艦内点景◆炎のX好き氏 10

Last-modified: 2016-03-05 (土) 06:48:06

艦内点景10
 
 
(シン対決編<1>)

強敵だ。
シンは奥歯を噛み締める。
敵と一騎打ち状態。デブリ(浮遊破片)の多い戦闘宙域。
敵MSは、それを生かして強引とも言える機動でアカツキとの距離を詰めてくる。
シンもデブリに身を隠しながら素早く動き回っているが、明らかに手の内を読まれている。
「カンもいい」シンは呟く。
突然!至近距離にあったデブリの陰から黒い敵機がケダモノの動きで飛び出す。
「ちいぃっ」
メインスラスターを全力噴射で後退!
しかし、敵の相討ち覚悟の攻撃に回避が間に合わない。
とっさにシンは反撃。
相手をシールドで殴りつけ、その反動で敵MSに斬りつける。
下からの衝撃にコクピットが震える!

敵機の片腕を奪うも、アカツキは右足を失う。
両者の操縦技量は拮抗している。
お互いの一撃が致命打にならない。
欠損した質量にアカツキが一瞬、バランスを崩す。
「くっ」
その隙に、敵MSが肉迫。
シンの目に機械の顔と、野獣の雄叫びの幻視が重なって見える。
その顔にツムガリを突き立てて、ムリヤリ斬り下ろす。
が、敵はのけ反りつつ、ビームサーベルを突き出し、アカツキのシールドを左腕ごと斬り飛ばす。
シンはそれにかまわず、そのまま力任せに敵MSを串刺しにする。
しかし、爆散寸前になった敵MS『ガイア』の背部に装備されたビームブレイドが展開。
アカツキも胴体を一刀両断される。
アカツキとガイアはもつれあいながら閃光に包まれた。
閃光が消えた時、『MS戦用訓練シミュレータ』の表示に両機の姿は無かった。
見事に相討ちだ。
シンはシミュレータの中で、荒い息と共に、言葉を吐き出す。
「つ…強い」
ステラがこんなに手強いとは…。
もし、アーモリーワンでステラがガイアの操縦に慣れていたら…。
または、DXの助力が無かったら…。
今更ながら背筋が凍る。
シンがシミュレータから出ると、得意満面のステラが先に出て待っていた。
シンはステラの額を軽く小突く。
「うぇい。やっぱりシン、負けるの嫌?」
「違うよステラ。相討ち覚悟なんて真似、もうするなよ。帰って来れなきゃ、意味が無い」
シンはステラを愛おしげに抱き寄せる。
「うぇい、わかった」
ステラもシンの背中に腕を回す。
「よし、いい子だ」
「うぇい」
後ろでルナマリアが、アホ毛を扇風機みたいに振り回し「あー、熱い熱い」と皮肉を言うが、勿論、仲睦まじく互いの名を呼ぶ2人の耳には入っていない。
そして、もう一組の熱々カップルの片割れ、ガロードは『シンのやつぅ。あんな、自然に彼女を抱きしめやがって…』と、羨ましがり。
かたやティファもほんの少し羨ましそうに、シンとステラを見ていた。

(おわり)

 <オマケ>
「ねぇ、キッド。熱々の恋人の生木を引き裂くシミュレータって作れない?」
『アンタ恐えぇよ、アホ毛姉ーチャン…』
 

(ガロード対決編<1>)
ガロードはティファを伴いMS戦用訓練シミュレータに入った。
今日、ガロードはCE世界最強MSの一つ『ストライクフリーダム』の対戦シミュレートに挑戦するのだ。
「ガロード…私…ジャマなのでは?」
ガロードはなんと、シートについた自分の膝の上に、ティファを乗せている。
「これがオレの必勝スタイルだぜ」
ガロードの目は限りなく真剣だ。
始めてGXに搭乗し、無数のMS乗りを相手に、獅子奮迅した時の『ティファはオレが守るー!』を再現してるのだ。
ティファもようやく、ガロードの意図に気付き、微かに頬を染める。
『でしたら、あの時の私は確か…』
ティファはピトッと、ガロードに密着する。
「そそそ、そう。こんな感じ」
「…はい、ガロード」
「こ…これでオレは、さ…最強無敵だっぜぇ」
…そんなわけは無い。
ガロードは完全に舞い上がって冷静さを無くしている。
ティファは今、自分が魔性の女になっているのに気付いてはいなかった。

この時の訓練結果は、当然ながら10戦全敗。
しかも瞬殺状態だ。
ガロードがこの後、ひどく凹んだのと、2人の甘々ぶりを見せ付けられたルナマリアが大暴れしたのは、また別の話である。
ただ、後に『シミュレータ抱っこ事件』と名付けられた、この件にいくつかの後日談があった事を追記しておく。
 
 <メイリンの場合>
「あの…艦長。次のシミュレータ訓練の時は…あたしを…ひ、膝の上に…あっ艦長!何故逃げるんですか!?艦長。アスラン艦長&#12316;!」
 
 <ハイネの場合>
「どうだい?アビー。今度のデートはシミュレータ訓練の時、僕の膝の上、というのは。」
「それで、あなたが『FATH』として恥ずかしく無いなら、私はお止めしませんが」
「……」
 
 <ウィッツの場合>
「へへっ、どうせ俺は餌マスターさ…」
部屋の隅っこでいじけるウィッツ。
「何よ。アタシが断わるって決まったわけじゃ無いでしょ!男らしくないわね」
「じゃあっトニヤ!俺の膝に乗ってくれるのか!?」
「勿論。断るに決まってるでしょ」
「ぐすん…」
 
 <シホの場合>
「た、隊長。シミュレータ訓練に、お…お付き合い下さい」
「シホか…うむ、ブルデュエルは兵装が多彩だから、練度を上げたいと思ってたところだ。対戦相手に付き合え」
「い、いえ…膝」
「おぉ!ブルデュエルは膝にも武装してるぞ。タップリ使ってやる」
「はい。お願いします(涙)」
 
 <ミナの場合>
「誰か、私を膝の上に乗せる勇者はおらんのかぁあっ!?」
自分で『勇者』とか言っちゃいますか…ミナ様。

 <サラの場合>
「キャプテン!」
「ん。何だ?サラ」
「いえ、何でもありません」
「そうか」
去っていくジャミルの背中にサラは心中叫ぶ。『…聞き直すくらいして下さい。キャプテン』

(おわり)
 
 
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