがあることに安心するキラ、もし何かあった時戦えなければ意味がない。
キラはストライクを握り締める。
とりあえず現状確認をするべきと考え、再度周りを見る。
そこは病室でも自分が知っている町でもなかった。どうやら森の中のようだ。
辺りを見回すと建物が見えたが・・・・・。
「あれって・・・・・お城?」
中世ヨーロッパのお城を思い出すような作りの城だった。
「ともかくフェイトちゃんを探さないと」
キラは念話を使おうとしたが・・・・・。
「繋がらない?何で」
フェイトに念話が通じない。フェイトがこちら側に来ていないのか、それとも妨害されているのか。
前者も後者も自分にとってはやっかいなものだ。
探索魔術も転移魔術も習っていない自分にはフェイトを探す方法は足しかなかった。
「仕方ない、ともかくお城のほうに向かってみよう。フェイトちゃんが来ているなら目立つお城の方に行くだろうし」
キラはフェイトと合流できることを祈りつつ城の方へと向かった。

 

城の下には街が広がっていて城下街といったところだろう。
キラは街に入るとまずは城の方へ向かう。
「ともかくここがどこかとか色々確認しないと・・・・・」
そうして、城の方へ向かっていくと大勢の人が集まっているのが見える。
「?・・・何をしているんだろう」
キラがそちらに向かうと大勢の人たちは城の方向を見て何か喋っているようだ。
大勢の人が見ている方向をキラが見てみる。
「姫様よ~」
「おぉ、なんて美しいんだ」
「さすが国一番の美しさをもった女性だ」
どうやらお姫様が街の人たちに手を振っているようだ。
しかし、キラがそれを良く見ると・・・・・。
「フェイトちゃん?・・・・・でも違う」
そこにはフェイトが成長したような女性が笑顔で手を振っていた。
その笑顔にキラは少し見惚れていた。

 

「フェイトちゃんもあんな笑顔で笑うことが出来るのかな」
あまり表情を見せることが少なかったフェイトもキラと関わって表情が豊かになってきた。
しかし、あそこまで綺麗に笑ったところを見たことがなかった。
「あんな風に・・・・・笑わせてあげたいな」
キラはそんなことを呟きながら姫を見ていた。
「でも、これは一体どういうことなんだ?」
あれはフェイトじゃないだろう。そうだとしたらフェイトは一体どうしたのだろう。

 

(むかしむかし、あるところにとても美しいお姫様がいました)
「!?」
キラは辺りを見回すが声の主が見つけられない。
(お姫様はお城で幸せに暮らしていました)
「声が頭の中に響いてくる、念話のようなものか?」
小さな女の子の声だ。
「まさか・・・・・あの病室で眠っていた子か?」
(しかし・・・・・・)
いきなり辺りが暗くなり、雷が鳴り始める。
(姫の美しさに惚れた魔王がお姫様をさらっていきました)
「な!?」
キラは城の方を向くと大きな黒い化け物がフェイトに似たお姫様を捕まえていた。
額に青く輝く宝石が見える。
「ジュエルシード!!」
(魔王は姫を自分のお城に連れて行きました)
魔王と姫は霧が晴れるように消えていっていた。
「なんだっていうんだ、一体!」
キラは突然のことに頭が混乱しそうになるが、一つ一つ整理していく。
この世界はあの女の子がジュエルシードに願った世界、つまりは仮想世界。
そして、あの場にいたフェイトがお姫様のモデルになって登場した、フェイト自身ではないだろう。
魔王の額の宝石は間違いなくジュエルシード。
「何ていうか今回のジュエルシードはやっかいだな」
どうやらこれは今までのようにはいかなくなりそうだ。
魔王を倒してジュエルシードを封印すること。そうすればこの世界からも抜け出せるだろう。
そうなると魔王の城に向かわなくてはならない。

 

(王様は魔王を倒し、お姫様を助けてくれた人とお姫様を結婚させると国に伝えました)
「多分、あの子はこの物語を見ている側ってことか、でも・・・・」
ベタな展開だなと思ってしまった。
(しかし、皆、魔王が怖いのか。誰も助けようとする人がいませんでした)
「・・・・・・そういうことか」
キラはシナリオが読めたのか、城に向かった。
「僕が元の姿になったのもこの方がいいからなんだろうな」
この物語に何か思い入れでもあるのだろうか、キラはため息をつくしかなかった。
(お城に一人の青年が来ました)
キラは王様に会うと考えたシナリオのセリフを言うことにした。
「僕がお姫様を助けに行きます」
「なんと勇気のある青年だ」
(青年は王にそう言うと王は感激しました)
「これが魔王のいる城への地図だ。姫をよろしく頼むぞ、勇者よ」
キラは魔王の城の地図を渡された。これで場所が分かり助けに行ける。
(王様は勇者に妖精を一人付けることにしました)
「え?」
キラはそのシナリオには少しだけ驚いたが妖精の姿を見てもっと驚いた。
「こんにちは、勇者様。私は妖精のなのはと言います」
妖精の姿をしたなのはがいた。
「こ、これは予想外だな」
キラは苦笑いをしながら妖精なのはとともに街を出た。
(勇者様と妖精は二人で魔王の城へと向かいました)
地図を見るとここからかなりの距離があるようだ。
「ストライク、エールモード」
『Yes, sir. Aile mode. Set up.』
赤い翼がとライフルとシールドを装備する。
「勇者様は魔法も使えるんですね~」
妖精が驚いたようにキラを見つめる。
「さっさとこの物語を終わらせないとね。長くも付き合ってられないから」
キラは魔王の城の方角に向かい飛んでいく。
「あの子には悪いけど物語を短縮させてもらうよ」

 

魔王の城が見える距離まで来た時だった。
『Caution.』
「何!?」
雷がキラに向け連続で落ちてくる。キラはすぐに回避しながら進む。
しかし、避けきれないものはシールドで防御する。
「くそっ、もうちょっとなのに!」
「勇者様、一旦下の森に降りましょう。空の上だと狙い撃ちです」
「向こうもそう簡単には近づかせてもらえないのか」
キラは下に降りると雷が止んだ。
「ここからは歩いて行けってことか、ストライク。ソードモード」
『Yes, sir. Sword mode. Set up.』
赤い翼が消え、背中にシュベルトゲベールを背負う。
「勇者っぽくしてみてあげたけど・・・・これであの子は満足かな?」
空を見上げながらこの場面を見ているであろう女の子に語りかけた。
その後、キラはため息をつきながらも魔王の城に向かい歩き出す。

 

(そして、ついに勇者は魔王の城に辿り着きました)
今のキラにとってその言葉はため息をつかせるものの他なかった。
「勇者様、気をつけてくださいね」
「うん、妖精さんもね」
キラは魔王の城へと入っていく。
中には魔王の城に辿り着くまでに戦った化け物がたくさんいた。
「くそ、数が多い!ランチャーモード!」
『Launcher mode. Set up.』
「吹き飛べーーーーっ!!」
アグニをキラが構え、化け物たちを一掃する。
敵を倒し終えるとキラは上に続く階段を上っていく。
「狭い通路ではランチャーもソードも使いにくい、ストライク!」
『Normal mode. Set up.』
キラはライフルとシールドを持つと敵を倒しながら上に上がっていく。
やがて大きな扉が現れる。
「この奥か」
キラは扉を開けると広い部屋に出た。王座に魔王が座っているのが見える。
姫はその上でバインドによって十字架に架せられて気絶しているようだった。
「やっと来たか、勇者。待ちくたびれたぞ」
「だったら飛んでるところを狙わないでくれないかな」
「ふん・・・・・小童が・・・・」
「お姫様を返してもらうよ」
『Sword mode. Set up.』
キラはシュベルトゲベールの切っ先を魔王に向ける。

 

「やってみろ、勇者よ!」
キラはシュベルトゲベールを構えると真っ直ぐに魔王に突き進む。
魔王も自分の剣を取り出すとキラに向かって振り下ろす。キラはそれをどうにか受け止める。
「くっ!パワーはそっちが上か。なら!」
キラは剣を受け流すとマイダスメッサーを投げる、魔力刃のブーメランが魔王の足に当たり魔王はバランスを崩す。
「おのれーーー!!」
キラはパンツァーアイゼンを天井のシャンデリアに掴ませ、魔王の剣を上に飛び避ける。
そして、シャンデリアを斬り落とし魔王に直撃させる。
「ぐおぉぉぉぉ!」
キラは距離を取って着地する。
「やったか?」
シャンデリアが落ち、砂煙が舞い様子が見えなくなっていた。
次の瞬間、長い何かがキラを縛り上げる。
「なっ!?・・・・ぐっ!」
それは長い尻尾だった。
「お約束過ぎて何も言えないね・・・・・それが本当の姿ってわけだね」
煙が晴れた先にはドラゴンがいた。
「この姿になった私は誰にも負けん!」
キラを壁に何度も叩きつけ、投げ捨てる。
「がはっ!」
全身を守りきれなかったのか所々出血している。急所を防いだため他のダメージを受けてしまった。
キラはどうにかシュベルトゲベールを杖代わりに立ち上がる。
「負けるわけには・・・・・いかない」
「まだ立つか」
「僕は守ると誓ったんだ、だから負けるわけにはいかないんだ!」
キラの中で何かが弾ける。
魔王の攻撃をことごとくかわしていく。
「私もお手伝いします!」
妖精が作った魔法陣がキラの体を包んでいくとキラの傷が治っていく。
「うおおぉぉぉぉっ!」
キラはシュベルトゲベールを思い切り魔王の目に投げつける。
「ぎゃああぁぁぁぁぁっ!」
魔王が目を押さえ悲鳴を上げるうちにキラは魔王の額に向かって跳躍した。
「でえぇぇぇぇいっ!」
両手で持ったアーマーシュナイダーを額の宝石に突き刺した。
「ぐおぉぉぉぉっ!」
その瞬間、魔王が叫びを上げて倒れると消えていった。

 

(勇者は魔王を倒しました)
「え?あれ?まだ続いているの?」
ジュエルシードだと思っていたものはただの魔王の弱点だったようだ。
「勇者様、お姫様を・・・・・」
そう妖精に言われ床で眠っているお姫様のほうに向かう。
どうやらどこも怪我はしていないようだったが、どんなに呼んでも揺さぶっても起きない。
まるで童話に出てくる眠り姫のように・・・・・・。
「ま・・・・・まさか・・・・」
キラの背中に嫌な汗が流れる。
「勇者様、姫様を起こしてあげてください」
「・・・・・・ど、どうやって?」
「も・ち・ろ・ん・・・・・キスです♪」
この時ばかりはなのはに似ている妖精が悪魔に見えた。

 

「フェイト、フェイト!キラも!」
「う・・・ん・・・・」
キラは目を覚ますとアルフの顔があった。
「あれ?ここは・・・・・」
周りを見ると病室にいた、どうやら戻ってきたようだ。
「戻って・・・・・これたのか・・・・・」
「一体何があったんだい?あたしが来た時は二人とも倒れていたんだ」
「ジュエルシードは?」
「封印はされたみたいだね」
「良かった・・・・あれだけのことしたからね。封印できていなかったら泣いているよ」
キラは苦笑いでアルフに答えた。
「?・・・・まぁ、いいさ。それよりフェイト!起きなって!」
フェイトはアルフにを揺さぶられると瞼を開けた。
「あれ?ここは・・・・・?」
「良かったよ、フェイト~。びっくりしたんだから」
「ごめんね、アルフ。夢を見ていたみたい」
「夢?どんな?」
「それは・・・・・・」
「フェイトちゃん、大丈夫だった?」
「!?」
フェイトはキラの声にビックリすると顔を真っ赤にしていた。
「え・・・えっと・・・・その・・・・あの」
「どうしたんだい、フェイト。顔が真っ赤だよ?」
「な、何でもないの!」
キラはまさかといった表情でフェイトを見ていた。とてつもなく嫌な予感がする。
フェイトは真っ赤なままジュエルシードをバルディッシュに封印していた。
その後、キラとフェイトは終始お互いに会話がなかった。

 

「あのさ、フェイトちゃん」
「な・・・何かな。キラ」
キラはマンションに戻ると沈黙に耐えかねてフェイトに話しかけていた。
「もしかしてフェイトちゃんあの時、変な夢を見なかった?」
「!?」
フェイトの反応からすごく分かりやすかった。
「つまり・・・・・あのお姫様は・・・・やっぱり・・・・・」
「~~~~~~っ!」
フェイトの顔が真っ赤に染まって俯いてしまうのを見て確信してしまう。
「ごめんなさい!!」
キラが深々と頭を下げてフェイトに謝った。
「え?」
「もっと方法があったよね。あんな行動とってしまって本当にゴメン!」
キラはあのお姫様がフェイトじゃないと思っていたためこれは予想外だったのだ。
そんなキラにフェイトは首を振る。
「もしキラが終わらせてくれなかったら、もしかしたら私たちは一生あそこから抜け出せなかったかもしれない」
そう言うとフェイトはキラの頭を上げさせて笑いかける。
「だから・・・・・気にしないでいいよ」
「・・・・・でも、やっぱり」
「それにね・・・・・キラなら私も・・・その・・・・嫌じゃ・・・」
「え?今なんて言ったの?」
声が小さすぎてキラには聞こえなかった。
「な、なんでもないよ。ともかく気にしないで!」
フェイトはそういうと顔を真っ赤にして部屋に戻っていってしまった。
それからフェイトはキラと顔を合わせる度に顔を赤くしてしまい、喋ることがなかった。
キラはアルフにフェイトに何をしたのかと睨まれるなど散々な日が何日か続いたそうな・・・・・。
後日、病院に行くと彼女は病室にはいなかった。彼女は一体どうなったのかキラとフェイトは知らない。

 

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