勇敢_第05話

Last-modified: 2007-11-19 (月) 13:37:49

機動六課隊舎

 

「全く・・・報告書くらい自分で書け。それに溜めとくな」
愚痴りながらもキーボードを打つカナード。
「文句言うなよ~。隊長と副隊長の補佐もオメェの仕事だろ」
カナードの愚痴に答えながらキーボードを打つヴィータ。
「副隊長の仕事の半分以上を肩代わりさせといて何を言う」
「うっ・・・ど・・どうせ今日はやることなんで無いだろ!?」
痛いところをつかれながらも言い返すヴィータ

 

機動六課に『雇われる』という形になったカナードは
忙しい隊長・副隊長の補佐(今行ってる書類整理の手伝いなど)や、
なのは達と新人達の訓練メニュー製作や、その手伝い
隊長・副隊長との訓練や模擬戦の相手、(自身の訓練も含む)
はては、家を空けがちな八神家の掃除、洗濯など、様々なことを行っていた。

 

「本来ならイメージトレーニングや町の散策などをしたかったんだがな」
「うっ・・・・ごめんなさい・・・・」
素直に謝るヴィータを見て、小さく笑うカナード
「まぁ、お前も戦闘教導などで大変なのは理解している。気にするな」
そう言い、キーボードを打つスピードを上げるカナード
「・・・・わりぃ。あんがとな」
素直にお礼を言うヴィータ、その時
「カナードさーん、今大丈夫ですか?」
『ふよふよふよ』という効果音が似合いそうな速度でリインフォースⅡがやってきた。
「ああ、大丈夫だが、何だ?俺に何か用か?」
キーボードを打つ手を止め、ツヴァイを見据えながら尋ねるカナード
「はいです!はやてちゃんがお話があるから呼んできてくれって」
「そうか、分かった直に行く」
そう言い、今までやったデータをヴィータの端末に転送する
「おお、スゲェ!サンキュ、カナード。助かった」
送られてきたデータに満足するヴィータに
「チェックは任せるぞ」
そういい残し、カナードははやての元に向った。

 
 

部隊長オフィス

 

「手伝い?」
「そうや、頼めるか?」
はやてはパネルを捜査し、ある世界の風景を移す
「ほぅ・・・・良い所だな」
映し出された風景を見て、素直な感想を言うカナード
「第61管理世界『スプールズ』。見ての通り、自然豊かなところなんやけど、最近、ここで野生動物の密猟が発生しとるんや」

 

「・・どこの世界でもやることは一緒か・・・・」
苦々しく呟くカナード。
「本当なら、現地の管理局自然保護隊が担当するんやけど、どうにも密猟者はそれなりの武装をしとるらしいんや」
向こうの局員が撮ったのか、密猟者達の顔写真が映し出される。
「この事件は、現地の自然保護隊と応援として来る陸士108部隊の隊員二名が担当する筈やったんやけど、
その内の一人が別件で担当している密輸品事件に進展があってな、そっちに行くことになってしまったんや」
「はぁ、相変わらずの人手不足か・・・」
ため息をつきながら皮肉を込めて言うカナードに
「まぁ、それは昔からやからな~」
ため息をつき、答えるはやて。
「で、カナードには別任務で抜けた108部隊員の変わりに行ってほしんや。
生憎、うちらは明日は朝から隊長達や新人フォーワード組とホテル警護の任務があるから、第61管理世界との距離を考えると行くことが難しい。
陸士108部隊もうちらの事情は知っとるから、構わないとはいっとったけど、向こうの部隊長、
ゲンヤ・ナカジマ三等陸佐にはお世話になっとるから、手伝ってきてほしんや。お願いできるか?」
カナードを見据え、答えを待つはやてに
「ふっ、八神部隊長からの直々の依頼だ、喜んで引き受けよう」
微笑みながら答えた。
「ありがとうな、実はそう思って話はつけてきたんや。今日の午後12時30分にクラナガンの駅のカフェで合流して、出発や」
そう言いながら、事件の詳細なデータをカナードに渡すはやて。
「ん?隊員の写真とかはないのか?」
渡された資料に、今回共に行く隊員の写真が無いことに疑問を持つカナード
「それが、急なことやったんで用意できんかったんよ。でも、待ち合わせ場所は指定してあるから、向こうが気づくやろ」
「なら、構わないが・・・・どんな奴なんだ?わかるか」
特徴だけでも知っておこうと、尋ねるカナード

 

「108部隊の隊員はギンガ・ナカジマ、スバルのお姉ちゃんや」

 
 

数時間後

 

:駅前オープンカフェ

 

「早すぎたか」
待ち合わせのオープンカフェで時計を確認しながら呟くカナード
「(まぁ、遅刻よりは良いか。仮に、先に到着していたら向こうから声をかけるだろう)」
カナードはギンガについての説明をはやてから
『ギンガは髪を長くしたスバルを想像すればすぐわかる。歳はカナードと同じ17歳で結構な美少女や、見とれるんやないで~』
こんな感じで受けていたのだが
「スバルの顔が・・・・思い出せんな・・・・」
よく話しかけてくるエリオ、
ハイペリオンの調子や整備をしてもらう時に、会う機会が多いシャーリー、
リインフォースそっくりなリインフォースⅡ、
カナードが六課に雇われてから憶えた顔はこの三名だけであり、
「(名前は覚えたんだがな・・・顔までは思いだせん)」
スバルなどの他の六課メンバーに対しては「名前だけ」な状態であった。

 

ハイペリオンに訓練メニュー製作時に参考にしたスバル達の訓練映像があるので、それを見ようとしたが、直にしまう。
「(まぁ、向こうは俺の顔を知っているだろう。声がかかるのを待つか)」
自分を納得させたカナードは飲み物を頼むため、近くのウェイターを呼んだ。

 

カナードがウェイターにしつこく『今日のお勧めランチ』を勧められている時、三つ離れたテーブルでは
「早すぎたかな?」
数分前のカナードと同じ台詞をはくギンガ・ナカジマがいた。

 
 

数時間前

 

「傭兵・・・ですか?」
上司でもあり、父親でもあるゲンヤ・ナカジマ三等陸佐に尋ねるギンガ
「そうだ、お前と一緒に行動する筈だった隊員の代わりなんだが、八神が即決してくれてな、
機動六課で雇っている傭兵を貸してくれるそうだ」
そう言い、今回の事件の資料をわたすゲンヤ、だが
「ん?なんだ、傭兵ってのが気にいらねぇか?」
ゲンヤはギンガを見据えながら尋ねる
「・・・・はい、正直・・・・・」
『金を払えばどんな事でもする人間、たとえどんな違法で汚いことでも』これがギンガが持つ傭兵のイメージであった。
「まぁ、お前がどんなイメージを持ってるか知らねぇが、大体お前の考えた通りかもしれんな」
そう言い、側に置いてあったお茶を一気に飲む
「だがな、その傭兵、ロクデナシではなさそうだ。八神の目は腐っちゃいねぇからな」
ゲンヤの言葉に、はやての人柄を知っているギンガは素直に頷く。
「それによ、その傭兵『カナード・パルス』って奴なんだけどよ、八神の奴、心底嬉しそうにそいつの事話すんだよ」
「はやてさんが・・・・」
「それでも、気にいらねぇか?」
「いえ、了解しました!」
そう言い、渡された資料を見るギンガ、だが
「あの・・・『カナード・パルス』さんの顔写真は無いんですか?」
ギンガの質問にバツが悪そうな顔をするゲンヤ
「ああ・・・・それに関しては俺のミスだ・・・・詳しい事は聞くな・・・」
写真が入った映像ディスクを、上司が寄越した見合い写真だと勘違いし握りつぶしてしまったとは言えないゲンヤであった。
「まぁ、顔は見たから特徴はわかる。歳はお前と同じで性別は男のロンゲの兄ちゃんだ。お前がわかんなくても向こうが知ってる筈だ」

 

「(どんな人なんだろ・・・・)」
はやてが自分の父に嬉しそうに話す相手である、興味が沸くギンガ
「『性別は男のロンゲの兄ちゃん』といってたけど・・・・・」
ギンガがあたりを見渡すと、
「今日に限って、なんで『性別は男のロンゲの兄ちゃん』が多いのかしら?」
それなりの数の『性別は男のロンゲの兄ちゃん』がいた。
「(カナードさんには悪いけど、声をかけて貰うのを待とうかな)」
自分を納得させたギンガは飲み物を頼むため、近くのウェイターを呼んだ。

 

ちなみに、互いが互いの存在に気づくのは、それから15分ほど経過した時であった。

 
 

数時間後

 

:第61管理世界『スプールズ』

 

「陸上警備隊第108部隊ギンガ・ナカジマ陸曹と他一名、応援に参りました!」
敬礼をし、挨拶をするギンガ、だが内心
「(間に合った・・・・・)」
遅刻しなかったことにホッとしていた。
「応援、ありがとうございます!早速打ち合わせをしたいのですか」

 

その頃、カナードは
「本当にいいところだな・・・あいつには悪いがのんびりとさせてもらおう」
仕事真っ最中のギンガをよそに、自然を満喫していた。その時
「あの・・・すみません」
一人の女性が近づいてきた
「何だ?打ち合わせならもう一人のほうがやっているが?」
「いえ、貴方、機動六課から来たんですよね?」
女性の質問にいぶかしむカナード
「そうだが・・・貴様は?」
「あっ、私ミラっていいます。あの、キャロ、キャロ・ル・ルシエは元気にやっていますか?」

 

「そうか・・・ここはルシエが以前、自然保護官のアシスタントをやっていた所なのか」
「ええ、手紙とかメールとかよく来るんだけどね。やっぱり心配で」
笑いながら答えるミラ
「ああ、元気にやっている、何なら訓練映像を見てみるか?訓練メニュー製作時に参考にした映像があるが」
そう言い、待機状態のハイペリオンを取り出した。
「わぁ、ありがとう!タントにもみせてあげないと!」
そう言い、タントを呼びにテントの中に入っていくミラ。その時、丁度入れ違いに作戦本部のテントからギンガが出てきた。
「おまたせ、え~っと・・パルスさん」
「カナードで言い、俺もナカジマ姉と呼ばせてもらう」
「ふふっ、ギンガでいいわ、カナード」
ギンガは小さく笑いながら答えた。

 

打ち合わせで話した内容をカナードに伝えるギンガ、
すぐ側ではキャロの訓練映像を「おお!」とか「危ない!」と叫びながら、食い入るようにして見るミラとタントがいた。
「なるほど、俺達は武装した密猟者の撃退が主な仕事か」
「ええ、密猟者達、一度ここの局員を撃退してるからね、いい気になってのさばってるみたい」
そう言い、カナードに打ち合わせで使用した資料を渡す。
「まぁ、捕まった動物共々多次元世界に逃亡、よりはマシか・・・・出発は?」
「今から一時間後、それまでは休憩なり準備なりしといてくれって」
「わかった。ああ、もし暇なら、あの二人と一緒に訓練映像でも見るか?スバルも写っているぞ」
そう言い、親指で後ろを指すと、「フリードってこんなに大きかったんだ」や「キャロ・・・もう男を・・・」と
変わらず声を出しながら映像を見ている二人がいた。

 

「ええ・・・でも・・・」
「他の雑用なら俺がやっとく、気にするな」
ギンガの不安を先に解消してしまうカナード。
「そう?ありがとう。それじゃあ、お言葉に甘えようかしら」
笑顔でお礼を言いながら、二人の元へ向ったギンガ。数分後には映像を見なが二人に負けずに声を出すギンガがいた。

 
 

数時間後

 

:密猟者達のアジトから1キロ先

 

「確認します、ギンガ・ナカジマ陸曹とカナード・パルス隊員は先行して密猟者達の足止めをしてください」
バリアジャケットを装備した二人は、車内で作戦内用を聞いていた。
「10分後に、私達武装隊員が四方から突入します」

 

一方、外では
「だけど・・・二人だけで大丈夫かしら?」
事前に作戦内容を聞かされていたミラはタントに尋ねる
「仕方ないだろ、まともに戦闘できるのはあの二人、後は数で押すしかないんだ。密猟者達が
あんなに武装してるって情報が事前にあったら、本局からもっと応援が来たんだろうが・・・」
タントはため息をつきながら答える。
「作戦が・・予定通りに進んでくれれば良いんだけど・・・・」
ミラは夜空を見ながら呟いた。

 

だが、ミラの願いはかなうことが無かった。なぜなら

 

「こちら、ギンガ・ナカジマ陸曹です。あの・・・・犯人全員、捕らえました」

 

カナード達が突入して3分後、このような通信が入ったからだ。

 

「まったく・・・正に動物園だな・・・」
犯人一見を捕らえたカナードとギンガは、檻に押し込められた動物達を見ていた。
「大金持ちに売るか、剥製にして売るか・・・・やな感じね」
顔をしかめながら呟くギンガ
「とりあえず、運ぶのを手伝いましょ。タントさん達はもう作業をやっているから」
ギンガの言葉に頷くカナード、その時
「ん?」
カナードの足元を一匹の子狐が通り過ぎていった。そして
「こら、待ちなさい!」
声と共にミラが子狐を追ってやってきた。
子狐はミラから逃げようとするが、壁に当たり逃げ場を失う、そのため
「フゥゥゥゥゥ!!」
ミラ達に向って威嚇を始めた
「どうしたんですか、この子?」
威嚇をしている子狐を見ながらミラに尋ねるギンガ
「さっきまでオリに入れられてた子、檻を空けたら急に飛び出しちゃって、私達を連中の仲間だと思ってるみたいなの」
引っかかれたのか、手をさすりながら答えるミラ。

 

相変わらず威嚇を続ける子狐、そんな子狐にカナードは近づき、しゃがんで右手を差し出した。
「あっ、危ないわよ!」
ミラが注意をした瞬間、子狐はカナードの指に思いっきり噛み付いた。
噛み付くことをやめない子狐
その行為を黙って受け入れるカナード
そんな光景をただ黙って見つめるギンガ達、
しばらくすると子狐は噛み付くのを止め、噛み付いていたところを舐め始めた。
「安心しろ・・・俺達は・・・・敵じゃない」
そういいながら子狐の頭を撫でるカナード、子狐は安心したのか、
「くぅん・・・・」
倒れるように眠ってしまった。その子狐を抱き上げ、ミラに預けるカナード。その時
「ナカジマ陸曹!パルス隊員!至急来てください!!」
慌てて入ってきた通信に、只事ではないと感じた二人は子狐をミラに任せ、外へ出る。すると
「ガジェットドローンだと!?」
ガジェットドローンI型とガジェットドローンIII型が占領したアジト目掛け迫ってきた。
「(なぜこいつらが・・・・まさか・・・)」
自身を納得させたカナードは近くで慌ててる隊員を捕まえ
「お前達は後方に退避してろ!いても邪魔なだけだ!」
カナードの言葉に素直に従う隊員
「ギンガ、お前は地上のI型の相手を頼みたい、出来るか?」
カナードの問いに
「任せて!」
左手のリボルバーナックルを掲げ、答えた。
「頼もしいな、俺は上空の奴を片付ける、頼むぞ!」
そう言い、空のガジェットに突撃するカナード
「ちっ、まとめて消されないようにバラけて飛行している・・・・こしゃくな」
呟きながらもすれ違いざまにロムテクニカで二体のガジェットを切り裂くカナード
「『頼もしいな』か・・・それはこっちの台詞なんだけどね。行くよ、ブリッツキャリバー!」『YES』
つい最近六課から支給された相棒に声をかけ、カートリッジをロード、陸のガジェットに向って突撃するギンガ
『ストームトゥース』
ナックルスピナーを回転させ、発生させた衝撃波を纏った拳が、正面のガジェットを吹き飛ばした。

 

「やはりな・・・・・」
ガジェットを撃退したカナードは局員を使い、アジトを徹底捜索。すると
「ロストロギア・・・・これも密輸品ね・・・・」
密輸品と思われるロストロギアが多数見つかった。
「おそらくガジェットはこれに食いついてきたんだろ・・・・やはりあったか・・・・」
中からレリックが入ったと思われるケースを見つけたカナード。その時
「ん?」
カナードの足元を一匹の子狐が通り過ぎていった。そして

 

「こら、待ちなさい!」
声と共にミラが子狐を追ってやってきた。
「どっかで見た光景ね・・・・」
苦笑いをしながら呟くギンガ、だが今回は
「ふふふ・・・痛くないからねぇ~・・・」
予防接種なのか、注射器を持って微笑む(目は笑っていないが)ミラと
「くぅぅぅ~ん」
明らかに怯えている子狐という光景であった。
子狐を壁に追い詰め、ジリジリを距離をつめるミラ、その時

 

        ぽん

 

そんな効果音と共に子狐は女の子に変身、驚くミラを避け、カナードの後ろに隠れた。
「「「・・・・えっ(なっ)?」」」
突然の変身に驚く三人
「この狐、使い魔か何かか?」
カナードがギンガに尋ねるが
「いえ・・・魔力は感じるけど・・・・魔力パスが感じられない・・・」
マジマジと見つめながら答えるギンガ
「そうすると、この狐(久遠)ん?」
いきなり話し出した女の子(子狐)に注目する三人
「私・・・久遠・・・・私の・・名前・・・」
相変わらずカナードの背中に隠れながら呟いた。

 
 

「あの狐か?ありゃあXXX研究所の実験動物さ」
詳しい話を捉えた密猟者に聞くカナード達。当初は口を割らなかったか、司法取引を持ちかけたら、自慢げに話し始めた。
「XXX研究所・・・違法実験を行ってたことが知れて、局の捜査が入った所ね」
確認するように呟くギンガ
「そうさ、あの狐はあそこで実験対象になっていた動物さ、大方兵器利用目的で『作った』んじゃねぇのか?」
『作った』という言葉に反応するギンガとカナード
「運が良かったぜ、たまたま無人になった研究所に行ったらこいつがいたんだからな、弱っているから捕まえるのは簡単だったぜ。
そんでよ、今回の依頼人の中に研究者がいてよ、そいつになんとなく話したら目的のロストロギアと一緒に高額で買い取ってくれると言ってきやがったんだ。
まぁ、大方実験材料にでもするんじゃねぇのか?」
自分の運のよさを自慢するかのように話す男。
「その研究者・・・・スカリエッティという名前ではないか?」
カナードの質問に
「そうそう、そういう名前だったな、これで司法取引は成立だな」
そう言い、嬉しそうに笑い始める男
その顔に不愉快間を表すギンガ達
「・・・そうか・・・・すまんな・・・・」
そう言い、いきなり男に謝るカナード、そして

 

        ドゴッ!

 

問答無用に男を殴り飛ばした。
唖然とする皆を無視しカナードは
「手が滑った・・・悪いな。それと、司法取引だが密猟に関してのみだ。ロストロギアの密輸に関しては関係ないと思え」
そう言い、取調室として使われているテントから出て行った。

 

外では、子狐形態の久遠が待っており
「くぅ~ん」
カナードの姿を発見すると、近づいてきた。
「・・・・おまえも・・・・同じか・・・・」
そう呟きながら久遠の頭を撫でるカナード。その時
「カナードさん」
ミラとタント、ギンガが近づいてきた
「こいつ・・・久遠はどうなる?」
三人に背を向けながら尋ねるカナード
「この子は他の動物とは違うからな・・・だが管理局が丁重に保護する筈だ」
タントが答えるが
「そこでもまた、実験動物扱いか?」
カナードの更なる問いに沈黙するタント、その時
「・・・・・なら、俺が預かろう」
カナードの突然の発言に驚く三人
「スカリエッティは、レリックと一緒にこいつも欲しがっていた。現状では少しでもレリックと関係があるかもしれない以上、
担当している機動六課が保護するのは当然だと思うが?」
皆を見据え自分の意見を言うカナード。
「・・・そうだな、カナードの言う通りだな」
腕を組み納得するタント
「そうね、それにこの子、カナードにべったりだし」
しゃがんで久遠を見据えるミラ
「レリック関係は六課が担当だから、カナードの考えに従うわ」
ギンガは微笑みながら答えた。

 

その後、久遠に関してはタント達が上手く話をつけてくれたことによって、カナードが預かるということで決着が付いた。

 
 

翌日

 

:帰りのレールウェイ内

 

「そういえば、なんでカナードって傭兵になったの?」
早朝のレールウェイの中、窓の外を見ているカナードに尋ねるギンガ
「カナードの実力なら、普通に六課の隊員になれる筈だし、管理局でもやっていけると思うんだけど」
ギンガの問いに、カナードはギンガのほうを向き、理由を話した。

 

「・・・・すごいね・・はやてさんや皆のこと考えて・・・」
「買いかぶるな、ただ不器用なだけだ」
そう言い、窓の外を見直すカナード
「そんなことないよ。それに、とっても優しいよ、カナードは」
カナードの腿の上で丸まっている久遠を見つめながら答えた。
「・・・・黙ってろ!」
さらに顔を窓のほうに向けるカナード。
それを笑いながら見るギンガ。

 

人がほとんど乗っていないレールウェイは、朝日を浴び、静かにクラナガンに向っていた。

 
 

スカリエッティのラボ

 

「そうか・・・・失敗したか」
送られてきた戦闘映像を見ながら、ジェイル・スカリエッティは特に残念がるわけでもなく、呟いた。
『今でしたら、追撃戦力を送ることが出来ますか?』
ウーノがスカリエッティに尋ねるが
「やめておこう。レリックとあの生体兵器は残念だが、彼らのデータが取れただけで良しとしよう」
そう言い、ウーノとの通信を切り、カナードとギンガの戦闘映像を映し出す。
「興味深い素材が増えたのは嬉しいことだ。タイプゼロ・・・そして彼は、あの二人と同じだろう」

 

「ねぇ、追撃しなくていいの?私出たいんだけど?」
ウーノがスカリエッティとの通信を切った直後、ノーヴェがウーノに話しかけてきた。
「ダメよノーヴェ、貴方の武装は完成したばかり、調整が全く済んでいないわ」
「完成はしてるんでしょ?だったら問題は無いはずだよ。それにウェンディとチンク姉が一緒に行ってくれるって」
ウーノがノーヴェの後ろを見るとチンクとウェンディがやってきた。
「私とノーヴェの武装テストには、ちょうど良いと思うんっすけど?」
「私も同行しよう。それで問題は無い筈」
二人が助け舟を出すが
「ダメよ、ドクターの指示は絶対。それに、彼が貴方達に言いたいことがるそうよ」
その言葉に後ろを向く三人、そこには
「「げっ、ヴェイア」」
「おお、ヴェイア」
首にヘッドフォンを下げた少年『グゥド・ヴェイア』の登場に、それぞれ違う反応をする三人(二人は同じだが)。
「こんにちわ、ウーノさん、チンクさん。ノーヴェ、ウェンディ、『げっ』はないと思うけどな」
苦笑いしながら反論をするヴェイア。
「何だ?また訓練メニューでもサボったのか?」
「いえ、頼んでいた資料整理が全く進んでいなくて」
チンクの質問に答えるヴェイア。
「だってよ~・・・こういうのめんどくさくて・・・」
「そうっす、こういうのはクアットロ専門っすよ~」

 

二人はそれぞれ反論するが、自分に非があるうえ、姉二人が目の前にいるため、強く言い出せないでいた。
「ダメですよ、自分でやんなきゃ。はぁ、しょうがないですね、僕がやっときます」
ヴェイアの言葉に喜ぶ二人、だが
「今日のお茶は、二人だけ甘い物無しです。残念ですね、今日は美味しいケーキが手に入ったんですか」
その言葉に笑顔が凍りつく二人
「なっ、て、てめぇ!!卑怯だぞ!」
「そうっす!極悪非道っす!!」
それぞれ非難するが、
「トーレさん達の分もあるので、後で伝えといてください」
「悪いわね、ありがとう」
二人の非難を無視し、ウーノに話しかけるヴェイア
「ふっ、非難をする暇があったら、さっさと終らせた方が良いと思うが?」
チンクの言葉に
「「ちっくしょ~(っす!!)!!」」
叫びながら資料室に向う二人。
「チンクさん、ありがとうございます。でも、手伝ってきますね」
そう言い、二人の後を追うヴェイア。
その光景を微笑みながら見つめる二人、だがチンクだけは
「・・・・今のヴェイアが、本当のヴェイアなのか・・・?」
ヴェイアのヘッドフォンを見つめながら呟いた。