リリカルSEED運命_第01話

Last-modified: 2007-11-17 (土) 18:17:49

目覚めたとき、彼女には何もなかった。
負傷で全身の自由は奪われ、さらにはその怪我のせいか記憶までもが失われていたのだ。
身に付けていたもので完全炎上を免れたわずかな私物から、辛うじて名前こそ判明したものの、
ファミリーネームは炎の向こうに消えた。

そして医師のカウセリングと治療を受けて、彼女は己が数奇な運命に巻き込まれたことを知る。
記憶喪失とは言葉にすればひとつだが、症状は様々だ。
彼女は自分自身のことは覚えてはいなかったが、それ以外の記憶に不備は見られなかった。
食事や読み書きといった日常生活に支障はない。
そして今自分がいるこの世界は、先日まで自分がいた場所とはまさに次元を隔てて存在する場所であることを知った。

彼女を保護した『時空管理局』という組織は、こういった次元跳躍事故などの対処も行っており、
彼女が本来いるべきハズの次元世界も探すことを約束してくれた。
…最も、彼女から得た情報からみるに、彼女の出身世界は管理局がまだ認知していない世界であったので、
当分は帰れないことを告げられたが、彼女はそれを大して意識しなかった。
記憶がないのなら…別に帰っても帰らなくても同じではないのか?
話によれば自分はこの世界に来たときには既に大怪我していたらしい。
ということはもし自分が年齢相応の生活を送っていた上で何やら大きな事故や事件に巻き込まれれば、家族もそれに巻き込まれていても何も不思議はない。
つまり戻ったところで天涯孤独には変わらないのではないか? という想いが胸を締めていたのだ。
怪我の影響か、時折痛みと不自由を感じる右腕を押さえて彼女は病室の天井を仰いだ。
全てを失ったと、気づいているはずなのに…

涙は、出なかった。

そして迎えた退院の時。
「退院おめでとう。それとあなたに一つ伝えなければならないことがあるの」
保護官から告げれらた言葉は、彼女の新たな道のスタートライン。

この世界には『魔法』が存在すること。
そして自分にその『魔法』を扱う才能があること。

端的に言えば告げられたのはその2つの事実。
もちろん二重に驚いた。
自分の認識では漫画やゲームの中の存在でしかない『魔法』が、
これだけ科学的に発達している社会に存在しているなどとは予想もしなかった。
ただ現実に『魔法』を目の前にすれば嫌でも信じざるを得なかった。
『魔法』の存在は案外すぐに納得してしまったが、『魔法』の存在がない世界の住人である自分に本当にそんな力とは思えなかった。
そう告げると保護官は笑って教えてくれた。
『魔法』の存在しない世界にも、魔法の才能がある人間がいることは珍しくないと。
現にこの時空管理局には『魔法』の存在しない世界出身の魔道士は何人もいて、提督位まで上り詰めるような凄腕の人もいると。
あなたと同じかそれよりも小さな年で、管理局の魔道士全体の中でも5%以下しかいないAAAランクの魔道士の少女もいると。

魔力調査に協力してもらえないかと問われ、見ず知らずの自分を保護治療してくれた恩もあるので彼女はそれをすんなりと承諾する。
子供ゆえに未知なるものに興味があったことも忘れていない。

その結果、彼女はB程度の魔力量に、補助的な魔法に長けた魔力資質があると診断された。
これをどこからか聞きつけたのか、管理局のいくつもの部署からオファーの打診が彼女の元に舞い込んでくる。

そして彼女は選んだ、新しい道を歩くことを。
自分の居場所を掴み取るために。

目覚めてから、2年。
彼女は今、ここにいる。

時空管理局・データベース『無限書庫』。
それが今の彼女の勤め先である。
この世界は就業年齢が低いので、彼女のような少女が働いていても不思議ではない。
今彼女は無限書庫にやってきた一人の客人を、書庫責任者のオフィスへと案内していた。
「しかしいつの間にそんな部屋なんか作ったんだ」
「司書長に就任したときに用意した、とおっしゃっていましたが」
若いとはいえ客人は提督位の人物、だからなのか、彼女の対応はバカ丁寧。
「…この広い空間だ、確かにそういうのを増設するには困らないな」
「はい。今は司書の休息スペースなども設置しています」
「僕がここに入ったときとは考えられないほど整頓されたという確かな証拠だな」
あの混沌をここまでにしたアイツの能力には恐れ入る、と若き提督は苦笑した。
「スクライア司書長、お客様です」
「はい、どうぞ」
彼女がドアをノックして用件を伝えると、内側からロックの開く音がする。
「僕だ、ユーノ」
客人が司書長室に入っていくのを見送りながら、なんだか随分親しそうだなと彼女は感じていた。

「どうしたんだクロノ、直接来るなんて珍しい」
「昼休みの後だからな」
読んでいた本を閉じたユーノはクロノに向き直る。
「で、用件は?」
「以前、新たに見つかった管理外世界の資料要求をしただろう」
「ああ、今まとめてるとこだよ」
でも急ぎじゃなかったよね? と疑問を浮かべるユーノ。
基本的に急を要する用件しか持ってこないクロノにしては珍しく期限がガチガチになっていない依頼だったので、
部下の教育を兼ねてユーノはそれを下に投げていたのだ。
「ああ。既に滅びた世界で、別段何も動きがあるわけでもなかった。だから急ぎではなかった」
だが情勢が変わった、とクロノが口調を変えユーノの目つきも変わる。
「つい先ほど、その世界のある遺跡で正体不明のエネルギーと現象が確認された」
「正体不明?」
「ああ。だからフェイトを派遣することになったんだが、そんなところに一人で送り込むのは少々不安でね」
もちろんフェイトの実力は知っているが、万が一があったら困ると言うクロノをユーノは少し冷ややかな目で見ていた。
(…このシスコンめ)
「というわけで、遺跡探索のエキスパートである君に同行を願いに来たわけだ」
「…基本的に僕忙しいんだけど?」
「今日の依頼件数は多くないことは既に調べが付いているんだが? それに未知の遺跡と聞いて興味がないわけはないんだろう?」
苦し紛れの言い訳では通らない。さすがに6年の付き合い、そして提督位は伊達ではないらしい。
(まあフェイトを危険な目に合わせたくない気持ちは判るよ。僕だって友達を好き好んでそんな目に合わせたくないし)
「…了解しましたハラオウン提督、調査任務に同行します」
「よろしく頼む。アースラも整備点検が終了次第向かうので先行して調査に当たってくれ」
一時間後に78番ポートに来てくれ、と告げクロノは退室していく。

通信で副司書長を呼び出し、今日の仕事の確認引継ぎを行ったユーノは調査の準備のためいったん自室に戻ろうと立ち上がろうして…
「…そうだ、これやっとかないと」
急に思い出したのか、ペンを取り出し短い手紙のようなものを書き上げそれを封筒に入れ手にしたまま部屋を出る。
そして目的の人物を探し、彼女の名を呼ぶ。
「何でしょうか?」
自分の下へやってきた少女に手紙を渡す。
「悪いんだけど、この手紙を空いた時間を見つけて高町教導官に届けてくれないかな」
できれば就業終了前までに、と言葉を締めくくる。
「高町教導官にですね、判りました」
「うん。よろしく頼んだよ」

ユーノはフェイトと共に、謎の反応があった遺跡へと赴いた。
どのくらい長い間こうしてあったのかはわからないが、大分古そうな遺跡だった。
入り口と思われる穴が幾つも穿たれている。
「見つかった反応は最深部だと思うんだけど」
観測したデータを思い出して言うフェイト。
「でも今は微量にも観測されていないか…」
ユーノの足元に淡緑色のミッドチルド式魔方陣が展開される。探索系の魔法を発動しているのだ。
「…どう?」
その魔方陣が消えてから問いかけるフェイト。
「やっぱり魔量反応もエネルギー反応もない。この様子だと多分魔法系統のトラップもない。
赤外線の装置がまだ生きてたら単純な銃撃くらいはあるかもしれないけど」
床を踏まずに浮遊してバリアを張っていれば問題なく進めると思う、と告げるユーノに少し頭をかしげるフェイト。
彼女も執務官としてこういった任務には度々就いている。あまりに無防備な遺跡に疑問を隠しきれないのだ。
「…確かにどう見ても軍事施設っぽいんだけど。もしかしたらこの世界には魔法が存在していなかったんじゃないのかな?」
なのは達の世界と位相も近いみたいだし、というと少し納得した顔になる。
「でもそうなると見つかったあの反応はなんだろう?」
観測されたデータはとても科学技術だけで起こせるレベルを超えていたのだ。
「端的に考えるなら、次元跳躍事故でロストロギアが流れ着いたあたりなんだろうけど」
異端は目標のほうだと言うのがユーノの意見。
「…さっき流れ着いたのか、もしくは昔からここにあってさっき何らかの要因で作動したのかってこと?」
「そうだね。どっちにしても今はおそらく休眠してるだろうから調査にしろ確保にしろ早いほうがいい」
「アースラが来るまであと数時間…その間に最深部までいけそう?」
「ざっとだけど検索かけた限りでは問題ないと思う。生きているかもしれないトラップに捉まらなければね」
「あ、その辺は頼りにしてます」
「わかったよ。じゃ先導するから」
ユーノは迷わずにある入り口へと進んでいく。他の穴には目もくれず。
「どうしてその入り口なの?」
「だってこれが本来の入り口だからだよ。あとはみんな風化して出来ただけの穴」
確実に道だと判るルートを選ぶのは当たり前、とフェイトの疑問を一蹴するユーノ。
フェイトは思わず幾つもの穴を見比べるが、ちっとも違いが判らない。
さすが専門家だ、と本気で感心したフェイトだった。

「今日の業務終了~」
うーん、と体を伸ばしながら少女は検索魔法を解除する。
後は受付奥の司書事務室に纏めたデータを持っていくだけ、と手にしたものを纏めたときに思い出す。
「あ!」
司書長からの依頼を。
仕事に集中しすぎてすっかり失念していた。
(ああ、なんで途中のお茶休憩の時に思い出さなかったんだろ~)
思わず頭を抱えた。
慌てて時計を見ると、定時までは30分を切っていた。
「す、すいません、ちょっと急用で出てきますぅ~」
無重力の中、足場として用意された梁と浮遊魔法を駆使して彼女は急いで書庫入り口へと飛んでいく。
受付の司書に「すいませんこれ今日の分です!」と纏めた資料を放り投げると彼女は脇目も振らず無限書庫を飛び出していった。
そんな最年少の司書たる少女を見やる同僚の目はどこまでも温かくて優しかった。
最年少だが優秀な司書ということで、上役は皆彼女の将来性を大きく期待していた。
彼女が配属以降、無限書庫勤務希望者が増加したという確かな事実も存在する。
彼女はみんなの妹で、ちょっとしたアイドルだったのである。
日常が常に戦場という激務の中での清涼剤、その意味は果てしなく大きかった。
「…マユちゃん、いいな」
「ああ、いいな」
そんな会話が書庫のどこかでされていたりいなかったり。

第四訓練室。
(…そろそろクールダウン、かな?)
武装局員の指導教官として午後まるまる訓練室にいたなのはは時計を見て訓練の終了を考え始める。
ドアの開く音が聞こえたので振り向くと、見知った少女がそこにいた。
「マユちゃん?」
「高町教導官、スクライア司書長から伝言を預かってきました」
マユはそういってユーノから預かった封筒をなのはに手渡す。
無限書庫に配属されて最初に司書長のユーノの指導を受けたこともあってか、自然になのはとは親しくなっていたマユ。
自身が末っ子であるせいか、なのはは年下の少女にはどことなく甘いというか無意識にお姉さんぶることがあるようで、
年下のマユを普通に?可愛がっていた。
マユも別にそれを拒むことはなかった。むしろ忘れていた何かの温かみを思い出すかのようで心地よかったのだ。
なのでプライベートならなのはさんと呼ぶマユだが、まだお互いに勤務時間なのでその辺はしっかりと区別している。
「ユーノくんから? なんだろう?」
首を傾げながらも封筒を受け取ったなのははその場で中の手紙を開いた。

『ごめんなのは。クロノに拉致られてフェイトの調査に同行で急に出なきゃいけなくなりました。
ホントにゴメン、今度埋め合わせするから ユーノ』

…手紙を持つ腕が、いや体全体が震えている。
手紙はぐしゃりと握りしめられた。

空気の変化を敏感に察知したマユは、どことなくうつむいているようななのはを見ることなく、少しづつ後ずさり。
「た、確かに伝えましたから~」と脱兎のごとく逃げ出していく。

当然その空気の変化は訓練中の武装局員たちも察知していたわけで。
彼らは激しい訓練で精根尽き果てようとした体に鞭を打ち、残る魔力を全て振り絞って防御魔法を構築。
教官の教えどおりに全力全開で。
マユが飛び出してドアが閉まったその直後、彼らの視界は全て桃色の輝きに包まれた。
濁流のような輝きに魔力を飲まれ奪われ意識が混濁していく中、彼らは遠くなっていく聴覚に幻聴を聞いた気がしたという。
その内容は『クロノ君のバカー!!』だとか『二ヶ月ぶりだったのにー!!』だったとか。

航行中のアースラ、そのブリッジ。
「…なんで僕のところに回ってくるんだ」
第四訓練室中破の請求書が回ってきたことにクロノはキャプテンシートで頭を抱えていた。
「あはは、まあ被害者の皆さんの意見が綺麗に一致らしいからね…」
エイミィも苦笑するしかない。
医務室に運び込まれた武装局員たちは口をそろえて『ハラオウン提督が悪い』を連呼していたとか。
…白い悪魔がよっぽど怖かったのかもしれない。
「ユーノのやつ、これ判ってて引き受けたのか?」
「うーん、予想はしてたんじゃないの?」
そんなどこかお気楽な会話をしながら、アースラは目標の次元世界を目指していた。
もう一時間もすれば到着する。
「二人から連絡はないか?」
「今のところSOSみたいなものもないから順調じゃないかな」
そんなにフェイトちゃんが心配?、とからかうようなエイミィに、思わず言葉が詰まるクロノ。
「わざわざユーノ君連れ出すくらいだもんね~」
「だ、大事な妹を未知の場所に送り込むんだ、上司としても兄としても最大限のバックアップをするのはと、当然だろう?」
「どもりながら言っても説得力ないと思うんだけど?」
「そ、そんなことはない!」
部下にからかわれる上司。そのシーンを見たブリッジ要因は皆声をかみ殺して笑っていたりする。

その頃、ユーノとフェイトはトラップに引っかかることなく、順調に遺跡の最深部を目指して進んでいた。
「…ここまで何もないと逆に不安になってくるんだけど」
「あはは…」
刺激がまるでないっていうのはどういう了見? 探求者をバカにしてるの?
とおかしな不満を漏らすユーノにフェイトは苦笑するしかなかった。

狭い通路を抜けると、大きな広場のようなスペースに出た。
目の前には大きなシャッターがある。
「ここ、なんだろうね?」
「…作業用の機械の格納庫か、倉庫の入り口…あるいは危険区画との境界線」
周囲を見渡したユーノの返答は目的地がこの先と言ってるのと同じだ。
「壊しちゃっても平気かな?」
「天井支えてるわけでもないし、大丈夫だと思う。でも人が通り抜けられるくらいの大きさの穴をくり抜くのが一番安全かな?」
軽くシャッターを叩いてその厚さと現在の強度を確かめたユーノの答えに納得したのかフェイトはバルディシュを起動させ、魔力の刃を発生させる。
「ユーノ、ちょっと下がってて」
「うん…ってちょっと待ってフェイト!」
シャッターから離れようとした時、遺跡発掘のエキスパートのカンと経験が何やら感知したのか。
ユーノはシャッターに耳を寄せる。
「ユーノ?」
「静かに!」
友人のとっさの行動に戸惑うフェイト、それを黙させたユーノは聴覚強化魔法を発動させた。
「…駆動音? 何かのシステムがまだ生きてる…これはライフライン?」
「え?」
ここに来るまでは一切なにも動いていなかったことをフェイトは思い出す。
死と静寂だけの中を通ってきた。正直よい気分ではなかった。
それなのにこの先だけは…違う?
その意味は考えるまでもないことだった。
「…注意して」
「うん」
二人は身を守るバリアの強度を上げる。
ユーノは万一に備えチェーンバインドの術式を起動直前まで組み上げた。
フェイトがバルディッシュを振るい、磨耗していたシャッターはぱっくりと二人が通れる穴を穿たれる。
ガランと切り取られた破片が床を鳴らす。
「「!?」」
光源魔法以外の光が穴の先から示される。
同時に飛び込むと、そこは―

「……」
「……」

ただの倉庫だった。
中に収められていたものは金属部品の類が殆ど、当然どれも劣化してる。
しかしなぜか電源が生きていて、照明と空調だけが稼動している場所。
「…魔力反応も強大なエネルギー反応もなし。あるのは照明の簡単な熱エネルギーくらいだ」
でもその大元になるはずのエネルギープラントがどこにも見つからない、とユーノは呟く。
遺跡に入る前も、探索中も、探索魔法は展開していた。
どんなに隠蔽しようともエネルギー量というものはそう簡単に秘匿はできないのだ。
ジャマーの類があったわけでもないのに見つからないという事実に、背中を走るのは冷や汗。
「…エネルギー源がロストロギアってこと?」
「その可能性は一気に跳ね上がったね」
二人は気づかぬうちに背中合わせとなり、周囲を警戒する。
が、しばらくたっても周りからは何の反応もない。
「どう?」
「位置的には確かにここが最深部だ。他の場所は一応全部回ってる、見逃しはないよ」
「じゃあ一番奥まで行ってみるしかないね。ユーノ、一応周囲の探索お願い」
「わかった」
ユーノが検索魔法を発動させ、フェイトが数メートル奥へと脚を踏み入れたとき、それは見つかった。
「!? ゆ、ユーノっ!?」
「確認した!? まだ『生きてる』!!」
二人が見つけたもの、ソレは――

全身をスーツとヘルメットで包んで倒れている、二つの人影。
青と白、そして赤の汚れない色彩が、色あせた倉庫の中で一際目立っている。

「フェイトちゃん、ユーノくん。こちらアースラ。状況報告どうぞ!」
思わず立ち尽くす二人の下へ、エイミィからの通信が入る。
「こちらフェイトです! 遺跡最深部で要救助者二名を発見! 医務室の準備を!直ちに転送させます!」
フェイトがアースラへ連絡している間、転送のために倒れている人影に駆け寄るユーノ。
「…これは、与圧服?」
意識を失っている二人が着込んでいるのが深海や宇宙空間で活動するためのものと看破したユーノは転送魔法を構築しながら再び周囲を見回す。
(…宇宙船や潜水艦の残骸も、コールドスリープ用の装置みたいなものもこの中には無かった)
「…となると、あの反応の影響でこの人たちは飛ばされてきたのか?」
発動中心でも送り元でもなく、ここはただの受け皿。
そう判断するに十分な材料だ。
だが、本当にそれだけなのか?という疑問は尽きない。
『…ねえ、クロノ』
二人を無事転送させた後、ユーノはクロノへと念話を繋いだ。