日記の人 ◆WzasUq9C.g 15

Last-modified: 2016-03-22 (火) 01:45:33

スティング漂流日記 第01話「船出」
 
 
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「どうすりゃいいんだ……」

ネオとの連絡手段もなく、エターナルが今何処にいるかも分からぬ俺は途方に暮れていた
このまま再会も果たさずアメノミハシラに止まるのを考えると胃が痛くなる
そんな俺の状態を見かねてか、ミナは俺の元にやってきた。
俺は今までの事情や幽霊のルールとその一部のテレポートの破綻を話し、ミナに答えを求めた
すると、ミナはこう言った

「ティファという少女に会いに行け
きっと知恵を貸してくれる」

ミナの助言の他に手立ては無い
よって、タカマガハラ一番艦『ヤタガラス』行きが決まった
藁をも掴む思いでの決断だ

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まとめる荷物は、ミナが書いたティファという少女への手紙——そして覚悟
戦艦のヒッチハイク(もちろん無断だが)で目的地のプラント宙域まで行く算段を立て、ドッキングベイに向かう

「待っていたぞ」

そこには何故かミナがいた

「見送りか?」
「それもあるが、餞別を渡そうと思ってな」

指差す先には、一機のMS——巨大なバーニアが特徴的だ

「こんなもん貰っていいのかよ?」
「気にするな、これは『不良品』だ」
「……不良品を渡す気かよ……」
「だったら、宇宙をさまよう方がいいか?」

ミナの目が嗜虐に満ち溢れている
やはり、この女は恐ろしい

「……それよかマシだが……MSのエネルギーで到着出来るのかよ?
ガス欠はごめんだぜ」
「心配するな。乗れば解る」
「……わかったよ……」

コックピットに乗り込み、OSを立ち上げる

「核エンジンか!?」
「そうだ。バラす予定だったが、お前のためにとっておいた」
「こんな物騒なもん……」
「私の記憶が正しければ、お前は命に優しい男だろ?」

確かに、生命に危害を加えることが出来ない俺には、核エンジンも関係ない
コックピットハッチを閉じ、歩行プログラムを作動させてドッキングベイに向かう
そこでふと、思い出したように外部通信を開いた

「なあ、聞いていいか?」
『なんだ?』
「なんでこんなに世話を焼いてくれるんだ?」
『……何だかお前が弟のような気がしてな』
ミナの表情が儚げなものに変貌した

「似てるのか?」
『いや、全く』

気のせいだったようだ

「……おい」
『冗談だ。……気に入った……では不満か?』

ミナの表情が愉しげに変わった

「……なんか恐ろしい理由だな……」
『ふふふ、幽霊なっても仲間が心配で様子を見に行くお前は見上げたものさ
気に入ったと言う意味、『わかって』いるな?』

この表情は気のせいでないようだ

背筋が凍るのを感じながら続ける

「最後に聞くが、『こいつ』の名前はなんだ?」
「そいつの名は『パンドラ』さ。行き着く先に希望があるといいな」

ミナはにこりと顔を微笑ませた
——去り際に、期待に答えるとするか

「了解した!帰ったら、抱かせろよな!
スティング・オークレ、『パンドラ』、出るぞ!」
『ちょ……おまえ……』

バーニアを吹かし、勢いよく飛び出す——悲しいかな、Gは感じない

かくして、俺の旅は始まったのだ

〜つづく〜

01ページの裏

「やべぇ……調子乗っちまった……
あんな女を抱いた日にゃ、『私を置いて行くのか!?』とか言われて成仏もできねぇよ……」

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「ちょっと、粉が効きすぎたな……私らしくもない……
『気に入ったからちゃんと帰ってこい』と伝えたかったんだが……
あいつは『わかって』ないみたいだ……」

〜つづく?〜