暇人A_第04話

Last-modified: 2007-11-19 (月) 14:08:36

「それでは、今日は新たに陸戦部隊に配備されたガジェットタイプの模擬戦をしましょう」
なんて言うギンガだが、陸士108部隊は基本的に他部隊への出向をする人が多い上、自由参加のため、今いるのはシンを入れて2人だけだった。
「それで、最も特徴とされるのが、浮遊魔術を自身にかけ続けたままAMFを発生させることです」
AMFとは、魔術発生を抑え込む効果を持つもので、魔術使用者にとっては最悪の能力である。
「とりあえず物は試しですね。
わたしも初めてですが、記録は残しておきます」
記録媒体に向かってギンガが話し終わると、シンに向き直った。
「今日はデバイスがありませんが、とりあえずAMFの感覚だけは捉えてください」
「了解」
シンは多少ダルそうに答えた。
実際デバイスなしで出来ることは限られているのだ。
「来たれ、そして行け」
シンは先ほどまでここでランク試験を受けていた少女達がラストスパートをかけすぎた為に生じた破片を浮かせ、ある程度上昇させ、魔法を解いた。
それは落下に際し力を伴って、ガジェットタイプ1機を破壊した。
「わ、すごいですね…」
ギンガは予想外の事にそうとしか言えない。
そして、「ガジェットタイプの事、知ってましたね?」バレた。

「今更言っても寒いが、あれはあんな感じにAMF外で小細工すればいいんだ」
残りのガジェットタイプを黄金の左手で破壊しているギンガを尻目に、シンはギンガの真似をして、記録媒体に話しかけていた。
「終わったみたいだな…」
尻の目、もとい耳がそう感知した。
「お疲れ様」
振り返ってギンガにタオルを渡した。
「ありがとう。
やっぱりデバイスなしはつらい?」
受け取り、結局初めの1機しか破壊しなかったシンに聞いた。
「最初のあれ位なら楽なもんだけど、敵は的じゃないからな…」
初めの1機の空気読みのスキルはなかなかのものだ。

そんなふうにシンが新たな環境を体感していたころ、母艦を失って出向していたキラたちはと言うと、
「あなたが八神二等陸佐ですね?」
新たに配属される事になった部隊の隊長にあっていた。
「第08独立特殊起動隊所属、アスラン・ザラ二等空佐です」
「同じくキラ・ヤマト一等空尉です」
軍隊風の敬礼と共に告げた。
「そんなかしこまらんでもええよ?
アスラン君は階級も変わらんのやから…」
むしろ空佐となるため、はやてより多少上かもしれない。
「しかし…」
「まぁ、元の部隊におったようにしてくれたらええ。
世話になっとるんはいつもわたしの方やから」
どうやらカガリの知り合いと言うのがこの年若き隊長らしい。
「失礼しま~す」
「入るね、はやて?」
不意に小学校の職員室に入るようなノリで、少女が二人入ってきた。

「なのは?」
アスランが黒髪の少女に向かって言った。
「うん。
久しぶりだね、アスラン君」
「二人は戦技教導官の演習の同期やったね」
はやてがそんな二人を見て言った。
「はい。
まぁ、自分は数度目の受講でしたが…」
「アスランは完璧を求め過ぎなんだよね」
気に入らない部分が少しでもあればアスランは何度となく受講するのだ。
「お前は手を抜きすぎなんだ。
本当なら、俺と同じ位の肩書きがあっても可笑しく無いのに…」
手を抜く、というよりは『そつなくこなすだけこなす』と言った感じだった。
「まぁ二人の事は追々知っていきたいとして、マリューさんは元気?」
終わらぬ言い合いにならぬようキラ達を止めて、フェイトが聞いた。
確かマリューは以前執務の教導をやっていた。
その時の知り合いなのだろう。
「元気ですよ。
今も戦艦の艦長をやってます」
その艦は再起に時間を要するが、搭乗員はみな無事だ。
「そっか。
マリューさん、自分には執務より前線指揮が似合ってる、って言って教導止めちゃったからね。
気になってたんだ」
「あ、あはは…」
あの人ならやるかも知れない。

「さて、少隊長との挨拶も済んだようやし、二人を部隊分けしなあかんなぁ」
「なら、俺はなのはとは分かれた方がいいか?」
アスラン達側でも新人の育成環境にも重点を置いた部隊だとは知っている。
「そうしてくれると助かるかな。
わたしの少隊、ライトニングには教導が上手い人がいなくって…」
フェイトは副隊長を思い描きながら言った。
「なら、僕はなのはさんと同じ部隊だね」
「そうだね。
スターズ少隊って言うの。
よろしくね」
なのはは右手を差し出したので、キラはその手を握った。
「いやぁ、簡単に決まって一安心やわぁ」
はやてがその光景を見て言った。
「それでね、今からスターズ少隊の新人候補の2人を見に行くんだけど、一緒に来ない?」
「それじゃあ、いこうかな…」
「教導はよろしくお願いしますね?」
「あぁ、任せてくれ」
なんとなくいい雰囲気も感じられる。
さすがになのは達と言えど、少隊を任されるのは重荷だったのだ。
それを分けあえる相手を見つけられたのは、素直にいいことだと思った。