木星の花嫁 ”Bride in Jupiter” アクト1

Last-modified: 2014-03-09 (日) 17:20:23

アクト1前編
アクト1後編

アクト1前編

 

漆黒の宇宙

 

ノズルの輝きが 3つ天頂へ伸びる
ジンクス高機動型(カラー連邦色)が、下方へよれる

 

ジンクスパイロット
「2番機 墜とされました Hフォーメーションで隊長の後方に回ります」

 

グリーンにイエローラインの謎の機体がジンクスの正面に現れる
ディスプレイに1番機 ロストの表示

 

ソーマ・スミルノフ
「速い まさかここまでとは こちらも高機動に改修済だが そこ」

 

アヘッドのビームマシンガンの閃光は、標的よりはるか下方へ飲み込まれてゆく

 

謎のパイロット
「(ニヤリ)」

 

センサーに反応
アヘッドスマルトロン・高機動型(カラー桃色)が天頂から飛び込む

 

ソーマ
「牽制にそこまで移動してはな もらった」

 

謎の機体は、GN粒子を放出 重力帯を離脱
そこから見える景色はコロニー型外宇宙航行母艦「ソレスタルビーイング」そのもの
慣性に引きづられるが、GN粒子の輝きとともに振り切り ソレスタルビーイング重力帯に再侵入する
ソーマ機の後背を捕らえライフルを構えた

 

ソーマ機ディスプレイからロックオンシグナル 被撃墜表示
そして通信モニターに写る顔は

 

パトリック・コーラサワー
「どうですか 大尉に勝ちましたよ 模擬戦最高!」

 

ソーマ
「喜んでいるところ悪いのですが中尉 ブリーフィングで言ったはずです。
今回の指定エリアはA-G、ジュピトリスワンの重力帯を離れた時点でアウトになります。
併せて侵入時の中尉の座標はL、再挑戦ですね」

 

コーラ
「またですかー それにしても狭すぎですよ このヘクトルの機動力じゃ」

 

ソーマ
「中尉が扱いきれていないだけです。もっと軌道を最小限で済ませてください。 
発令所 本日のテストは終了 これより帰還するミーティングのデータ整理お願いします」

 
 

ガガ(連邦カラー)が信号を出して、巡航MS試作機ヘクトルとアヘッド・スマルトロンに接近してくる

 

ガガから通信
「そこの緑のMSと噂の下手糞パイロットさん L空域は本日掃除中 何度目ですか まったく」

 

コーラ
「ハッハッハ8回だぜ それとオレの名は単身赴任のコーラサワーだ いい加減憶えてもらおう ううぅカティ……」

 

ソーマ
「すまない気にしないでくれ 今回もそのお調子者にケーキとアルコールでも君達の部隊に届けさせる
私は、ジュピトリス・ワンMS教導官ソーマ・スミルノフ大尉 君は?」

 

ソーマ視点でアヘッドのディスプレイに写る

 

ルイス・ハレヴィ
「えっ はい ごぶさたしております ルイス・ハレヴィです。
乗員名簿から、もしかしたらと思っていましたが やはり中尉、失礼大尉でしたか」

 

ソーマ
「いずれ君達に会いに行こうと思ってはいたが丁度いい お詫びの品は私が届けよう
"コーラ『さっすが大尉』"もちろん中尉のツケでです ルイスさん その後お時間をいいかしら」

 

ルイス
「はい こちらこそ お話 "信号音『ピー』" すいません仕事戻らなくちゃ では後ほど」

 

飛び去るガガを見つめ

 

ソーマ
「ソーマ・ピーリス中尉か」

 

ガガのコクピットで

 

ルイス
「アヘッドストロマトン アロウズか…… あれ?デブリにしては 管制 ルイス機 発見物をPD231に指定
回収開始します」

 

宇宙に漂うものは、丸く紫色の40センチ程の球体 それはハロ
紫色のハロにハッチを開け近づくルイス バックに地球 そして月 火星 アステロイドベルト 木星 

 
 

タイトルバック

劇場版 機動戦士ガンダムOO 木星の花嫁 "Bride in Jupiter" 

 

冒頭ナレーション

 

ソレスタルビーイングとアロウズの紛争の後3ヵ月、地球連邦政府は緩やかなる統一を続ける。
一方フロンティアの開発によって大衆の意識を逸らす事を目的とし、
さらなるコロニーの開発 宇宙進出の基本方針を打ち出した。

 

その政策の一環としてラグランジュ2に放棄された
コロニー型外宇宙航行母艦「ソレスタルビーイング」 を接収、艤装変更し
「ジュピトリス・ワン」と改称、長期慣熟航行と過去の木星探査の痕跡の調査のため
木星までの長期探査ミッションを立ち上げた。

 

このミッションはプロパガンダ効果を持たせるため、
一般を含め希望者を公募しクルーは連邦政府スッタフ・連邦軍を含め
10000人にもなる大規模なものとなった。
クルーは1年間、月の外軌道上のジュピトリス・ワンで適正チェック、
部署ごとのミッションを積み重ねていた。
そして今、地球の重力圏を旅立ち3年の航海に旅立とうとしていた。

 

ジュピトリス・ワン デブリ班オフィス

 

ソーマ
「軍よりいつもの迷惑料です どうぞ それとルイスさんはいますか」

 

ドリンクの詰まったケースとケーキの箱が無重力を飛んでいく
いかついおっさんが、キャッチ

 

デブリ班
「ヤッホー コーラ中尉様様だねえ  おう嬢ちゃん 気前のいい男前がお待ちだぞ 浮気か」

 

デスクから立ち上がる

 

ルイス
「何言ってるんですか 班長 すいません五月蝿くって デッキに行きません?」

 

デブリ班長
「何だいっちまうのか お酌くらいしてくれても じゃあな おう 忘れ物だ しっかりしつけろよ」

 

投げつけられる 紫の球体 ぶつかる前に足元にワンバンドして

 

紫ハロ
「オイテクンジャネーヨ オイテクンジャネーヨ」

 

ルイス
「えー 私の仕事じゃないですよ」

 

ケーキを仲間とつまみながら 無言で手を上下させるおっさん
ルイスの顔の前で羽をパタつかせる

 

紫ハロ
「オマエガヒロッタ オマエガヒロッタ」

 

ルイス
「もう オマエじゃなくてルイス わかった」

 

紫ハロ
「ワーッタ ワーッタ ネエチャンビジンダナ」

 

ソーマ
「ありがとう どうしたの紫のハロなんて珍しい」

 

ルイス
「さっき宇宙で拾ってしまいまして せっかくだから班のマスコットにしようって班長が
それで見つけてきた私が教育係りに こっちよハロついてらっしゃい」

 

ジュピトリス・ワン展望デッキ

 

ルイス
「以前お会いしてから2年になりますね

 

ソーマ
「そうね いろいろな事があったわ だけどこうしてまたあなたに会えたし サジ君は元気?」

 

ルイス
「はい 元々宇宙で働く事が夢でしたから 部署は別ですが楽しそうな様子はわかります
それでピーリス中尉 あっスイマセン ですがスミルノフというのは それと軍には」

 

ソーマ
「一度官舎を見納めに戻った時、アンドレイ中尉が整理のためにいたのよ
そこで、このジュピトリス・ワンについて話をしてね
どうしてかしらね宇宙で生まれたっていうのがあるのかしら 無性に宇宙に上がりたくなるは」

 

ルイス
「人革連の超兵計画でしたか」

 

ソーマ
「そう それで まだ私は行方不明の扱いだから 原隊復帰すれば可能性はあるんじゃないかってね
そして父の願いとして できればセルゲイ・スミルノフの養女として 自分の代わりに宇宙を見てきて欲しいって」

 

ルイス
「確かアンドレイ中尉は、ブレイクピラー後のアフリカタワー周辺都市の
復旧任務に就かれたとか」

 

紫ハロに他のクルーのハロが話しかけてきて ハロばかりが5,6体も集まってきている

 

ソーマ
「ええ…… それにしても賑やかくなってきたわね ここは MSドッグに付き合わない」

 

MSドッグ

 

ルイス
「先ほどのお話ですが わたしも自分で応募したのですが、まさか合格するとは
元アロウズとか関係はないのでしょうか」

 

ソーマ
「どうかしらね むしろ逆かもしれないわ 私の乗船は、MS教導官との引き換えよ
それに艦長 コーラサワー中尉 そしてサジ・クロスロード彼もよ、軍は彼がCBと
行動を伴にしていた事をつかんでいるはず 知っていて このジュピトリス計画の立役者を?」

 

ルイス
「連邦政府宇宙局事務次官セレン・ソレンダ代表とジュピトリス・ワン駐留軍ヤオハン司令では」

 

ソーマ
「発表されている限りではね これはアンドレイ中尉から教えてもらったんだけど
カティ・マネキン准将が図面を引いたらしいわ」

 

ルイス
「如何にもですね まとめてクローゼットに押し込んでみたって事でしょうか」

 

ソーネ
「そうね それともこれも戦術予報かしら ところでルイスさんはどうして
ジュピトリス・ワンに そうかサジ君が」

 

ルイス
「少し違うんです 自分のしたこと やってしまったこと そしてこれからすべきこと
そんな事を考えてしまうんですよね 多分サジにも伝わってしまうんでしょう
それで彼がジュピトリス・ワンを 何も出来ないけど何かをしていなければならない期間ですって」

 

ソーマ
「彼らしいわね でも そうねここは私にとっても最後の巡礼地…… あなたにも主の導きがあらん事を」

 

ルイス
「ありがとうございます でも 彼らは今も見続けているんでしょうね 私達が何をするのか」

 

窓から地球を見つめる

 

ルイス
「(木星に行けば何か……)

 

漆黒の彼方の宇宙に目線を移動 グーと奥にカメラよって 近づく光

 

地球の戦場

 

パイロット
「はあはあはあ」

 

鳴り響くブザー
エクシアR2D2 ガショコン ガショコン

 

刹那・F・セイエイ
「エクシア 到着した これよりこの紛争を駆逐する」

 

ミレイナ・ヴァスティ
「まってくださいですう まだロックオンさんが それに三日も休息をとってないですう」

 

刹那
「こちらはCB 警告する直ちに戦闘を停止し武装を解除せよ
戦闘継続を確認 紛争を断定 介入を開始する」

 

連邦軍ではなくゲリラ組織と地方政権の小競り合い
鉄人等旧世代MS同士の戦闘 リボンズ戦の中破から改修を重ねたエクシアは限界に近い
そしてパイロットも疲労によって 機体差ほどの圧倒ができない
泥の飛び散る 接近戦が繰り返され
なんとか半殲滅に成功
その時、ゲリラ側にジャンク物のジンクスが現れる

 

ジンクスパイロット
「CB! 貴様らは 何なんだ 何がしたいんだ」

 

刹那
「……」

 

イノベイター効果であろうか超反応でジンクスの腕を落とす

 

ジンクスパイロット
「無くなるはずがない なぜそれが判らない」

 

刹那
「俺は何をするために……」

 

そこに一条の閃光
ジンクス爆散

 

ロックオン・ストラトス
「またおまえは、死にたいのか だが覚えておけよ死なせはしない 俺が
とにかく戻れ おまえはよくても 機体が限界だ」

 

刹那
「ロックオン…… エクシア……」

 

プトレマイオス2ブリッジ

 

ミレイナ
「どうしてここまで無理を 無茶苦茶ですう」

 

フェルト・グレイス
「多分、刹那は連邦軍の手さえ汚させたくないのよ」 

 

スメラギ・李・ノリエガ
「そういう子よ いえもう大人ね  刹那の意思をプランに組み込んでベーダいえティエリアに
承認をもらっているわ それに一連のミッションで当分は紛争も沈静化するはず
これで宇宙のイアン達に合流できるわ せめて刹那に」

 

フェルト
「そうですね それにしても同じ宇宙でもあちらは3年間の新婚旅行ですから憧れてしまいますね」

 

ミレイナ
「うらやましいですう 早くわたしもカッコイイ男の人をみつけたいですう
そうだスメラギさんには、あの彼氏さんが」

 

スメラギ
「彼氏かどうかは知らないけれど、ビリーなら意地悪なメガネ女に木星に飛ばされたわ
自分が若い男と結婚しておいて まったく」

 
 

エクシアコクピット
いつものピンクカーディガンでイメージ体ティエリアが出現 音声のみが実際には聞こえる

 

ティエリア・アーデ
「お疲れ刹那 承認したミッションよりペースが35%早いぞ ロックオンではないが、そのうち死ぬぞ」

 

見えないので視線は合わせない

 

刹那
「教えてくれティエリア 何故争いは無くならない 愚かな行為を何故また繰り返そうとする」

 

ティエリア
「わかりあえる日が来るまでだ ボクはそう信じている」

 

刹那
「では、俺には何が出来る イノベイターと言ったか だからナンなのだろう」

 

コクピットディスプレイを殴る刹那

 

ティエリア
「イノベイター 革新者か…… すまないがボクにも分からない
実のところ ボクも僕でいられる時間は少ない いずれヴェーダの一部となるだろう
ただ刹那 それでも ボクは祈らずにはいられない 君にとっての幸福を」

 

刹那
「俺の幸せ」

 

回想

 

マリナの寝室に例の如くボーっと突っ立ている刹那
気配から目を覚まし

 

マリナ・イスマイール
「おかえりなさい刹那」

 

刹那
「またあなたに会いにきてしまった 聞かせてくれ この世界は何が変ったのだろうか
あなたの答えが知りたい マリナ・イスマイール」

 

マリナ
「そうね 確かに連邦政府の方針は大きく変化したわ だけれど小さな紛争は、なくなってはいない
ならばそこにいる人にとっては何も変っていないのでしょう だれにも自分の世界があるから……
きっかけが必要なのよ 変るための 小さな幸せでもいいわ
それがあれば世界は広がり変化を他人を感じられる あの子達に私がそれを与えているのか
わからないけどね むしろ幸せを分けてもらっているのかも」

 

刹那
「そうなのか」

 

マリナ
「きっとそうよ すこしあの子達と遊んでいって またどこかに行ってしまうのでしょう
ここはアナタの故郷だから、いつでも帰ってくればいいわ」

 

プトレマイオス展望デッキ

 

刹那
「……」

 

ロックオン・幽霊
「どーした 暗い顔して また悩み事か」

 

刹那
「いや そうだな 少し疲れたのかもしれないし 何も感じなくなっているだけ
なのかもしれない」  

 

ロックオン
「よう 珍しいなおまえが 独り言か ならオレも独り言だ」

 

刹那
「ロックオン」

 

ロックオン
「おれは続けるさ こんなつまらない事で死ぬヤツを増やしたくない
そんな単純な考えでいいじゃないか いつかわかってくれるヤツに会えるはずだろ」

 

刹那
「長い独り言だ」  

 

ロックオン
「うるせえ ミス・スメラギがさっき言っていたが、宇宙にあがるそうだ アレを受け取りにな
そうか 今日が月軌道をでる日だったな あーあ オレも乗りたかったぜ」

 

宇宙を見上げたその先には スイングバイによって加速し地球を離れるジュピトリスワンの光線が軌跡を描く

 
 

再び宇宙 ジピトリスワン ブリッジ

 

オペレーター女子
「今日で遂に地球を出て2週間ですね
火星のスイングバイも無事に終わって アステロイドベルトまでは、ひと段落ですね」

 

年の頃は不惑後半 疲れた顔の東洋系の軍人は答える

 

ヤオ・ハン少将
「だといいがな なにしろ問題児ばかりが集まっているからな」

 

まるで白磁の人形のような顔と肢体の女性は、皮肉そうに笑うと (ヒリング・ケアの容姿)

 

セレン・ソレンダ
「艦長さん 上司どのがあんな事いってるみたいだけど」

 

呆れ顔の、その顔には眼鏡が鋭く輝いている

 

シーリン・バフティヤール
「あなたも含めてですよ ソレンダ代表 宇宙人にプロポーズするためでしたか
まったく宇宙局ももっと真面目な人材がいるでしょうに」

 

少年と見まがう金髪の男の顔には、怨讐のしるしであった火傷の跡が、もはや見かけられない

 

グラハム・エーカー
「それならば あなたもだ 副代表 離婚相手の顔を見ないですむからと志願してくるなど
連邦議員というのも真面目とは言いがたい仕事だ」

 

オペレーター男子
「心労お察しします司令 ですが さすがはヤオハン少将です 連邦政府初の1大プロジェクト
このジュピトリスワン最高責任者に抜擢ですし」

 

ヤオハン
「凡人を持ち上げないでくれ 実際何も出来なかっただけだよ アロウズには必要とされず
ハーキュリーの様に理想も無く セルゲイ程真摯にもなれなかった ただのバランス人事さ
旧人革からってわけだ それにジュピトリスワンに関しては全部あの女狐の仕業さ」

 

グラハム
「司令自身の評価に関しては異論はありますが、マネキン少将に関しては全面的に同意ですな
わたしなど、無理やり艦長過程に押し込まれ この艦の艦長とは」

 

ヤオ
「いや それは私の我儘だ、貴官は少し自分以外に責任を持つ事を知ったほうがいいと思ってな
年相応の苦労をしたまえ つまり我慢を学ぶ機会だ」

 

セレン
「そうよ艦長 はじめ学生かとおもっちゃったわ ストレスが無いのかしら」

 

シーリン
「あら代表こそ お年の割りに」

 

セレン
「そうね イノベイド効果なのかしらね そんなことレポートにはなかったけれど」

 

オペ子
「この中ではオペ男もイノベイドでしたね レベル5の情報レベルとはいえまだ整理できませんよ」

 

ヤオ
「そうだな 改めてデスカッションといくか 2週間もあればそれぞれ思うところがあるだろう」

 

ジュピトリスワン ブリッジ

 

オペ男
「では 先だっての紛争がイノベイターないしイノベイドと呼ばれるナノテクノロジーと
遺伝子工学等の結果産まれた、集団によって引き起こされたんですよね」

 

シーリン
「そう、但し戦後連邦は、即時の情報公開を人心を乱すと判断し レベル8の情報凍結と
関係者への緘口令が引かれ 一連の紛争はアロウズのクーデターとして処理された」

 

ヤオ
「全てはカタギリの用意していた結末だ アロウズ参加者には彼の投降を薦める遺言によって
大きな混乱がなく終焉した」

 

セレン
「そのまま秘匿し調査研究を開始しようとした連邦政府に衝撃が走ったのが1年前
ジュピトリスワンの搭乗者候補の宙間検査で、実に6,324人つまり60%を超える者がイノベイドに近いものと判明した
同時に政府と軍内部の調査が行われどちらも3%を超えるのイノベイドの存在が認められた」

 

オペ子
「確かその時、全ての思想過去の等の調査がなされ ジュピトリス計画が1年もの軌道演習を続ける事と
なったんですね」

 

グラハム
「そして調査の結果すべておかしい点はなかった イノベイド同士の繋がりに特別なものは無く
イノベイドと言っても宇宙空間への適正が優れているだけで  ナノ投入した一般人とそれほど変らないとの
意見が上がった そして それを基に カティ少将が一部情報解除と搭乗メンバーの変更中止をねじ込んだ
そして地球軌道脱出時に情報レベルを5まで引き下げ ヤオ司令セレン代表以外のブリッジクルー 及び
艦内クルーの1割が知ることとなった」

 

シーリン
「まったく連邦議会をなんだと思っているのかしら しかし先だっての
閲覧資格者を集めた会議は、えらく落ち着いたものだったわね
まあこんな閉鎖空間で地球に戻るのは3年後だからかしらね」

 

オペ男
「もしかしたらマネキン少将は、見越していたのかも知れませんね
それに、木星圏到着での全クルーへの情報開示の指令といい 体のいい実験空間ですかね
いや隔離施設でしょうか」

 

ヤオ
「実験場なら納得がいくな 君達は揃いも揃って変わり者ばかりだし
クルーもこの通り曰くのある連中ばかりだからな」

 

中央デスクに並べられる 4枚のホログラムファイル そこに映る男女 

サジ ルイス ソーマ そしてアレルヤ

 

アクト1 後編

 
 

ジュピトリスワン通路

 

サジ・クロスロード
「まいったな まさか迷子なんてことは ハロどこ行ったんだ
こっちは封鎖区画か 1万人もいてまだ7割以上不要スペースがあるからな
信号辿れるかな 奥までいっちゃってたら」

 

その時 ハロが通路の奥から飛んできて

 

アレルヤ・ハプティズム
「探しものはこれかなサジ君 ボクも迷ってしまってネ それにしても奇遇だね マリーとは会ったのかな」

 

邂逅を喜ぶよりも、嫌な予感に身構え

 

サジ
「――アレルヤさん やっぱり乗っていましたか、ジュピトリスワンに
何かが起きるんですか それとも起こすつもりですか」

 

アレルヤ
「後者ならば、保安部に報告しようというような顔だね
これはプライベートが8割で、残りがCBの活動だよ
不明な点がまだ多く残っていてね この艦には それで調査をというわけさ」

 

サジ
「何かイノベイターやアロウズが仕掛けていると」

 

アレルヤ
「多分それは無いと思うよ スメラギさんからの報告じゃ この1年と6ヶ月
全く残党の気配も無いとヴェーダのお墨付きも貰っているしね」

 

サジ
「そうですか プライベートというのはマリーさんとの新婚旅行ですか

 

アレルヤ
「残念ながら これは贖罪というか、つまり巡礼の旅の終着点なんだ
何かきっかけが、お互い必要だったのさ 心理的決着はすんだつもりだけど、儀式を求めていたのかもしれない」

 

サジ
「立ち入った事を、聞いてしまい すいません」

 

アレルヤ
「いや こうやって知人に意味を話すことも ひとつのアプローチになるんじゃなうかな
告解みたいなものかな」

 

サジ
「そういったものなのでしょうか?
……ひとつ聞いていただけないでしょうか
ルイスのことは ご存知でしょう 彼女は、今でも悩んでいて
苛まれていて 戦争の記憶 自分の行為の影響 取り返しのつかない罪
僕はすべてを受け入れる覚悟はあるつもりなんですが、彼女に対して、それだけでいいのだろうかと
僕もあなたのように大切な人の力になる事ができるのでしょうか」

 

アレルヤ
「どうだろう僕がマリーに救われたというのが正しいんだ
それに、僕には聴くことはできても答える資格はないよ
ただ僕は、ソレスタブビーイングをこの任務を最後にやめるつもりさ
卑怯者かもしれないけど、今だからこそできる様になった考え方だと思いたい
すまないね、再会してそうそうでこんな話を聞かせてしまって
だけど君たちを余り心配はしないよ 君の顔を見ると秘策があるんじゃないのかな」

 

サジ
「わかりますか…… まあ自信はないんですが 何か決心がつきました じゃ失礼します またお食事でも」 

 

サジとルイスの部屋

 

ルイス
「おかえりなさいサジ 遅かったけどまた迷ったの」

 

サジ
「原因は、僕じゃないけどね ただいま ルイス
それでね、一週間後だけど休みを合わせないか
一緒にいきたいところがあるんだ」

 

ルイス
「なによ、急に たぶん大丈夫だけど
期待しちゃうわよ フフ…… どんなエスコートをしてくれるのかしら
それじゃ食事にしましょ 待ちくたびれちゃったんだから」

 
 

深夜 寝室

安らかな寝息から一転し突然うなされるルイス

 

「うう ああああアアアアアア」

 

サジ
「――ルイス!」

 

ルイスの手を握ろうとするも、突き飛ばされるサジ
半覚醒状態で許しを請うように左手を天に突き出し 慟哭する

 

起き上がったサジは静かに彼女の身体を抱きしめて
慣れた様子で、その左腕をやさしく自身の手で包み込む
糸が切れたように、くずれこむルイスの身体を受け止め
元のベットに横たえる
薄暗闇の中のその動作には乱れがなく、幾度と繰り返されてきた
痕跡だけが残る
互いに繋がれた指には、微弱なナイトランプを照し返すモノはなかった

 

彼女が落ち着き深い寝息を立てはじめても
サジは手を握り続け、やさしく彼女の髪を撫でるのだった

 
 

調整光がサジの、顔を照らし起床を告げる
彼の隣には、彼女の姿はない
いつもの泣き笑いの表情を浮かべてベットから立ち上がり
コーヒーをカップに注ぐ

 

サジ
「ハロおはよう」
ハロ
「オハヨウ オハヨウ サジニ メッセージ メッセージ」
サジ
「うん 聞かせて」 

 

ハロ
『おはようサジ
先に仕事に行ってきます
サジは、シフトが遅いから
ゆっくりしていってね
それとあたし特製ブレックファストなんだから
心して味わうように

 

……ありがとう……』

 

サジ
「うん……」
テーブルに着き食事をはじめながら、いつものようにTVをつける
繰り返される毎日は、望んだものなのだから

 
 

TVの画面が、伝える

 

池田
『――それでは、本日のジュピトリスレポートの時間は以上になります。
番組の冒頭にもお伝えしましたが、本日より一週間
ジュピトリスワンが磁気嵐の圏内を通過するため
地球からご覧の皆様には、番組が視聴できません
次回の放送は、一週間後の6月26日となり
アストロイドベルト付近よりジューンブライドにちなんで
ユピテルの妻ユーノの名前を持つ小惑星ジュノーの生映像をお送りします
それでは、ジュピトリスワンより特派員の池田がお送りいたしました』

 
 

食器を洗うサジ

 

ガガに乗り込むルイス

 

ブリーフィングを行っているソーマとコーラサワー

 

磁気嵐の圏内に、入ったことを、報告するオぺレーター

 

頷くグラハム艦長

 

オフィスで書類のチェックをおこなうセレン代表

 

昼の定時会見を行うシーリン副代表

 

午後の仕事に戻る人々 時間がゆっくりと過ぎていく

 

そしてジュピトリスワン船外の宇宙で……

 

ジュピトリスワン重力場に侵入するなにか
重力場に接触と同時に光学迷彩が解かれ 大型宇宙航行艦が姿を露わにした
同時に、ハッチからMSらしき光源がいくつも解き放たれる

 

ジュピトリスワン ブリッジ

 

オペ子
「重量場に反応!大型質量 宇宙航行艦です
 MSらしい機体の発進を確認!10まだ増加します」

 

オペ男
「司令! オープンチャンネルに交信 音声通信入ります」

 

――
『我々はジュピトリアン 地球人類に告げる 我らが絶望を知るがいい』

 

謎の戦艦より発進したMS部隊は
木星のようなイエローにブラウンを基調とし、後部に展開する黄色い粒子
その容貌はまるで狩を行うする蜂を想像させ
そして その蜂に従うように大きな球体に砲身と腕を取り付けたMAであろう機体が展開している。
一機のスズメ蜂に三機のミツバチが編隊を組み一斉に獲物に取り付かんと
ジュリトリスワン各砲門を破壊しながら、それぞれが攻撃を開始した

 

自動防衛システムにより残る砲塔が迎撃行動 スクランブル音が響き
パトロール中だったのジンクスが爆発 アヘッドが応射

 

ヤオ
「『こちらはジュピトリスワン司令ヤオハンである。
これは、演習ではない 各自 戦闘状況Aに従い行動せよ
なお各所 非戦時施設は閉鎖 ブリッジの第二第三を持ってバックアップとする
各自 落ち着いて行動せよ』」

 

グラハム
「中央司令部より港湾管制へ正面ゲート閉鎖と擬装だ
MS部隊の発進をB65から78ゲートにて誘導 敵艦死角より発進
砲火にて発進援護 同時に船外活動員の収容急げ
ジュピトリアンだと笑止千万ふざけた名前だ
余程後ろめたいことがあるとみえるな」

 

港湾管制オペ
「正面ゲート間に合いません―― 敵機 突っ込んできます」

 

MSというより航空機のフォルムを持ち 青白い輝きをまとい
敵機が弾幕を背後に流し まさに侵入を果たさんとしたその時

 

コーラ
「させないぜ――!!」

 

猛然とポート入り口より現れた機体はコーラサワーのヘクトル
敵機を抱え込んだまま乱戦下に入っていく

 

ミツバチ型続けて突入するも間一髪で正面ゲート封鎖擬装が完了し
壁面に衝突爆散

 

ジュピトリスワン各所

デブリ任務につくガガ各機は船外クルーの避難誘導を行っている
その中にはルイスの姿も 

 

ピーリス小隊も発進 アヘッド・スマルトロンにジンクス2機

 

司令部

 

グラハム
「面白くないなっ! 不意打ちに加えて死角をとられたとはな 
あちらの数がわからない以上 無闇に攻め切れん
このデカブツに進入溝を作られんよう分散しての各自撃迎を図る」

 

ヤオ
「緊急ブイ どんどん射出してかまわない 信号と通信はどうなってるかな」

 

オペ子
「通信不能なんらかのジャミングが!」

 

ヤオ
「GN粒子での通信がか」 

 

オペ子
「同系の粒子でしょうか干渉がひどいです
ほぼ戦域を覆いつつあります」

 

戦闘宙域
青く光る粒子を撒き散らし戦場を駆ける機体
  
オペ子
「射出したブイが破壊されています 目がいいのがいるみたいです」

 

謎の戦艦のデッキに長物を携えたMS 先端から青い光が漏れるとともに
進行方向後方に過ぎる射出ブイを長距離射撃で全て破壊していく

 

ヤオ
「兎に角、状況を地球に伝える 現状時点で地球がこの事件に気がつく最短はいつだ」

 

オペ男
「磁気嵐を抜けるまで交信の予定はありませんから
こちらの異変に気付くには7日です
信号途絶が仇になっていますよ」

 

グラハム
「好敵手ですな連中
そこまでわかっているのでしょう」

 
 

沈殿する空気を、なぎ払うように代表が到着する

 

セレナ
「急いでブリッジに来てみれば、まだ軽口は叩けるようですね
ひとつ提案ですが、地球との恒久通信用の定期設置衛星を使えばどうかしら?」

 

ヤオ
「可能かな」

 

オペ男
「遠隔は磁気嵐及び粒子により不可能です 直接動かすしか」

 

グラハム
「いや多分連中の護衛があるな 情報の遮断が目的で動かれている
虎子を獲んことにははじまらん 私が」

 

モニターに懐かしい顔が映り、いつものようにたしなめる

 

ビリー・カタギリ
「無理だよ いくら君でも
戦線を抜けるにしても見逃すとも思えないし
君の機体では、航続が難しい
あと君は気付いていないようだけど、
運があまり良くないからねえ」

 

セレナ
「同意 運だったらコーラサワー中尉に賭けたいわ」

 

グラハム
「失敬な ――だがコーラサワーか 単独航行に擬似太陽炉2並列 司令 やれます コーラ機は何処だ」

 

オペ子
「現在 S外縁部にて交戦中 敵特殊機と交戦中」

 

グラハム
「なるほど いい位置だ確かに運がいいようだな 通信可能か?」

 

オペ子
「はい! まだ可能散布濃度です」

 

グラハム
「通信まわせ 後スミルノフ小隊にコーラ機援護を要請 収容率は」

 

オペ子
「80% あと300秒で可能かと コーラ機応答まわします」

 
 

グラハム
「こちら司令部 貴官は戦場より離脱し最大航行で現状を連邦本部へ報告
設置した定期衛星S54には近づかず S53を見つけ本部へ通信
平行通信で現状と分析データを航行プランともに送っている データ転送完了をもって作戦を開始せよ」

 

コーラ
「何いってんだ! 俺がいれば こんな連中」

 

ヤン
「司令のヤオだ 復唱を中尉 これは一番危険な任務だ不死身の中尉だからこそ任せた 
それと奥方にも伝言だ 子供の名前だがパオリックJrでどうかとな 以上」

 

コーラ
「え 何? 子供 いやっほう!! いくぜ
こちらヘクトル 変形 クルザーモード一気に突き放す 3秒後に援護をくれ」

 

ジュピトリスワン砲塔からの煙幕がはられるや その一瞬変形し最高速に達し飛んでいくヘクトル
最前までMS形態でコーラ機と戦闘を繰り広げていた青い粒子を発する機体が再度変形 追撃に入ろうとするも
ソーマ小隊支援弾幕により阻止 交戦 ジンクス一機腕部破壊される

 

ソーマ
「S1後退だS2貴官はS1を援護 目的は果たした ジュピトリスワンの火砲圏まで撤退する
殿は私が引き受ける」

 

司令部

オペ子
「コーラサワー機 離脱成功 追っ手現状ではありません
さらに重力帯より離脱 以降信号途絶します」

 

戦闘宙域

敵変形型とソーマ機戦闘 ガガが支援に現れる 2対1でなんとか抑えるが

 

アレルヤ
「マリーいまだ 撤退しろ」

 

混戦となり3機ばらばらにはぐれる

 

ジュピトリアン戦艦 甲板部

ブイを落とした狙撃型MSが先ほどより遥かに長い得物を構えている
はるか遠方のコーラ機の残す軌跡をなぞるように青い閃光が近づき 爆発光

 

司令部 

 

グラハム
「――あとは人事を尽くすのみだな 状況は」

 

オペ男
「H23搬入路発見されました 計5箇所になります
F4通路への進行が思った以上に」

 

グラハム
「囮だ 司令私に出撃の許可をJ35を私が受けます
2個小隊をH23へ F4はソーマ隊が背後から向かえば散るでしょう 他は現状で」

 

ヤオ
「どうやらその時だな
だがあの3機が寄せて加われば、維持できん そうなれば頭を叩くしか」

 

戦闘宙域

 

ルイス
「L4 避難完了 当機 L3,2,1を再確認し帰艦する
(何 どうなっているの ジュピトリアンって何 こんな戦い 止めなくちゃ でもどうやって
痛っ 何? 頭が……)」

 

青い粒子を、戦場に侵食させるジュピトリアンMSがすれ違っていた
怪しく光る ガガコクピットの紫ハロ

 

そして
戦場を覆う青い粒子が、一石を投じられた湖面のように
波紋を広げていく
その粒子の波の伝わった ジュピトリアンの機体は戦闘を停止していく
各所で戦闘が止み ジュピトリスワンの各機MSも突然の事に手を止める
そして戦場の一角から戦艦までジュピトリアンのMSによる黄道が浮かび
そこに一機のガガが進んでいく

 

そのガガよりジュピトリスワンのチャンネルへ音声が入る

 

『ジュピトリアンは一時停戦を宣言する そちらに同意の意思があれば これ以上の戦闘行為を停止せよ』

 

司令部
ヤオ
「なんだこの通信はこちらの機体からだぞ だが確かにやっこさん達の攻撃は停止した」

 

MSデッキまでの廊下で端末から

 

グラハム
「一時戦線を整えるため同意すべきですな
各機へ伝達 戦闘行為を停止 レッドラインにて
アラート3にて待機だとな」

 

騒然としていたジュピトリスワンMSが、静けさを取り戻しながら
機能的に後退を開始する

 

ガガは続けて発信した

 

『ジュピトリスワンの賢明な判断に感謝する
我が名は 木星の花嫁 その名において停戦を誓おう』