単発ネタ(XXXIXスレ273) 氏_ダイナミックな逆襲のシン_第2話

Last-modified: 2011-06-13 (月) 01:55:03
 

「ダアッ!?…い…いきなりコックピットに放り込むこたあねえだろ!」

 

暗闇の中でシンが文句を叫ぶ。

 

アメノミハシラ
ここは新型MSのテストという名目で、多くの兵士が足を踏み入れては再起不能となった地獄だ。
いや、正確には誰もが足を踏み入れる前に散っていたと言うべきだろうか…?

 

そしてその地獄へシン・アスカもまた足を踏み入れようとしていた。
女性科学者は周囲に正確な指示を出しつつ、シンに声を掛ける。

 

「ごめんなさいシン・アスカ君、時間がないの。」

「本当に大丈夫かしら…?」

 

ルナマリアは不安を隠しきれない。

科学者は答える。

 

「…解らないわね…あなたも知っているとおり、アレを動かすには強靱な肉体と精神力が必要です。」

「ええ…あの全身が焼け付くような苦痛に耐えられるかですか…。」

 

ルナマリアはその身を持ってアレの恐ろしさを知っているのだ。
自分の二の舞になってはシンに申し訳がたたない。
しかし彼女はシン・アスカの“守る”事への病的なまでの執着、戦争への憎しみも知っていた。

 

「まあ、元ZAFTのトップエース、シン・アスカがこの程度で死ぬような奴ならば
 今ここで死なせてやった方が親切かもしれんがな。」

「ミナ様…。」

 

190cm近い長身の中性的な雰囲気を漂わせた黒髪の女性が入ってくる。

彼女はロンド・ミナ・サハク。オーブ五大氏族「サハク家」の当主であり、この計画を進めた張本人である。

 

「シン・アスカは今でも『フリーダムを墜とした男』として、一部に熱狂的なシンパが存在している。
 更に一年前の暗殺未遂だ。今の政治体制に不満を持つものも多いからな。」

「…もし自由にしていたら間違いなくどこかの勢力に担ぎ出されますね…。」

「ああ…そうなれば今度こそ本当に世界は地獄となるだろう…。」

 

その言葉を聞き、ルナは押し黙る。

 
 
 

(しかしこのマシンは操縦機構がMSと全く違うのか…いったい何なんだコレは…?…!?)

 

シンはそんな事を考えながら、手探りで操縦桿を握る。すると火傷にも似た痛みが腕に奔り全身に伝わった。

 

「ウァァァァァァァァ!?!?!?!?」

 

まるで断末魔かのような叫び声が格納庫全体に響き渡ると同時にルナマリアは叫ぶ。

 

「シン!その痛みに耐えて感情でその力をねじ伏せなさい!」

「ム…ムチャクチャ言うな!…ったく何時からお前は魔女になったんだよ…」

「誰が魔女よ!」

「いきなり人をこんな目にあわせたお前だよ!」

 

ルナと言い合うのもいつ以来だろうか…?
そんなことを考えたシンの中にほんの少しの余裕が生まれはじめた。
そしてその思い出の中に、戦いで失われた家族や友の姿も浮かんでは消えてゆく。

 

(力が欲しい…皆を守る為の力が欲しい…もう俺は誰も失いたくはない!)

 

シンは力を込めて操縦桿を握りなおす。

 
 

「俺に力を貸せぇぇぇぇぇぇっ!!!!」

 
 

その叫びと共に魔神は再びその瞳に光を宿した…。

 
 

】【】【