勇敢_番外編

Last-modified: 2007-12-09 (日) 10:02:46

八神家・朝

 

「・・・・う・・・ん」
朝6時、八神家の自室でカナード・パルスはセットした目覚ましが鳴る前に目を覚ました。
上半身を起こし、軽く首を振り、意識をはっきりとさせる。それと同時に自分が寝ているベッドに違和感を覚えた。
疑問に思いながらも自身が使っていた毛布を半分以上捲る、すると
「・・・・す~・・・す~・・・くぅ~ん」
少女形態の久遠が気持ちよさそうに眠っていた。はやてが用意したパジャマを着た久遠はとても気持ちよさそうに眠っており、
その寝顔の可愛らしさは勿論、尻尾を狐耳だけを出していると言う姿も合間って破壊力抜群(何のだよ?)である。
「・・・・はぁ、まったく・・・・・ヴィータの所で寝てたんじゃないのか?」
溜息をつきながらも、その姿に微笑むカナード。
ちなみに、このように久遠がカナードのベッドに潜り込む事は初めてではない。
久遠は八神家ではヴィータと同室となっている。だが寝ぼけているのか、わざとなのか、ほぼ高確率でカナードのベッドに潜り込んでいた。
ちなみに、仕事の都合でカナードと、一緒について来た久遠だけで機動六課隊舎に泊まっていた時にもこのような事態があった。
「あんな出来事は・・・・・ごめんだな」
そのときに起こった出来事を簡単にまとめて見たので、貴方が想像してください。

 

       スバル「カナードが・・・・・カナードが・・・・・久遠ちゃんと巫女さんプレイしてる!!!!」

 

       一同「な・・・・・なんだってぇ~!!!!!!!」

 

       なのは「カナード・・・ちょっと・・・頭冷やそうか・・・・・リミッター、強制解除」
     
       カナード「待て!話を聞け!!」

 

       一同「*1ガクガクガクガクガクブルブルブルブルブル」
 
       カナード「そうか・・・聞かぬか・・・・ならば・・・・貴様も頭を冷やすのだな!!」

 

なのは・カナード「エクセリオンバスター!!アルミューレ・リュミエール展開。消えろ!!ガガガバシューヴァードドドドド。
         ブラスターシステムリミット2!!ディバインバスター・エクステンション!!フォルファントリー発射ぁ!!
         終りだぁ!消えろ!消えろ!!消えろぉ!!!全力全開!いくよレイジングハート!!(YES!!)
         ドゴ~~~~~ンドカ~~~~~ンババババババババズキューン!!アクセルチャージャーシステム起動、
         A.C.Sドライバー!!カートリッジフルロード!フォルファントリー突撃ぃ!!バリバリバリバリチュド~ン
         きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!・・・必ず・・・お前に・・たどり着いて・・・・・」

 

       シャーリー「ああ・・・・訓練設備が・・・・・・orz」

 

「だが・・・良い戦いだった・・・・フッ、バトルマニアだな、俺も」
久遠を起こさない様にベッドから出るカナード、窓から差し込む朝日を浴びながら軽く目覚めの運動をする。
ちなみに、某旅人ではないので銃の整備や喋るバイクをたたき起こしたりはしません。
運動が終わり、普段着に着替えたカナードは久遠を起こさずにリビングに向かった。

 

あくびをしながらも1階のリビングに向かうカナード、リビングの扉を空け、中に入ったカナードを迎えたのは
同じく寝起きなのか、あくびをしているザフィーラだった。
「むぅ・・・・おはよう、カナード」
「ああ、おはよう。皆はどうした?」
「まだ起きて来ないな。主ならキッチンだ」
そう言い、朝の散歩にでも出かけるのか、玄関に向かうザフィーラ。
「あいつは、もう人型にはならんのか?」と内心で思いながらもカナードはキッチンへ向かった。

 

キッチンへ向かったカナードが見たのは、朝食を作るためにエプロンを結んでいるはやての姿だった。
「んしょ」と声をあげ後ろの紐を掬び終えたはやて。
「おはよう、はやて」
声がしたため、鍋に水を入れながら後ろを向く。
「カナード、おはようさん」
満面の笑みで挨拶をするはやて。その笑顔に釣られて、カナードも自然と微笑む。
挨拶を終えたカナードはリビングのテーブルに座り、コーヒーメーカーから淹れたてのコーヒーを自分のカップに注ぐ。
はやてがまな板の上で味噌汁の具材を刻む音を聞きながら、ゆっくりとコーヒーを喉に流し込む。
野菜を刻む音だけが静かにキッチンに響く。
「せやけど・・・・皆遅いな?」
具材を切り終えたはやてが、壁にかけてある時計を見ながら呟いた。
「まぁ、あいつ等は昨日は別件で遅かったからな・・・・まだ寝ているのだろう」
満足した顔でコーヒーを飲み続けるカナードが呟く。
「う~ん・・・・しゃあないな~。カナード、皆を起こしてきてくれないか?」
「何故俺が?」
「だって、私は鍋から目を離すわけには行かんし。ザフィーラは散歩中や。残りはカナードしかおらんやろ?」
はやての言葉に押し黙るカナード、数秒間を空けたあと溜息をつく。
「わかった・・・・・・・行ってくる」
「お願いな。リインは昨日は私の部屋にある『お出かけバック』の中で眠ってるから、よろしくな」
観念したように呟きながら席を立つ「変な事したらあかんよ~」というはやての声を聞き流しながら各自の部屋に向かった。

 

・シャマルの部屋

 

「シャマル!起きろ!」
多少乱暴にノックをしながら呼びかける。だが、反応が全く無い。
溜息をつきながら「入るぞ」と断りを入れ、室内に入る。すると
「う~ん・・・・・あっ、間違って激薬を注入~」
物騒な寝言を呟きながらシャマルは幸せそうに眠っていた。
カナードは近づき、肩を揺すって起こそうとしたが
「あっ・・・間違って石灰を入れちゃった~。これはカナードでいいや~」
その寝言を聞き、カナードは手を止める。そして掴む対象を肩から枕に移し
「起きろと・・・・」
力ずくで枕を引っぱる。枕の支えを失ったシャマルの頭は重力に素直に従い、柔らかい布団に落ちる。
「・・・ふぇ?」
その衝撃でシャマルは目を覚ました。だが、カナードは知ってか知らずか、引っぱり取った枕を振り被り
「いっている!!!!」
シャマルの顔面に思い切り叩き付けた。

 

「・・・もう、酷いじゃないの!起きてたのに!」
ベッドから上半身だけ起こした薄い緑のネグリジェ姿のシャマルが、カナードに抗議をするが
「早く起きないキサマが悪い」
全く意に返さずに答えるカナード。
「そもそも、起こし方にも色々あるじゃない。優しく揺するとか、耳元で呟くとか、
目覚めのキスとか・・・ああああああ!!!何言ってるの私ったら~!!!!」
両手のひらで頬を抑えながら激しく首を振るシャマル。
「・・・・・とりあえず起きたな・・・・・次はシグナムか・・・・」
そんなシャマルをほおって置き、カナードはこの部屋から出て行った。

 

・シグナムの部屋

 

「シグナム!起きろ!」
多少乱暴にノックをしながら呼びかける。だが、シャマル同様反応が全く無い。
同様に溜息をつきながら「入るぞ」と断りを入れ、室内に入る。すると
「・・・・・・・す~・・・・・・・」
愛用の抱き枕を抱いたシグナムが気持ちよさそうに眠っていた。
その寝顔からは普段の凛々しさは抜けており、睡眠を心から楽しんでいる微笑ましい顔で眠っていた。
だが、格好が問題であった。
下半身・下着(黒)のみ
上半身・下着(同じく黒)とYシャツ(Yシャツのボタン全開)
である。ちなみに掛け布団は寝返りを打ったためか、床に落ちており、ぶっちゃけ・・・・丸見えであった。
「・・・・・まったく・・・・・」
溜息をつきならもシグナムの姿を見た瞬間に目をそらすカナード。顔はほのかに赤くなっていた。
何だかんだいっても彼も17歳の少年である。思春期真っ盛り。
とりあえず、起こすために名前を呼ぶが、シャマル同様全く反応を示さないシグナム。
声で起こすのを諦めたカナードはシグナムの近づき、多少肩を強く揺する。そうると
「・・・・ん・・・・あ・・・?カナー・・・・ド・・・?」
抱き枕を抱いたまま目を覚ますシグナム。上半身を起こした瞬間、寝るために下ろした髪が顔を隠したため、
抱き枕を放し、自身の髪を掻き揚げる。掻き揚げた髪から覗かせる顔は完全には目覚めていない様子であった。
「起きたか、朝食が出来ているぞ」
「ああ・・・・・すまない。直に行く」
起きた事を確認したカナードはシグナムを見ずにそそくさと部屋からでていく。だが、ドアの前で止まり
「パジャマ位着ろ・・・・・目のやり場に困る」
投げ捨てるように言いながら出て行った。
それから二秒後、シグナムの叫びが部屋に木霊した。

 

・リインフォースの部屋

 

「リインフォース!起きろ!」
多少乱暴にノックをしながら呼びかける。だが、シャマルやシグナム同様反応が全く無い。
また同様に溜息をつきながら「またか・・・・入るぞ」と断りを入れ、室内に入る。すると
「・・・・・・・・ん・・・・・・」
リインフォースが気持ちよさそうに眠っていた。
体勢は仰向けで体を掛け布団で覆っており、規則正しく呼吸をしながら眠っていた。
カナードはとりあえずダメもとで名前を呼んでみる。
「リインフォース!起きろ!朝だ!!」
すると、リインフォースはゆっくりと目を開け、目を覚ました。
「ああ・・・カナードか・・・おはよう・・・」
首だけを動かし、カナードを見据えるリンフォース。
「おはよう、朝食が出来ているぞ。さっさと起きろ」
「ああ・・・・ありがとう」
お礼を言った後、上半身だけを起こす。体にかけていた掛け布団も、重力に従いリインフォースの体から離れた。
ちなみにリインフォースが自室で寝るときの姿は
上半身・裸
下半身・下着(白)のみ
である。そのため、掛け布団以外に体を隠す物が無く、裸の上半身をカナードの前にさらす事となった。
「なッ・・馬鹿!!な・・なんんんででで裸なんだ!!?」
顔を真っ赤にしながらそっぽを向き、怒鳴るカナード。
「・・・ああ・・・布団が肌に触れる感覚が心地よくてな。一人で寝る時はいつもこうだ。それに下着は身に着けている」
そんなカナードの態度を寝ぼけた顔で見ながらリインフォースは淡々と話す。
「まぁ、確かにその気持ちは解るが・・・ではなく!せめてTシャツか何か着ろ!女だけではないのだぞ!ここにいるのは!!」
「自分の部屋で寝る時だけなのだから、別に構わないだろ。それにもし、ザフィーラが覗いたらブラッティーダガーで仕留める。
だが、カナード・・・お前なら・・・別に・・い(とにかく!さっさと服着てリビングに来い!!」
リインフォースの言葉を遮り、言いたい事だけを言ったカナードはそそくさと部屋から出て行った。
「はぁ・・・・次はヴィータか・・・・」
肩を落としながらヴィータの部屋に向かうカナード。だが、先ほどの光景が頭をよぎる。
それを引き金として、同じく先ほどのシグナムの下着姿や、シャマルの下着が透けて見えるネグリジェ姿も頭をよぎった。
「・・・・・くっ、平常心!平常心!!」
呟きながら壁に頭を打ちつけ、無理矢理心を落ち着かせる。
何だかんだ言ってもやっぱり若者であった。

 

・ヴィータの部屋。

 

「ヴィータ!起きろ!」
疲れてきたのか、かなり乱暴にノックをしながら呼びかける。だが、先ほどの3人同様反応が全く無い。
もう何度目か分からない溜息をつきながら、「・・・・入るぞ」と断りをいれ、室内に入る。すると
「う~ん・・・・・・・す~・・・・」
ノロイウサギを抱きしめながら、ヴィータが気持ちよさそうに眠っていた。
「まったく・・・・こう見るとただの子供だな」
その姿に微笑みながら、ベッドに近づき、軽く肩を揺する。すると
「ん?・・・・・・あ?・・・・カナード・・・・おはよ」
上半身を起こし、左手で眠そうに目をこすりながらヴィータは寝覚めた。
右腕にはしっかりとノロイウサギを抱えている。
「ああ、おはよう。朝食ができているぞ。着替えてリビングに来い」
「・・・・・ふぁ~い・・・・」
間の抜けた返事をしたヴィータは名残惜しそうにベッドから抜け出す。
そのことを確認したカナードは部屋から出て行った。
「・・・・・普通に起こせたな・・・・・」
小さく呟きながら廊下を歩き、カナードははやての部屋に向かった。

 

・はやての部屋

 

部屋の主は既にいないのでノックをせずに部屋に入る。
ある物を見つけるために部屋を見渡す。はやての部屋は海鳴市の家で住んでいた時とあまり変わらない作りになっており、
ベッドや本棚などは、全て海鳴市の家から持って来たもので構成されている。
「どこだ・・・・・ここか」
机の上に置いてある『お出かけバック』を見つけたカナードは蓋を開ける。すると
「・・・・す~・・・・・す~・・・・」
中ではツヴァイが体を丸め、気持ちよさそうに眠っていた。
「・・・・・いい加減面倒になってきたな・・・・・さっさと起こすか」
一応起きるように名前を呼んだが、全く反応せずに睡眠を楽しんでいるツヴァイに対し、
カナードは先ず、あけていたバックの蓋を閉めた。そしてそれを両手で持ち上げ

 

                 振った

 

             ブンブンブンブンブンブン

 

           「へっ?はいぃぃぃぃぃ!!?」

 

             上下、時には左右に振った

 

          ブンブンブンブンブンブンブンブンブン

 

     「な・・・なんででででですすかかかかぁぁぁぁぁぁ!!!!!???」

 

          声が聞こえたが、構わず振った。振り回した。

 

         ブオンブオンブオンブオンブオンブオンブオン

 

     「はぁぁああああああ~~~~れぇぇぇぇぇぇぇええええええ~~」

 

10回ほど振り回した後、バックを机の上に置き蓋を開ける。すると
「う~ん~」という唸り声を上げたツヴァイが見事に目を回していた。
「・・・・・不甲斐ない・・・・この程度で・・・・・」
ツヴァイの姿をみて「やれやれ」と溜息をつくカナード。(彼の言動に対しての突っ込みは各自でお願いします)
とりあえず『お出かけバック』を持ち、カナードは自分の部屋に向かった。

 

・カナードの部屋。

 

部屋に残してきた久遠が起きたかを確認するためにもう一度自身の部屋に戻る。すると
「・・・・す~・・・す~・・・くぅ~ん」
数十分前と変わらずに久遠は気持ちよさそうに眠っていた。
「久遠・・・起きろ、朝だぞ」
肩を優しく揺らしながら久遠を起こすカナード、すると
「くうん?・・・・・・カナード・・・・・おはよう」
目をこすりながら起き上がる久遠。完全には目覚めていない証拠なのか、獣耳と尻尾は垂れ下がっていた。
「おはよう。朝食が出来ているぞ」
「うん・・・・・わかった・・・・」
眠そうに答えた久遠はベッドから出て、カナードのズボンを掴む
「はやく・・・いこ・・・・」
ズボンを引っぱりながら上目使いにカナードを見据える久遠。
「ああ、いくか」
カナードは笑顔で答え、リビングへ向かった。

 

・八神家リビング

 

全員がリビングにそろい、挨拶の後朝食が始まる。
「全く!カナードさんは酷いです!リインはカンカンです!!あっ、ヴィータちゃん、御醤油とってください」
「どれだ、こぼすといけないからな、かけてやるよ。まぁ私もそうするかもな~。って何目玉焼きにかけようとしてんだ!ソースだろ!!」
突っ込みながらもツヴァイの目玉焼きに適量の醤油をかけるヴィータ。
「だけど、私なんか枕で叩かれたのよ!酷いわ。そうよね、目玉焼きにはソースよね。ヴィータちゃん御願い」
ヴィータからソースを受け取ったシャマルはダバダバを目玉焼きにかけていく。
「物騒な寝言を聞いたものでな。俺に石灰を入れた何を与えようとしたんだ?・・・ソースに醤油・・・邪道だな、塩と胡椒だろ!!」
シャマルの目玉焼きを引きつった顔で見ながら、塩と胡椒を1:3の割合で器用に自身の目玉焼きに振り掛けるカナード
「う・・・・そ・・それはそれよ。ねぇ、シグナム?」
「何故私に振る?まぁ、私達が起きられなかったのは確かだ。カナード、それはそうと胡椒は必要ない。塩のみだ!」
カナードから塩だけを受け取り、振り掛けるシグナム。
「まぁ、皆今度からカナードに起こされない様に起きる事やな。ヴィータ私にも醤油とって。やっぱり目玉焼きには醤油や」
「う・・・・はやてまで・・・・・リインフォースな何つけてるんだ?」
「私は何もつけない。素材の味を味わいたいのでな・・・・・美味だ」
「・・・・・美味いか?それで?ザフィーラは?」
「愚問だな・・・・全部つける」

 

                      「「「「「「「おい!!」」」」」」」

 

「・・・・・・はやての料理・・・美味しい・・・ウスターソース取って」

 

八神家は今日も平和であった。

 

・数時間後

 

:機動六課訓練施設

 

時刻は午後一時過ぎ、午前の訓練が終った訓練場に二人の人物がいた。
「模擬戦のお誘いを受けていただき、ありがとうございます」
バリアジャケットを装備し、ヴィンデルシャフトを構えたシャッハと
「構わん。俺もお前とは戦ってみたかったからな」
同じくバリアジャケットを装備したカナード。
そしてその光景をモニターで見ているなのは達は二人の戦いを観察する。
「さて、どうなるかな~」
腕を組みながら二人の様子を観察するヴィータ
「そうですよね。ティアはどう思う?」
「・・・・・難しいわね。高速フットワークを駆使した近接戦技を得意とするシャッハさん。
対するカナードは近接だけじゃなくて射撃や砲撃も出来るし、アルミューレ・リュミエールという防御手段もある。
手数ではカナードだけど、接近戦に持ち込まれたらシャッハさんの有利かしら?」
スバルに説明をしたティアナは再びモニターを見る。

 

「リミッターを外した騎士シグナムと互角に戦ったと聞きました。楽しみです」
「実力に関してはシグナムから聞いている。俺も楽しみだ」
その後、無言で互いを見つめる二人。風の音が異様に大きく聞こえる。そして
「はぁ!!」
シャッハが地面を蹴り、カナード目掛けて突撃を開始した。
カナードは即座に反応し、ザスタバ・スティグマトを放とうとするが、既にシャッハはカナードの懐に入り込んでいた
「(こいつ!早い!!)」
懐に入ったシャッハは右手のヴィンデルシャフトを横なぎに振る。その斬撃をバックステップでギリギリ回避するカナード。
だが、シャッハは初手が回避される事を予測していたのか、右腕のヴィンデルシャフトを振り切った状態で再び地面を蹴り、
バックステップの最中で空中に浮いているカナード目掛けて、左腕のヴィンデルシャフトを袈裟に切りつける。
「アルミューレ・リュミエール展開!」
カナードは、振り下ろされる斬撃をアルミューレ・リュミエールで防ぎ、再び右腕のヴィンデルシャフトが振る割れる前に
至近距離からザスタバ・スティグマトを放った。
カナードがザスタバ・スティグマトのトリガーに指をか蹴る瞬間、シャッハは展開されているアルミューレ・リュミエールを
右足で蹴り、体をのけぞるようにしながら後ろへ飛んだ。シャッハの胸から数センチ上空にザスタバ・スティグマトの魔力弾が通過する。
そのまま上空で後ろ回りをしながら着地、直に防御魔法を展開する。その直後、魔力弾の嵐がシャッハに襲い掛かった。

 

「・・・すごい・・・・・」
全ては一瞬の内に起こった出来事にエリオは自然と感想を口にする。
「さすがですね、二人とも」
「ああ、見ているこちらも楽しい」
フェイトの感想にシグナムは満足そうに答える。
「さて、今の所状況は互角、今後どうなると思う?」
隣で戦闘風景を熱心に見ているなのはに、はやては尋ねた。
「そうだね。やっぱり接近戦ではシスターシャッハの方が有利かな。今は防御に徹しているけど、
間違いなく防御魔法を破壊される前にザスタバ・スティグマトの弾が尽きるね。マガジンを交換する隙にまた懐に潜り込まれるし
フォルファントリーに関しても隙が出来るから、避けられるか懐に入られるか。カナードもそのことに関しては気づいてる筈だから」
自分の考えを答えたなのはは再びモニターを見つめた。

 

ガガガガガガガガガ

 

シャッハに向かってザスタバ・スティグマトを撃ち続けるカナード。使用済みの薬莢が足元に散らばる。
その攻撃を両腕のヴィンデルシャフトで防ぐように構えながら防御魔法を展開し耐えるシャッハ。
彼女は防御に専念し、弾が切れるまで耐え切る姿勢でいた。そのことに気づいたカナードは軽く舌打をする。
「(ちっ・・・・・耐え切り、マガジンの交換時の隙を狙うつもりか。だが、そう上手くいくとは思わないことだな)」
攻撃を続けながらもカナードは足元に魔法陣を展開。そして
『armor-piercing bullet』
その電子音が響いた直後、ザスタバ・スティグマトの発射リズムが変化した。

 

         ガガガガガガガガガンガンガンガンガンガン

 

見た目では途中から連射が単発となった以外、変化は無いが
「(っ?これは?)」
攻撃を絶えてるシャッハと映像を見ている隊長組、そして
「ん?弾に変化をつけたわね」
ティアナだけが変化に気が付いた。
「ん?変化って?私には連射が単発になっただけにしか見えないけど?」
「見た目はね。だけどそれだけじゃないわ。ザスタバ・スティグマトの魔力弾に特殊効果をつけたのよ」
画面を見たまま簡単に説明をするが、ふと複数の視線を感じスバルの方を向くと、
エリオとキャロ、そしてギンガが説明を求める目線を向けていた。
「ティアナ、説明お願いできる?」
その光景を見て、微笑みながらティアナに説明をお願いするなのは。ティアナは笑顔で承諾した。
「さっき『弾に変化をつけた』って言ったわよね。まぁ、簡単に言っちゃえばその通りなんだけどね。私もそうなんだけど
攻撃として放つ魔力弾には、色々な効果をつけることが出来るの。まぁ、一般的なのは他の魔法同様、殺傷設定・非殺傷設定ね」
そう言い、戦闘画面を見るティアナ。釣られてスバル達も再び見る。
「簡単な物だと魔力を上乗せして単純な威力アップ。他には魔力弾に誘導機能をつけて撃った跡にホーミング効果をつけたり、
魔力弾を無効化フィールドやバリアを中和する膜状バリアで包んだり、これは『多重弾核射撃弾』って言ってAMF戦では欠かせないわ」
「じゃあ、今カナードさんが撃ってるのは、その・・・・『多重弾核射撃弾』ですか?」
キャロの質問にティアナは『ざ~んねん。違うわ』と答える。

 

「シャッハさんが張っているのはシールド。基本魔法防御4種は知ってるわよね?シールドは『ただ硬いだけ』しか目立った長所は無いけど
スバルが得意な力づくで突破、もしくは破壊しないといけないの。まぁ、バリアブレイクなんて例外もあるけどね。その点、AMFなんかは
厄介といえば厄介だけど、さっき言った『多重弾核射撃弾』や魔力で発生させた効果、魔力を使用しない攻撃なんかを駆使すれば簡単に突破できるわ。
エリオやフェイトさんの雷やフリードの炎なんかがそうね」
「そうすると、シャッハさんが展開しているのはシールドですから、今の状況でダメージを与えるにはシールドを破壊しないといけないわけですか?」
エリオの質問に今度は『正解』と答え、軽く頭を撫でる。
「だけどそこで問題が起きたのよ。正直今の状態でザスタバ・スティグマトを連射してもシールドの破壊より前に弾が尽きる。カナードの武装は
魔力の節約を考えて魔力カートリッジで運用しているから、マガジンを交換する隙を狙われる。フォルファントリーに関しても同じね。
砲撃だから隙が大きすぎる。だから魔力弾に細工をした」
ティアナは4人の前にモニターを出し、ザスタバ・スティグマトが放たれてるシーンの停止画像を出す。続けて
魔力弾の映像を拡大し画像処理を施す。すると放たれてる緑色の魔力弾の色が単発になった途端に濃くなっていた。
そして先端も尖り、そこをガードするように半透明のフィールドが包み込んでいた。
「おそらく魔力弾の威力を強化しただけじゃなくて、先端を尖らせて、さらに先端のみフィールドで包んで発射してるのよ。
これによって貫通性が向上して対物破壊能力はアップ。まさに質量兵器時代にあった『徹甲弾』ね。
ただ、ここまでの細工をしてるから単発になっちゃってるみたいだけど」
『これで説明は終わり』と言い、ティアナはモニターを閉じる。
スバル達はそれぞれお礼を言い、なのははティアナの説明に満足げな表情を見せた。その時
「おっ、動くぞ!」
ヴィータの言葉にティアナ達は再びモニターに目を向けた。

 

「(くっ・・・・まずいですね・・・・・)」
カートリッジをロードし、シールドを強化するシャッハ。だが、直にシールドにヒビが発生する。
「(ですが、さすがです・・・・・・・こちらも・・・・・・仕掛けますか!!)」
内心で叫んだシャッハは突然両手から右腕だけの防御に変更、片腕だけの防御にした瞬間、展開している障壁は直にヒビだらけとなり、
このままではあと数秒で完全に砕け、シャッハに魔力弾の嵐が襲い掛かる。だがシャッハは『あと数秒』という時間があれば十分だった。
片腕だけの防御にして直に左手のヴィンデルシャフトを
「はぁあああ!!!!」
気合の声と共に地面に振り下ろした。振り下ろされたヴィンデルシャフトは地面を砕き、粉塵を巻き上げる。
巻き上げられた粉塵はシャッハは勿論、周囲を煙と埃で覆い隠した。
「ちっ、賢しい真似を・・・・・」
舌打ちをしながらも射撃を続けるカナード。だが、途中で手応えが無くなった為、射撃を止め直にマガジンを交換する。
その直後、粉塵の中から何かがカナード目掛けて猛スピードで突撃してきた。
「来たか!?何!!」
突撃してきた物に向かってザスタバ・スティグマトを放つ。だが、その物『ヴィンデルシャフト』は放たれる魔力弾を弾きながら迫り来る。
破壊する事を諦めたカナードは横にステップし回避。だがその直後、粉塵の中から今度はシャッハが突撃してきた。

 

得意のスピードを生かし、一瞬でカナードの間合いに入ったシャッハは右腕のヴィンデルシャフトを横に一閃、
カナードの腕からザスタバ・スティクマドを払った。その時に付いた勢いを利用し、そのまま体を横に回転させ、続けて遠心力をつけた回し蹴りを放つ。
迫り来る回し蹴りをカナードは空いた右腕で防ぎ、続けて左手でシャッハの足首を掴んだ。そして
「図に・・・のるなぁ!!!!」
掴んだまま振り被り、そのまま力任せにシャッハを地面に叩き付けた。
激しい音が響き、クレーターが出来る。
「かはぁ」
肺から一気に空気を吐き出すシャッハ。だが、カナードはそんな光景を無視し、
続けてシャッハの足首を掴んだまま、ハンマー投げの応用で投げ飛ばした。
再び地面に叩きつけられる瞬間、シャッハは体を回転させ着地。踏ん張り、足で地面を削りながら衝撃を殺し勢いを止める。
着地した場所が運よく先ほど投げ放ったヴィンデルシャフトが突き刺さっている場所だったため、即座に抜き取り、構えた。
「(・・・・・全く・・・騎士シグナムの言う通りですね・・・・・女であろうが手加減なしとは・・・)」
唇から流れる血を多少乱暴に拭いながらカナードを見据えるシャッハ。
カナードも蹴りを防いだ右腕を3度ほど振った後、両腕にロムテクニカを持ち、構える。
二人は直には動こうとはせずに、互いを見つめたまま動きを止める。
モニターで様子を見ているなのは達も自然と静まり返り、様子を伺う。
時間にして1分、だが、戦っている二人からしてみれば数時間も経過した錯覚が襲う。そして

 

               カラッ

 

何処からか聞こえた岩が落ちる音。それが合図となり
「はぁああああ!!!!」
「おおおおおお!!!!」
二人は声と共に駆け出し、互いの刃をぶつけた。勢いが衝撃波となり二人を中心とした周囲に押し寄せる。
ロムテクニカの刃とヴィンデルシャフトの刃、相手を斬る為、自身を守るためにぶつかり合う。
当初、接近戦ではシャッハが有利と皆は考えていたが、カナードはナイフによる素早い斬撃と自身の身体能力を駆使し、
シャッハと互角に、時にはバリアジャケットを斬りつけるなどの奮闘を見せた。

 

ここでシャッハは自身の考えが誤りであったことに改めて気が付く。
シャッハは以前、シグナムから『カナードはオールラウンダー型』と聞いていた。
オールラウンダーとは、近距離・中距離・長距離、全ての戦闘をこなす事が出来、戦闘における弱点が無いと思われている。
だが実際は、全てをこなせる代わりに、全てが平均的な能力しか出せずに特化したものが無い。
悪い言い方をすれば『中途半端な存在』になってしまう。
たとえば、なのはは中距離・長距離戦に特化しており、その関係での戦闘では無類の強さを発揮する。
だが、近距離戦は得意ではなく、中距離・長距離戦を廃止してシグナムやヴィータ、フェイトなどと戦ったら瞬く間に負けてしまう。

 

その反対に、フェイトは高速戦による接近戦に特化しており、その関係での戦闘では無類の強さを発揮する。
だが、中距離、特に長距離戦は得意としておらず、もし近距離戦を廃止してなのはと戦ったら、フェイトに勝ち目は無い。
はやてに関してもなのはと同じ事が言え、シグナムやヴィータに関してはフェイトと同じことが言える。
この事から、なのは達はそれぞれ得意とした戦法を持っており、そこに持ち込めば高確率で勝利を手にし、生き残る事ができる。
だがオールラウンダーというのは、それらの得意・不得意を均一にした存在のことを言い、
結果的に『特化した物を持たない強くも無く、弱くも無い』存在となってしまう。
そのため、どの戦闘においても『自分が絶対有利な状態(なのはで言う中距離・長距離戦)』に持ち込む事ができず、
結果的に『勝てる可能性・生き残る可能性』が少なくなってしまう。
(なのははこの事を考え、スバル達に、先ずはそれぞれの固有技能を高める訓練を行なっていた。
ティアナがそのことを無視して、固有技能が未熟な状態で接近戦や砲撃を行なったのは、当時のティアナが
なのはの気持ちを知らなかった事や『自分の強さを認める事』が出来なかった事、
近距離戦や長距離戦の能力が執務官には必要不可決だと知っていたためであった。)
だが、カナードはオールラウンダー型でありながら、全ての戦法において平均以上の戦闘能力を発揮して見せた。
これはデバイスである『ハイペリオン』が中距離・長距離戦に特化した物に対し、生身でのカナードは身体能力を生かしたナイフ戦術を
得意としていたためであった。その正反対の特性を持ったデバイスと術者の組み合わせと、カナードの適応能力が結果的に
『全てにおいて平均以上の能力を持った魔術師』を生むこととなった。
さらにカナードはザスタバ・スティクマドの魔力弾のバリエーションを増やしたり、防御魔法であるアルミューレ・リュミエールを接近戦に転用するなど
独自のスキルアップを行なった結果、絶対とまではいかないが『全てにおいて自分が有利な状態』を作り出すことに成功した。
ちなみにヴィータも『ベルカ式』の中では珍しいオールラウンダー型であり、(フェイト以上に近距離戦に偏っているが)
リインフォースに関しては『全ての状況下で絶対有利な状態』を作れるほど戦闘能力は高く、戦闘に関しては『六課の中では最強』と言っても間違いではない。

 

「さすがです・・・・・・ですが、この距離では・・負けません!!」
シャッハはヴィンデルシャフトを振る腕に力を入れ、カートリッジをロード、斬撃をさらに鋭くしカナードを押し始めた。
その攻撃をロムテクニカで裁いていくが、魔力で構成された刃には徐々にヒビが入り、そして

 

                  パリン    

 

シャッハが左のヴィンデルシャフトを思いきり叩き付けた瞬間、右手に持ったロムテクニカの刃は砕けた。そして
「はぁあああ!!!」
気合の叫びと共に右腕のヴィンデルシャフトを横に一閃、防ごうとしたロムテクニカの刃を砕き、カナードに叩き付けた。
「がぁ!!」
ヴィンデルシャフトの一閃を受けたカナードは真横に吹き飛び、地面に叩き付けられた。
チャンスと言わんばかりにシャッハは地面を蹴って、起き上がろうとしているカナードに接近、
「くっ・・・やって・・・くれたな・・・」
どうにか起き上がり、シャッハの位置を確認するため、前方を見たカナードが目にしたのは、左右のヴィンデルシャフトを重ね、
自分目掛けて振り下ろそうとするシャッハの姿だった。
「終わりです!!烈風一陣!!!」
重ねたヴィンデルシャフトを振り下ろすシャッハ。
この時点でシャッハは自身の勝利を確信していた。この攻撃を受ければ彼は間違いなく昏倒するだろう。仮にアルミューレ・リュミエール
を展開しても、ダメージが抜け切れていない今なら、残りのカートリッジを使用して押し通す事ができる。

 

だが、渾身の一撃を振り下ろすシャッハが見たのは、右腕にロムテクニカを持ち、
振り下ろされるヴィンデルシャフトに真正面から突き刺そうとするカナードの姿だった。
「無駄ですよ!!それではヴィンデルシャフトを破壊できません、そのナイフごと、叩き伏せます!!」
俯きながらナイフを突き刺そうとするカナードに言い放つ。
だが、その直後に顔を上げたカナードの表情を見たシャッハは、一抹の不安に襲われた。
「何、破壊できない事は事は百も承知だ・・・・・この勝負、もらった!!」
カナードは邪悪に笑いながら言い放ち、何の迷いも無くロムテクニカを突刺した。そして直に
「カートリッジ・ロード!!」『Burst』
刃が触れた瞬間にカートリッジをロードし、ロムテクニカを爆発させる。だが、一回きりではあるが、ザフィーラのシールドを破壊できるこの技でも、
カートリッジの魔力を込めたヴィンデルシャフトを破壊する事はできなかった。だが、カナードの狙いは『破壊』ではなかった。
爆発による衝撃により、ヴィンデルシャフトの切っ先は無理矢理変えられ、その結果、シャッハは巻き戻しされたかのように、振り被ったポーズを取る事となった。
「な!?これが目的で!!」
驚きの声をあげながらも、目はしっかりとカナードを見据えるシャッハ。そこで彼女が見たのは。
「アルミューレ・リュミエール展開!」
左手で三角錐型のアルミューレ・リュミエールを形成し、シャッハに斬りかかるカナードの姿だった。
両腕がヴィンデルシャフトごと使えないうえ、爆発の衝撃で瞬時に動く事が出来ないシャッハに、カナードの斬撃を防ぐ手段は無かった。

 

「・・・・ん・・・私は・・・・・・」
目を開けたシャッハが見たのは雲ひとつ無い青空だった。そして地面の冷たさを背中で感じた瞬間。
自分は仰向けに寝ている事にはじめて気が付いた。
「起きたか?早かったな」
声がする方向に首だけを向けると、くたびれた顔をしたカナードが座り込みながらこちらを見ていた。
「私は・・・・どれ位・・・・・」
「5分も寝てなかったぞ。」
「そうですか・・・・負けてしまいましたね・・・・・でも、面白かったです」
そう言い、起き上がろうとする。その時、自身の体に掛かっていたカナードの上着もずれて落ちた。
「ああ・・・言い忘れたが、決め手の一撃のせいでお前のバリアジャケットがズタボロだったからな。
さすがにこのままでは目のやり場に困ったので俺の上着をかけといたぞ」
「それを早く言ってください!!!!!」
顔を真っ赤にしながら上着で体を隠すシャッハ。
その光景を笑いながら見ていたカナードは、立ち上がりその場から去ろうとする。
「俺は先にいくぞ。お前はシャマルが来るまでそこにいろ」
そう言い、その場から去ろうとするカナード。シャッハも立ち上がろうとするが、
ダメージが残っているのか中々立ち上がれずにいた。
「だから言ったろ。そこで大人しくしていろ」
「・・・・・肩ぐらい、貸してくれても良いじゃないですか」
多少睨むような瞳でカナードを見据えるシャッハ。
「何故俺が?立てないのならここでじっとしていろ」
「・・・・・・・優しくないんですね」
「優しいさ。甘くないだけだ」
カナードはニヤ付きながら答えた。

 
 

・おまけ

 

「よう、カナード!お疲れ!」
たまたまヘリの格納庫の近くを歩いていたカナードはヴァイスに声をかけられた。
「ヴァイスか、ヘリの整備か?」
「そんな所。さっきまでシャッハさんと模擬戦やってたんだろ?飲めよ」
そう言い、スポーツドリンクをカナードに投げつける。
それを受け取り、例を言った後飲み始める。
「・・・ふと思ったが、結構整備員がいるんだな、ここには」
スポーツドリンクを飲にながら格納庫の内部を見るカナード。
そこではツナギを着た整備員達がテキパキと仕事をこなしていた。
「まあな。隊長達や新人連中を素早く、確実に送り届けてくれる俺の相棒の面倒を見るんだからな」
「『俺達の』でしょ!ヴァイスさん!!」
レンチを持った整備員と思われる男が突っ込みをいれ、他の整備員達も「そうだそうだ!」といわんばかりに頷く。
「そういうこった。こいつは俺達の相棒にして大切な仕事仲間。しっかり面倒見てやんないとな」
誇らしげに語った後、ストームレイダーに優しく触れるヴァイス。
カナードも、ヴァイスや皆の考えに満足したのか、自然と笑みがこぼれた。
「おっと、長居させちまったな。疲れただろ、仮眠でも取ったらどうだ?」
「ああ・・・そうしよう。今日は朝から疲れたからな・・・・・・」
「朝から?なんかあったのか?」
一度溜息をついたカナードは、朝の出来事(前編部分)について、めんどくさそうに話し始めた。

 

・数分後

 

「まぁ、こんな所だ・・・全く・・・なんで俺が・・・」
内容(半分は愚痴)を話したカナードはふと、辺りから殺気を感じた。
驚いて辺りを見ると体から異様なオーラを撒き散らすヴァイスと整備員がカナードを取り囲んでいた。
「・・・・・・何の真似だ?」
あまりの迫力に自然と一歩後ろへ下がってしまう。数秒の沈黙の後、どこから持って来たのか
ライフルを携えたヴァイスが重々しく口を開いた。
「・・・自慢か・・・・・自慢だよな・・・・どうだった?シグナム姉さんの下着姿はぁ~」
続けで周りの整備員もそれぞれ口を開く。
「朝起きてたら久遠ちゃんが一緒ぉ~?何のエロゲだよ・・そりゃ!!!」
「シャマル先生のキャミソール姿か・・・・・・・はは・・・はははははっは・・・世の中って不公平だよなぁ~」
「リインフォースさんの裸・・・・・はは・・憎いなぁ~・・・お前が凄く憎いなぁ~」
「リイン曹長を振って起こしたぁ?この変質者がぁ!!!!どんだけヒィヒィ言わせたんじゃぁ!!!」
「ヴィータちゃん・・・ヴィータちゃん・・・ヴィータちゃぁぁぁぁぁぁん!!!!!」
それぞれ思い思いの気持ち?を叫びながらカナードとの距離を縮める。
「・・・・悪いが、疲れているのでな。手加減は出来んぞ?」
「ふふっ・・・・・言いたいことはそれだけか?ハーレム野朗がぁ!!者共!!突撃ぃ!!!」

 

    「「「「「「「「「「「死ねよやぁ!!!!!!!」」」」」」」」」」」

 

それぞれ様々な武器を持ちカナードに突進するヴァイス達。
カナードは溜息を付いた後、ザスタバ・スティクマドだけを取り出し

 

          ガガガガガガガガガガ

 

              撃った

 

          ガガガガガガガガガガ

 

            容赦無く撃った

 

      ガガガガガガガガガガガガガガガガガガ

 

「ごめんなさいもうゆるしてかんべんしてください」という声を無視して撃ちまくった。
その後、ヴァイスに用があったため、格納庫を訪れたアルトが見たのは。ボロ雑巾の様になってるヴァイス達の姿だった。
事情を聞こうにも「ごめんなさいもうゆるしてかんべんしてください」としか答えず。真相は闇に包まれることとなった。

 

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*1 ;・Д・