伊達と酔狂_第04話

Last-modified: 2008-01-02 (水) 23:41:51

第04話 舞い散る翼、舞い上がる翼

 
 

それからしばらくして緊急の任務が下された。内容は大量に現れたガジェットの掃討だった。その量があまりにも多いのでなのはたちも駆り出されたのであった。
その事でシンは少しぼやいた。
「まったく人使いの荒いことで…まあ特訓の成果が試せるからありがたいけどな」
『あまり調子に乗らないことだな、油断して大怪我しても知らないぞ』
そんなシンをなだめながらはやては今回の作戦を説明した。
「……これが今回の作戦や。前衛にヴィータ、ザフィーラ、シン。遊撃にシグナム、フェイトちゃん。後衛は私、なのはちゃん、キラ君。
目標のAMFと物量には気を付けてな。ほんなら、行こか!」
こうしてガジェット掃討作戦は開始した。

 

しかし当初の予想に反してその数は多かった。いくら相手がそれほど危険な敵でなくても群れを成せば厄介な事この上なかった。
後衛の三人の援護射撃を受けながら残りのメンバーは戦ったが倒しても倒してもキリがなかった…

 

「はぁぁぁ!」
シンはアロンダイトでガジェットを貫き、そのまま近くのガジェットに投げつけ誘爆で周りの敵を倒した。
「はぁはぁはぁ…くそっ!一体一体倒すのが馬鹿らしくなってきたな…まったくキリがな…」
『シン後ろだ!』
その瞬間後ろからガジェットの攻撃が迫っていた。
「ソリドゥス・フルゴール!」
『ソリドゥス・フルゴール展開』
シンは手の甲から高出力シールドを発生させ攻撃を防ぎながらガジェットに突っ込んでいき、掌底をガジェットのメインアイに押し当て
「これが俺のとっておきだ!」
零距離でのパルマフィオキーナを叩き込み撃破し、さらに襲い掛かってくるガジェットたちをフラッシュエッジで対応。
そして背中の折りたたみ式大型ランチャー「トール・ハンマー」を展開させて振り向きざまに後ろから襲い掛かってきたガジェットを砲身で突き刺し
「落ちろぉ!」
カートリッジを2発消費し零距離で高圧縮した魔力を放った。
そしてシンは周りを見渡すと燃え盛るガジェットの残骸とその臭い、耳障りな爆発音、転がっている薬莢、肌を刺すような感覚ににシンは再び戦場に帰って来たんだなと改めて思い知らされた。
しかしあの頃と違って今は自分の意思で誰かを守る為に戦っている。そう考えたがやっぱり柄じゃないな、と考え自嘲した。
(でも俺は立ち止まらない…今は前に進むんだ!)
「デスティニー!行くぞ!」
『了解だ』
シンは深紅の翼を広げ飛翔した。

 

その頃後衛のはやてとキラは
「キラ君、あっちのガジェット達任せてもええか?」
はやては回避行動をとりながらキラに指示した。
「分かった」
そこではやてはキラの様子がいつもと違うことに気が付いた。目も虚ろだったがそれ以上にまるで機械のような正確な動きに驚いた。
(あのテストから一ヶ月ちょいしか経ってへんのに…なんちゅう成長や。でも何やろ?辛そうや…)
「キラ君、大丈夫か?無理なら下がっても…」
心配するはやてをキラは笑顔で
「はやては心配性だな、大丈夫。まだいけるよ」
そう言って飛び去った。

 

(…右!)
キラはガジェットが右方向から迫ってきたが予め予測していたのでそれを避けロングライフルによる射撃で攻撃したが、一撃では仕留められなかった。
(流石にこれだけの数だとAMF濃度が高くて厄介だな…でも分散してるおかげで何とかまだ戦える)
キラはドラグーンを射出して高威力の単射モードで対応した。
(数は…11、マルチロックで殲滅、その後撃ち漏らしを叩く)
「当れぇぇ!」
キラはロングライフルを解除して通常のライフルに持ち替えカートリッジを消費してクスィフィアス、ドラグーンによるフルバーストを放ったが、二機撃ち漏らしてしまった。
しかし撃ち漏らした二機もドラグーンによる追い討ちで落とした。
「はぁはぁ…皆は…大丈夫みたいだな。……アレは!?」
キラは周りを見渡して地上で戦っていたシンの近くで「何か」を感じてシンの所に急行した。

 
 

『シン、君はもう少し後先考えて行動したらどうだ?』
「ゴチャゴチャ言う暇があるなら俺の援護でもしろ!」
シンは敵の真っ只中に突っ込んでしまったのだった。大量のガジェットのせいでAMF濃度が上昇、そのため防御魔法の効果が半減、飛行も儘ならない状態でピンチだった。
「フェイトやシグナムに助けを…は無理だな。同じく前衛の二人も無理。あとは後衛の援護でも…」
シンは周りの状況を見ながら誰かに助けを求めようとした時、キラが猛スピードで自分の方に向かって来た。
「まあアンタでいいや、上空から援護を頼む…」
そう指示してキラの方を見るといきなりシン向かってロングライフルを放った。シンはキラのいきなりの行動に驚いて回避し
「な、何だよ!いきなり…」
その瞬間シンの後ろで何かが爆散した。振り返るとそこには今まで見たことのない多脚生物のようなガジェットの残骸があった。
それを見てシンは
「ア、アンタ!う、撃つ前に何か言うことあるだろ!」
シンの素っ頓狂な声にキラはハッとして
「あっ、ゴメン…つい夢中で…」
そんなキラにシンは呆れつつ戦いながら再びキラに
「まあそれはいいや。援護を頼む、俺だけじゃ埒が明かない」
「分かった」
(何か違う…あの感覚は…)
『シン』
「何だよ?」
『礼を言わなくて良かったのか?』
いきなりの事に驚いたため礼を言いそびれたことに今更気付いたシンは
「…後で言うよ。それよりお前何でさっき敵が後ろにいたのに気付かなかったんだよ?」
アロンダイトを振り下ろしながらデスティニーに問いただした。
『一切気付かなかった。恐らく光学迷彩かそれに類する魔法と考えられる」
(何であの人それを遠距離から分かったんだ?)
『シン!来るぞ』
「あれこれ考えるの後か…行けるな!」
『当然だとも』
キラの援護により多少攻撃が止んできたのでシンは一点突破を計った。

 
 

「こちらはあらかた片付いたな」
「ああ」
シグナムとザフィーラはガジェト達の残骸の山の中に降り立った。
「ヴィータの所にはテスタロッサか…私はシンの方に向かう。ザフィーラ、お前は主はやての所に」
「心得た」
シグナムとザフィーラは二手に分かれた。

 

シグナムは援護しようとしたが、戦っている二人を見て
(あの二人の成長を見ていると昔の主やテスタロッサ達を思い出す…だが、まだまだだな!) 
「行くぞ、レヴァンティン!」
『Jawohl』

 

「シグナムさん!」
付近のガジェットを屠りながらキラにシグナムは
「私に援護は無用だ、シンの援護に集中しろ。アイツ一人では危なっかしい」
そう言いシグナムは次の目標に向かって飛翔した。
「はい、分かりました」
(でもカートリッジの残量が…少なくなってきたし、マガジンも…携帯してた分はもう無いし…大事に使わないと…)
キラは敵の包囲から突破しようとしているシンを援護しに向かおうとしたが急に意識が朦朧としてきて地面に着地した瞬間背後から

 

ザシュ!

 
 

(シグナムのおかげで大分楽になってきたな。もう一度態勢を整え…!!)
次の瞬間シンの目に飛び込んできたのはさっきの多脚生物のようなガジェットの鎌で腹部を数箇所刺されているキラの姿だった。
「何で!?」
シンは急いでキラを救出に向かおうとしたが、如何せん敵の真っ只中なので簡単には近づけなかった。
ガジェット達がキラに止めを刺そうとした瞬間、シグナムがキラに群がるガジェット達を蹴散らし、取り合えずはキラの身の安全を確保した。
「シン!今に医療班を呼んだ。それまでに付近の雑魚を蹴散らす!手を貸せ!」
「あ、ああ!」
シンはちらりとキラを見たがかなりの重症で出血も酷かった。
(くそっ!助けられたり助けられなかったり…何なんだよ一体!)
「デスティニー!このまま一気にコイツ等を叩く!ブースター展開!」
『現状では数分が限界だ。それ以上は君への負担が大き過ぎる』
「それだけあれば充分だ!」
『ブースター展開』
シンはカートリッジを2発消費して背中の翼から魔力を放出しながら高速で敵の中に突っ込んでいった。シン自身の斬撃に加え背中の翼から発せられる魔力で付近の敵も撃破していった。

 

その後駆け付けたヴィータやなのは達により残敵も一掃され、キラも無事運ばれた病院で一命は取り止めたとの報告を受け無事任務は終了したが、それはあまりにも苦い記憶になった…

 
 

事後処理を終えたなのは達はすぐにキラのいる病院へ向かい医師から話を聞いた。
「それでキラ君は…」
「命に別状もありませんし今のところ後遺症も心配ないでしょう…ただ」
「ただ?」
心配そうにフェイトは聞き返した。
「随分消耗が激しいですね、神経もかなり衰弱している状態です」
「え?」
それを聞いたなのはは驚いた。
担当医は続けて
「途中で気を失ったのでしょう。はっきり言ってこれでは大怪我をしても不思議ではない状態でした。よくこれで戦えていたと驚きましたよ」
「そんな…」
「まあ今は治療に専念することですね」
その後についてははやてに任せてなのははフェイトに付き添われて部屋を後にした。

 

「なぁはやて」
「ん?何やヴィータ?」
部屋に残りキラの入院等の書類に目を通しているはやてにヴィータは
「なのはの奴大丈夫かな?」
「何でそう思うんや?」
「なのは…多分"あの時"の事があるから…」
そしてヴィータは拳を強く握り締め
「それに何より悔しいのはあたしやシグナムが近くにいながら、なのはを落としたのと同じ奴に今度はキラまでも…」
思い詰めた表情のヴィータだったがはやては優しく頭を撫でながら
「大丈夫や、なのはちゃんは…な?せやからヴィータも自分を責めるのは止めな?」
「ん…わかった」
その日はキラも目を覚まさなかったので皆一旦帰宅した。

 

なのは達は次の日マリーの研究室に向かった。昨日の事故についても既に伝わっていたらしく申し訳無さそうに迎えた。
「ゴメンなさい!まさかキラ君があんなことになるなんて…私があのデバイスを薦めたから…」
マリーの様子に驚いたなのはは取り合えず顔を上げさせ
「マリーさんだけのせいじゃないですよ、私達だって現場にいながら助けられませんでしたし…」
続いてフェイトが
「ということはやっぱりフリーダムが原因なんですか?」
「ええ、そう考えるのが妥当かと。キラ君にかかる負担が予想を遥かに超えてたみたい…特に精神的に」
なのはは少し考えたがやがて
「…マリーさん、フリーダムの件なんですけど…ちょっとお願いしたいことがあるんです」

 
 

――キラの病室
キラは次の日には目を覚まし、またまた医者を驚かせた。検査の結果しばらく安静にしていれば復帰できると診断された。
そしてその日の午後、なのはがキラの病室を訪れた。なのははキラの顔を見て少し安堵の表情をしたがすぐに厳しい表情をした。
「…キラ君、まずは無事で良かったよ…でも…」
キラはいつもと様子の違うなのはに困惑した。
「何でこんな無茶なことしたの?先生から聞いたよ、こんなに衰弱していたら普通途中から自覚してた筈だって。こんな無茶したってキラ君の為にもならないし
わたし達皆心配したんだよ?無理だと思ったら一旦引いても良かったんだよ!なのに自分ひとりで無茶して!もっとわたし達のこと信頼して頼ってよ!なのに!…」
そこまで言ってなのはは完全に泣き崩れた。そんななのはにキラは伏し目がちに
「……ごめん。皆に迷惑をかけた事は、謝って済むこととは思わないけど…それでも、ごめん…」
キラのこの言葉でなのはは我に返った。
「わたしもごめんなさい…いきなりこんな…」
二人はそのまま無言になってしまった。時間にすれば1~2分なのだろうが二人にはやたら長く感じられた。
「…昔ね」
その沈黙を破ったのはなのはだった。
「わたしも無茶して大怪我したんだ…」
「なのはも?」
それからなのはは7年前の事故についてキラに話した。
「……だからキラ君にも同じ目にあって欲しくなかったんだ」
「……」
「もうこんな無茶しないで…って私も人の事言えないか」
なのははそう言って無理やり笑顔を作った。
そこへ
「キ~ラく~ん、怪我大丈夫か~」
はやての掛け声と共にフェイト、リイン、シグナム、ヴィータ等が病室に入ってきた。
「あ~もしかして…お邪魔やった?」
キラとなのはは二人して首を激しく振って否定した。取り合えずそのことは表面上無視してシグナムは
「体の方は大丈夫そうで安心したが…一体何があった?デバイスの消耗のせいとはいえ、いくらなんでも激し過ぎではないか?」
キラは少し考え
「その事なんですけど…何て言うか…変な感覚に襲われたんです」
返ってきた答えにその場の全員が首を捻ったがヴィータが
「変な感覚って何だよ?」
誰もが思ったことを口にした。
「敵の動きとか…周りの状況とか…フリーダムの事とか、何となく頭の中に浮かんでくる様な感じなんだ…」
「凄ぇな、超能力か?お前いつもそんな感じなのかよ?」
「いつもじゃないよ。集中力が高まったりしたら急にその感覚になるんだ。元いた世界でも似たような感覚になることはあったんだけど…ここまで消耗しなかったよ」
それを聞いたなのはは
「じゃあキラ君はその状態でずっとフリーダムを?」
「うん、そうでもしないと今の僕じゃフリーダムは扱えないよ。最初に発動したのはなのはとの模擬戦中だったかな?それからは集中する度に発動するようになったんだ。
発動しているうちに確かに体の調子が悪くなっていったのは自覚していたけどここまで酷くなるなんて…」
ちらりと時間を見たはやてはそろそろ医者に言われた面会時間が終わりそうだったので
「私等はそろそろ、な?」
はやてに続いてフェイトも
「そうだね、怪我人に長話は辛いだろうからそろそろ帰るね。しっかり養生してキラも早く元気になってね」
各々思い思いにキラに一言述べて病室から退室した。

 

病室から出てはやては
「しかしシンも恥ずかしがり屋さんやね」
病室の外の廊下の椅子に一人で座って待っていたシンを見て言った。
「そんなんじゃないよ、ただ気が進まなくてな」
はやてはニタニタしながらシンに
「せやたら何で病院にいるんや?」
「ぐっ!」
そんな二人の様子を見てフェイトはなだめた。シンは咳払いをして
「それであの人どんな様子だった?」
「大丈夫そうだよ。全治に数週間かかるらしいけど、ただ…」
フェイトの表情が曇った。シグナムがそれに続いて
「ああ、厄介なことになったな。病気とかそういうことではなさそうだしな。奴自身の問題か」
「俺には話がまったく見えないんだけど」
フェイトはキラについてシンに説明した。シンは意外といった表情になり
「俺もそんな感じになったことがあるけど、でも俺の場合は頭の中がクリアになったりとかそんな感じだな」
「シンもやろうとすれば出来るのかよ?」
ヴィータの質問に対してシンは
「いや、興奮状態になったり集中したりすると時々なる程度だよ」
「ふ~ん。でもアイツちょっと、ていうかかなり凄いな。道理で最近やたら強いわけだ」
シグナムはそんなヴィータの発言を受けて
「しかし、いくらなんでも人間が踏み込んでいい領域を超えているな。まぁあの様子では本人も上手く扱えてない様だが」
「もしかしてキラの奴これから集中する度にずっとあんな感じになるのか?」
「そうかもしれないな…」
一同はそのまま黙ってしまった。

 

空気が重くなってしまったのでなのはが話題を変えた。
「そ、そうだ。明日からキラ君の怪我が治るまでの間はわたしもシンの特訓に付き合うからね?」
「ええ!あんたもかよ」
「なのはだけじゃない、あたしやシグナムもお前に付きっ切りだぞ」
「マジかよ…」
なのはは笑顔で
「マジだよ、キラ君いないんだから追い付くチャンスだよ」
なのはの言葉にシンは
「違うね、追い付くんじゃない。追い越すんだよ」
「それじゃあ私達も本気でいくからね」

 

次の日から仕事のない者や仕事の合間にシンの相手をするといった風になった。

 

「デスティニー!前方にシールドを集中させろ、そしてさらに加速。なのはの攻撃をいちいち避けてたんじゃ埒が明かない。一気に間合いを詰める!」
『それでは近づけて攻撃出来たとしてもバランスを崩して隙だらけになる。賛成出来ない』
「いいからやるんだ!このままじゃ何も出来ない」
『…了解した』
そんなシンの様子を見たなのはは
(何か仕掛けてくるのかな?ならこっちも…)
「うおぉぉぉ!」
砲撃を全て受けながら一直線になのはに向かいアロンダイトを構え、そのまま一気に振り下ろした。
『RoundShield』
なのははシンの渾身の一撃をラウンドシールドで受けようとしたが
(くっ!思ったより凄い。これじゃ長くもたない…でも)
なのははちらりとシンの後方を見て
(あとも少し…)
一方シンは内心穏やかではなかった。一撃で決めるつもりだったが決定打にはならなかった。
「くそっ!何て硬さなんだよ!」
『シン!後ろだ』
「何っ!」
見ると後ろからなのはのディバインシューターが数発迫っていた。
(防御が間に合わない!)
そのままシンは直撃を喰らい撃墜されたのだった。それを地上で見ていたフェイトとヴィータは
「ん、またシンが撃墜っと…大体アイツがなのはに敵うわけねえのに」
「それでもシンの成長は凄いよ…実際戦ってみて驚かされたよ。瞬間的な爆発力ならキラより上かもしれないよ」
ヴィータは溜息をしながら
「それはそうかもしれないけどアイツ、安定感がないし、確かに速いけど動きが素直すぎるし…まあタフさならオーバーSだな…あとはこれから次第だな。」

 

結局シンは午前中の模擬戦を全部撃墜されて終わった。
「じゃあ私はこれから仕事だから、午後からはフェイトちゃんが相手だから頑張ってね」
ああ。とシンは不貞腐れながら答え、シンはそのまま草むらに寝転がった。デスティニーはシンの機嫌が悪そうだったので
『何か不満でもあるのか?』
「なのは達の指導に不満なんてないさ。ただ自分の力不足が腹立たしいだけだ」
『別に君の力不足ではない、単純に経験の差だ。彼女は魔法を覚えたのが9歳だったと聞くが、君はほんの数ヶ月前だ。その差だ。
才能だけなら君は彼女達に引けを取らないと思う…多分』
「多分てお前…でも珍しいなお前がそんなこと言うなんてな」
『私は君のパートナーだからな。君が悩んでいれば相談に乗るし、例え君が弱い魔導師だったとしても私は君の為に力を貸す』
「そうかよ」
シン少し照れくさいような嬉しいような感じだったので素っ気なく答え眠りについた。

 
 

「それじゃあ午後の模擬戦始めるよ。準備はいいね?」
「ああ」
そう言い二人は戦闘体勢に入った。シンは深呼吸で荒ぶる気持ちを抑え冷静になった。
(はっきり言ってフェイトと真正面からぶつかり合って勝てる気がしない…だからって小細工が通用する相手でもない。どうすっかな?)
「デスティニー何か良い手はないか?」
『珍しいな、君が私に頼るなんて』
「負けるよりマシだ。それにお前は俺のパートナーなんだろ?だったら手伝え」
『安心しろ。今の君ではまず勝ち目はない』
「・・・オイ」
『だから何も恐れることはない。負ける事を恐れることが君の長所である思い切りの良さを殺している』
「別に俺は…」
『自覚してないのは重症だな』
流石のシンもこれには腹を立て、そして
「わかったよ…やればいいんだろ。形振り構っていられるか!」
『(単純だな)』
「チマチマいくのは俺の性に合わない、シンプルにいくぞ!」
『了解だ』
迫り来るプラズマランサーをアロンダイトで叩き落しながらフェイトに向かって飛翔した。そんな最中シンはシグナムの言葉を思い返す。

 

(お前のアロンダイトは確かに威力とリーチの長さは抜群だ、しかしそのためモーションが大きく隙も大きい)
(じゃあどうすりゃいいんだよ?)
(それを逆手に取るんだな)
(何だそりゃ?)
(少しは自分で考えろ、お前の頭は飾りか?)

 

「回りくどい言い方しやがって…」
シールドも併用しながら何とかフェイトの近くまで近づけた。その瞬間フェイトのバインドがシンを捕らえたが
「その手に何度も何度も引っ掛かるかよ」
バインドを素早く解除してそのままフェイトにアロンダイトを振り下ろした。しかしフェイトはそれを難なく回避してバルディッシュで迎撃を取ろうとしたが
「まだまだぁ!」
シンは反動を利用してそのまま一回転して体を捻り、その勢いのまま横真一文字に切りつけた。フェイトはシンの予想外な行動に一瞬判断が遅れたが何とか防いだ。
(フェイトに反撃の暇を与えたらやられる、ならこのまま手数で一気に押し切る!)
シンは斬撃に加え蹴り技のラッシュでフェイトに反撃のチャンスを与えなかった。
『BarrierBurst』
「!!」
瞬間、バリアバーストによりシンは弾き飛ばされ、爆煙の中からすぐさまプラズマスマッシャーが放たれる。
『ソリドゥス・フルゴール展開』
デスティニーの判断でシールドが展開されプラズマスマッシャーを防いだ。がそれと同時にフェイトが切りかかってきた。
「くっ!何て速さだ」
シンはバルディッシュによる一撃を紙一重で交わしたが真上からプラズマランサーが迫る。
もう一度ソリドゥス・フルゴールで防ごうとしたが後方からはフェイトも迫っていた。
(同時に防げない!?やられる!)
そしてその瞬間
『おっと』
アロンダイトからカートリッジが1発消費し光の翼を展開、シンはフェイトに向かって分身しながら急加速
「えっ!!」
目の前に急にシンが2,3人現れた事にフェイトは驚き、そして訳がわからぬまま後背からシンの一撃を喰らい地上に落下していった。

 

「はぁはぁはぁ…ってヤバイ、ちょっとやり過ぎたか」
シンは我に返ってフェイトの元に向かった。
「オイ!大丈夫かよ!」
フェイトは地上に降り立っていた。外傷は余りなくバリアジャケットが破けた程度だったのを見てシンはほっとした表情をした。
「大丈夫だよ、ちょっと驚いただけだから…それよりシン、今のは?」
「いや俺にもさっぱり…デスティニーお前何したんだ?」
『…失敗した』
「はぁぁ!?」
『ブースターで一気に逃げて間合いを取ろうとしたが間違えてしまったようだ』
「間違えたって…お前がか?」
『ハッハッハ』
「はっはっはってお前…まぁおかげで掴めたよ、"糸"が。お前の失敗でな」
『失敗は成功のもとだからね』
シンは笑いながら
「そうだな。それに結果は出せた、のかな?」
そう言ってフェイトの方を見た。フェイトはニッコリと笑いながら
「合格、かな?それじゃあもう一本いってみようか?」
「次も勝たせてもらうけどね。いくぞ、デスティニー!」
『了解だ』

 

その後シンはフェイトに対して善戦したものの中々勝ち星をあげる事は出来なかった。

 

次回予告
フェイト「シンもやっとデスティニーとの息も合い本領を発揮できるようになった」
はやて「そんな中、怪我も治り現場に復帰したキラ君になのはちゃんはフリーダムの使用禁止を告げた」
なのは「機動六課も次第に形になり始め、次々と人選も決まり後は部隊発足を待つばかりとなった」
フェイト「そんなある日キラはなのはに自分の決意を告げそれを聞いたなのは…」
三人「次回「復活の刻」お楽しみに」