伊達と酔狂_外伝2

Last-modified: 2008-01-04 (金) 14:29:08

1月2日の夜。未だに新年気分を引きずっている夜に、シンは自分の部屋で一人寂しく晩酌をしていた。
(はぁ~、何が悲しくて男一人で手晩酌せにゃならんのか…)
そんな中、急にドアが開いた。
「シ~ンって…アンタ一人で何してんのよ…」
ティアナが急に部屋に入ってきたのでシンは驚いて飲んでた酒を吹いてしまった。
「ゴホッゴホッ…お前人の部屋に入ってくるときはチャイム鳴らすなりしろよ…まったく」
タオルで口や零した酒を拭きながらシンはぼやいた。
「何よ、見られて困ることでもあるの?」
「別にないけど…」
「ならいいじゃない。で、アンタ何してんの?」
俺のこと何だと思ってんだコイツ?とシンは思いながら
「…酒飲んでんだよ。って言っても殆どジュースみたいなものだけどな」
「はぁ?アンタ未成年でしょ?」
「元いた世界じゃ成人扱いだったから良いんだよ」
ティアナは呆れながら
「百歩譲って良いとしても、一人でってアンタ…」
シンは頬を赤らめながら
「お、男は一人で飲みたいときがあるんだよ!」
そんなシンの様子を見てティアナはジト目で
「本当は?」
「……誘おうと思ったけれど何故か誰もいなかった…」
膨れっ面のシンを見てティアナは
(シン可愛いな~)
と思ったがいつものクセで
「まあアンタじゃ仕方ないわね」
とついつい憎まれ口で応えてしまい、シンはますますいじけてしまった。
ティアナは少し言い過ぎたかな、と思い
「…私にも飲ませなさいよ」
「お前こそ未成年だろが」
「シンとは1歳差だし、さっき自分でジュースみたいなものって言ってたじゃない?なら大丈夫でしょ?」
シンはぐぬぬと言って、仕方なく
「分かったよ…無理だったら飲むなよ…ったく」
渋々棚からグラスを取りに席から立ったら
「やっほ~シン」
「こんばんは、シン君」
今度はナカジマ姉妹が部屋に入ってきた。
(…俺、コイツ等に男って認識あるんだろうか…)
シンは何だか悲しくなったが
「何だよ、お前ら揃って…」
そんな不満の声を無視してスバルは
「じゃっじゃじゃ~ん!コレを見よ~」
そう言って何処からか大量のアルコール飲料を取り出し、高々と持ち上げ、そして
「昨日のパーティーのときなのはさん達が美味しそうに飲んでいたからちょっと拝借してきたんだ」
そんなスバルにシンは
「お前何してんだよ…で何で止めなかったんだよギンガ?」
ギンガはケロッと
「だってスバルが欲しがってたから…」
と、さも当たり前のように答えた。
(ああ、そういやコイツはシスコンだったな…)
と妙に納得してしまった。案外他人については敏感なシン・アスカであった…

「まぁいいや、大勢で飲んだ方が楽しいだろ。今グラス持って来てやるよ」
そうしてシンは人数分のグラスに自分の酒とスバルが持ってきた酒を注いで
「それじゃあ乾~杯!」
「「「乾~杯!」」」
こうして小さな酒宴が始まった…
始めは楽しく飲んでいたが次第に酔いが回ってきたのか、シン以外の3人が暴走し始めた。
「大体ねぇ~、シンは相変わらずキャロやヴィヴィオを甘やかし過ぎなのよぉ。最近じゃスバルにまで甘くなってぇ…アンタは妹フェチか!」
スバルは完全に出来上がってしまい、説教をしながら目が完全に据わっていた。シンは反論を試みたが泥酔しているナカジマ姉妹が
「シ~ン!飲んでるかぁ~、何だぁ~あたしの酒が飲めないってかぁ~」
「そうだぁ~、飲め飲めぇ。ほれほれ」
そう言ってギンガがシンのグラスに無理やり酒を注いで、スバルが無理やり飲ませた。その間ずっとティアナは愚痴っていた。
「ちょっとスバルぅ、今あたしはシンと大~事な話をしている最中なんらから、あっち行ってなさいよ」
「やだぁやだぁ~。今シンはあたしとお酒飲むのぉ~」
「スバル、シン君は私とお酒飲んでいるのよぉ~」
と醜い争いを始めたので、シンは酔っ払い達から逃げようとしたがスバルとギンガに両腕を凄い力で掴まれて逃げられずにいた。
しかも既に口で言ってどうにかできる状況ではなかったからシンだが
「ちょ、スバルにギンガ!そ、その…腕に胸が当たってるんだよ!」
シンは両腕に感じる軟らかい感触に顔を真っ赤にしながら叫んだが
「「当ててんのよ!」」
と一蹴されてしまった。
「二人ともシンから離れなさいよ!」
ティアナは二人からシンを離そうとしたが全然離れず美少女3人が自分の周りで暴れ、むしろシンにとっては生き地獄だった。
そしてシンはそんな状況に耐え切れなくなり無理やり二人を退かそうとしたその時
ぐにゅ
シンの最大奥義のらっきー☆すけべが発動、ティアナの胸に右手でパルマを喰らわせてしまったのであった。
「………っ!」
ティアナの顔は茹で上がったタコのように赤くなり、シンは今までの経験上から反射的に防御の姿勢になり
(ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ…)
と念仏を唱え始めたがなかなかいつもの一撃が来なかったので、恐る恐る目を開けるとそこにはいつもからは想像出来ない
しおらしいティアナが恥ずかしそうに胸を隠しながら
「えっち…」
そのティアナの仕草にシンはティアナを看病した時同様ドキッとしてしまった。顔を真っ赤にして固まっているシンにスバルは
「シン~、ちょっとウブ過ぎだよぉ。あたしなんかティアナの胸揉みまくってティアナのバストアップに貢献してるんだよぉ」
「そうなの!?じゃあお姉ちゃんにも…」
(駄目だ…こいつ等)
もうこの姉妹は放っておこうとシンは心に決め、部屋から出ようとしたが、次の瞬間シンの肩をティアナが力一杯掴み
「どこ行くの?まだあたしはアンタに言いたい事が山ほどあるのよ…そもそもアンタは女の子なら誰でも…」
「勘弁してくれよ…」
こうしてシンはティアナから説教と愚痴、スバルとギンガからは酒を浴びるほど飲まされ夜は更けていった…

――浜辺で少女と少年が戯れていた

白いワンピースを着た少女が走り出し、少年は少女を掴まえようと走り出す。

楽しそうな笑い声と波の音、そこには二人だけの世界が広がっていた。

そしていつしか少年が少女の腕を掴み、自分の方へ引き寄せ抱きしめた。

互いに赤面して熱を帯びた顔に海風がひんやりと心地よかった。

そしてオレンジ色のツインテールの少女の唇と黒髪で紅い瞳の少年の唇が次第に近づいていく…

「おお、来たか。わりぃな呼び出しちまって」
「いえ、それは別に構わないのだけど…どうしたのお父さん」
ギンガとスバルは父親であるゲンヤ・ナカジマに呼び出された。
「いやなに、実はお前達にお見合いの申し込みがあってな」
そのゲンヤの爆弾発言にスバルが
「お父さん…あたし達まだまだ子供だよ?いくら何でも早過ぎだよ」
「お前ら浮いた話一つも聞かないからな…父親としては心配なわけだ」
「だからってお父さん…」
ギンガも呆れてしまっていた。
「まあまあとりあえず相手を見てみろ、話はそれからだ」
そう言って二人に資料を見せた。それは黒髪に紅い瞳の自分達が良く知っている人物だった。
「「キャッ!」」
二人して嬌声を上げたが
「まあこいつは前座みたいなもんだ」
そう言っていきなりシンの画像を消した。
「んでこれが本命よ」
画面に映し出されたのは…
白い歯を見せ、ウインクしつつ親指を立てているゲンヤ・ナカジマその人だった。
「「お、お父さ~ん!!」」
姉妹揃って絶叫した。
「なんでぃ、嫌なのかよ…」
ゲンヤは不満そうな顔をしたがスバルは
「嫌って言うか…だってお父さんだもん…」
うんうんとギンガも頷いた。
「まあお前らにそう言われちゃ仕方ないな…実は俺既に再婚しててな」
「「ええええ~!」」
父親のまさかの発言に度肝を抜かれ、そして二人は素朴な疑問をぶつけた。
「「じゃあ何で私(あたし)達と結婚しようとしたの?」」
「お前らの新しい母さんを紹介する。入って来てくれ」
娘達の質問を完全にスルーして勝手に話を進めた。そして部屋に入ってきたのは
「どうも、チンク・ナカジマです」
「…ノーヴェ・ナカジマだ」

「「「「うわぁぁぁ~~!!!」」」」
4人は絶叫して起き上がった。
「はぁっはぁっはぁっ…夢かよ…驚かせやがって…」
と胸を撫で下ろすシン
「ハァッハァッハァッ…何だ…夢なの…」
と顔を真っ赤にして残念そうなティアナ
「「はぁっはぁっはぁっ……夢で良かったよ~」」
と涙目で震えているスバルとギンガ

「どうしたの!?」
4人の絶叫を聞いたなのはとフェイトとはやてが駆けつけた。そして3人の目に飛び込んできたのは
シンのベットに寄り添う形で寝ていた若干着衣の乱れのある4人だった。
「シン…他人の恋愛に口出しするつもりはないけれど…3人はちょっと…」
と困惑した表情のなのは
「えっと…シンはモテモテだね…」
と顔を真っ赤にしながら目を泳がせているフェイト
「おぉ~、シン姫始めか~ちゃんと正月してんなぁ~」
とニヤニヤしているはやて
「ち、違う!昨日の夜こいつ等が俺の部屋で酒飲みに来てそれで酔っちまっていつの間にか全員でベットで寝ちまって…」
3人に説明をしようとしたシンに追い討ちをかけるようにキラとヴァイスが現れて
「おぉシン、盛んだなぁ~ほどほどにしとけよ」
はやてと同じ考え方のヴァイス
「姉妹丼にツンデレ…悔しいじゃない…」
何やら爆弾発言のキラ
そして2人はその場を去っていった…

「(狭いベットで寝たから)腰が痛い…」
(ああ~スバル、お前って娘は…)
「昨日の夜は(シン君お酒の飲みっぷりが)凄かったなぁ」
(ギンガ、お前もか…)
「(二日酔いで)もう駄目…」
(ティアのバカ…もう何も言うまい…)
シンはもう諦めてなのは達を見たら3人ともドン引きで
「ほな!」
そう言って部屋から逃げるように出て行った。
その後ケロッとした顔でスバルとギンガは自室に戻っていき、二日酔いのティアナと真っ白になっているシンが取り残された。
仕方ないのでシンはティアナを看病することにした。
「あ゛~頭が痛い」
「よく言うだろ、酒は飲んでも飲まれるなって」
「そうだけど…ねぇシン、昨日の夜あたしどうだった?何か変なことしたり言ったりしなかった?」
シンは昨夜の事を思い出したが急に顔を真っ赤にして俯いてしまい、それを見たティアナは
「何したの!?ねえあたし何したの!?あたしの顔見て言ってみなさいよぉ!」
ティアナの叫びが隊舎に響いた…

そして次の日
「シン、ちょっと模擬戦やろうか?」
キラが珍しくシンに模擬戦を挑んだ。
「アンタが?へっ、返り討ちにしてやんよ!」
互いにデバイスを起動させた瞬間シンにバインドが発動した。
「ちょ、待てよ!いきなり何だよ!しかもこれめちゃくちゃ固いし」
「今回はおイタが過ぎたね」
「俺は何もやっていないんだ!」
キラは上空に上がって翼を広げ
「受けてみて、カリドゥスのバリエーションの一つ…」
キラが模擬戦場に予め撒いておいた魔力を収束させていった。
「聞けよアンタ!」
「これが耐えられるのなら、耐えて見せろ…僕の全力全壊っ!」
「イセリアル・ブラストッ!!」
轟然たる蒼い魔力がシンを襲う
「ちょ、無理!アッー!」
シンはそのまま意識を失った…
キラは微笑みながら
「楽しかったよ」
その後シンが誤解を解くのと、スバルとギンガがゲンヤと普通に接することが出来るのに数日かかったという。
シンの受難の日々はまだまだ続くのであった…