機導戦士_第01話

Last-modified: 2007-11-17 (土) 18:01:59

アーモリーワンでザフト新型モビルスーツ、カオス、ガイア、アビスの三機が何者かに強奪され、警報がなり響いていた。
新型戦艦ミネルバは進水式もままならぬまま、艦内は慌ただしく、事件の対応に追われていた。
そんななか、緊急事態とは分かっていても何をすればいいのかさっぱりな金髪ツインテール、赤服のフェイトはMS搭乗室にて待機していた。
隣で座っている黒髪の少年はシン・アスカ。国家機密、最新鋭のMSインパルスのパイロットだ。
今はこの待機室に二人きり、いつまでも沈黙が続くのは凄く居心地が悪い。
しかし、そうは言っても、自分から話を切り出して会話を続かせるなどフェイトには出来そうもなかった。なので黙っておくことにする。ちなみに、この艦の人達と会うのは今日が初めてだった。

遡ること二日前
はやての指示により、ロストロギアの確保するためにフェイトはなのはと共に目的地へと向かった。
エイミィの誘導により、目的の場所にたどり着き、さっそく二人は任務遂行のため、起動中のロストロギアの停止を試みる。
そんな時だった。
『なのはちゃん!フェイトちゃん!急いでーーッ……。』
慌てたエイミィの声が、電波が届かなくなったかのように突然途絶えた。
何度も明滅する自分の視界。むろんフェイトも焦った。
なのはが呼ぶ声が聞こえる。しかし、光が強く瞬くため、目を開けていられる状態ではなくなり、フェイトは目を瞑りながら、なのはの名前を叫んだ。
瞼を閉じていてもはっきりとわかるその光の強さ。 不快だった光の明滅のせいで、だんだん頭痛が激しくなりフェイトは気を失った。
どれくらいの間、気を失っていたのか、それはわからないが、次第に意識がはっきりとして行くにつれ声が聞え始めた。
「しかし、どういうことだね?コーディネイターをもってしても、あのモビルスーツのデータがとれないとは…。」
「申し訳ございません。デュランダル議長。技術部も八方手を尽してはいるのですが…。」
「…ふむ、まぁいい。今はパイロットが起きるのを待とう。意識を取り戻したら教えてくれ。」
フェイトが目を開け、体を起こすと
「おや?もう体の方はいいのかね?」
部屋を出ようとした長髪、黒髪の男が笑っていた。

それから数日がたち、フェイトはその長髪の男の名をプラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダルだと知る。
彼は忙しいのか、滅多に顔を見せないが、それでも病院に顔を出してくれていた。
それもこれで五回目になる。
「あの時は正直、驚いたよ。君はヤキン・ドゥーエ、前大戦の宙域をMSで漂っていたのだからね。
ジュール隊長が君を保護し、私の元へ報告。
その後、この病院へ運んでくれたんだよ。」
「そう…なんですか?」
うむ、と頷き、微笑むデュランダルは一旦話をきり、真剣な表情になる。
「検査の結果分かったんだが…、君はコーディネイターではなく…クローンだね?」
「はい…。」
確に自分はクローンである。自分には姉がいた。その姉が幼くして亡くなった時、悲しみに打ちひしがれた母が、何とか生き返らせようとして私を作り上げた。
フェイトはデュランダルに自分の過去を話した。
「私は母さんの望むアリシアにはなれなかったんです。こんなにも容姿は似ているのに…。」
やはりまだ思い出すのは辛かった。そんなフェイトを慰めるようにデュランダルが言った。
「辛いことを思い出させてしまったね。」
「…いえ。
あの…、デュランダルさん…。MSってなんですか?」 デュランダルは暫く何事か考えるように黙っていたが、やがて
「君はこれに着替えたまえ。」
ザフトの緑の制服をフェイトに渡した。

制服に着替えたフェイトはデュランダルに連れられて何かの工場の様な場所にたどり着く。
デュランダルの姿に気付いた二人の兵士が敬礼し、デュランダルはそれに笑みを返す。
フェイトもデュランダルに敬礼の仕方を教わっていたので、二人の兵士に敬礼で返す。
すると、二人のうち一人がキーを解除して扉が開いた。
中は真っ暗で、明かり一つない。しかし、カッとライトが点灯すると、そこには巨大な人型の何かが存在していた。
「全長19,43メートル、総重量81,37トン…。何を燃料としているかは不明。機体のデータをとるのは不可能…」
「…これは…。」
驚いてその何かを見ているフェイトへと向き直るデュランダル。
「君はこの機体で…何をしようというのだね?」

その機体はフェイトがコクピットに座ることで、機動を開始した。
色を失っていた装甲が、その色を取り戻す。
全体を黒色が覆い、所々に金のラインが入る。
ほうっとデュランダルは理解した。
この機体がフェイトがのらないと起動しないことを。
デュランダルはゲートを開けるように指示を出す。 轟音とともに飛びたつ漆黒の機体。ゲートから外に出ると、背部についている四の骨組み展開する。その骨組みから金色の光が漏れ、翼を形成した。
フェイトは驚きつつ、この機体が自分にとってなんなのかを理解する。
元の世界ではいつも一緒だった。何度も自分を奮い起たせ、幾度となく助けてくれたパートナー。
「バルディッシュ…。」
名を呟くと同時、モニターに表示される武装データ。
フェイトの頭上のモニターにデュランダルが映った。
「今から自動行動をプログラミングしたMSを五機投入する。
それらを撃ち落としてみてくれ。」
瞬く光が近付いてくる。電子音が一度だけし、相手のデータを知らせてくれる。
「…ジン…。
行くよ!バルディッシュ!」
それに応えるかのようにバルディッシュの背面スラスターから勢いよく光が噴射される。
(アークセイバー)
フェイトがイメージするとおりに、考える通りの動きをするバルディッシュ。
肩部から金色の光の刃、アークセイバーを引き抜き、相手に向け、放つ。
弧を描きながらそれはジンに直撃し、胴と足を切断した。
爆発し、弾ける閃光。残りは四機。
相手からの攻撃をひらりと交し、今度は腹部、大型ビーム砲、プラズマスマッシャーが眩いまでの光を放ちながら相手を飲み込み、破壊する。
腕から波状に発生するシールドで、相手のビームを防ぎ、マウントされている斧を構える。
刃の部分が持ち上がり、そこから光の刃が飛び出す。斧から鎌へと変化したそれを操り、一機を縦に一刀両断する。そして、すぐそばにまで迫ってきていたもう一機を腰部レールガン、フォトンランサーで爆砕させる。
「次で最後!」
バルディッシュの背部の翼が射出される。自動追尾型の光の刃、サンダーブレイドが四方から相手を串刺にし、戻ってくる。
全滅まで一分もかかっていなかった。
その様子をモニターしていたデュランダルは笑みを溢し、呟いた。
「フェイト・T・ハラオウン…思わぬカードが手にはいった…。」

一方、その頃の連合。JPジョーンズ作戦室。
「さぁて、今からザフトの新型MSの強奪に向かう…。」
一行はファントムペイン大佐ネオ・ロアノークに続く。
「スティング、アウル、ステラが乗り込んで機体を強奪するんだ。
データはこれだ…。」
ネオが名前を読んだ二人の少年と一人の少女に渡した資料には基地の見取り図とMSのデータが表示されていた。
「それから、ナノハ。お前はレイジングハートで待機。何かあったら、すぐに出撃してもらうからそのつもりでな。」
「はい。」
「解散。各自作戦に向け備えろ。」
五人はそれぞれ準備に取り掛かった。

シャワーを浴びながらナノハは一人、思考していた。
自分の中で何かが叫ぶのだ。
間違っている。あなたはMSのパイロットじゃない。連合、ザフトなんて関係ない…と…。
「自分は、特殊部隊ファントムペイン少佐ナノハ・タカマチで…いいんだよね…。」
自分の存在を確かめるために声をだす。だが、不安は消えなかった。
やはり、何かが違う気がするのだ。
誕生日、家族、思い出せない。他にも大切な何かがあった気がする。
自分が現状に至るまでの過程がない。
それがナノハを不安にさせていた。
シャワー室からでたナノハは軍服に着替え、自分の機体が収容されている格納庫へと来ていた。
白に赤のラインが入った二丁の銃を持つ灰色機体が直立不動で立っている。
機械だから表情なんてないはずなのだが、何故かナノハには泣いているように見えた。