第6話「決戦!5対3」

Last-modified: 2016-08-23 (火) 22:43:49

ガンダムビルドファイターズ side B
第6話:決戦!5対3

 

 あれから2週間、ガンプラバトル世界大会国内予選第1ブロック(関西、東中国、東四国エリア)
代表決定戦の当日の早朝5時半、朝もやの中、海峡を1台の軽トラが走る。
「ねぇ兄ちゃーん!なんで瀬戸大橋なのー?」
高速を軽トラで走っているので音がうるさい、大声で兄に聞く宇宙。
「まぁそのうち分かるさ。いやー絶景絶景、お前も楽しめよっ!」
 雄大に繋がる瀬戸大橋。他の本四連絡橋と違い、複数の巨大な橋が連なるこの道には
他には無いスケールの大きさがある。

 

 今日の大会会場は大阪、確かに徳島からなら大鳴門橋→淡路島→明石海峡大橋→神戸→大阪の
ルートが最短なのだが、わざわざ早起きして香川から岡山に渡るルートを選んだ大地。
やがて橋を渡りきり、児島から岡山市へ向かって、1件の喫茶店に立ち寄った。
「ちょっと朝メシにするぞ、宇宙。」
「こんな朝早くからやってるの?」
車から降り、ドアを引くとカランカランと定番の音が響き、中に入る。

 

 カウンターには若い男がエプロン姿で、もう一人の客と向かい合わせで座っていた。
共に大地と同じくらいの年齢に見える。二人を見とめて、エプロンの男が言った。
「里岡サン・・・里岡兄弟さんだな。」
「ああ、朝早くすまねぇな。」
片手を上げて挨拶する大地。知り合い?といぶかしげな顔をする宇宙。
「紹介するよ、こいつが弟で、東四国代表の宇宙だ。」
「は、はじめまして・・・」
いきなり紹介されてとまどう宇宙、代表って形で紹介されて、彼らもガンプラ関係の人かな?と察する。
「宇宙、カウンターにいるのがガンプラ大会中国地方東部覇者、三島雄一さん、
 向かいで座ってるのが準優勝の島村克好さんだ。」
にこやかに手を振る三島、無表情で会釈する島村。
「へぇ、東中国地方のナンバー1とナンバー2の方ですか、すごいなぁ・・・って
 今日の対戦相手じゃん、いいの?試合前に会っちゃって!」

 

 モーニングは絶品だった。トースト、ベーコン、サラダ、コーヒーに桃の半身が付いて350円
特に岡山名物の桃は思わず顔の緩む美味さだ。
「さて、そんじゃあ本題に入るが、いいかい?」
「今日の大会、この3人で組まないか?ってコトだったな、大地さん。」
「ああ、すでに通達が行ってるとは思うが、今日の大会はロワイヤルによる1発勝負だ。
 知ってのとおりロワイヤルは、途中までは誰かと協力した方が生き残る確率は上がる。」
「・・・そして、近畿の5人は皆、大会で顔を見知ってる仲、というわけか。」
 島村が核心を付く。今日の試合は近畿勢5人、東中国2人、東四国1人の代表が同時に戦い
最後に残った1名のみが世界大会の出場権を得ることになる。
となれば近畿代表の5人が共同戦線を張ってくることは容易に想像できる、
それに対抗するために、わざわざ早朝からこうして集まったわけだ。

 
 

 しかし、三島と島村は快い返事を返さなかった。
「だがな、組むとなれば背中を預けることもある、その時に後ろから撃たれない保証はないぜ。」
「そーゆーコト、そしてロワイヤルっていうのは、そういう”裏切り”さえ戦術といえるからな、
 簡単にあんたらを信用できないし、あんたらも俺たちを信用しないだろ、なら組むこと自体無理がねぇか?」
うーん、と困り顔をする大地、そもそもバラバラに戦って近畿勢に各個撃破されたらなすすべがないんだし
彼らもそれはわかってると思っていたんだが・・・
「信用します!僕が最前線に出ますから、後ろから援護してください。それならいいでしょう。」
兄に助け舟を出す宇宙。そもそもトリックスターは接近戦用のガンプラである、後ろに回っても意味は無く
まだまだ初心者の彼が近畿&東中国の代表7人とまともにやり合える可能性も薄い。
「・・・その言葉を待っていたよ。」
ニヤつきながら答える島村。三島の表情も和んでいる、中学生の真摯な態度に感心した部分もあるようだ。
「実はあんたらが来る前に島村と話しててな、もしあんたらが『後方支援に徹する』なんて言ったら
 絶対に信用しないと決めていたんだが、全く逆の答えを返されたら信用するしかないぜ。」
「だな、まぁ前線は俺たちに任せとけ、君は後方でいてくれればいい。」
「え・・・でも僕のガンプラは、」
「接近戦用、だろ?だからだよ。」
頭にハテナマークを表示する宇宙の横で、大地がぽんっ!と手を叩いた。
「なるほど、そーゆーコトか、やるねぇ2人とも。」

 

 正午、大阪梅田にあるイベントビルにて、いよいよ世界大会の出場者を決める戦いが始まる。
「さぁー集いましたで、関西を代表する強豪8人!世界への扉を開くのは果たして誰か!
 これより、ガンプラバトル世界選手権第1ブロック代表決定戦、バトルロワイヤルを開催しまっせー!」
司会をしてるのは何と宇宙と同い年くらいの女の子だ。照れず、噛まず、全身で見る者を引っ張ている。
周囲もノリノリで、コスプレイヤーや応援団も多数、関西恐るべし。

 

「それでわぁーガンプラをセットして、ちゃっちゃと発進したってやぁー!
 あ、発進の際には、出身県とガンプラの名前を語ってな~、盛り上げ盛り上げ。」
円卓状に設置されたバトルマシンに並ぶ8人、案の定近畿の5人はかたまって並ぶ。
それぞれがガンプラをセットし、緑色の粒子がマシンの上を覆う。

 

ーSTAGE 77 RANTAO ISLANDー

 

 Gガンダムでもロワイヤルに使われた火山島、適切な舞台に観客から声援が沸く。

 

「岡山代表、三島雄一。ガズエル・ナイト発進!」
「鳥取代表、島村克好。ミストラル・ザメル、出る。」
「三重代表、鳥谷千尋。ブラック・コルレル、いっきまーっす!」
「和歌山代表、岬健吾。ビギナ・ギナ・オレンジ、突撃っ!」
「奈良代表、大谷結城。ハンブラビ・ノンビリト、いってきまーす。」
「兵庫代表、滝川可憐。ドレス・ドラッツェ、いざ勝負!」
「徳島代表、里岡宇宙。ボール・トリック・スター、テイクオフします!」
「大阪代表、ガンプラ心形流、松岡忠、デビルガンダムアドミラル、進撃や!」

 

「お前らどいつもこいつも、ガンダム使わんかーいっ!」
実況の絶叫が爆笑を誘う、松岡の「俺は~?」という意見は無視されたようだ。

 
 

 最初の作戦どおり、三島ガズエルが空中から、島村ザメルが地上から進軍し、トリックスターはその後方に位置取る。
と、その時、すさまじい勢いでカズエルとザメルの間をすり抜ける一機のガンプラ。
「まずは後方支援機から叩かせてもらいます!」
滝川ドラッツェだ、ドレスの名の通り、スカート部分が広く付け足され、足元に向いて広がっている。
その中に仕込んだバーニヤを噴射し、強烈な加速を得ているようだ。
ボールの前で逆噴射をかけ急停止、ビームサーベルを抜刀する。
「ボールじゃ接近戦なんて出来ないでしょ・・・って、ええーっ!?」
トリックスターは話を無視してドラッツェに突進していた、近距離からのスパイラル・ドライバーが
ドラッツェに体当たりを食らわす。
盾の間に挟まる格好になったドラッツェは、大破こそ免れたものの回転しながら飛ばされていく。
が、ほどなくスラスター制御によって立ち直り、トリックスターに向き直る。
「ちょっ、ボールが体当たりなんて、原作無視もいいとこじゃない!」
「ザクに蹴られてジムを破壊したことはあったよね、お嬢サン。」
いつのまにか背後にいる三島カズエル、コーンランサーを一閃してドラッツェを両断する。
「まず一機!」
 作戦的中。接近戦用のトリックスターをあえて後方に置いて支援砲撃機に見せかけ、
距離を詰めれば勝てると思わせておいて逆に仕留める作戦だった。
「ドラッツェがやられたか・・・」
「ふ、ヤツは我ら近畿四天王の中でも最弱・・・」
口々に語る近畿勢、島村ザメルが手の代わりに砲撃の雨でツッコミする。
「それ、負けフラグのセリフだぞ」
着弾点が爆発と爆風で荒れ狂う、ものすごい火力だ。

 

「それにしても、あのドラッツェが最弱なんて・・・」
「真に受けるなーっ、最初にヤラれた人がそう言われるのはお約束なのよ!」
呟く宇宙に、退場した滝川嬢が訂正を入れる。
「気を抜くなよ宇宙君、まだ4対3だ、しめていくぞ!」
「はいっ!」
「やはり中四国はグルだったか・・・なんて卑怯な」
「今しがた『近畿四天王』とか言っとったのはあんたやろが!」
岬がボケて大谷がツっこむ、さすが関西、このリズムを忘れない。
が、次の瞬間、松岡デビルを除く3機が、それぞれの機体に向けて突撃する。
乱戦よりも相手を選びに出たようだ。

 

「はぁいザメルさん、私に触れるかしら?」
「コルレルとは思い切ったものだ、かすりでもすればアウトだぞ?」

 

「ビギナ・ギナ・オレンジだ、君も徳島ならボール部分はすだちカラーにしたまえ」
「無茶苦茶言ってるよこの人!関西人って一体・・・」

 

「ハンブラビか、相手にとって不足なし!」
「見たところあんたが大将格やなぁ、じっくりやりまっか。」

 
 

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