第30話~譲り合いの心?~

Last-modified: 2013-04-22 (月) 19:38:07

「シン、アークエンジェルが見えたぞ!」
「来たね」
ジョシュア基地爆発の知らせの後、アラスカ方面に艦隊を移動させるように提案した。
もしかしたら、アークエンジェルが逃げてくるかもって言って。
「本当に来るとはな……良く分かったな」
「まったく、教官の読み通りでした。流石です」
「そんな、なんとなくそんな気がしただけです」
感心した様子のキサカさんと馬場さん。ちょっと照れる。
さあ、フリーダム♪ フリーダム♪
そうやって待ちわびてると、ついにアークエンジェルと接触タイム。
結構ボロボロだな……まあ、モルゲンレーテで修理するから良いよね。
「どうやら、亡命が希望らしいぞ」
「え~と、詳しくはオーブに着いてからで良いんじゃないですか? とりあえずは保護って形にして」
「そうだな、では付き合ってもらえるか?」
「あ、え~と、交渉はキサカさんに任せます。僕はちょっとアークエンジェルの格納庫に行ってみます」
「格納庫?……まあ、良いだろう。貴様の考えは良く分からんが、信頼はしている」
「どうも」
「あの、私達も御一緒して良いですか? フレイが心配だし」
アサギさん達が提案。まあ別に良いけど。そういやフレイとは仲が良かったよね。
「じゃあ、行きましょうか」
…………多分、フレイは居ないだろうけど………居たら嬉しいな。
そして、格納庫へ到着。そこには…………
「な、なにさ!? これぇぇぇぇぇ!!!」
ぼ、僕のフリーダムが……右腕と左足はどうしたのさ? なんで、こんなダメージを!?
「何処だ?」
僕のフリーダムを、こんなボロボロにした理由を聞かないと………………居た!
「ちょっと! どうしたのさ、これ?」
「あん?……キ…シンか」
「シンか、じゃ無くて」
「え? ヤマト少尉?」
「うそ? 何でここに?」
「やあ、ひさしぶり」
「暢気に挨拶してる場合じゃ無いって! なんなのさ、このダメージ、それにフレイは?」
「いや、いっぺんに聞かれても…………疲れた」
何か精根尽き果てたって感じだけど、聞く事がたくさんある。
「ちゃんと答えてよ!」
「ダメージはデュエルにやられた。フレイはパナマに向かったよ」
「は? ちょっと詳し…」
「教官! そんな事より、ヤマト少尉が居る事の方が驚きですよ!」
「ホント、てっきり、ザフトにでも捕えられたかと」
「ああ、心配かけてゴメン」
「本当に心配したんですよ。最初は死んだんじゃって思ったけど、教官がそれは無いって言うから
 そっちは安心できたんですが……」
「そうそう。でも、教官って本当に少尉を信じてますよね。仲良すぎ」
「いや、そんなことは」
「だって、絶対に死んでないって断言するし、心当たりが有るって探しに行きかけて、途中で止めるし」
「心当たり?」
ちょっ! それを言ったら!
「ええ、何でも近くの教会に行きかけて、途中で大丈夫だからって……」
そ、その僕の隠れたファインプレーは、言いふらすような事じゃ……
「おい……アンタまさか?」
め、目が怖いんだけど………と、とにかく無事で良かった。お礼も言わなきゃ。
「…………無事でなにより♪ それとフリーダムを取ってきてくれて、ありがとう」
「アンタって人はぁぁぁぁ!!!」

第30話~~譲り合いの心?

暴れるシンを宥めて2人きりに………まあ、何があったのか……って、言うより、シンがこうなった
原因は察しがつく。
「シン、しっかりしてよ」
「…………………」
うん。小声でラクスと何かあったかって聞いたらこうなった。僕もよく死んだ魚の目って、言われたけど
自分じゃ分からなかった。けど、これで納得。本当に覇気の無い、死んだ魚みたいな目だ。
「大丈夫だから、ここにはラクスは居ないよ」
「……はっ!……ここ何処?」
「アークエンジェル内の君の部屋。落ち着いた?」
「あ、ああ……」
「で? 何があったの?」
「………ひ、酷いや……何で? 俺を助けてくれなかった?」
「それは……え~と」
フリーダムが欲しいのと、ラクスを押し付けたかったって言ったら殺されるかな?
「き、君なら、僕が下手に手をだすより、上手くやってくれるって思ったからさ。現にザフト軍の
 壊滅は防げたし、フリーダムも手に入った。流石だよ♪」
「そ、そのために、どれだけの犠牲が出たと思ってるんだ?」
「うん。知らない。だから教えて。最初から」
「ぐっ!………じゃあ、話すぞ。まずは俺が目を覚ましたら…………」
ふ~ん、やっぱりターミナルはすでに動いてたんだ………へえ、そんな作戦を思いついたんだ。流石♪
……え? それをラクスがダメ出しして………ああ、なるほどね。彼女らしいや。で、ヤッチャッタ♪
…………あれ? ラクスが………ふむ………マルキオさんも大変だな………じゃあ、ラクスのお父さんは
……それは失敗だな…………え!? ルナマリア?………それ、絶対に違うから、この男は………
教えてあげようか? でも、そうしたらラクスを押し付けられなくなる………ゴメンね。ルナマリア。
「うん。理解した」
「なに考えてんだ? あの女は……」
「もちろん和平。ナチュラルとコーディネイターの共存」
「いや、だからってさ……」
「いや、君がラクスに振り回されて冷静な判断が出来なくなったって言うのは分かるけど……」
「アンタは分かるのか?」
「まあね。10年以上も連れ添ってきたんだし、一応はね」
「だったら、教えろよ」
「うん。まずね。君はラクスが、今のイメージを壊す事を嫌がるんじゃって、思ったらしいけど、
 それは間違い。むしろ今のイメージはラクスにとっては邪魔だったんだ」
「なんで?」
「うん。ラクスって、この頃から戦争は嫌って考えで、憎しみは何も産まないって言ってたけど………
 ちなみに、シンは家族を失った後、家族が居る人間に憎むなって言われたらどう思う?」
「ムカつくな。アンタに俺の気持が分かるかって。実際にそうだった」
「もし、それをシンと同じ立場の人に言われたら?」
「………………それでもムカつく」
「でも、反抗はしにくいよね?」
「まあな」
「そういうこと。ラクスは傷付けられた事なんか無いから、いくら奇麗事を言っても響かないんだよ。
 特に、この戦争の要である憎しみに揺り動かされた人にはね」
「ああ……たしかにユニウス7を落したテロリスト達はラクスの事をクラインの小娘呼ばわりだった」
ユニウス7………あれ? 平気だ。その言葉を平然と受け入れられる。そうか、僕は解放されたんだな。
ラクスの呪縛から…………ありがとうシン。そっちの意味でも、君は僕に自由を運んできてくれたんだね。
「どうした?」
「なんでもない。とにかく、ラクスには奇麗事を言う資格が無かった。でも、今回の件で資格を手に
 入れたんだよ。今までの安全な立場から奇麗事を言う小娘から、例え暴行されても憎しみは何も
 産まないって訴える人間になった。
 まあ、シンもそれでもムカつくって言ったように、それで充分ってわけじゃ無いけど、それでも
 この差は大きい」
「まあ、そうだけど………でも、資格を手に入れたって、その資格は不正入手じゃないか」
「上手い事言うね。でも、それがラクスだし♪」
「おい!」
「まあ、大事なのは周りがどう思うかだから。今回の件で、ザフト地上軍にとって、ラクスは命の
 恩人になったんだ。影響力は間違いなく上がった」
「じゃあ、アイツはこのまま平和活動を?」
「そうだね……取り合えず、この後は…………アスラン」
「へ? アイツが何?」
「今度のラクスのターゲット…………可哀想に」
「な、何するんだ?」
「何をするのかは僕にも分からない。けど、何をしたいかは分かるよ。今のラクスにアスランは
 邪魔だもの。必ず排除する。同時にザラ派の支持率を落す」
「可哀想になってきた………」
「そうだね。でも、彼の尊い犠牲が、さらなる和平派の勢力アップに繋がる。その後は大人しくすると
 思うな。下手に動くより、じっくりと情勢を見るはず」
「じゃあ、シーゲルも居るし、和平に向かいやすくなった?」
「そのラクスのお父さん。それが、今回の作戦の失敗した部分。ラクスはシーゲルさんにも暴行を
 加える事を望んでたでしょ。
 何しろ政敵のパトリックは奥さんをユニウス7で失っているのに対し、シーゲルさんは無傷。
 それじゃあ、パトリックだって…」
「お前に俺の気持は分からんってなるな」
「それが、娘を犯され、自らも暴行を受けた。それでもなお、和平を望めば、説得力が違うよね。
 ところが、本人は無傷だったら、娘が犯されながら敵討ちも考えない冷たい父親に思われる可能性
 だってある。その辺は発言力低下」
「やばいな………下手すれば、本気で仇を……」
「そうなったら、お笑いだね。今までパトリックに説教しときながら、自分の身内に害が及んだ途端に
 180度態度を変えるなんて」
「まあ、流石にそれは無いか」
「うん。それにラクスだって、お父さんとマルキオさんには、話すと思うよ」
「そう言えばマルキオさんも」
「そう。今回のプラントに行った理由も、オルバーニの譲歩案の提出のため。プラントにとって、
 受け入れがたい内容を提出したんだ。ラクスの基準では、それくらいの目に合っても、和平への
 考えを変えない人間でいなければならない人」
「でも、虫の息だったぞ」
「それは、ラクスのお父さんが帰ってこないからやりすぎたのかと」
「おいおい……」
「熟練のシンが相手だからね。夢中になってたんじゃない?」
「いや、そんなテクは使わなかった。つーか使おうとするとストップが。だから、嫌がりはしたけど、
 喜んではいない………はずだけど?」
「へ~、じゃあ、とことんまで犯される女でいたかったんだね」
「徹底してるな……じゃあ、今後は……」
「どうなるんだろ? その辺は僕より君の分野」
「まあ、時間稼ぎはカガリのためだけど、結果的には連合にも利点はある。MSの生産とパイロットの
 育成。両方とも時間が必要だしね」
「じゃあ、やっぱり連合有利なんだ?」
「まあね。物量が違いすぎる。ただ、俺達の経験した歴史ではジョシュア基地の自爆は、最初、ザフトの
 大量破壊兵器だってことになってた。まあ、疑問は多かったし、結局は後で判明したけど、それでも
 現時点では連合は、対ザフトで、一枚岩だった。
 でも、今回のジョシュア基地の自爆はラクスの所為で大西洋連邦の仕業だってバレた。ジョシュア基地
 から逃げ出した兵にとってはラクスは命の恩人になる。
 そして、何よりも大西洋連邦とユーラシアとの間に亀裂が出来た」
「もしかすると、ザフトはユーラシア連邦と組んで、大西洋連邦と戦うってこと?」
「デュランダル議長ならそうする。でも、今の議長はパトリックだ。ナチュラルと組むなんて考えも
 しないさ。
 だから、ユーラシア連邦は大西洋連邦に組するしかない。不満を持ちつつね。でも、戦意は落ちた。
 上手い和平案があれば乗ってくると思う」
「じゃあ、ザフトは?」
「……うん。今頃プラント評議会は紛糾している。主な題目はジョシュア基地攻略の責任とNジャマー
 キャンセラーの流出。
 Nジャマー・キャンセラーの流出に関しては、やはりラクスに責任があるから、クライン派にとっては
 痛手だ。当然ザラ派に責められるな。
 だけど、ジョシュア基地に関しては、逆にザラ派が責められる。無断で標的を変えたあげくに、
 情報が漏れて、危うく全滅の危機だ。攻略の成否については、基地が無くなったんだから、成功とも
 言えるど、ラクスが居なかったら地上軍が全滅したことくらいは分かる。つまりラクスが居なかったら
 失敗だった。
 だから、Nジャマー・キャンセラーの流出に関してもラクスを責め辛いが、ジョシュア基地の攻略は
 成功だったとするんじゃないかな」
「じゃあ、クライン派とザラ派の権力争いは大きな変化が無しか……」
「そう。後は、最大の懸念はNジャマー・キャンセラーの行方。つまり、俺がどうなったかだ」
「どうするの?」
「ラクスとの打ち合わせで、俺は連合兵のアレックス・ディノになっている。そいつはフリーダムが
 損傷したから、アークエンジェルで連合に戻ろうとしたが、アークエンジェルのクルーはアラスカで
 取り残された恨みからオーブに亡命を希望。それで乗っ取ろうとしたが、返り討ちにあって殺害」
「じゃあ、Nジャマー・キャンセラーはオーブにあるってバレバレ?」
「そう。だから外交筋で圧力がかかってくるはず」
「困ったな………下手すればザフトがオーブに攻めて来る」
「それは無いだろ。ここで騒ぎ立てれば、連合にNジャマー・キャンセラーの存在が知られる。極力
 水面下で静かに動くさ。その辺はカガリに相談する」
「カガリに?」
「ああ、ウズミは信用できない。アイツは理念だなんだと言って、突っぱねるだけだし」
「でも、カガリだって、最近でも変な行動してるよ」
「変?」
「うん。そのことでも相談したかったんだけど」
僕はマユクッキー争奪戦のことを説明した。ホントに何考えてんだか……
「なんだ。悩む事なんか無いさ。単なる兵士の機嫌取りだろ」
「機嫌?」
「ああ、どうせアンタがアサギ達にでもマユのクッキーのことを話したんだろ? それで、兵士内でも
 興味があった。それで実際に食べたカガリが使えると判断したのさ。食わせてやれば感謝するって」
「た、たしかに皆に自慢した。でも機嫌取りの理由は?」
「地盤固め、最悪クーデターも……そう言えば………なあ、ラクスの考えで解説希望」
「なに?」
「俺が送った輸送艦の中にもNジャマー・キャンセラーがあるんだ。で、ラクスはそれをオーブに、
 しかもカガリなら、みたいな事を言ってた。これって、もしかすると?」
「うん。カガリにNジャマー・キャンセラーを渡せって意味」
「どうしてだ?」
「いや、そこまでは僕にも……」
「そうか………それにしても流石だな。良くラクスの事分かってる♪ やはりお似合いだよ♪」
「そう来たか……でも、もう遅いよ、手を付けたんだから責任とってあげなよ」
「いや、あれはカウントに入らないって♪」
「僕の気持はともかく、ラクスは君の事が好きなんだから、諦めなよ♪」
「………まあ、イザークに押し付けた、大丈夫さ」
「……そ、そうだね。これ以上の争いは無意味だし」
「……まあ、とにかく戻ったらカガリに相談だな。アイツが今後の戦局の鍵を握る事になる気がする。
 ラクスも気にしていた。それに、迷惑だろうが俺の件を話を合わせて貰わないと」
「迷惑?」
「アレックス・ディノは死んだってプラントに連絡。それとアレックスは俺だってアークエンジェルの
 クルーは知ってるんだ。外部に漏らさない手筈を取ってもらわないと」
「それって?」
「亡命の受け入れと同時に、アークエンジェルのクルーに緘口令、退役や連合に戻るってのは無理だ。
 その分、優遇してもらわないと」
なるほど……あれ? じゃあ、カズイはアークエンジェル降りられないや。可哀想に。
「わかった……それと、もう1つ疑問が?」
「なんだ?」
「パナマは? フレイが行ったんでしょ?」
「ああ、ザフトの次の目標は、そっちだろうな」
「やばくない? だって、グングニール使うんじゃ?」
「どうだろ? 俺は使わないと思う」
「なんで?」
「一回きりしか使えない兵器だ。存在がばれたら次からは連合もEMP対策するからな。で、パナマは
 通常戦力で勝てる相手。普通なら使わないだろ」
「もっと、重要な局面まで取っておくってこと?」
「俺ならそうする。ただ、パナマが重要拠点だって事には変わりは無い。いざって時の対策として準備は
 するだろうな」
「じゃあ、準備だけしておいて、勝てそうならそのまま。負けそうになったら投入するの?」
「俺なら、そうするってこと。まあ、普通にザフトが勝つと思うよ。今回は俺達やルナみたいな
 不確定要素が入り込む余地は無い。だから急に連合が強くなる理由も無いし」
「フレイの存在は?」
「アイツは、強いよ。でも、俺の予想を超える力は無い。これ以上、アイツを鍛える相手もいないし」
「そうだろうけど……」
「まあ、アイツの成長速度は異常だから、アイツを鍛えてやれる人間がパナマに居たら別だけど、
 それこそ、ジュール隊レベルの人間が必要になる。だから大丈夫。適当に負けて逃げ切るさ。
 臆病な性格は直ってないだろうし」
「冷静だね。フレイのことが心配じゃないの?」
僕なんか、パナマが攻撃されたらフリーダムで乱入しようかと考えてるのに。
「心配はしてる。でもな、それ以上に信用もしてる」
か、格好良いこと言われた!? こ、これじゃあ、僕がダメな奴みたいじゃないか!?
「それにさ、俺はフレイと生きて再会する理由が出来た」
「え? なに?」
「…………復讐さ! もう、アンタに遠慮はしない! 必ずフレイとやる! そして、虜にしてみせる!
 それをアンタに見せ付けてやるよ」
「ちょっ! 外道!」
「アンタには言われたくない!」
「に、憎しみは何も産まない!」
「説得力ないね」
ちょっ! ど、どうしてこんな事に!?

「そこっ! 脇ががら空き!」
私のシュベルトゲベールを受けて沈黙…………これで全滅? ダメ。こいつ等弱すぎ。
「さあ、立ちなさい! アンタ等が、お嬢の面倒なんて見たくないって言ったんでしょ!?」
事の発端は部隊内での諍い……まあ、要約すると、戦死した事務次官の娘が、敵討ちを考えるストーリー
は良いけど、一緒に戦う者にとっては、役立たずのお飾りを守らなきゃいけないって考える。
だから不満たらたら……まあ、気持は分かる。
それで、私は戦えるって事を証明しようと、模擬戦を始めたんだけど、楽勝すぎた。1対10でも
勝てる。私が強いんじゃ無くて、こいつ等が弱すぎる。
まあ、ザフトの平均的な力は知らないけど、少なくとも、私が戦ったことのある、バルトフェルド隊、
名前は知らないけど海上で戦った部隊、実戦では無いけどオーブ軍。そして、キラと互角に戦った
ジュール隊。この辺と戦ったら一蹴される腕前………実際、この連中の実力ってどうなんだろ?
実はザフト内でも弱かったりしたら………ダメよ。もっと強くならないと。
「アルスター中尉、訓練を終了してくれ! このままじゃ死んでしまう」
「こんなんじゃ、勝ち目無いですよ。実戦で死ぬ前に今の内に殺しましょう」
「や、止めろ! 冗談でもそんな事は言うな!」
いや、私は、キラにそう言われながら訓練してたけど? 本気で死ぬかと思ったことも、片手で数え
切れないくらいあるし。
「とにかく、これ以上の訓練は認めん! 中止しろ!」
「……了解です」
しぶしぶ、訓練を終了……って、言うより訓練をした気がしない。困った。今夜眠れないかも……
せめて、互角に戦える相手は………馬場一尉やアサギさん達、どうしてるかな?
でも、どうせなら私より強い相手が欲しい。どっか居ないかな?
「マジかよ……」
「本当にアレが事務次官の娘か?」
歩いてる最中も小声でヒソヒソと…………顔は憶えた。模擬戦で仕返しすることに決定。
「本当はアイツもコーディネイターじゃ無いか?」
「かもな。奴並の強さだし」
あのね……自分より優れてたら、みんなコーディネイターになる……あれ? アイツも?
「ちょっと、アンタら、コーディネイターと戦った事あるの?」
「え!? いや……戦ったって言うか、この基地の……」
…………マジ♪

どこに居るんだろ? それらしき人物は……あれかな?
「あの、キャリー少尉でしょうか?」
眼鏡をかけた紳士的なオジサマ。
この人が連合で戦うコーディネイター……キラと同じ…
「ん? 君は?」
「はい。フレイ・アルスター中尉です」
「…失礼しました。ジャン・キャリー少尉です。私に何か?」
この人が少尉ね……それで私が中尉、やっぱり、コーディネイターだと大変なんだ。
「あの、模擬戦、してくれません?」
「え? 私が中尉とですか?」
「はい。お願いします。それと、私みたいな小娘に、敬語は不要ですよ」
「そう言う訳には……それに私なんかが中尉と模擬戦など」
「でも、少尉の戦歴は聞きました。佐官になってて当然の戦果です」
「別に出世したい訳では無いので」
複雑な事情がありそうね……でも、今は訓練を!
「あの、正直に言うと、訓練して欲しいんです。私程度の実力では、この先、厳しいし……」
「……そういう理由なら、良いでしょう。相手しますよ中尉」
「お願いします!」
良かった! これで弱いもの虐めから解放される♪
天国から見守っててねキラ。私、強くなるから。死んだ貴方の分まで頑張るから。

続く

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