「これで…終了っと」
ミネルバに帰還したシンに待っていたのは、出撃前に溜りに溜った始末書と報告書であった。
今回の任務は、1年に渡る長期任務に入る為にそれに加えて各部署への調整など仕事も押し付けられ時計を見ると、既に午前2時を回っているのを見てため息を付きたくなった。
「出発が朝の9時だからまだ時間はあるな」
ミネルバの出航は、正午12時だがシンは先に転送ポートで現地で6課メンバーと合流する手筈になっている。
隣のベッドでは、部屋の同居人であり同僚であるレイ・ザ・バレルがスヤスヤと寝ているのを見るとシンも眠気が襲って来る。
「レイが少し手伝ってくれたおかげで早く終われたな」
20時過ぎに帰艦したシンはまさに多忙をきわめた、ルナマリアへのインパルス譲渡とミッドチルダでの任務説明など普段しない仕事にシンは四苦八苦しながこなしてそれを見かねたレイが
「俺も手伝おう、これでは明日までに間に会わん」
この申し出にシンは感謝するが、流石に全部を任せる分けには行かずある程度目処が立った時点でレイには休んで貰う事にしたのだ。
「俺もそろそろ休むかな」
デスクの書類を片付けながら就寝の準備をしようとしていたら、自分のパソコンに通信が来ているのに気付いて誰からだと思いながら通信モニターを開くと
《シン!元気やったか!?》
通信相手は、明日から自分の上司となる八神はやてだった。
「はやて……」
いきなりの通信にシンが驚きの声が上がり咄嗟に口を噤みレイの方を見ると、寝ているのを見て胸を撫で下す。
《どうかしたん?》
「こっちはまだ夜の2時だ!」
レイを起こさないように小さな声で言うと、はやては口を噤み小さな声で
《ごめん夜とは、思わんかった》
「少し待ってろ」
そう言うと携帯端末に通信回線を入れ替えて部屋を出る。
「それで何の用だよ」
この時間帯ならだれもいないレクリエーションルームへ向かいながら、携帯端末のモニターに移るはやてに聞く。
《用って程の事やないんやけど久しぶりにシンと少しお話したいな~と思って》
その言葉にシンはがくりと肩を落とす。
久しぶりも何も明日から1年間は一緒に仕事をするのに何を言ってるんだと思いながら、まあ良いかと内心思い
「まあ1時間位なら良いけど明日は、朝一でそっちに向かうから早めに寝たいんだよ」
《えっ!?そうなん?》
その言葉を聞いたはやては、驚きながら喜んでいるような顔をしているはやてを見てシンは思わずはやてのその笑顔に見惚れてしまいそうになる。
「けどまさか管理局側の捜査協力者達がはやてだなんて驚いたたぞ?」
《私もまたシンと一緒に仕事するなんて思わんかったわ》
そうだなとシンも頷き、互いの近況の話をしながら時間を潰すと時刻は4時を回っていた。
《ごめんな長話になって》
「別に良いよ3、4時間寝る時間位はあるし」
残った缶コーヒーを飲み欲しながら言いう、朝からアプリリウス等に出向し先程まで仕事をしていたが、はやてと話しているうちに疲れも気にならなくなりもっと話して居たいと思っていたほどだ。
《寝坊しても知らんよ》
「うっ……努力するよ」
レイなら起こしてくれる 大丈夫だ絶対に
そう自分に言い聞かせながら
「じゃあ後でな」
《うんそれじゃあ待ってるよ》
そう言うとシンは通信を切り自室に戻ると眠気が一気に襲いかかり1日の疲れが噴出したのか、隣のレイが居る事も確認せず、すぐに深い眠りに付いてしまった。
しかしこの時シンは気が付くべきだった、親友であるレイが部屋に居ないこととシャワールームが誰かに使われている事に。
「ふふっ…シン帰って来たんだね」
シャワールームから出て来た人物いや侵入者はベッドで熟睡するシンの寝顔を見て、微笑むとわざわざコズミックイラへの出張を伸ばして貰ってたかいがあったと言うものだと侵入者である フェイト・T・ハラオウンはYシャツ1枚を羽織りシンのベッドに潜り込んだ。
「はやてには、悪いけどね私も負けられないんだよ」
フェイトに取って恋敵であり親友でもある、友人の名を呟きながら未だにフェイトがベッドに入った事も気付かない自分の想い人であり、脳内では既に結婚予定である婚約者のシンは、年齢よりも幼い寝顔でぐっすり寝ているシンを見て
「ふふっお休みシン」
フェイトは、シンの隣へ横になるとシンの頭を自分の自慢であり他の追随を許さない豊満な胸へ抱き込むとニコニコ顔でフェイトも目を閉じる。
この数時間後にシンが目覚めたときにシンが絶叫を上げたのは、言うまでもなかった。
一方 レクルームでバインドで拘束されたレイがハイネに助けられるのは更に2時間後であった。
ミッドチルダ 6課隊舎
「なんや!?今、誰かに出し抜かれた気が……」
「何言ってるのはやてちゃん?………それにしてもフェイトちゃん出張が長引くみたいだね」
執務室で溜りに溜った書類の片付けを手伝いながらなのはは、応援であるザフト軍が来るのと前後して戻って来るフェイトの事を思いだす。
「そうやな……」
その名に声のトーンを落とすはやては、苦い気持ちになる。
シンがアスランに敗れて大怪我をした時にフェイトと、一緒にプラントへお見舞いに行った時のフェイトの言葉を思いだす。
自分と同じ人物を好きだと告白されたと同時にフェイトから宣戦布告を受けた時の事を思い出し先程のシンとの通信の事が鮮明に思い出される。
「やっぱりこの気持ちに嘘はつけへんな」
「何か言ったはやてちゃん?」
「何でもあらへんよ」
なのはに悟られないように苦笑いを浮かべながら答える。
この時シンは、自分に振りかかる人生最大の試練(プライベートを含む)が待ち受けているとも知らずにフェイトの胸の中で眠っていた。
管理外世界
何も無いただ、地平線しかない大地と無数の魔導師の死体の山しかない場所で二人の男が立っていた。
武者兜を想わせるヘルメットと特徴的な黒と赤の騎士甲冑を纏った男と紅い機械的な赤の騎士甲冑を纏った魔導師は、死体の山に座り込み夕日を眺めている。
「やっと…やっと巡り逢えるのだな少年!!」
「ああっ……アズラエルからの任務が来た行くぞ………Mrブシド―」
ブシド―と呼ばれた男は無論だと言うような表情で立ち上がり
「此れでようやく全力で戦える」
死体の山を見るとブシド―と呼ばれた男は先程の倒した魔導師を見ると、斬る価値もない相手だとしか思わなかった。
そうして二人は転移魔法でミッドチルダへと飛び立った、新たなる争いと災厄を振りまく為に。
注:Mr.ブシド―はザフト残党のサトーの偽名