第十三話「フレイの特訓」

Last-modified: 2014-03-14 (金) 12:52:04

あれから五日たった。
あの後フレイは地球軍に志願した。
「パパをあんな目にあわせた奴らに復讐したい」
それがフレイの志願した理由だった。

 

ハルトによるフレイの特訓が始まった。
機体に関しては問題なかった。
捕獲したジンに現在アドヴァンスに搭載されているOSを搭載すると、機体の反応速度を六割位に落とす必要があるがナチュラルでも満足に動かす事が可能になったのだ。
元々アドヴァンスに搭載されているOSはハルトの父・スグルが独自に改良したものだ。
キラの組んだOSと比べると七割程度しか機体性能を引き出せないが、その分ナチュラルでも扱いやすくなっている。
(…やっぱり、父さんはすごいや)
ハルトは今はもういない父に感謝した。

 

いざシュミレータによる特訓を始めると、ハルトはフレイの才能に驚く事になる。
一日目で基本動作をほぼマスターし、二日目にはもうジンを撃破した。ただその後今にも倒れそうになったので、三日目は強制的に休ませる事になった。
一応基本の訓練(内容はムウから教えてもらった)も同時にやって、十時間弱シュミレータをやっているが、弱音すら吐かない。
(もはや執念だな…)
早く強くなって復讐を遂げたいのは分かる。それはハルトも同じだからだ。ただフレイはどこか焦っている節がある。そう思えて仕方がなかった。
結局、四日目はフレイが筋肉痛で動けなくなったので特訓はしなかった。

 

「俺が言うのも何だが、もう少し休め。また昨日のようになるぞ?」
「ならないわよ!…多分」

 

食堂。ハルトとフレイはそんな話をしながら食事をとっていた。そこにキラが入って来る。
「おうキラ、ここ空いてるぞ。」
「あ、ありがと」
ハルトが自分の隣を示すと、キラは給水機からプラスチックのカップを持ってそこに座る。
「そういえばマードック軍曹とも話してたんだが、アドヴァンスのOSもお前が組んだやつに変えてみようと思うんだ。」
「え…大丈夫なの?」
「俺だってコーディネーターだ。最初は慣れないだろうけど、大丈夫だろ。」
「そっか。なら手伝うよ。」
「…ねえキラ。私のジンもそのOS入れたら強くなる?」
「え…多分フレイには使いこなせないと思う。」
「そんなのやってみなきゃ分からないじゃない!」
「そもそもまだお前のジンじゃないだろ。」

 

そんな話をしていると、突如艦内に警報が鳴り響いた。第一次戦闘配備だ。
「――あとちょっとで合流なのに…!」
キラが先に食堂を出る。続いてハルトが出ようとすると
「私も出る。」
フレイが立ち上がった。
「…大丈夫なのか?」
フレイはまだシュミレータでしか戦闘を体験していない。果たして実戦で生き残れるのだろうか。
「何もできないのは嫌なの!」
だが、フレイの頑とした表情を見て、ハルトはどんな説得も通じないと悟る。
「…無理するなよ。」
そう言って食堂を出た。

 

食堂を出てすぐの所で幼女を助け起こしていたキラと合流し、格納庫へ辿り着いた。
格納庫では三機のモビルスーツが出撃を待っていた。ストライクとアドヴァンス、そしてジンだ。
ジンの右腕には普通のジンにはない物が装備されていた。「トリケロス」だ。
これはアークエンジェルがヘリオポリスから出て初めての戦闘時にアドヴァンスがブリッツの右腕ごと切断したものを、対G戦用にジンに移植したのだ。
ビームライフルとビームサーベルへのエネルギー供給のため機体リアアーマー部に追加のバッテリーパックが装備され、それとトリケロスを外付けのエネルギーケーブルが繋いでいる。
それなりの長さはあるので動きを邪魔することはない。
「ザフトはローラシア級1、デュエル、バスター、ブリッツ!」
三人がそれぞれのコクピットへ乗り込むと、ミリアリアが状況を伝える。
「ストライクより順に発進どうぞ!」
ストライクが射出される。それにフレイのジン、アドヴァンスが続いた。

 

既にゼロがバスターと交戦していた。と、デュエルがストライクに向かって来る。ストライクはサーベルを抜き、デュエルと交戦を開始した。
残るブリッツは一瞬ミラージュコロイドを展開したが、アークエンジェルの的確な応戦で使用を断念する。
「フレイ、ブリッツをやるぞ!」
<分かった!>
いったん下がったブリッツに追撃とばかりにビームガンを放つ。ジンも逃げ場を塞ぐようにビームライフルを撃つ。
ブリッツはシールドで着弾を防ぎ、ビームサーベルを抜いて仕掛けて来る。それをシールドで受け流す。
その隙に狙いやすい角度に移動したジンが再びビームライフルを放つ。
ぱっと飛び退いたブリッツは今度はジンに目標を定め、切りかかる。
<きゃあああ!>
フレイは叫びながらもシールドで攻撃を防ぐ。
「させるかっ!」
追撃をさせないようブリッツの側面から蹴りをくらわせる。
<何コイツ!? ジンとはまるで違う!>
「当たり前だ!Gの性能はジンを一歩も二歩も上回っているからな!」
再びブリッツがビームライフルを撃って来る。アドヴァンスとジンは散開し、反撃に移行した。

 

10分もたった頃だろうか。見てみるとバスターもブリッツも撤退し始めた。ただ一機デュエルだけがストライクと対戦している。
ストライクがかわしたビームがアークエンジェルに当たる。アークエンジェルの装甲が加熱して輝く。
「!?」
突如、ストライクの動きが明らかに変わった。素早くデュエルのサーベルをかわし、脇をなぐ。
それでも反撃してくるデュエルに目にも止まらぬ速さでアーマーシュナイダーを掴み、サーベルが当たった部位に叩きつける。
激しいスパークがデュエルの機体を走った後、デュエルは沈黙した。
慣性で漂うデュエルをブリッツが抱えるように離脱する。
<すごい…>
「キラ…すげえな。」
フレイと共にハルトはただただ感心する。
まさかキラがあんなに素早い操作をするとは思いもしなかった。
(負けてられないな…)
新たな目標が出来た、とばかりにハルトは軽く微笑んだ。

 
 

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