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機動戦士ガンダムSEED True Destiny PHASE-54A

Last-modified: 2007-11-17 (土) 19:13:34

『あの“ラクス・クライン”を守りたいなら、俺を倒せ、キラ・ヤマトぉ!』

 バチバチバチバチッ

 ビームジャベリンでの、立て続けの斬撃。キラはそれを、ビームシールドとフォールディング

レイザー・アキナスでぎりぎりにしのいでいく。

 ホライゾンの腹部の240mmリボルバー・カノンが火を噴く。実体弾がレジェンドのVPS装甲

で弾ける。

 だが、イザークはホライゾンへの追撃をやめない。この銃の貫通力では、当たり所によって

は駆動系に破壊が及ぶかもしれない、だが、イザークはそれを意に介さないかのように迫っ

てくる。



 ────イザーク、まさか本気で!?





機動戦士ガンダムSEED True Destiny

 PHASE-54 『全て還る海(meer)』





 ZAFT・オーブ連合艦隊と、R.ZAFT艦隊の間で砲火が交わされ始めている。

 ZAFT・オーブ連合艦隊はアークエンジェル、ミネルバを先頭に立たせ、そこからオーブ護衛

艦、ZAFT駆逐艦で二次元的輪陣形を組み、内側にルソーとローラシア級を配置している。

 上下方向に弱くなるが、それはMSで補う。小型艦艇の数が足りないための苦肉の策だ。

 一方、R.ZAFT艦隊は、ナスカ級、ローラシア級の火力を生かすため、先頭にナスカ級を立

て、その後ろに円錐状にナスカ級、ローラシア級、以下小型艦艇……と並べていく銛のような

陣形を形成している。

 だが、大型艦の数では勝るR.ZAFT艦隊だが、ミネルバ、アークエンジェルに匹敵するド級

艦がない。激しく火を吹く、ミネルバのトリスタン、アークエンジェルのゴッドフリートに対し、ナ

スカ級の防御力は不足気味だった。

「あ、あぁ……」

 アークエンジェル艦橋で、ミーアは閃光の迸る宇宙を見て、愕然としていた。

「これが、戦争……」

 ミーアはこれまで、戦闘そのものに遭遇したことはなかった。戦闘終結後の基地や、戦争難

民となった地上の人間を見たことがあるだけだ。

 目の前で行われる、本物の凄惨な殺戮劇に、軽くはないショックを受けていた。

 しかし、しっかりと開かれた瞳は視線をそれらから離さない。



 ────見届けなくちゃ……あたしがしてきたことの結果が……



 戦争再発後、ミーアはZAFTの部隊を煽って戦場に向かわせていた。死地に送り出してきた

のだ。その行為からすれば、慕われるどころか、罵られ、暴力を受けたとしても不思議ではな

い。

「!!」

 突如、視界にザクのモノアイが飛び込んできた。艦橋の間近に、迎撃や防御火器をかいくぐ

ったブレイズ・ザク・ファントムが張り付いていた。ビームホークを振りかぶる。

「しまった!」

 マリューの声、そして、ミリアリアの悲鳴。

 ミーアは、体が硬直し、妙にゆっくりと感じる時間の中、怯えて目を閉じることすらできなかっ

た。

 爆発、振動。閃光が艦橋の窓を満たす。散華したのはザクのほうだった。

『ふぅ、危ない、危ない』

 MSの隊内通信のレシーバーに、そんな声が流れてきた。ザクの残骸が後方に流れていき、

その後ろに、インパルスの姿が現れる。

 ミーアは、思わず安堵のため息をついてしまった。

「ありがとうございます、ルナマリアさん」

 ミーアは自ら回線をつなぎ、インパルスに声をかける。

『え、ああ、うん……っと』

 ルナマリアは困ったような声を出しつつ、インパルスはもう1機、ブレイズ・ザク・ウォーリアを

ビームサーベルで貫く。

 艦長席のマリューが、苦笑気味の表情で吹きだしていた。





『ジュール隊長!』

 対峙するレジェンドとホライゾンの間に、割り込んでくる物があった。

 ロケットランチャーを備えたイングラム、そしてその後ろに、白いグフ・イグナイテッド。

『ジュール隊長! もう止めてください!』

 シホの声が、通信に割り込んでくる。

『シホか、貴様まで裏切るのか!?』

 イザークはホライゾンを振り払うと、ドラグーンをシホとディアッカの方に向ける。

『くそっ、イザーク、もう止めるんだ!』

 ディアッカの言葉。イングラムと白いグフ・イグナイテッドはドラグーンのビームをかわすため

に急機動を繰り返す。

「イザーク! 止めろ! 君の仲間じゃないか!」

 キラは思わず叫んでいた。オーシャンドラグーンをドラグーンの迎撃に向かわせる。

『うるさい、反乱兵など仲間であるものか!』

『わからないんですか、ジュール隊長! 脱走兵は隊長のほうです、このままでは……』

 シホの悲壮な声も、もはやイザークには届かない。

『黙れ、黙れ、黙れぇっ』

 イザークは斬り結んでいたホライゾンをタックルで突き飛ばすと、ビームライフルを構え、イン

グラムや白グフに向けて射撃した。

 接近していたシホのイングラムを掠める。

『大丈夫か、シホ!』

『大丈夫です!』

 イザークが、かつての自分の仲間であり、そして今はキラの仲間である2人を撃った。その

事に、キラはショックを受けていた。

 キラの脳裏を、過去の映像が流れる。



 ドミニオン、仲間との悲しき再会。



 目前で撃ち落されるシャトル、フレイ。



 …………そして、ラクス



 ────そのフラッシュバックが終わったとき、キラの中で何かが吹っ切れた。



「イザークぅぅぅっ!!」

 吼えるように叫び、バルムンクを構え、ホライゾンはレジェンドに向かって突進する。

『キラぁ!』

 一瞬遅れるものの、イザークはレジェンドを振り向かせて、ビームシールドでバルムンクを受

け止めた。

 バチバチバチバチッ!!

 激しい火花が散る。イザークがビームジャベリンを振り上げる。ホライゾンはかわすために急

機動。

『なにっ!?』

 イザークには、その瞬間、ホライゾンがふっと消えたようにうつった。

 近接アラート、上方。いつの間にそれだけの間合いを取ったのか、ホライゾンはバルムンク

を構えながら突っ込んできた。

『ちぃ!』

 ドラグーンを立ちはだからせる。しかし、体当たり寸前まで絡みついてくるオーシャンドラグ

ーンにより、この試みは失敗に終わる。突き出されるバルムンク。ビームシールドで受け止め

る。激しい火花。閃光の中、ホライゾンはレジェンドのビームシールドを力点にするように、レ

ジェンドと向かい合うような姿勢に入れ替える。

そして────

『なん、だと…………っ!!』

 レジェンドの胸、核エンジンの収められている空間を、アキナスが貫いていた。コントロール

を失い、ついにドラグーンはオーシャンドラグーンのレーザーバルカンに貫かれ四散する。レ

ジェンドはアキナスの傷口からちろりと炎が覗いたかと思うと、胸部が破裂するように爆発、

散華した。

『イザークぅ────!!』

『隊長ぉ────!!』

 ディアッカとシホの悲壮な叫びが、ソラに吸い込まれていく。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……っ!」

 キラは、涙目で、苦しそうに息をしていた。

しかし、それを何とか収めると、オーシャンドラグーンを回収し、意識を強引に切り替える。

まだ、戦いは終わっていない。





 パワーでコズミックを振り払うデスティニー。しかし、コズミックは信じられないような急機動で

デスティニーとの間合いを詰めて来る。

「うおおぉぉぉぉぉっ」

『はああぁぁぁぁぁっ』

 ヘクターとアロンダイトが交錯する。刀身ビームとビームコーティングが交錯し、激しく火花を

散らす。アスランはパルマフィオキーナでコズミックを狙う。その構えを取った瞬間、シンはデ

スティニーを蹴飛ばす。ビームキックは搭載していない。ただ、再び間合いが開く。アスランは

コズミックにパルマフィオキーナを向けようとするが、それより早く、コズミックはデスティニー

の懐に飛び込む、シールドタックルで跳ね飛ばす。パルマフィオキーナは明後日の方向に流

れる。



 ────なんだ、敵になってみると、大した事ない機体じゃないか!



 シンは内心呆れていた。デスティニーは完全に過剰装備だった。パワーはあるが、MS本来

の機動性では、このコズミックには及ばない。もし自分がコズミックを相手にするのなら、イン

パルスの方がまだマシだろう。

 もっとも、コズミックの機動性は、燃料の比重が異様に重い核エンジンをやめて、非核・熱機

関に替え、さらにその影響で、格闘戦用にしてはやはり過剰だった武装を簡略化した恩恵で

もあるのだが、インフィニットジャスティスに乗ったことのないシンには、そこまではわからない。

 だが、それでもアスランは、あっさりとは倒されてはくれない。しかし、それは承知の上だ。

 ヘクターを構え、同じくアロンダイトを構えなおしたデスティニーに突っ込んでいく。

 アスランはアロンダイトでヘクターと鍔迫り合いつつ、焦っていた。自分が知っているインフィ

ニットジャスティスに比べて、目の前の“非核型ジャスティス”は、信じられないような急機動を

する。



 ────それともまさか、シンのパイロットの腕が、俺を凌いでいる?



『そんなことがあるかぁぁっ』

 叫び、パワーでコズミックを押し返す。MX2000GXビームカノンを射撃位置に倒す。コズミック

はそれを避けようと体を捻る。アスランはコズミックを蹴飛ばし、間合いを広げる。ビームカノン

の射程に捉える。

「うぉぉぉぉっ!」

『!』

 まるでその砲を狙うかのように、シンはRQM51Sバッセル・ビームブーメランを放つ。アロンダ

イトは間に合わない。アスランもフラッシュエッジ2ビームブーメランを放つ。2つのビームブーメ

ランが交錯し、激しい火花を放ちながらもつれる。

 次の瞬間、アスランは信じられないものを見た。

 近接アラート、ファトゥムが情報から突っ込んできた。ブーメランはファトゥムを切り離すため

の目くらましだったのだ。

『ちぃっ』

 デスティニーを捻ってかわすが、ビームカノンの砲身はファトゥムに引っかかり剥ぎ取られる。

ビームライフルの線条がデスティニーを襲う。コズミックが撃っている。だが連続した速射で照

準は甘い。回避しつつ間合いを取ろうして、アスランはシンの意図に気づいた。

『させるかぁぁぁっ!』

 ファトゥム回収の時間を稼ぐつもりだった。しかし、デスティニーはミラージュコロイドを展開、

コズミックの照準を狂わせると、一気に間合いを詰めてきた。

 シンはビームライフルを戻す間もなく、ビームキャリーシールドでアロンダイトを受け止める。

ヘクターを抜いて構えようとするが、構える途中で、デスティニーの手がコズミックの手ごと捕

まえる。

「なぁっ!?」

 パルマフィオキーナ。コズミックの右手は破壊され、ヘクターは宇宙空間に転がる。

「くそっ!」

 シンはデスティニーを蹴飛ばそうとする。だが、デスティニーはアロンダイトを手放して素早く

コズミックを捕まえると、コズミックごと旋回するようにその蹴りを避けた。

 左手のパルマフィオキーナが、コズミックの胸部に押し付けられる。

『もうやめて! アスラン!』

 ミーアが、アークエンジェルから通信に割り込んでくる。

『レジェンドは落ちたわ!』

 レジェンドが落ちた? だからどうした、俺は俺の決着をつける、シンと、そしてキラと。

『さよならだ、シン!』

 アスランが、そう言った瞬間。

『うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

 通信を満たす絶叫とともに────

 デスティニーのコクピットの計器類が瞬時に落ち、パニック状態の警告表示がモニターを満

たした。

「な…………」

 一瞬、アスランには何が起こったのか理解できなかった。

 唯一生きていたメインモニターには、デスティニーの胸部から、ピンクの刀身ビームが生え

ているのが見えた。

 それが、最後だった。

「さよなら、アスラン」

 ミーアのつぶやきとともに、

 バルムンク、ホライゾンのビームサーベルに、原子炉を貫かれたデスティニーの胸部がはじ

け、その胴は四散した────







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