■ゲームキーパーへの情報
シナリオ『血の怪異』に異常発生。
紅の少女、ヒーローに敗北。
紅の少女に4割の損傷を確認。
紅の少女、管轄外ステージへの逃走…………成功。
紅の少女は担当外の遊戯盤へ漂着。
ヒーローに接触しますか?
Yes or No
──────Yes
世界の間、鏡と鏡の隙間、虚無の裏側、大いなる流れの中でゲームキーパーはヒーローに語りかけた。
「壮健そうで何よりだ、大十字九朔」
実体化もままならぬ中、これまでと違う場所で突如語りかける聲に驚く九朔。
「神父!?
何故こんなところで、それともここが此度のステージか」
この実世界の間で、ゲームキーパーと接触したのは初めてだ。
声ならぬ聲で九朔は詰問する。
「それは違う、どうやら彼女は私のゲームの外へ逃げてしまったようだ。
本来ならばこんなことは在り得ないんだが、君から受けた損傷が彼女に多大な影響を及ぼしたようだ。自我の欠損もあり得る。
彼女を追いかけても、君の世界の欠片は無い。
それでも、往くかね?」
「無論だ、アナザーブラッドが瀕死だというのなら、今こそ好機。
決着をつけ、然る後、この下らぬ遊戯を憂いなく終わらせてくれる。」
予想通りの答えにゲームキーパーは痛ましい聲で応える。
「ううむ、困ったことだな。
あの宇宙は私以外のゲームキーパーが管轄している。私が手を出すことは出来ない。
つまり君たちのゲームが、私の預かり知らぬ場所で終わってしまう可能性がある。
考えを改める気はないかね?」
「くどい」
きっぱりとした返答に、ますます唸るゲームキーパー。
「やはりか、まあゲームを持ちかけたのは私だ。プレイヤーの意思に従おう。
だが君の、君たちの行き着く先は私の予測外だ。そこのゲームキーパーが私のように優しいとは限らない。気をつけて征ってくれたまえ。
もしも君が志半ばで倒れるようならば───」
「くどいと言ったぞ、神父!」
「これは失礼、では武運を祈っているよ騎士殿。
誰に祈るかは難しい問題だがね、ふふはははははははは」
耳障りな聲は去り、九朔はアナザーブラッドの追撃に集中した。
誘導されない世界移動の為、通常よりも手間がかかった様に感じる。
大抵アナザーブラッドが出現し、数日以内に九朔も実体化するのが常であったが、今回は勝手が違うようだ。最悪の場合数ヶ月、数年のずれも覚悟しなければならない。
前世界で九朔はついにアナザーブラッドに痛撃を与えた。大玉の直撃を受けた奴は、いつもとは異なり血飛沫にはならず、幾つかの断章に別たれながらも最後の力で世界を超えた。
自ら動き回れるだけの体力は残っていまい。本体を見つけその存在を滅するか取り込めば、悪を為す自分の可能性などという悪夢を、総ての宇宙から消し去れる筈だ。
九朔は自身が勝利へ近づいていることを確信しながら、次なる世界へ堕ちて行った……
続く
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