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伊達と酔狂_外伝

Last-modified: 2007-12-28 (金) 00:32:22

――それは12月某日の夜のことだった。

 

「あ、雪だ…この勢いだと朝には積もるだろうな…そうだ!いい事思いついちゃった」
窓の外では雪が降りしきる中、高町なのはは"ある事"を思いつき、それを実行するためある人物の部屋へと向かった…

 

次の日の朝、外は一面白銀の世界になり、六課の新人達とシンはなのは達に外に集まるように言われた。
「今日は一体何するんだろうねシン?」
スバルは体を震わせながらシンに話しかけた。
「さあな?全く予想が出来ないな…それよりキャロ寒くないか?」
「あ…ハイ、厚着してきたので大丈夫です」
ティアナはそんな様子を横目で見ながら
「それよりシン、キラさんは?」
「あぁ?そういや朝から見てないな。何してんだろ?」
とりあえず言われた通りに5人は指定された場所へと向かった。

 

向かった先にはなのは、はやて、ヴィータ、シグナム、フェイトとザフィーラの背に跨ったヴィヴィオ、そして何故か疲労困憊のキラが既に待っていた。
周りを見渡すと何故かある程度除雪されていていくつか小さな雪山が出来ていた。恐る恐るスバルは
「あの~なのはさん、一体何をするんでしょうか…?」
なのはは笑顔で
「折角こんなに雪が積もったんだから皆で雪合戦やろうと思って。キラ君アレ皆に渡して」
キラは全員にデバイスを渡した。
「何ですかこれ?」
エリオは率直な意見をぶつけた。
「それは雪合戦用のデバイスだよ。昨日の夜キラ君に作ってもらったんだ、あと朝には除雪もしてもらったし。ホントキラ君は六課の縁の下の力持ち」
シンは直感的に何かヤバイような気がしたので小さな声で
「何でアンタこんな余計な事したんだよ?」
「昨日の夜中なのはがいきなり来て脅さ…頼まれてね、仕方なく」
キラは後ろを気にしながら語った。
(まあ雪合戦くらいなら大丈夫か…)
シンはそう思っていた矢先ティアナが
「何で雪合戦にデバイスがいるんですか?」
「ただ遊ぶだけじゃつまらないから魔法を使った雪合戦でもしようと思って」
「ハァ…」
ティアナは開いた口が塞がらないといった様子だった。そこへフェイトが
「じゃあなのは、私達は向こうへ行くね」
「うん、危なくないようにある程度離れた所で遊んでね。ヴィヴィオ、フェイトママの言う事守って遊ぶんだよ?」
「は~い、じゃあ行こう!わんわん」
ザフィーラはヴィヴィオを背負ったままフェイトと一緒に去って行った。そんな様子を見たシグナムとヴィータは
(それで良いのか?盾の守護獣)
と思ったが当の本人はさして気にしてはいない様子だったので放っておいた。そんな中シンは自分の認識の甘さを嘆いていた。
相手はあの"なのは"で一般論が通じる相手ではなかった。そしてシンは思い切ってストレートに
「なのは隊長、勿論負けたら罰ゲームですか?」
「…シン、わたしのこと何か勘違いしてない?今回は純粋な雪合戦だよ」
なのはは笑いながら答えたが黒いオーラのようなものが後ろから発せられていたのでとりあえず謝っておいた…
「それじゃあ皆デバイス起動させて」
一斉に起動させて各々雪合戦に適した格好になった、1人を除いて
「オイ!なのは!何で俺だけやたら露出度が高いんだよ!ほぼ半そで短パンじゃねえかよ!」
ガクガク震えているシンにキラは
「ああ、ゴメン。君のが一番最後に作ったんだけど何かもう眠くって…ホントゴメン」
口から魂が出かけながらキラはシンに謝罪した。シンはぶん殴りたかったがキラの憐れな姿を見て殴る気が失せた。仕方ないのでシンだけデスティニーで参戦することにした。

 

「じゃあ早速チーム分けするね?大将はわたしとはやてちゃん。前衛にわたしのチームはスバルにシグナム副隊長。
はやてちゃんのチームはシンにエリオにヴィータ副隊長。後衛はわたしにキャロにキラ君。そっちははやてちゃんとリイン、ティアナ。
ルールは相手全員に雪玉を体に直撃させること。前衛はデバイスの使用可、防御系と飛翔系の魔法は禁止だからね?それじゃあ各自別れて作戦タイム」

 

はやてチーム
「作戦を説明するで?意外と戦場は広いから個人行動は控えてな。戦力分散は愚の骨頂やで?前衛は雪玉打ち落として後衛は雪壁を盾に相手を狙い打つ。
それ以外は各自の判断で、ほないこか!」
「…作戦ってアバウト過ぎるだろ」
「所詮は雪合戦や、それ以上でも以下でもない」
「なんじゃそりゃ。ようは行き当たりばったりってことかよ…」
意外とノリノリだったのはヴィータで
「やるからにはなのは達に勝たねえとな」
「…ヴィータ、何だお前のその気味の悪いウサギてんこ盛りの格好は?」
「てめえの血でここら一帯赤く染めてやろうか?」
「遠慮する……はぁ…一緒に頑張るかエリオ」
「ハイ。向こうにはなのはさんにキラさんがいるから気をつけないといけませんね」
「そのうち一人はほぼ死んでるけどな…」
キラは昨日の夜から一睡もせずにデバイスを作らせられ、朝早くから会場準備をやったのだからフラフラで、その姿からは哀愁さえ感じた。
「それに向こうにはキャロがいるからな」
ティアナはジト目で
「何かキャロが向こうにいると困る事ある?」
「キャロに雪玉なんて投げられるわけないだろぉ!」
「……あ~ハイハイ」
ティアナはそんなシンに呆れてその場を去った。

 
 

なんやかんやで時間になり雪合戦が開始した。最初は普通の雪合戦だったが次第にヒートアップしていった。
「ティアナ!あたしが切り込むから援護しろ!」
「ハイ!ヴィータ副隊長」
「エリオもヴィータに負けんと頑張り」
「はい」
(何か俺だけテンション違う)
『どうしたシン?』
「いや…何でもない」
そこへリインが自分の体ほどの雪玉を持ってフラフラと飛びながらシンに渡した。
「シンさん、コレどうぞ。どんどん投げてくださいね、リインも頑張って雪玉を作るですよ」
「あ、ああ、ありがとうな、リイン」
リインは飛び去り、雪だるまを作る原理で一生懸命雪玉を転がして作るのを見てシンは和んでいた。
「ちょっとシン!アンタも手伝いなさいよ!」
ティアナに一喝されてシンは渋々持っているアロンダイトで雪玉を打ち落としていった。
両陣営に動きがないまま時間だけが進んでいった。しかし意外な人物により拮抗した状況が打開されたのであった。

 

「ティアさん、僕も切り込むので援護を」
その瞬間予期せぬ方向から雪玉がエリオを襲い、反応出来ずに直撃を喰らってしまってリタイヤ。
「エリオ!…一体誰が何処から!?」
シンは辺りを見渡したが、目視できる位置から狙撃が出来る場所に誰もいなかった。
と思ったら目の前に召喚魔法陣が展開し、雪玉が飛んできたがシンはそれを全て叩き落した。
その様子を見ていたティアナは
「キャロね…意外な伏兵だったわね。ならこっちだって」
ティアナはフェイク・シルエットによる撹乱を試みた。しかし上空からの攻撃により次々と消えていってしまった。
「なっ!」
スバルがウイングロードを使って上空から攻撃してきたのであった。
「オイなのは!スバル飛んでるぞ!反則だろ」
「にゃはは~やだな~。スバルは飛んでないよ、だからウイングロードは反則じゃないからね?」
「汚ねえぞ…オイ」
シンは半ばその発言に呆れたが、ヴィータは
「バカ!空飛んだって1人だけじゃただの的だ。集中砲火浴びせて落とせ!」
ヴィータがスバルに向かって雪玉を投げていると逆方向からキラの投げた雪玉がヴィータを襲う。
「こんなヘナチョコ玉なんかに!」
グラーフアイゼンで叩き落したが時間差で弧を描くように投げたキラの雪玉がヴィータの顔面に直撃。
「ゴメンね、ヴィータ…」
手を合わせて顔面蒼白のキラは謝った。ヴィータ脱落。

 

「オイオイ、ヴィータもかよ。こりゃ負けかな」
シンが雪玉を作りながらぼやいているといきなり
「もらったぁ!」
シグナムがレヴァンティン片手に襲い掛かってきたが、アロンダイトで何とかシグナムの一撃を受け止めた。
「ちょっと待て、俺達がやってるのは雪合戦じゃないのか?」
「合戦と名がついているのだから問題ない!」
「何じゃそりゃ!悪いが今アンタと戦ってられるかよ」
シンは一目散に逃げ出した。

 

一方その頃スバルは
(あっちゃ~、全弾撃ち尽くしちゃったよ…仕方ない一旦降りて補充しなきゃ)
地上を見渡すとそこには丁度雪玉が大量に置いてあった。
(誰かが作ったやつかな?ラッキー♪)
地上に降り、スバルが雪玉を掻き集めているといきなり後頭部に雪玉がヒットしたので、振り向くとティアナが立っていた。
「痛~い、酷いよティア~」
「アンタホントにバカね。こんな罠に引っかかるなんて…」
ティアナは雪玉を予め作っておき、わざと見える位置に配置して自身はオプティックハイドで隠れ、あとはノコノコやってきたスバルに雪玉を当てるという至ってシンプルな罠だった。
スバルの弱点が玉切れであること逆手に取った罠だった。
「こんなトラップスバルかシンの2人くらいしか通じないわね…まったく」
「はう~」
スバル脱落

 

シグナムから逃げていたシンは自分の後背を気にしながら誰も追ってこないことを確認して立ち止まった。
「ここまで来れば大丈…」
その瞬間、雪玉が複雑な動きをしながらシン目掛けて飛んできた。シンはそれらを避けていったが、最後の1球が目の前まで迫っていた。
当ると思われた刹那、シンは上半身をギリギリまで仰け反らして避け、目の前に立っている顔色の悪いキラを見据えた。
「へっ!アンタは俺が倒すんだ!今日ここで!」
シンはお返しといわんばかりに3球投げつけた。
「僕だって!」
キラはシンに負けじと3球全て避けようとしたが、徹夜の影響でフラフラだったので全弾当ってしまいそのまま倒れキラ脱落。
「…ふう、とりあえずこの人どうしよう?」
倒れたまま動かず寝息をたてているキラをたまたま近くにいたスバルに預けて、シンは次に誰を狙うか考える事にした。

 

そんな中ティアナは隠れながら次のターゲットであるキャロを虎視眈々と狙っていた。
(悪いけどコレも勝負だからね…後で何か奢ってあげるからゴメンね。てい!)
ティアナは後ろからキャロを狙い打った…しかし
「キャァァロォォ!
何処からともなくシンが現れティアナの投げた雪玉を真っ二つにした。これにはティアナも驚き
「アンタ一体何してんのぉ!?味方の玉打ち落として敵助けるバカが何処にいるの!?」
「キャロにこんな硬い雪玉当てたら危ないだろうがぁ!」
「雪合戦出来ないでしょそれじゃ!大体アンタはキャロに過保護過ぎるのよ」
「あ、あの…喧嘩は…」
キャロは二人の喧嘩を止めようとしたが到底止められるはずもなく、さらに二人はヒートアップしていった。
「キャロはまだ10歳だぞ?当然だろ」
「アンタのは度がいき過ぎてるのよ!このシスコン!」
これにはシンもカチンときて
「なっ!俺はシスコンじゃない!妹思いの優しいお兄ちゃんなだけだ!そういうお前だってブラコンだろうが!」
「それを世間一般でシスコンって言うのよバカシン!あとあたしはブラコンじゃない!兄さん思いの妹なだけよ!」
ティアナは魔力でガチガチに固めた雪玉を思いっきりシンに投げつけ、シンはアロンダイト担いでそれを一本足打法で打ち返した。
そして打ち返した硬球が向かった先には…

 

「わんわんすご~い!」
「ザ、ザフィーラ凄いね…」
離れた場所で雪遊びをしていたヴィヴィオにザフィーラはヴィヴィオのお気に入りのウサギの雪像を作ってあげたのだった。
しかももの凄いクオリティの高さで再現したのだから、ヴィヴィオは勿論フェイトも舌を巻くほどであった。
「私にかかればこれ位造作もない。次は一緒に作るか?」
「うん!」
次の瞬間雪像が飛び散り、ザフィーラに硬球がクリティカルヒットして派手に吹っ飛んでいった。
「わんわん!?」
「ちょ…ザフィーラ!?」
ザフィーラはそのままブラックアウトしていった…

 

シンとティアナの喧嘩の様子を先に脱落していたヴィータとエリオは
「止めなくて良いんですか?ヴィータ副隊長」
「あのバカ二人はもう止まんねぇよ」
「でも何かシンさんもティアさんも楽しそうに喧嘩してますね」
「…そうか?」
二人は再び痴話喧嘩?を見守る事にした。

 

「ティア!大体何でお前にそんなこと言われなきゃならないんだよ!」
仲間同士なのに雪玉を投げながらシンは怒鳴りつけた。
「うっさいわね!私にだって分からないわよ!分かったらこんなにイライラしないわよ!」
「はぁ?何だよソレ!八つ当たりか!」
流石に雲行きが怪しくなってきたのでなのはは止めようと
「二人とも同じチームなんだから仲良くし「「うるさい!」」」
その瞬間その場の"空気"が一気に変わった。
スバルに担がれていたキラは急に目を覚まし
「ちょっとゴメンねスバル!」
「え?ってえぇぇぇ!」
キラはスバルを抱きかかえる形で急に空を飛び念話で各自に指示を出した。
(はやて!シグネムさん!ヴィータ!キャロとエリオを出来るだけ遠くへ!フェイトとザフィーラさんもヴィヴィオを安全な場所まで!)
(了解や!逃げるでリイン!)
(は、はいですぅ~)
各々蜘蛛の子を散らすようになのはの周りから逃げ出した。

 

己の身の危険を察知していない二人はまだ喧嘩をしていた。
『シン…』
「うるさいぞデスティニー!黙ってろ』
『…シン、懺悔は済んだか?』
「うるさいって…え?」
そこで始めてシンとティアナは今自分達が置かれてる状況に気付いたようで
「あ、あのなのはさん!すみませんでした!さっきのは言葉のあやで…ほら!シンも謝りなさいよ!」
「大体はお前のせいだろうが!」
「アンタが…」
「二人とも…これで少し頭冷やそうか?」
そういってなのははスターライトブレイカーの要領で周りの雪を収束していき大きな雪の塊を形成し、それを二人目掛けて放った。
咄嗟にシンはティアナを庇ったがそれも意味をなさないほどの雪量だった…

 

その後自力でシンはティアナを背負って雪山から脱出したがティアナは気を失っていた。正気に戻ったなのはは何度も何度もシンに謝り雪合戦は終了した。

 

次の日の朝
「で何であたしだけ風邪引いてシンは風邪引かないのよ?」
シンはティアナ(とスバル)の部屋でリンゴを剥きながら
「俺達は風邪引かないし」
「じゃあ何でアンタがあたしの看病しているの?」
「なのはに言われたんだよ…まあ疲れてるから今日休めるのはありがたいけどな」
「へぇ~(気を利かせてもらったのかな?)」
「ほれ、リンゴ剥けたぞ」
シンはリンゴの皮を剥き皿の上に8等分に切り分けた。ティアナはそれを見て目を閉じ口を開け
「あ~ん」

 

シンはティアナのそんな様子を見て
「…ティア…お前何してるんだ?」
「あたし病人だし…あ~ん」
顔を真っ赤にしながらも尚続けるティアナにシンはフォークでリンゴを一欠けら刺して
「てい」
「がっ…ア、アンタは口と鼻の区別もつかないのか!」
「こっちが下手に出ればいい気になりやがって…」
「…アンタ嫌ぃ」
「なっ!」
シンはティアナの可愛らしい発言に思わずドキッ!としたが、すぐに冷静を装った。
「もういいわよ、一人で食べるから」
ティアナはリンゴを一口食べ
「何よこれ、酸っぱいわね」
「お前はイチイチ文句を言わないと生きていけない生き物か…」
そのまましばらく沈黙が続いたが、ティアナが先に口を開けた。
「昨日はその…ゴメンなさい。シンの気持ちも考えずにシンのことシスコンって言って…」
そんなティアナの言葉をシンは半ば呆れながら
「もう気にしてねえよ。それだったら俺だってお前の事ブラコンって言ったわけだし…お互い様だろ」
「でも先に言ったのは私だし…」
「だぁ~もう!俺は気にしてない!お前は?」
シンの勢いにティアナは圧倒され
「き、気にしてないです…」
「よろしい。ふわぁ…悪いけど眠いから何かあったら起こせよ」
シンは欠伸をして椅子に腰掛けたまま目を瞑り、しばらくしたら寝息をたてて眠りについた。
(ホントに寝たよこのバカ。…でもこいつの寝顔って始めて見たけどいつもの無愛想な表情と違って意外とカワイイかも…)
本人が聞いていたら間違いなく顔を真っ赤にしながら怒るだろうなと思ってティアナは小さく笑った。そしてシンの寝顔を見ていたらティアナのスイッチが入った。
(今ならシン寝てるし…キスしたってバレないよね…そう!これは助けてもらったお礼!そうお礼よ!)
思い立ったが吉と言わんばかりにティアナはシンにキスをしようと顔を真っ赤にしながら唇を近づけていった
(心臓の音がヤバイ…シンに聞こえちゃいそうだよ…)
がその時誰かの視線に気付きドアの方を見たら…
そこにはスバルとはやてがニヤニヤしながらドアの隙間から覗き見ていた。
「なっ!」
ドアを開けわざとらしくニヤニヤしながらスバルとはやては
「ほら~八神部隊長バレちゃッたじゃないですか~」
「いや~スバルのせいやで~あともうちょいやのに~」
ティアナはそんな二人のコントを無視して
「二人して何してるんですか!?」
「だってココあたしの部屋でもあるし、忘れ物取りに」
「私は部隊長としてティアナの具合を見に…でも具合は良さそうやな~」
相変わらずニヤニヤしながら二人はティアナに答えた。
騒がしくなってきたのでシンは目を覚ました。
「んぁ?何ではやてとスバルがここに?それよりティアあんまり騒ぐと治らないぞ」
「ア、アンタのせいだぁ!!」
「ぐはぁ!」
ティアナは渾身の一撃をシンに喰らわせた。

 

シンの受難の日々はまだまだ続くのであった…