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起動魔導士ガンダムRラストエピソード2

Last-modified: 2011-08-13 (土) 22:42:11

アースラの訓練室、そこでフェイトは十個ある訓練用ダミーを使った模擬戦を行っていた。
「てやぁー!!」
ダミーを次々と切り裂いていくフェイト。
「残り…3!!」
フェイトは残りのダミーにアークセイバーを放つ。バルディッシュから放たれた魔力刃はダミーを二つ破壊する。
「くっ!!」
フェイトは取りこぼしたダミーをフォトンランサーで破壊した。
『模擬戦は終了です、お疲れさまでしたー。』
局員の模擬戦終了の合図とともに、訓練室の電源が通常の状態にもどされた。

 

「どうしたんでしょうねあの子…いつもよりタイムが落ちている…。」
フェイトの戦闘をモニタリングしていた管理局員Bは以前のデータと今回のデータを見てふうっと溜め息をつく。
「知らないのかよお前、あの子が恋してる男の子が来週には帰っちゃうんだってよ。それで落ち込んでんだよ。」
「えっ!?あのPT事件のときの!?そうなんだ~、あの二人、あの事件に関っていた人達の間ではちょっとした有名人ですもんね。」
「うんうん、恋こがれている男の子ともうすぐ離れ離れになってしまう…あの子辛いだろうな~。」

 

模擬戦を終えたフェイトはシャワー室で汗を流していた。
(なにやってんだろ…私…。)
いつもより水圧を強める、まるで己の頭に浮かぶモヤモヤを打ち消そうとするように。
だがそのモヤモヤが消えることはなかった。
(シン…。)
モヤモヤの原因は、いつもそばにいてくれて、守ってくれて、自分が心底恋をしている少年、シン・アスカのことだった。
もう数日もしないうちに、シンはもといた世界に帰ってしまう。彼が家族と再会できるのはうれしいことなのだが、それと同時に自分とはもう会えなくなってしまうかもしれないのだ、フェイトはそれが寂しくてたまらなく、そして悲しくてしょうがなかった。
「はあ…行こ…。」
フェイトはシャワーを止め、脱衣所に向かった。

 

次の日、聖祥小学校。
「フェイト…最近元気ないわね…。」
机に座り溜め息をついているフェイトを見て、なのは、アリサ、すずかは心配そうに声をかける、ちなみにシンは今トイレに行っている。
「しょうがないよ、だってシン君ともうすぐお別れなんだから…。」
「う…うん。」
「最近フェイトちゃんヘンだよ、なんかボーっとしてるし、模擬戦も体育もなんかいつもより調子が出てないみたいだしね…やっぱりシン君の事…?」
「……うん。」
フェイトの様子をみて、なのは達は溜め息をつく。
「シン君もうちょっとで帰っちゃうのに、このままじゃいけないかな…。」
「そうよね、二度と会えなくなるかもしれないのに、悔いが残るような別れ方は嫌よねぇ。」
「ちゃんと告白しなきゃ死んでも死に切れないねー。」
「うん………。」
「あれ?いつもならここで恥ずかしがるのに…重傷なの…。」
「どうしたものか……そうだ!!」

 

数日後の日曜日、海鳴市の繁華街にある時計台の前で、フェイトは少しオシャレをしてシンと待ち合わせしていた。
「まだかな…シン。」
フェイトは約束の十時集合の30分前に来ており、かれこれ十分ほどシンの到着を待っていた。そこに、
「おまたせ~。」
身なりをいつもより整えたシンがやってくる。
「ごめんな~待たせちゃった?」
「ううん、私が早く来ちゃっただけだから。」
そして二人は仲良く並んで歩きだした、その頃、二人の十数m離れたケ○ッキーおじさん人形の影に…、
「こちらスターズ1、目標が動き出しましたオーバー。」
なのはとアルフ(人型)とフェレットモードのユーノが二人を監視しながらどこかと通信していた。
『了解、引き続き作戦を遂行してオーバー。』
通信の相手はエイミィのようだ。
『みんな悪趣味じゃないか?デートの監視なんて…。』
『ごめんなさいクロノさん…でも私達、フェイトちゃんの友人としてこのデートの成功を見届ける義務があるんです!!』

 

なぜこんな状況なのかというと、すずかが先日知り合いからもらった映画のチケットを二枚、フェイトに渡してこれでシンをデートに誘えと持ちかけたのだ。
フェイトは恥ずかしさを抑えながらももどってきたシンに話しかけ、本日のデートにこぎつけたのだ。シンのほうも先日のバレンタインデーのお返しにと、心良く彼女の願いを聞き入れた。

 

本部が設置されているハラオウン家には、アリサとすずか、エイミィにリンディが監視役のなのは達から情報を受け取っていた。
その光景を、クロノは呆れ顔で見ていた。
「はーいみんな、お茶もってきたわよ~。」
「「ありがとうございまーす。」」
「母さん!貴方までこんなことして!」
「あらいいじゃない、このまま二人の仲が進展して、うまくいけば…シン君私の息子になるのよ。」
「クロノ君、義妹の次は義弟だね。」
「二人とも…気が早いにも程があるぞ…。」

 

一方シンとフェイトは開演までまだ時間があるので街中をふらふらと散策していた。
「………。」
「………。」
お互い喋る言葉が見つからず、黙りこくったまま歩いていた。
(ふえええ…なに喋っていいかわかんないよ…。)
(これって…いわゆるデートだよな…思わずオーケーしちゃったけど…。)
二人の間に流れる重苦しい空気
(いつもならデスティニーに助けを求めるんだけど…。)
もって行こうとしたらリンディに取り上げられたのだ。
『デートにお邪魔虫はいらないでしょ?』
それが理由だった。
「シ…シン、そろそろ開演時間だね、そろそろ行こうか…。」
「う…うん。」
そう言うと二人は映画館の方へ向かっていった。

 

(んがー!!二人とも緊張しすぎなの!!)
(でもなんだか初々しいよね~、二人とも顔真っ赤だ…。)
(な…なのは、よかったら今度の休みに僕達も…。)
(シッ!二人が入っていくよ!)
(ホントだ!ユーノ君行くよ!)
(………。)
監視役の一人と二匹も後を追った。

 

映画館の上映室・・・
「ところでさ、今日見る映画ってどんなの?」
シンは買ってきたポップコーンをフェイトに渡す。
「えっと…戦争映画みたいだよ、『ラストリゾート』って言う戦争中敵同士だった男女が恋に落ちて愛を育む話だって。」
フェイトはパンフレットをみながらシンに説明する。
「ふーん、まあホラーでなければそれでいいけど…。」
「ふふふ…そうだね、あっそろそろはじまるよ。」

 

一方シン達の四段後ろの座席では、なのはと人型になったユーノとアルフが座っていた。
「アタシ映画なんて初めてだよー♪」
「もうアルフさん、目的忘れちゃだめだよ~。」
「シッ!始まるみたいだ。」

 

劇場の照明が落とされ、スクリーンに予告やコマーシャルが流れた後、いよいよ映画が始まった。

 

『今日から君達の隊長になる天田四郎だ!よろしくな!』

 

(うわ~、なんか暑苦しい主人公だな~。)

 

『お兄様の夢…私が叶えてみせる、見ていてくださいね。』

 

(ヒロインの人きれいだな…、私じゃここまでキレイになれないよ…。)

 

話は戦闘機乗りだった主人公とヒロインが海上でドックファイトを繰り広げ、海上に落下し、捨てられた軍艦にたどり着いて、お互い遭遇するシーンに突入する。
『連邦の捕虜になるくらいなら…殺しなさい!』
『何を言っているんだ、怪我をしている人は撃てないよ…それよりも二人で脱出する方法を考えよう…。』
『貴方は…。』

 

(すげえな主人公…敵の兵をあっさり受け入れた…美人だからか?)
(私だったらコロッっと落ちちゃうよ~…もしあの主人公がシンで、私があの綺麗な女優さんだったら…。)
フェイトはいつのまにか、映画の登場人物に自分達を当てはめていた。

 

一方、後ろのなのは達は・・・
「あの俳優さん、声が変装したときのリーゼさん達に似てるねー。」
(あ…!これはもしかしてなのはと手を握るチャンス!?)
なのはの右手側に座っていたユーノは緊張で汗ばむ手をズボンで拭きながら、手すりに置かれているなのはの手と自分の手を繋ごうとする、だが
「ふげー。」
退屈すぎて眠ってしまった左手側のアルフが、なのはの太腿にもたれ掛かるように寄り掛かってきた。
「うわ~アルフさん!おもい~!」
必死にアルフをどかそうとするなのは、一方ユーノはやり場のなくなった左手を一時停止の如く浮かしていた。

 

話は二人は無事、お互いの陣営に帰る事ができ、主人公は敵の中にも話がわかる人物がいるということを上官に話すが、裏切り者と罵られてしまう。

 

(ひどいなー、主人公はただ戦争を早く終わらせたいだけなのに…。)

 

一方ヒロインは、兄が開発した新型兵器のテストパイロットとなり、各地で多大な戦果をあげる。だが心の中では敵である主人公の事を想い、苦悩していた。

 

(すごく辛そう…私ならシンがいるかもしれないところに攻撃なんてできないよ…。)

 

そして二人は戦場で再び巡り会い、軍からの脱走を決意する。

 

『みんな聞いてくれ!俺は軍を抜ける!』

 

(うわ~!思い切ったことをするな~。)

 

『私はお兄様の操り人形じゃない!!』

 

(そうだよね…、自分の人生はだれのものでもないよね…。)

 

だがそこに、ヒロインの兄が二人を執拗に追いかけてきた。

 

『待て!愛奈を誑かす悪い虫めが!!!!!』

 

(うわー、しつこいアニキだな~、俺もマユにあんなことしたら嫌われるかな?)

 

そして見事兄を倒した主人公は、ヒロインと共に人里離れた山奥へ逃げ込んだ。

 

『もう戦争はゴメンだ…これからはいっしょに暮らしていこう…愛奈。』
『四郎…。』

 

(おーよかったよかった、あの大爆発でよく生きてたな~。)
(いいな…私もシンにあんなこと言われてみたい…。)

 

『愛奈…。』
『四郎…。』

 

(あれ?顔近づけたぞ?)
(え!?ももももしやこれは…!!)

 

スクリーンの中の二人は、お互いの唇と唇を重ねあわせた。

 

(うわー、息できてんのかあれ?)
(ディ…ディープキス…!!)

 

映画が終わり、劇場が明るくなる。
「うーん!終わった終わった!じゃあ飯食いに行こうか。」
シンは体を伸ばし、隣のフェイトに話しかける。
「そ、そうだね…。」
「ん?顔が赤いぞ?さっきのシーンでのぼせ上がったか?」
「へっ!?いやっ!そんなんじゃないよ!?」
シンの言っていた事は当たっていたが、フェイトはそれを全力で否定した。

 

『なのはちゃーん、そっちの様子どうー?』
「ごめんなさーい、寝ちゃったアルフさんを退けようとしたら映画おわっちゃった…ユーノ君も何故か固まってるし…。」
『なにやってんのよアンタ達は!!とにかく二人を追いかけなさい!!』
「怒んないでよアリサちゃ~ん、二人ともいくよ。」
「ふにゃ~もっと肉~。」
「アイアイサー………。」

 

劇場を出た二人は近くの喫茶店に入り、軽い昼食をとる。
「シン…最近リンディさんのとこでコソコソと何しているの?」
「ブホッ!?」
いきなりのフェイトの指摘にシンは飲んでいたホットコーヒーを噴き出してしまう。
「な…なんて事はないよ、コズミックイラがどうなっているか知りたいなーって思って…。」
「そうなんだ…。」
本当はスウェンと共にプレシアの過去を調べていたのだが、本当の事を言うとフェイトがあの辛い事件の事を思い出してしまうと思い、シンは嘘を言ってしまった。
(ゴメンなフェイト…。)
「この後どうする?特に予定は決めてないけど…。」
「そうだな…ショッピングにでも行く?」
「んじゃそれで…行こう。」
そう言うと二人は席を立った。

 

「あ!行っちゃう!!二人とも行くよ!!」
「あ~ん、まだこのフライドチキン食べてないよ~。」
(……アルフがいなければ…なのはと二人っきりだよな。)
ユーノの中になにやら黒いものが蠢いていた。

 

数分後、商店街にあるゲームセンター。
「おりゃおりゃおりゃ!」
「あ!あっちにライフ箱出てきたよ!」
シンとフェイトはゾンビが出てくるガンシューティングを楽しんでいた。

 

ボーン!

 

「あーやられたー。」
「ねえシン、こんどはあっちの格闘ゲームやってみようよ。」
「ああ、なんかスウェンと声が似ているルチャ使いが出てくるアレか。」

 

「こちらスターズ1、二人のデートは順調のようですオーバー。」
『りょーかい、引き続き監視を怠るなオーバー。』
「いや~最初はどうなるかと思ったけど中々いい感じじゃないか~。」
「ジュース買って来たよ…。」
「ありがとユーノ君、あっ!今度はUFOキャッチャーに向かった!!」

 

「なんだこれ~、全然とれね~。」
「貸して、今度は私がやってみる。」
フェイトはUFOキャッチャーのボタンを操作する。中のアームは丁度キツネの耳をつけた巫女服の人形を引っ掛けた。
「きゃー!!やったー!!」
「フェイトすげー!!…ところでこの人形なんだ?」
「背中の札に…『もふもふ久遠ちゃん』って書いてるね。」
「よかったなーフェイト、部屋に住人がまた一人増えたな。」
「うん♪」

 

「私もあの人形さん欲しいなー。」
うらやましそうに指を銜えて見るなのは。

 

キュピーン!!

 

そのとき、ユーノの目が謎の効果音を出して光った。
「そろそろ二人も行くみたいだ、追いかけるよ。」
「二人は先に行っていて、僕は後から追いかけるから。」
「そう…?早く追いかけてきてね~。」
そういうとなのはとアルフは、シンとフェイトの後を追いかけていった。
「さて…。」
ユーノは先程シン達が遊んでいたUFOキャッチャーに歩を進めた。

 

一方シン達は、人が賑うアーケードを歩いていた。
「すごい…こんなに人がいる…。」
「そういえばフェイトって山奥で暮らしていたんだよな…こういうのは珍しいかもな。」
「ねえ、あそこの人は何をやっているのかな?」
フェイトの指差す方向を見るシン、そこでは沢山のアクセサリーに身を包んだ若者が、シートを開いて多種多様なアクセサリーを売っていた。
「出店かな…ちょっと覗いてみるか。」
二人は若者の方へ近づき、シートに広げられているアクセサリーを物色する。
「おっ!二人とも兄妹?それとも恋人?」
「恋人!?」
若者の言葉に、激しく動揺するフェイト。
「じゃあこんなのどうだい?これは幸運を呼ぶペンダントと呼ばれててね~。」
「あ…!これ…!」
シンは若者に見せられたペンダントを見て驚く。
「お兄さん、これ貰ってもいい?」
「お!!買ってくれるの?ありがとうございまーす!!」

 

「シン?そのペンダントがどうかしたの?」
フェイトは先程シンが購入した綺麗な石のついたペンダントを見て、頭に?マークをうかべる。
「フェイトちょっとそこに座って…。」
シンはフェイトをベンチに座らせ、先程のペンダントをフェイトの首にかける。
「フェイトに…ハウメア様の御加護がありますように…。」
そう言ってシンは祈りを捧げるように手と手を合わせる。
「はうめあ?なにそれ?」
「俺の故郷…オーブを守る女神様の名前だよ…この石、オーブのお偉いさんが持っているのと似ていたから…、俺は傍に居れなくなるけど、代わりにハウメア様がフェイトを守ってくれるよ、ハウメア様は優しい子の味方だからな。」
「シン…。」
フェイトはシンの優しさが本当に嬉しかったのか、瞳を少し潤ませていた。
「シン……ありがとう……本当に嬉しい……大切にするね……///」
フェイトは顔を真っ赤にしながら、シンにお礼を言った。

 

ハラオウン家・・・
「し…シンったら…かっこいいじゃない…。」
「これはフェイトちゃんが惚れるのも無理ないね…。」

 

「………入っていけない…。」
クロノは盛り上がる女性陣と少し距離を置いて寂しそうにクッキーを頬張っていた。

 

二人は再び歩き出し、アーケード街を散策する。
「あ、これって…。」
フェイトはとある衣服店の前で歩みを止める。
「何見てんだ…?」
フェイトはショーケースの中に飾られている純白のウエディングドレスを食い入るように見ていた。
「綺麗…。」
「へー、ウエディングドレスか…。」
シンは大人になったフェイトがウエディングドレスを着ている姿を想像する。
(やべ…結構似合うかも…。)
ふと、シンはフェイトがショーケースに張り付きながらボーっとしていることに気付く。
「どうしたんだフェイト?具合悪いのか?」
「え…?な、なんでもないよー。」
「……?」

 

その数時間後、二人は夕日に染まった海鳴臨海公園にやってくる。
「ここで色々あったよね、なのはやクロノと戦ったり、リインフォースと戦ったり…。」
「そうだな、フェイト何回も海に落ちそうになっていたな、その度に俺が助けて…。」
「うん…。」

 

「うわー、すごいいい雰囲気なの!」
「ガンバレフェイト!」
一方なのは達は草むらに隠れてシン達を監視していた。

 

「本当に、色んなことがあったね…。」
フェイトはふと、下を向いて俯いてしまった。
「フェイト…?どうかしたのか?」
シンは元気のないフェイトを気遣って優しい言葉をかける。
「うん、実は…シンの帰っちゃった後の事を考えていたの。」
「俺がいなくなった後?」
「うん、母さんの時も、裁判の時も、闇の書の時も、私が辛い思いをしていた時、シンが励ましてくれた、だから私は強く生きれた、でも…シンがいなくなったら私、どうなっちゃうんだろう…。」
すると、フェイトはボロボロと涙を流し始めた。
「フェイト…!」
シンはどうしていいか解らず、ただただオロオロしていた。
その時、フェイトは勢いよくシンに抱きつき、彼の胸に顔を埋めた。
「私…シンと離れたくない!もっともっとお喋りして!もっともっと一緒に遊んで!一緒に模擬戦して!一緒にお仕事して!それで…!それで…!」
「フェイト………。」
シンはなにも言わず、フェイトを抱き返した。
「わたし…シンと…もっと…一緒に…いたいよぉ…いかないでよぉ…。」
今まで溜め込んでいたシンへの想いをさらけ出すフェイト。
「……まったく。」
シンは涙で濡れるフェイトの顔を優しく拭く。
「俺だって…フェイト達と折角仲良くなれたのに…離れるのはいやだ。でも…。」
すると今度はシンが泣き出した。
「俺…父さんや母さんに会いたい…マユに会いたい…だって、フェイトと同じくらい…大切だから…。」
「…!」
シンは望んでこの世界に来たわけではない、本当なら家族のもとで暖かく暮らしているのが普通の男の子なのだ。今まではフェイト達が傍にいてくれたから心は保っていたが、誰にも言わず家族に会えない寂しさを溜め込んでいたのだ。
「シン…ごめん、わがまま言って…。」
「いいんだよ、それにフェイトにだってアルフやなのは、それにリンディさんっていうお母さんやクロノっていうお兄ちゃんがいるだろ?アルフも、なのは達もいるし…フェイトは一人ぼっちじゃないよ。」
「シン……。」

 

「ひっぐ…えぐ…いい話なの…!」
「シン…アンタ…ホントにいい男だねぇ!」
『ちょっとぉ…あんた達泣いてんじゃないわよぉ…。』
『ふふ…アリサちゃんもね。』
『一人ぼっちじゃないか…フェイトちゃんの事、大切にしなきゃね。“お兄ちゃん”』
『そ、そうなるな…。』
『ふふふっ、私もお母さんとして頑張らなきゃね♪』

 

「そうだね…私は一人じゃない…皆がいる…。」
「そうさ、それに…俺はこれっきりにしたくない。いつかコズミックイラからマユを連れてきて、今度は三人で遊ぼう、いや…なのはやはやてやスウェン達も一緒に、花畑でピクニックとかいいなぁ。」
「うわあ、楽しそうだねぇ…なんかワクワクしてきた。」
二人は泣いていた事も忘れ、幸せな未来に想いを馳せていた。
「フェイトは…やっぱり執務官になるの?」
「うん、リンディさんへの恩返しもあるし、なにより…私みたいな悲しい思いをしている子を助けてあげたいんだ、シンやなのはが私にしてくれたように…シンは何になりたいの?」
「そうだな~、まだ漠然とだけど…皆を守れる男になりたいな、軍人とかいいかも。」
「そっか…じゃあシンが教官になったら、部下に魔法を教えるんだね。」
「面白いなソレ!俺の世界にも魔法が来たら、きっと面白いだろうな~。」
「そうだね…。」

 

「あ…そうだ。」
フェイトは付けていた黒いリボンを二つとも外しシンに手渡した。
「ハウメア様のお守りのお返し…これしかあげられないけど…。シンが私達の事、忘れないように…。」
「フェイト…。」
シンはリボンを取って綺麗な金のストレートヘアになって少し大人っぽくなったフェイトに、思わず心奪われる。
「お、おう…大切にするよ。」

 

「そろそろ帰らなきゃな…また一日が終わった…。」
「そうだね、お別れの日がまた近づいちゃったね。」
「うん、でもまだ数日あるんだ、だからもっともっと思い出作ろうな。」
「うん!」
「よーっし、じゃあ行こうか、今日の晩御飯なにかなー?リンディさんの手料理、もうすぐ食べれなくなるから、味わって食べなきゃ。」
日が沈む空の下、シンとフェイトは手を繋いで仲良く帰っていった。

 

「フェイトちゃんダイターンなの~!」
「さて、こっちも帰るか、あれ?だれか忘れているような…?」

 

ゲームセンター…
「お客様、他のお客様の迷惑になりますので…。」
「ま、待ってください!!もう二万もつぎこんで後には引けないんです!どうしてもこの狐ちゃんをなのはに…!」
「いや、ですが…。」
「待っててねー!なのは!」

 

帰り道での事、シンとフェイトは先程のウエディングドレスが飾られている衣服店の前を通る。
「ウエディングドレスか…私に似合うかな…?」
「似合うと思うぞ?まあ…その…フェイト…かわいいし…。」
「え?なにか言った?」
「な、なんでもない!」
シンは思いっきり首を何回も横に振る。
(ホントに似合うかな…?もし着る事になったら…相手は…。)
フェイトは顔を真っ赤にしているシンの横顔を見る。
(シンだったらいいなあ…私、シンのお嫁さんになりたい…。)
「…?フェイト今日はよく顔赤くしてんな、もしかしてまた風邪?」
「なんでもない!さ、早くいこ!」
「お、おい!手を引っ張るなよー!」

 

この数日後、シンはスウェンとノワールと共に、皆に暖かく見送られながらコズミックイラに帰って行った…。

 

コズミックイラ70、二月十四日
「それでお兄ちゃんはこの世界に帰ってきたんだ…。」
妹のマユに四年前自分が経験した事をすべて話し終える。
「うん、帰った時リンディさんが付いていってくれて事情を話してくれたんだけど…父さんと母さん泣き止まないんだもん、ホント困ったよ。」
「当たり前だよ!あの時は警察がいくら捜しても見つからなくて半分諦めかけていたから…お兄ちゃんが帰ってきてマユもお父さんもお母さんもホント嬉しかったんだから!」
「ははっ、ありがとな。」

 

「ねえお兄ちゃん、マユもフェイトさん達に会いたいな…。」
「そうだな、時空間が安定すればもしかしたら会えるかもしれないけど…。」
「お兄ちゃんはフェイトさんに会いたい?」
「そうだな、会いたいかな…今頃アイツ等何してんだろ?フェイト…執務官になれたのかな…?」
「きっとなれてると思うよ、もしかしたら仕事とかでこっちにくるかもね、マユ、フェイトさんと沢山お話したいな~。」

 

シンはポケットから小さな箱を取り出し、蓋を開ける。
中には四年前シンがフェイトから貰った黒いリボンが入っていた。
(フェイト…アルフ…皆…俺、皆に会えて良かったよ、またいつか会おうな、そして俺も…。)
その時、シンの父親が慌てて帰宅して来た。
「シン!マユ!」
「どうしたの父さん?そんなに慌てて…?」
「て…テレビを付けなさい!大変な事になってるぞ!」
父に言われるがまま、マユはリモコンを操作してテレビを付ける。
テレビには、慌しく喋るキャスターと共に破壊されたコロニー…ユニウスセブンが映し出されていた。
「父さん、これ…!?」
「地球軍が…ユニウスセブンに核攻撃を行ったんだ、20万以上の人がいたのに!このままでは…戦争になるぞ!」
「せ…戦争…!?」
「お兄ちゃん…。」

 

シンはこの時はまだ知らなかった、将来自分に過酷な“運命”が待ち受けているという事に、そして

 

フェイトと、敵同士になるということも。