赤い翼のデモンベイン03

Last-modified: 2013-12-22 (日) 19:54:10

 出撃した直後、ムウより通信が入る

「キラ、そのドラムパックには2種類の特殊効果がある。

 ひとつはドクターウエストがオーブの装甲開発部門と協力して生み出した、ヤタノカガミ式新型展開装甲をまとうことができる。これは機動性を捨て去る代わりにあらゆる戦場にモビルスーツを送り込むことを目的としたものだ。重い鎧を着て敵の前まで突進すると言えば解るか。

 もうひとつはビーム撹乱幕を封入してあることだ。ストライクを高速回転させながら使用することで前進しながらの絶対無敵を保持している、ただし一回こっきりだ。

 あんまりアクが強かったんでオレは使えなかったんだが、お前なら大丈夫だ」

 親指を上げてサムズアップするムウ。使えなかったんじゃなくて、使いたくなかったんでしょうとは、言うだけ無駄なのでキラは涙と共に押し黙った。



「キラ・ヤマト、フリーダムに突貫します」

 すると今度は艦長からも通信が入る。

「キラ君、朗報よ、ZAFTが協力してくれるわ、ドミニオンからも核攻撃隊と3機のモビルスーツが援軍に来てくれる。勝てるわよ私たち」

 その報を聞いてさっきまでの悲しみは消えうせ、キラには心には希望が生まれてくる。

 図らずも生まれたZAFTと連合の協調。外敵という方法で結束したのは悲しいけれど、きっとそれは無為じゃない。



「はい、勝って来ます艦長」

 ドラムパックのヤタノカガミを展開させ戦闘宙域に移動するドラム缶。

 ………ドラム缶?

「って、ドラム缶になってるー!!?」



 なんということでしょう、スイッチを押した瞬間、あれだけ勇壮なストライクの姿は消えうせ、ドリルとロケットパンチ、申し訳程度にストライクの頭が付いている、黄金のドラム缶に変貌したではありませんか。まさに劇的ビフォーアフター、ストライクガンダムからサイコロガンダム、もといドラム缶ガンダムへの華麗なる転身です。



「質量保存は? 僕の数学は? 常識は何処に消えたの?」

 その言葉に反応したのか何故かコクピットに、

『漢ならユークリッド幾何学などに囚われるなであーる。』

 などと表示されている、すごいぞWESTROBO。

「もうどうとでもなれー」

 キラは啼いた。啼くしかできなかった。

 狭いドラムストライクのコクピットはキラの悲鳴で埋め尽くされた。



 フリーダムに近づくと、リベルレギスが交戦しているのが見えてきた。

 激しい砲火に攻めあぐねているようだが、防御陣を展開しながら僕を救ったフレイのようにフリーダムに突進している。

 と近づいて来たストライクを見て、演算をこちらにも裂いたのか、フリーダムの火線が一瞬鈍る。その勝機を逃がすまいと、リベルレギスが亜光速で敵の背後に出現し、絶対零度の手刀を繰り出す。

「ハイパーボリアゼロドライブ!」

 所詮人の乗っていない人形。三位一体たる我等に敵う筈なしと。

 絶対の自信を持って繰り出された必殺の一撃は、手刀の繰り出した右腕ごと消失した。

「なに!」

 それだけではない、右腕から術式がほどけてゆく、

「これは、魔術式を分解しているのか?」

「だから言っただろう、ベルデュラボー君?

 マスターテリオンなら、彼の魔人なら拮抗できたかもしれない。

 けれど君は人間なんだ」

「こう見えても私は神様ですので。神の模造品では勝てませんよ。

 最初に言ったと思いましたが、結局外道では真の外道を滅することは出来ないのです。

 己の無力を味わいながら漂っていると良いでしょう」

 

「おのれ───」

 ついにリベルレギスは消え去り、ベルデュラボーとナコト写本のみが残される。

 そこにフリーダムは文字通りの鉄拳を打ち込んだ。

「がは!」

 全身を強打され、吹き飛んでいくベルデュラボー。

 ここに神の裁きは下された。



「ベルデュラボーさん!」

 信じられない。あの絶対無敵を誇ったリベルレギスが戦うことすら許されないなんて。 

 救出しようとするストライクに、遥か遠い距離から雨あられとフルバーストが降りかかる。

 しかしヤタガラス式新型展開装甲、通称金のドラム缶に全ては弾かれる。

 いや無敵ではなく、レールガンよる攻撃はドラム缶に凹みを造っていく。

 暴徒に蹴られたかの如くへこみまくっていくドラム缶。一応フルバーストに耐えているのはすごい技術力だ。

「そこのドラム缶! 我々の盾になれ。スリップストリームで接近する」

 通信を入れたのはZAFTのイザーク・ジュールだ、アスランに代わり一時的にフリーダムと交戦する隊長になったらしい。

「わ、わかりました」

「俺らも混ぜろよ」

 とそこにカラミティ、レイダー、フォビドゥンが現れる。

「連合のヤク中部隊か」

 火に油をそそぐディアッカ。

「お前ウザい」

「挑・発」

「貴様等ふざけてないで、さっさと続かんかー!」

 激発する白オカッパ、しぶしぶドラム缶の後ろにつく。

「行きますよ、フリーダムの射線に入らないよう重なって付いてきてください!」

 キラの声で見事にフリーダムに対して一直線にならぶ5機、性格に難があるが腕は一流だ。



「突撃!」

 矢のように突進するドラム缶とそれに続くガンダムたち。

 傍目にはとてもシュールだ。





 迫り来るドラム缶に脅威を感じたのか、嵐の如くフルバーストを行うフリーダム。

 しかしドラム缶の底力は彼等ガンダムチームをフリーダムの目前まで運びきった。



「グレイトゥ!」

「消えてろよぉ」

 支援放火を行うバスターとカラミティ、フリーダムが回避運動に入った瞬間、

 接近戦を掛けるデュエル、レイダー、フォビドゥン。



「フリイィィィィダァムゥゥゥゥゥゥ」

「粉・砕」



 唐竹割りにせんとするデュエルのサーベルを、瞬時に抜き放ったサーベルで受け流し、反発を利用し機体半分移動してやり過ごすフリーダム。

 そのまま返す刀でデュエルの頭部を切断する。

 デュエルの斬撃に呼吸を合わせ放たれた鉄球は、ライフルを放棄した右手で、あろうことか手で受け止め完全に衝撃を吸収してしまった。

 だが今だレイダー優勢、フリーダム前方の射線に入らぬように側面に移動するレイダーにフリーダムはデュエルを薙いだビームサーベルを投げつけてきた。

 初めての攻撃に戸惑い、頭を串刺しにされてしまうレイダー。



 バスターとカラミティは、仲間を盾にする形で位置するフリーダムを狙えず、逆に盾を活用しながらフリーダムの肩の砲が光を放ち、バスターのミサイルポッド、カラミティのバズーカを持った右腕ごと粉砕する。



 その間隙を縫って、フォビドゥンがサーベルを持っていないフリーダムに鎌を振り下ろす、だが──

 フリーダムは無手のまま鎌を真剣白羽取りして、逆にフォビドゥンを蹴り飛ばす。

 衝撃に怯んだ隙に接近してゼロ距離からフルバーストを行い、四肢を吹き飛ばす。

 シャニはゲシュマイツィッヒパンツァーを生かす間もなく脱落した。

 もう手が無いと思われた瞬間ヤタノカガミをパージしたストライクが迫る。

 キラは禁断のバックパック発動ボタンに手を伸ばし、高速回転を始める。

 噴射されるビーム撹乱幕とフェイズシフトがフルバーストを寄せ付けず、左腕で右腕を抑えるような格好で竜巻のようにフリーダムに接近するストライク。

 やけっぱちで吼えるキラの前髪が跳ね上がる。

「これがぁーーー

 穿孔のォォォ

 ドリルゥジェノサイダーだあぁぁぁぁぁ」

 地味にロケットだったドリルは、フリーダムの頭部を完全に破壊し、裏拳気味に放たれたロケットパンチはフリーダムの胸に食い込み、高振動を始める。

 頭を吹っ飛ばされ、内部を砕かれ、装甲が剥離していく。そこを見逃す連中ではない。

 死んだフリをしていたイザークがフリーダムの右腕を間接から切り落とし。

 レイダーの鉄球が右足をもぎる。

 バスターの連結ライフルが左足を奪い。

 カラミティのスキュラが左足を溶解させた。



「勝った」

 全員がそう思った瞬間ありえないことが起きた。

 フリーダムの壊れた間接部からコードが延び、再生を開始したのだ。

「嘘だろ」

「いいから撃てよ!」

「抹・消」

「我、埋葬にあたわず」



 なんということか、全員のビーム放火で壊れながらも、フリーダムは再生していく、

 更に砲身を増やし、羽を増やし、装甲が複雑になっていく。

「もっと、もっと火力が」

 そこに救いの通信が入る。

「こちらピースメーカー隊だ!

 核攻撃を行う、全機退避しろ!」



 その声を聴いた瞬間、全機砲撃を行いフリーダムを釘付けにしつつ、全速でその場を離れる。

 核のマークの付いたミサイルが宙域に到達し、そこに人口の太陽が生まれた。



「グレイトゥ、これで化け物も終わりだぜ」

「そうだな、そうなる筈だ」

「綺麗だな、あれ」

「昇・華」

「めんどくせぇ仕事だったな」

「本当にこれで───」







つづく





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