機動武闘伝ガンダムSEED D_SEED D氏_Interval Phase 1

Last-modified: 2008-01-18 (金) 08:13:40

舞台裏を飛ばし本編へ


舞台裏

 

ミネルバ・ブリーフィングルーム

 
 

タリア「みんな、よく聞いて。お知らせがあります」
一同「…………」
タリア「知っての通り、種ドモスレはDATの海に沈んだわ。00勢力は手強く、保守もままならぬ日々……ここで立て直したところで、00の波に飲まれるのがオチでしょう」
メイリン「メタなこと言ってる――――っ!?」
タリア「加えて視聴率の低下があります」
ルナ「そんなに受けが悪いの!?」
タリア「第一話放送以降、『あんなのガンダムじゃねぇ!』という意見が主流よ。某巨大掲示板のサーバーを吹っ飛ばした例もあるわ」
ドモン「俺たちにとってその言葉はむしろ褒め言葉なんだがな」
タリア「でも視聴率の低調は揺ぎ無い事実。スポンサーも渋面」
シン「くっ…!」
レイ「シン、落ち着け」
タリア「金銭面、そして結果を出せないという現実からは逃れられないわ。というわけで」
一同「…………」(ごくり)

 
 

タリア「『機動武闘伝ガンダムSEED D』は、これにて打ち切りとなります」

 
 

メイリン「あの、監督……本当ですか?」
タリア「本当です」
一同『…………』

 
 

シン「うあ゛ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ」(ダッシュ)
ステラ「ああ、シンが泣きながら走ってく!」
ルナ「ちょっと監督そりゃないわよ! 次が第十二話で、一気に話が動くんでしょ!? それ目前にして消えるなんて!」
タリア「ええ、だからそれを上層部にかけあってるの。とりあえずシンを連れ戻して。まだ続きがあるから」
レイ「了解。(ぴっぽっぱ)整備班、シンが脱走した。カタパルトにアスカホイホイを仕掛けてくれ」
メイリン「六本足の悪魔を彷彿とさせるネーミングだ――――!!」
アビー「脇でカサコソするのは共通していますね」
メイリン「うわさりげにヒドいこと言ってる」
ルナ「あの、監督、希望はあるってことですか?」
タリア「ええ。議長も乗り気だったし」
ルナ「そりゃまー劇中であれだけ好きに暴れてますものね」

 

そのころカタパルト付近では

 

???『お兄ちゃ~ん』
シン「(パリーン)マユ!? 今の声は確かにマユ! どこにいるんだ、マユーッ!」
???『ここだよ、このコンテナの中』
シン「よぉし分かった! 今行くぞマユ! 超級・兄王・電影だぁぁぁぁぁん!!」

 

メイリンinブリーフィングルーム「勝手に奥義増やしてる――――っ!?」
ドモンinブリーフィングルーム「いやメイリン、それでいいのだ! 新たな技を編み出すこともまた修行の成果!」
アビーinブリーフィングルーム「さすが。土壇場でらぶらぶ天驚拳なんて編み出した人は言うことが違いますね」

 

  どがしゃあああああっ!!

 

シン「マユゥゥゥ!!」
案山子ルナ「お兄ちゃ~ん」
シン「…………」
案山子ルナ「どうしたの、お兄ちゃん」
シン「て…てめぇ…ヴィーノォォ――――ッ!!」
ヴィーノ「やべ、ばれたっ!?」
シン「ばれないでか! 裏に立ってるお前のあんよが案山子の足元から見えてんだよ! ご丁寧にボイスチェンジャーまで使いやがって!」
案山子ルナ「…………」(がしっ)
シン「う、動いた!? こら、放せポンコツ!」
案山子ルナ「…………」(ぎゅっ)
ヴィーノ「やだ、お兄ちゃんはあたしの!」(←withボイスチェンジャー)
シン「~~~~っ!!
   くそぉぉぉ! なんで外面をマユじゃなくてルナにした――――っ!!」
ヨウラン「そっちかよ」

 
 

Interval Phase 1

 

 砂金をまぶした黒いビロード、ぽかりと落ちた青いお盆。
 壁一杯のスクリーンに映る宇宙を、黒髪の少女はそう表現してみせた。
「なるほど、そうとも見えるな」
 子供の相手は慣れているクルーゼも、さすがに苦笑を禁じ得なかった。
 このリビングにいるのは仮面の男と年端もない少女。傍から見れば奇妙な組み合わせである。
 少女は不満げな顔をする。しかし無言でティーカップをクルーゼの前に置いた。
 柘榴石のように濃い液体がカップを満たしていく。少女のぎこちない手の動きを、クルーゼは面白そうに見ていた。湯気と共に香りが部屋に広がっていく。
 給仕を終えた少女は、きびすを返した。その背中に、クルーゼは声をかける。
「座りたまえ。新しい話をしてあげよう」
 少女はぱっと顔を輝かせると、盆も置かずにソファに座った。

 
 
 

「曇りのない鏡の如く、静かに湛えた水の如き心。それが明鏡止水……」

 

 どことも知れぬ闇の中。スポットライトに照らされ、椅子に腰掛け瞑目した一人の男性が浮かび上がる。
 赤いマントに赤い鉢巻、どこかで見たような格好であるが、我々がよく知るあの少年ではない。確かに長身、
細身ながら引き締まった体躯であるが、その風貌からすれば、彼はもはや青年の域であろう。
 跳ねた黒髪に彫りの深い顔。ふと目を開いたと思えば、厳しく、熱い視線を向けてくる。
 彼の名はドモン=カッシュ。この物語の語り部である。
「さて、準備はいいか? 良ければお前達に、このガンダムファイトを説明させてもらうぞ。
 ……と、いつもは言うところなのだが……」
 ドモンはどこか楽しげな笑みを浮かべると、音もなく椅子を立つ。
「話も一つの区切りがついたことだ。今回は俺ではなく、彼に語ってもらうとしよう。
 そう、この未来世紀という世界に生きる彼、シン=アスカから見たガンダムファイトを」

 

 ドモンがマントをばさりと脱ぐ。
 下から出てきたのはピチピチの全身黒タイツ、即ちファイティングスーツだ!

 

「それではッ!
 ガンダムファイト総集編! レディィ……ゴォォォ――――ッ!!」

 

  Interval Phase 1 「果てしなき時の中で」

 

 未来世紀初頭に大戦争が起こったってのは、地上の浮浪児も知ってることで。
 理由は何だったのか。色々国の思惑とか暗躍した人とかいるって説があるけど、一般にはナチュラルと
コーディネイターの確執だって言われてる。
 遺伝子を調整して、生まれる前に怖い病気の原因を取り除いたり、強い体になるようにしたり、色々な
ことが出来るようにしたり。そういうの別に悪いことじゃないでしょ? 僕もマユもコーディネイター
らしいけど、別にどうってことない普通の人間だ。でも昔は本当に、そういうの駄目だ、そんなのは人間じゃ
なくて怪物だって風潮があって。
 それでナチュラルとコーディネイターの間で戦争になって、世界滅亡一歩手前までいっちゃったらしいんだ。
 戦争になったら、余計相手が憎らしくなるに決まってる。面倒な話だよ。
 幸いっていうのか、人類が自分で全滅する前に、シーゲル=クラインって人がガンダムファイトって制度を
提唱して、一旦全部休戦ってことになった。
 もう各国が全力で戦争したら世界が何千回壊れるか分からないから、ガンダムっていう高性能マシン一機と
パイロット――ファイター一人、国の代表として出して、四年ごとに、定期的に代理戦争やってもらおうって
いうんだ。
 どう考えたって、コーディネイターの方が有利だ。人一人の能力が、国の命運を左右しちゃうんだから。
 だから反対した国も結構あったみたいだけど、根回しとか説得とかあって、結局賛成多数でガンダムファイト
制度は導入された。
 みんな、相手が嫌いなだけで、自分がいる世界を滅ぼしたいわけじゃないんだよね。
 ここぞとばかりにコーディネイターは自分を売り込んだ。ナチュラルのタカ派で占められてた国だって、
中途半端なナチュラル出したらあっという間に負けるって分かってるし、選考会やったらナチュラルの候補が
コーディネイター一人に全滅させられたって記録も残ってて。頑固な人たちもいたけど、最後まで意地を押し
通すことは出来なかったみたい。
 あくまでコーディネイターの能力を利用するだけだ、ってスタンスでやってたところもある。
 最初の優勝国はネオギリシャ。技術もそんなに目立ったものじゃなくて、国力も大国とはとても言えない
ものだったけど、ファイトで優勝したから四年間世界のリーダーになった。
 そうしたら、ますます良いファイターとガンダムを追求しようって動きが活発になって。
 弱小国でも、条件が揃えば世界の盟主になれる。それが証明されてしまったから、みんな躍起になって強い
人材といい技術を探したり育てたりしてったんだ。
 もうコーディネイターだから嫌だなんて言ってられなくなって、ファイターもサポーターもコーディネイター
で占められて。
 でも、それじゃ当然ナチュラルの反発は出てくる。
 第四回ガンダムファイトがいい例だ。ネオエジプト代表ジョージ=グレンが決勝戦目前で、自国ネオエジプト
のナチュラルの少年に暗殺されたんだ。コーディネイターがファイト二連覇なんて栄誉を勝ち取るのが許せない、
とかいうのがそいつの言い分。
 それと、多分全然みんな意識してなかった問題が一つ。
 ファイトの現場になるのは地球。戦争で色々ダメになっちゃった地球では、コロニーに上がれなかった人が
生きてるのに、四年に一度ガンダムが降ってきて所構わず闘いだす。復興も何もあったもんじゃない。
 コロニーにとっちゃ地球はゲーム盤みたいなもので、地上人にとっちゃコロニーは天の上の支配者様だ。
 そういうでっかい問題があるのに、ガンダムファイトはずっと続いてる。
 だって、ファイトがなくなったら、また大戦争が起こるかもしれない。ガンダム一機には軍事技術もあれこれ
つぎ込んでるし、むしろガンダムを新技術のテストに使ってる面だってある。そういう散々上を目指して発展
してる技術とか、それを使ったMSとか、戦争で使えなかった最終兵器とか、戦争になったらそういうの、
リミットレスで使われてしまう。そうなったら今度こそ世界の終わりだ。
 ファイトを続けてる内はそんな事態にはならない。そのうち何か別の打開策が出ればいいなってことなんだそうだ。

 

 確かに、ちょっとずつ人類は進歩してる気がする。コーディネイターの存在が受け入れられ始めたんだ。
 ファイトでコーディネイターが大活躍してるのもあるし、第七回ファイト以降ナチュラルのファイターが
登場して、しかもコーディネイターと互角に戦ったのもポイント高い。
 ネオイングランドのアル=ダ=フラガと、その息子ムウ=ラ=フラガがナチュラルファイターとして有名だ。
特にムウはファイトを三連勝して、十二年間王座にいた。ナチュラルなのに。
 ナチュラルでもコーディネイターと並べるってのが証明されて、「なんだ、どっちも変わんないじゃん」って
のがみんなにばれちゃったんだ。
 それに、ガンダムファイトは相手を殺すまで闘うわけじゃないから、お互いに友情が芽生えるのだって珍しい
ことじゃない。今の今まで闘ってた相手と、次の瞬間には肩を組んで笑い合うって光景もよく見かけられた。
 代理戦争は代理戦争なんだけど、闘ってる当人たちはそんな意識はむしろ薄くて。
 旧世紀にワールドカップってサッカーの大会があって、国同士がすごいナショナリズム全開で応援してた
らしいけど、そういうのに近いんだと思う。
 スポーツ感覚なんだ。平和なもんさ。
 地上のことなんか全然無視してさ。

 
 

 ナチュラルとコーディネイターの溝は、段々埋められてきつつある。んだと思う。
 だけど代わりに、地上とコロニーの差は開く一方だ。
 地上じゃストリート・チルドレン、いわゆる浮浪児たちが一般的に見られるようになってる。ファイトで
身内をなくして、子供同士で寄り集まって生活してる。
 僕だって元々地上にいて、ガンダムファイトに巻き込まれて、本当の父さんと母さんを失ったんだ。

 

「アレックス君!? その子は!?」
「トダカさん! こいつ、すぐそこにいたんです! お願いします!」

 

 僕はあの人に――『アレックス』に助けられて、トダカさんにコロニー行きのチケットをもらって、空港
行きのバスにまで乗せてもらったけど、空に行く一歩手前でチケットを奪われて、僕も浮浪児の仲間入りして。
 それから、マユに出会ったり色々あって、僕は運良く無事に、マユを連れてコロニーに行けたわけなんだけど。
 みんながみんな、コロニーに上がれるわけじゃない。浮浪児たちは今も確かに地上に生きてて。

 

「うわ、札束だ! 大もうけだよ!」
「バッカ、そんなのすぐに紙切れになっちまうよ。こういうときは……へへ、こいつさ!」
「宝石かぁ!」
「これならいつでもガンダムファイトやってくれればいいのにな!」

 

 ファイトになったらほとんど無法地帯になるから、チャンスだってもんで宝石とか盗んだり、食料あさったり。
そういうの、ざらにある。
 じゃあ、こういう地上の現状をコロニーはどう思ってるのかって言えば、全然何も考えてない。
 ……いや、確かに、ちょいちょい意識してるらしいふしはある。
 ネオフランスの歴代議長は何回も地上に査察に来てるらしいし、現議長ギルバート=デュランダルなんかは
ファイト期間中っていう危険な時期なのに地上に降りてきて、僕とネオフランス代表レイ=ザ=バレルの
ガンダムファイトを間近で見てた。
 ネオトルコで出会った、あの筋金入りのお人よしで独善的なジャーナリストだって、地上をなんとかしたいっ
て思ってるのは本当なんだろう。
 だけど、それだけだ。

 

 コロニーの人の大部分の考えは、地上なんて遠い世界。極論すりゃあ汚れきったゴミ捨て場。青い星は
遠巻きに見てこそ美しい。自然は幻想の中にのみあって、わざわざ地上に行くなんて正気の沙汰じゃない。
浮浪児はもちろん哀れみと蔑みと嫌悪の対象。親がいなくて、ドブネズミのような生活をして、なんて
可哀想なんだって言って、ちょっと募金して、ただそれだけ。
 地上だって、上から目線のコロニー連中にはいつくばって御慈悲を願うなんてプライドのない真似はしたく
なくて。コロニーは天国みたいな世界だから憧れて、なんとしてもそらに上がりたくて、でもコロニーの奴らの
せいで自分達がこんな苦労してるんだって思うと憎らしくてたまらない。
 そりゃ、ネオアメリカみたいにサクセス・ストーリーの対象と見れるところもあるけどさ。
 地上の場合は誰でもコンピュータ・ネットワークを使えるわけじゃないし、地理的にも分断されてるせいで、
意識も地域差がでかいんだ。でもコロニーの意識はほとんど画一的。お国柄なんてコロニーやガンダムの
デザインにしか込められないほどになってる。
 ……で、話を戻すけど。こういう地上とコロニーの対立意識があるから、ナチュラルだのコーディネイター
だの差別言ってる余裕がないってのも、認めたくないけど事実。
 地上じゃ生きるか死ぬかだったり、そうじゃなくても憎むべき相手が空の上にいるから人種差別なんてやってる
余裕ないし、コロニーはコロニーで人種がどうこう言うよりも地上を蔑んで憂さを晴らす。
 ガンダムファイトを提唱したシーゲルは、世界を地上とコロニーの二極に分けて、バランスを保とうとした
らしい。あくまで苦肉の策だって言ってたそうだけど、でも苦肉の策は六十年続いてて、地上は今も荒れ放題。
 ファイト以外の新しい策なんて、誰か考えてるんだろうか?
 みんな、このままファイトが行われてていいんだって、これが普通なんだって思ってるんじゃないだろうか?

 
 

 ただ、ガンダムファイトってのは全体から見ればそういう問題ばっかりの制度なんだけど、当事者の
個人個人からすれば、色々とまたドラマがあって。
 地上にとってはいい迷惑で、コロニーにとっちゃ政治ゲームの一つで、ファイター同士にとっては
真剣勝負以外の何物でもない。
 ガンダムファイト国際条約を見ても、それは分かる。

 

 第一条、頭部を破壊された者は失格となる。
 第二条、相手のコクピットを攻撃してはならない。
 第三条、破壊されたのが頭部以外であれば、何度でも修復し、決勝リーグを目指すことが出来る。
 第四条、ガンダムファイターは己のガンダムを守り抜かねばならない。
 第五条、一対一の闘いが原則である。
 第六条、国家の代表であるガンダムファイターは、その威信と名誉を汚してはならない。
 第七条、地球がリングだ。
 第一条補足、試合中の過失によるガンダムファイターの殺傷は認められる。
 第七条補足、ガンダムファイトによって地球上の建築物を破壊しても罪に問われることはない。

 

 スポーツって、観客にとってはショーだけど、選手にとっては真剣勝負だ。ガンダムファイトも、そういう
ことなんだろう。
 今まで僕が戦ってきた連中も、みんなそれぞれに何かを背負ってた。

 

「非礼を詫びようシン=アスカ! キング・オブ・ハート相手に小手調べなんざ必要ない!」
「俺は勝つ! どん底から這い上がった英雄の姿を皆に見せつけてやる!」
「ナチュラルの意地ってものが、あるのよっ!」
「ギルへの忠誠こそ俺の騎士道!」
「私はフォー・ソキウス。四番目のソキウスです」
「いけない! ミリィ、見るな、早く行け!」
「妻と息子の無念、貴様の命でしか贖えんのだ!」
「騎士だの英雄だのと! 言っただろ、そんなもんは最初ッから虚像なんだよ!」

 

 ネオイタリアのミゲル=アイマンは、自分よりも強い奴と闘いたくてファイターになった。
 ネオアメリカのイザーク=ジュールは、地上ネオアメリカの人たちに夢と希望を与えるために闘ってる。
 ネオチャイナのフレイ=アルスターは地上の少林寺の希望を一身に背負ってる。
 ネオフランスのレイは、忠誠を誓ったデュランダル議長のために闘ってる。
 ネオロシアのフォー・ソキウスは元々ネオロシア優勝のために作り出された人工生命で、でも自分の意志で
僕と闘った。
 ネオメキシコのトール=ケーニヒはミリアリア=ハウと地上に来たいがためにファイターになって、
ネオメキシコに隠れ住んでた。
 ネオカナダのサトーは家族の復讐のために、ソキウスを合法的に殺すためだけにファイターになった。
 ネオイングランドのムウは戦士の運命に殉じる覚悟でファイターに復帰した。

 

 僕だって背負ってるものがある。サトーと似たようなもんだ。
 家族を裏切って地上に降りたキラ兄……キラ=ヒビキを見つけて、奴が奪っていったデビルフリーダムを
破壊するためだけに、僕はファイターになって闘い続けている。サトーと違うのは、それが、冷凍刑にされた
ユーレン=ヒビキ博士――養父さんを解放して、マユを腕から生き返らせる条件なんだってこと。
 そういう事情がなかったら、いくら頼まれたって僕は絶対ファイターになんかなってなかった。
 そもそも僕らは平和に暮らしていたのに、いきなり空の上から巨人がやってきて、好き放題に街をぶっ壊して、
父さんも母さんも……。ガンダムファイトが僕の本当の両親を殺したんだ。
 僕がヒビキ家に引き取られた後、アカデミーに行かせてもらったのは、そういう理不尽な暴力に対抗する
手段を身につけるためで、大切な人たちを守るためで。ファイターになりたいわけじゃ全然なかった。
 愛機のインパルスも、最初見たときは、あの巨人たちと同類って気しかしなかった。
 いや、そりゃまあ、色々口は出したけどさ。
 三機の飛行物体が変形合体するって分かったときは小躍りしたし、パルマフィオキーナはエネルギーを
馬鹿食いするからインパルスには搭載出来ないって言われたときは落ち込んだし、ヨウラン達が趣味に走って
勝手に取り付けたって聞いたときは思わず「ナイスガイ!」って褒めちぎっちゃったけど。
 だけど、地上を荒らすのなんて嫌だった。
 ファイトすれば必ず地上が荒れる。なのに情報を聞き出すにはファイトの結果に賭けるのが一番手っ取り早い。
 そして僕には、悠長にしてる余裕なんかないんだ。
 デビルフリーダムが本格的な活動を再開する前に見つけ出さなけりゃならないんだから。
 今だって、奴は悪行を重ねてるに違いないんだから。

 

 そう、デビルフリーダム――DFを、僕たちは直接捉えてはいないけど、奴が引き起こした事件には何度か
遭遇してる。
 デビルフリーダム細胞、略してDF細胞。その名の通り、DFを構成する自律金属細胞。難しい説明は省く
けど、要するにそいつに侵されたら、動物も機械も関係なくDFに乗っ取られて支配される。動物の場合は体が
アンドロイドみたいな金属組織に作り変えられていって、自己再生能力と破壊衝動を植えつけられて、DFに
逆らえなくなる。
 機械が侵されただけなら、僕のエクスカリバーソードで元の機械ごと光にしてしまえば済む。だけど生命体が
侵された場合、治療するには侵された部位を手術で切り離すしかない。
 つまり脳まで侵されたら、事実上治療は不可能になる。
 僕らは世界を巡るうちに、ネオメキシコとネオエジプトとネオトルコでこの金属細胞に遭遇した。

 

「遺言はある? 一応聞いておいてあげるわ」
「…………」
「弟子も師匠も関係ないんだよ。あの方の前では全てがクズだ」

 

 クルーでしかないミリアリアが僕と互角に闘えたのも――彼女はちょっと特殊な気もするけど、まあそれは
置いといて――とっくの昔に死んだはずのジョージ=グレンが生き返って砂漠を荒らしていたのも、ハイネが
教え子のはずのルナを殺そうとしたのも、こいつに侵されたのが原因だった。
 僕はその都度闘って、DF細胞を光にまで分解した。ミリアリアは元に戻って、多分今頃は退院したトールと
よろしくやってる。ジョージ=グレンは元通り、安らかに眠ってくれただろう。けれどハイネは……。

 

「アンタが悪いんだ……アンタが奴に負けるから……」

 
 
 

 僕はガンダムファイトが嫌いだった。闘うことは好きだけど、地上を荒らすのは嫌だった。
 だけど今は、そういうのよりもっと大事なことがある。
 ハイネと入れ違うように、クルーゼ隊長から情報が来た。地上ネオジャパンの新宿に奴が潜んでいるかも
しれないって。
 期待はしないでおく。だけど本当に奴がいたら、やることはひとつだ。

 

「さあ、俺を連れて行けよ。国の犬にでも何でもなってやる。だから俺に奴を追わせろ!
 キラ=ヒビキは、俺がこの手で殺す!!」

 

『シン』
 アンプ越しの少女の声が、少年を夢から現実に引き戻す。ブッドキャリアー内の個室には、きちんと
スピーカーが取り付けられているのだ。
『そろそろネオジャパンに入るわよ』
「分かった」
 シンはベッドから身を起こした。椅子にかけておいたマントを羽織り、鉢巻を締め直す。
 自分にあてがわれた個室を出れば、ルナマリアは既に身支度を整えていた。いつもの赤服、いつもの
ミニスカート。キッチンの食器洗浄器に入っているのは、コーヒーカップが一つだけ。
「新宿エリアに入る前に下りるわ。空は危険らしいから」
 硬い声。それもまたクルーゼからの情報なのだろう。
「ああ」
 シンも短く頷いた。お互い、目を合わせることはなかった。

 
 
 

 重い心を引きずって、少年と少女は次の舞台に降り立つ。
 地上ネオジャパン、東京都・新宿シティ。
 二人は知らない。彼の地で更に皮肉な運命が待ち受けていることなど。
 そして――

 

「奇跡みたいなもんなんだからな!? あの少年ファイターに感謝しろよ!?」
「シンか……もちろん……」

 

 一人のジャーナリストが動き出したこと、狐目の青年が生きていることなど、二人は知る由もない。

 
 
 

                  to be continued...

 
 

Interval Phase 舞台裏

 

再びミネルバ・ブリーフィングルーム

 

アーサー「それではシンもふてくされつつ戻ってきたことだし、監督、続きを」
タリア「コホン……
    確かにほとんどのスポンサーが消えてしまったわ。しかし捨てる神あれば拾う神あり。
    さ、ご挨拶どうぞ」(←扉の向こうに向かって)
???「君達の取るべき道は二つある。一つはこのまま通常の業務に戻り、収録自体を忘れて貝のように口をつぐむこと…」
アビー「!!」
???「そしてもう一つは我らと共に、最後まで撮影を行うことだ!」
アビー「あ、あなたは…まさか!?」
???「宇宙海賊ミナ・バンガード!」

 

  プシュッ(←扉が開いた)

 

キンケドゥ「俺の名はキンケドゥ。キンケドゥ=ナウだ!」
メイリン「凄い人来たぁぁ――――――ッ!! 本物の海賊だぁぁぁ!!」
ドモン「むう、この風格、只者ではないな!」
アビー「キンケドゥさん…」
キンケドゥ「お久しぶりです、アビーさん。お元気そうで何よりです」
アビー「……///」
ルナ「おやぁ? アビーどうしたの?」
アビー「ど、どうもしませんっ!」
タリア「というわけで、ミナ・バンガードが全面的に協力を約束してくれたわ」
キンケドゥ「だが、我らはあくまで協力者に過ぎない。このまま撮影を続行するかは、君達自身でどうするか決めてくれ。
      おそらくこれからは更に厳しい戦いになるだろう。投下はもはや月一ペース、00の勢いは未だ収まる気配を見せず、荒らしも跳梁跋扈する今の情勢」
メイリン「さらっと筆者に言及した――――――!! メタにも程があるわっ!!」
キンケドゥ「今一度問う。これまでの全てを忘れ、通常の業務に戻るか…」
シン「戻ってたまるかバカ野郎っ!!」
キンケドゥ「うおっ!?」
シン「師匠に出会ってはやウン年…俺は、主役を維持するために必死で修行に打ち込んできたんだ! 話の中であれ、やっと最後まで主役になれるのに…!
   その収録を、たかがDAT落ちになったくらいで! スロウ投下と荒らしと打ち切り程度のことで諦めるわけにはいかないだろ!?」
メイリン「そこまで重なったら立派に大事だ――――ッ!!」
アビー「というかネタスレでリアル年月の話は禁句です」

 

ドモン「よくぞ言った、シン!」
シン「師匠!?」
ドモン「決死の覚悟で荒波に食らいつくハングリー精神こそ、逆境に必要不可欠なものなのだ! いかに苦しく、一抹の勝機すら見出せなくとも、胸中に不屈の闘志が燃えている限り! 俺達に負けはない!」
シン「師匠…!」
ルナ「あ、あたしだって、このまま終わるんじゃもったいないし悔しいわよ!」
レイ「同じく。ギルとの対話はまだまだあったはずだ」
ステラ「うぇーい! ステラもがんばる!」
メイリン「私もです! アスランさんだって、あんなに頑張ってるのに打ち切りなんて悔しいに決まってます!」
ドモン「安んじて何も得られぬ道を行くか、敢えて極寒の風にその身を曝して己の存在を勝ち取るか! どちらを選ぶかなど言うまでもなかろう、キンケドゥとやら!」
キンケドゥ「……よし! 君達の心はよく分かった!
      残念ながらTV枠を取ることは、我々にも出来ない。だが他の手段を取ることは出来る!」
レイ「もしや、映画に?」
キンケドゥ「いいや、OVAだ!」
一同『!!』
キンケドゥ「俺達は知っている。TVシリーズを無理矢理映画に詰め込んだ結果、何が起こるかを知っている!
      君達に同じ轍を踏ませるわけにはいかない!」
メイリン「も、燃えている…キンケドゥさんの瞳の奥で炎が燃えている!」
キンケドゥ「ただしOVAの場合、30分で週一という縛りがなくなる反面、TVシリーズにも増して高いクオリティが要求される。TV放映と違い、視聴者に金を払ってもらうことにもなるし、繰り返しの視聴が基本となるしな!
      これが何を意味するか、分かるな?」
シン「ああ! 修行がいかに厳しいものになろうと、望むところだっ!!
   俺達はぁぁぁ…… やるっ!!」

 
 
 

  その日、監督タリア=グラディスから、収録チーム全体に引越し宣言が出された。

 

ラクス「それではエターナル発進準備! ラクシズもお引越しですわ!」
ダコスタ「種ドモスレともこれでお別れですか……」
虎「なに、完全に終わったわけでもなかろうさ。また帰ってくることもあるだろう」
ダコスタ「……ですね!」
マリュー「アークエンジェルも発進準備急いで! 人員の取りこぼしもないように!」
ノイマン「まさかスレを跨いで航行することになるとはな」
ラクス「オーブにも連絡を入れてくださいな。キラとカガリさんのことですから、のほほんとしてるに決まってますわ」

 

キラ「引越し…?」
カガリ「へえ、世界規模の引越しか。具体的にどうすればいいんだ?」
キラ「えっと、『忘れ物のないように荷物をまとめてスレ移動を待つこと』だって。おとなりのセイラン家から回覧板が回ってきたよ」
カガリ「よーし! それじゃまずは家の掃除だな! ユーレンさんとヴィアさんが戻ってくるまでに綺麗にするぞ!」
キラ「え~っ!?」

 

ナタル「それではマザー・バンガードもカウントダウンに入る」
アズラエル「しかし大した肩入れですね。あなたがたに出番はないんでしょう?」
ベラ「似た境遇の者を見たとき、助けになりたいと思うのは自然なことではなくて?」
アズラエル「こちらも資金に余裕があるわけではないんですけどねぇ」

 

東方不敗「ほれほれ、早くせんか! 置いていくぞ!」
アスラン「お、お待ち下さい師匠! ここで置き去りにされたら俺は凸とファイターの中間の存在となって永遠にスレの間を彷徨わなくてはならなくなります!」
アウル「…………」
スティング「アウル。今お前アイアンギアーのアクセル踏みかけただろ」
アウル「げ、スティング! わざわざ口に出すなよ!」

 

カナード「頃合だな。メリオル!」
メリオル「了解。傭兵部隊X、待機を解除します。ところでシュバルツの反応がありませんが」
カナード「気にするだけ損だ。反応がないだけで乗っていることは確かだからな」

ドモン「次の場は他スレとの共同となる。お互い切磋琢磨し合う絶好の機会となるだろう。
    しかし、当然のことだが俺達の持つ空気と他スレの空気とはずれがある。特に俺達は他スレの者には異質と思われるかもしれん。
    だが決して怒るな! 決して他スレを叩くな! 無用の諍いはファイターの求めるものにあらず!
    習慣が違う者に出会えば戸惑うのも当然、だがならばこそ常に敬意を持って接せよ、礼儀を忘れるな!
    すれ違いがあるならば発言前に頭を冷やし、歩み寄りを試すことだ! 肝に銘じておけ!」
一同『はいっ!』

 
 

タリア「全員、準備いいわね?」
一同『応!』
タリア「それでは……ミネルバ発進します!
    目標次スレ、『【もしも】種・種死の世界に○○が来たら【統合】』!!」

 
 

                 今度こそ第十二話舞台裏につづく

 
 

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