「レーンに言えっ!! ガンダムを誘導しろとっ!!」
ペーネロペーからファンネルミサイルが射出されΞガンダムに集中攻撃をする。上下左右、不規則に……。
Ξガンダムはビーム・ライフルの精密射撃に加えビーム・サーベルでファンネルミサイルを叩き落す。
ペーネロペーもライフルを乱射しながら相手のファンネルミサイルをサーベルで切り払う!
「できた……! だが……向こうの方が動きは上かよ!」
「くそっ!! 右足が」
「ガンダムの方が力がある!?」
「ガンダムもどきが!!」
「レーン・エイム!」
互いにファンネルミサイルを斉射し合いぶつかり潰しあう。更にビーム・ライフルの牽制から2機のMSは白兵戦と移り変わる。
一瞬の閃光はΞガンダムのシールドを焼き、次のスパークと閃光はペーネロペーの腰の装甲を吹き飛ばす!
その返し翻した一撃のビーム・サーベルでペーネロペーのビーム・ライフルが両断され爆発する。
次の一撃で決める!ハサウェイは確信を持つ。
「追う!」
ペーネロペーの頭上からΞガンダムはビーム・サーベルの一撃を打ち下ろす!
その瞬間、神経の全てが焼き切れるような衝撃がハサウェイを襲う。
「なに!? うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ハサウェイは激しくも凄まじい閃光に目を焼く。意識が消し飛ぶ。
Ξガンダムはバリヤーの閃光に包まれながらモノクロ映画のように歪み……そして消滅した。
レーンはペーネロペーのモニターからΞガンダムが消滅するのを唖然としながら目撃する。
「バリヤーの出力に耐え切れずに爆散したのか……いや消えた……?」
C・E70年5月 L4宙域 コロニーメンデル付近
(早いものだ……あれから2年か……)
コロニーメンデルのバイオハザードから2年経つ……。
シャトルの窓から徐々に大きくなる廃墟と化したメンデルを感慨深く見つめる。
実際はバイオハザード等ではなく、アズラエル財閥のブルーコスモスの私兵による襲撃だ。
その事件で私は多くの同僚と師事すべき上司も失った。
ユーレン・ヒビキ博士が提唱した人の手による人類の究極の進化のプロジェクトも頓挫してしまった。
非才の私はヒビキ博士の研究を継承することもできず、自暴自棄になったところをシーゲル・クラインの一派に拾われたという訳だ……。
(愛する女とも別れ、もはや研究だけが私の生甲斐だったが……それも潰え……今はしがない宮仕えというわけか)
だが皮肉な事に自分には政治の才があったらしい……僅か数年でクライン派のなかで頭角を現していた。
(科学者としての才能より政治家としての才能があるとはな……私は道化だよタリア……)
遺伝子が全ての資質を決めると言う訳だ。
益々、例のプランが現実味を帯びてくる……ノートの切れ端に書いたような夢物語が……。
シャトルのパイロットから通信が入る。
「デュランダル補佐官。もうじきメンデルです……お一人で大丈夫ですか?」
「……ありがとう。久しぶりの古巣の帰還だ。一人にさせてもらうよ……どうせ調査など言っても名目上なだけだしね」
「……お察しいたします……補佐官程のような方をこのようなジャンク屋紛いの真似をさせるなど……プラントも末期ですよ!!」
「ありがとう……すまないね。君にもババを引かせてしまった。君も私などに関わるとろくな事にならないよ」
戦争は激化する一方で泥沼の様相を見せていた。
(血のバレンタインの報復としてエイプリル・フール・クライシスか……人類はどこまで愚かなのだろうか……)
N・ジャマーの地球投下により地中深くに埋め込まれN・ジャマーの影響から以後ザフト、地球連合軍の双方は核の使用が不可能となる。
この影響で核分裂炉の原子力発電をエネルギー供給の主としていた地球上の各国家は、それが使用できなくなったために地球全土で深刻なエネルギー不足に陥った。
これにより地球連合国家は多数の餓死者、凍死者を出す事態となり人々の反プラント、反コーディネイター感情は最高潮となった
しかもこれは穏健派シーゲル・クラインによる提唱だ。話にならない。
いつでも犠牲になるのは何の力も持たない弱者だというのに……。
鷹派であるザラ国防委員長の強硬派が着々とプラントの政権を握りつつある現在、我々クライン派の勢力は微々だるものだ。
外交官の自分が廃棄されたメンデルの調査などという閑職なのだ……。
戦闘のノウハウを全く持たない口先だけの自分などはこの時代に必要ないのかしれない。
「弱きは滅び……強きは栄えるか……真理だが……公平ではないな」
突然、警戒信号のシグナルが点滅する。
「どうした? 海賊でも現れたのかね?」
「いえ、補佐官、本船のインディゴ、40、アルファに座礁したMSを発見しました……何だ……これは……MSなのか? 推定全長30m……該当なし!ザフトのものではありません!!」
「……MSにしては大きいね……ジンより頭一つはある。連合が独自のMSの開発に成功したとは聞いたことがないが……確認を急いでくれ」
「了解。……遂、先程まで戦闘していたようですね。遠くからでも破損しているのがわかる……パイロットは生存しているかどうか……」
シャトルはその黒く煤だらけのMSに接近する。角が2本あるMSだ。
胸のパーツが突き出た鋭角的なデザイン。
「隣接します……あれは盾だろうな……そしてこれはMS用の機銃なのか……これは重斬刀の……柄かな?」
「これは……凄い……そして……何という……力強い姿なのだ……」
私はこの異形のMSに魅せられていた……。