起動魔導士ガンダムR_04話

Last-modified: 2011-08-13 (土) 22:05:33

「くっそー!出せー!」
ガンガンと扉を叩くシン、あれから数日、アースラに連行されたシンは拘置室に閉じ込められていた。ちなみにデバイスは取り上げられている。
「うるさいぞ!静かにしないか!」
扉の向こうから見張りの局員の怒声が聞こえてくる。
「くそっ!」
扉に拳を叩きつけるシン。
「こんなことしている場合じゃないのに…!」
早くフェイトの元へ向かわないとまたプレシアに酷い事をされるかもしれない、シンの焦りは募るばかりだ。
「…このドア体当たりで開かないかな…。」
そう言ってシンは助走をつけるため部屋の端まで移動し、
「うおおおおおおおおぉぉぉぉお!!」
ドアに突進していく、その頃扉のむこうでは…
「彼に用がある、開けてくれないか。」
「ハッ!了解しましたクロノ執務官。」
クロノに促され局員は扉を開ける。
「艦長がお呼びだ、出ろ……!?」
「わっ!?急に開けるな~~~!」
シンは急に止まれずそのままクロノと衝突してしまい、シンはクロノの上に重なるように倒れた。
「うう…。」
「お…重い…。」
「あーあ、何やってんだか…」
クロノについてきたアースラの通信士エイミィはその光景を見てやれやれと溜め息をついた。

 

「なるほど、君の事情はよくわかったわ。」
アースラブリッジ、そこでシンは今までの事を艦長であるリンディに話していた。腕には手錠のようにバインドが掛けられている。
「コズミックイラ……、大量の質量兵器や遺伝子を改良して人類が宇宙に進出している文明レベルの高い世界だけど…それ故危険で渡航が制限されている世界ね。」
「…?俺のいた世界の事知ってるの?」
「ええ、本局にデータがあったわ。座標も解っているしこれなら君をすぐにでも家族のもとへ帰してあげられるわ。」
「アンタら…一体何者なんだ?」
「君!艦長にアンタとはなんだ!」
「クロノ落ち着きなさい、そうね、まずは私達の事を教えてあげるわ。」
リンディは自分たちは時空管理局という時空犯罪の取り締まりやロストロギアと呼ばれる危険物の管理を行っている組織で、ジュエルシード回収のため海鳴市を捜索していたところ、なのは達やフェイト達を見つけたのだという。
「そんな組織があったなんて…、ところで俺と一緒にいた女の子……フェイトとアルフはどうなったかわかりますか?」
「情報によれば…彼女達はあの後ジュエルシードを二つ集めたらしい、なのは達は三つ集めたからあと六つだな。」
彼女らが元気そうだというのが判り、シンはほっと胸を撫で下ろす。
「あの…俺はこれからどうなるんですか?」
「そうね…ちゃんと親元に帰してあげる。彼女達は私達にまかせて。」
「そうですか…。」
あんなひどい親のもとにいるよりもこの人達に保護されたほうがいいかもとシンは思った。
「フェイトちゃんが心配?」
「うん、すげー心配。」
「うわっ、言い切った!男の子だね~。」
「エイミィ、よさないか。」
「?」
その時、艦内に警報が鳴り響いた。
「どうしたの!?」
「捜査区域の海上で異常な魔力反応をキャッチ!!」
「スクリーンにだして!」

 

巨大なスクリーンに映し出されたのは、嵐の中六つの突き上げる海流に翻弄されているフェイトだった。
「フェイト…!」
「なんとも呆れた無茶をする子だわ!」
「あれは個人で出せる魔力の限界を超えている…、このままでは自滅するぞ!」
その時、なのはと見知らぬ少年がブリッジに入ってくる。
「遅くなりま…!?」
「あ!お前は!」
シンはなのは達の姿を見つけ睨みつける。しばらく続く沈黙、だがスクリーンに映っているフェイトをみて、
「今は現場に向かうのが先だね。」
「ああ、話はそれからだ。」
意見が一致しブリッジを出ようとする。だがクロノに呼び止められてしまう。
「その必要はないよ。放っておけばあの子は自滅する、仮にそうならなくても力を使い果たしたところを叩けばいい。」
「叩くって…アイツらは…。」
「局員への攻撃や今まで行っている魔法による危険行為…、逮捕の理由には十分だ。」
「今のうちに鹵獲の準備を。」
スクリーンをみるとフェイトはボロボロになりながらも必死で暴走を押さえ込もうとしている。
「残酷に見えるかもしれないけど私達は常に最善の選択をしなければならないの。」
リンディの言葉に俯いてしまうなのは。だが
「ふざけんな!」
シンの叫びに驚いてその場にいた者は全員シンに視線を向ける。
「これがあんた達の“なんとかする”なのかよ!!」
「彼女はすでにこちらの警告を無視している!然るべき裁きを受けるべきだ!」
クロノが反論する。だが、
「フェイトは…ただ母親のためにがんばっているのに…どうしてみんなフェイトをおいつめるんだ…!?」
シンの凄まじい威圧感に圧されてしまう。
「シン君…!」
気が付けばシンは泣いていた。そのとき、
『行って。』
『!?』
『ユーノ君!?』
先程なのはと一緒に来ていた少年がシンとなのはに念話で語りかけてきた。
『僕がゲートを開くから言ってあの子を…』
『ユーノ君…でも私がフェイトちゃんと話をしたいのは…』
『僕には関係の無いことかもしれない、でも僕はなのはが困っているなら助けてあげたいんだ、なのはが僕にそうしてくれたように…。』
『ユーノ君…ありがとう。』
『サンキュー、どこの誰だか知らないけど。』
そしてなのはは転移装置に向かう。
「待て!君達は…!」
止めようと駆け出すクロノ、だが
「うわあ!?」
シンに足を引っ掛けられ前のめりに転んでしまう、そしてその拍子にクロノの服からビー玉のようなものが転がり出てくる。
「なんだ、お前がデスティニー持っていたんだ。」
シンはデスティニーを拾い上げてなのはのもとへ行く。
「ごめんなさい!高町なのは命令を無視して勝手な行動をとります!」
「シンアスカ、アンタらのやり方が気に入らないので脱走します!」
「あの子の結界内へ、転送!」
少年の転移魔法により二人はフェイト達のもとへ転送されていった。

 

上空、雲をかき分けるように落ちてゆく二人。
「レイジングハート!セーットアーップ!」
白いバリアジャケットに身を包むなのは。
「シンアスカ、デスティニー、いきます!」
シンの右手に大剣アロンダイトが握られ、背中には紅の翼が現れる。

 

一方その頃フェイトは六つのジュエルシードを封印するため海流相手に悪戦苦闘していた。
「きゃあ!」
「フェイト!」
ジュエルシードの暴走は激しく、フェイトは何度も何度も吹き飛ばされてしまう。
「無茶だよフェイト!こんなの私達だけじゃ…。」
「それでもやらなきゃ…それに…!」
これだけのことをすれば管理局も来る、そうなればシンがあれからどうなったか聞き出せるかもしれないとフェイトは考えたのだ。
「だから…退く訳にはいかないんだ!」
そう言ってバルディッシュを強く握り直す、だが突然の突風によりバランスを崩しフェイトは海面に真っ逆さまに落ちていく
「フェイトー!!」
「くっ…!」
もう防御したり飛んだりする魔力はフェイトには残っておらず、彼女はぎゅっと目をつむった。その時。
「フェイトーーーーー!!」
「え…!?」
上空から効きなれた声がしたと思うと、フェイトは海面に激突する前に助け出された。フェイトは瞳を開け自分を今抱えている者の顔を見る。
「シン…!」
「大丈夫か!?フェイト!」
シンはフェイトを安全なところまで連れて行き、一度降ろす。
「このバカッ!無茶ばっかしやがって…!?」
シンの説教は突然フェイトに抱きしめられたことにより中断する。
「バカはシンだよ…あんな無茶をして…私…どれだけ不安だったか…。」
フェイトはシンの胸の中で泣いていた。
「わ…悪かったよ、だから泣くなって…。」
そんな彼女の頭をシンは優しくなでる。
そこにアルフが駆け寄る、だが、
「あっ!アイツら…!!」
こちらに向かってくるなのはと知らない少年の姿を見つけ、臨戦態勢をとる。
「まってくれ!今は戦いに来たんじゃない!」
「え…!?」
「ジュエルシードをあのままにしておくと大変なことになるんだとよ。」
少年の代わりにシンが説明する。
「だから…。」
なのはのレイジングハートからフェイトのバルディッシュへ魔力が分け与えられる。
「みんなでがんばろう!」
そう言うとなのはは嵐の中へ入っていった。
その姿を黙って見送るフェイト。
「不思議な奴だよな…そうだ。」
シンはバルディッシュを握っているフェイトの手を取り、
「なのはのだけじゃ心もとないから…俺のも使えよ。」
そう言って自分の魔力を流し込んだ。
(あれ…?なんだろう、この感じ…)
「よっし!それじゃいってこい!」
シンの言葉にフェイトは黙って頷き、なのはのもとへ飛び立っていった。
「…よし!俺達もやるか!」
アルフと少年は力強く頷いた。

 

「せーのでいくよ!フェイトちゃん!」
なのはとフェイトは上空で封印の準備に取り掛かっていた。下ではシン達がバインドで突き上げる海流を抑えている。
「ディバイン…」
「サンダー…」
フェイトはなのはに合わせてバルディッシュを構える。
「バスターー!!」
「レイジーー!」
同時に放たれる桜色と黄色の光、そしてあたりに魔力の衝撃波が起き、それが止むと六つのジュエルシードが浮かんでいた。
なのはとフェイトはその六つのジュエルシードを見つめていた。
そしてなのはは胸に手を当て、口を開いた。
「友達に…なりたいんだ…。」

 

その言葉に驚くフェイト、その光景を見守るシン達、だが、
「あれ…?空が…?」
上空の雲が通常ではありえない色でうなりをあげているのにシンは気付く。
「まずい!みんなにげろ!」
「えっ…!?」
「シン…!?」
だが一足遅く空から赤紫色の雷がなのはとフェイトを襲う。
「きゃあ~~!」
「母さん…!?」
おびえる様にフェイトは空を見る。
「フェイト!危ないっ!」
雷からフェイトを守ろうと彼女に飛びつくシン、しかし、
「うわあー!」
「きゃああー!」
二人とも雷の直撃を受け、力なく落下していった。
「ちぃ!」
アルフは空中で二人を受け止め、ジュエルシードに手を伸ばすが、
「させるか!」
突然転移してきたクロノにあともう少しというところで三つ取られてしまう。
「う…うわあああーー!!」
残りの三つを手に入れたアルフは海面に力いっぱい魔力弾を打ち込み、発生した水しぶきを目くらましにその場から撤退していった。
「くそっ!逃げられたか!」
(フェイトちゃん…シン君…)
なのははただその光景を呆然と見ているしかなかった。

 

「シン…シン…。」
「う…アルフ…?ここは…?」
アルフに起こされ目をさますと、そこは時の庭園だった。
「…!?フェイトは!?フェイトはどうなったんだ!?」
「静かにしな…今アンタの隣で眠っているよ…。」
隣を見てみると、そこには寝息を立てて眠るフェイトがいた。
「はあ…よかった…。」
「まったく…フェイトったらシンを見つけるんだって聞かなくてさ…ここ数日働き詰めだったんだよ…。」
「そうだったのか…ごめん…ありがとう…アルフも…。」
「よ…よしとくれよ…なんか照れるじゃないか…。」
頬を赤らめ微笑むアルフ。
「…さっきの雷は…プレシアさんがやったんだな…。」
「…ああ。」
シンは立ち上がろうとするがアルフに止められる。
「シン、どこへ行く気だい?」
「決まっている、プレシアさんのところだ…!もうこんな事許しておけるか…!」
「まあ待ちなって、ちょっとアタシの話を聞きな。」
アルフは眠っているフェイトの頭を撫でながら静かに語り始めた。
「この子はね…昔から感情表現がうまくなくてね…母親があんなのだし、世話をしてくれたリニスもどこかへ行っちゃうし…、どっちかというと根暗な子だったんだ…。」
「え…?」
「でもね、シンに出会ってからフェイトすごく変わったんだよ、あんなに怒ったり泣いたりするフェイト初めて見るよ。」
「…」
「私にもよくわからないけど…私に出来なかったことをシンはやってのけたんだ。本当にありがとう。」
「そんな…礼なんて…。」
「だからさ…これからもさ…」
「!?」
突如シンの腹部に重い衝撃が走り、彼は意識を失う、だがその直前、
「フェイトの事…守ってあげてね…」
どこか寂しげなアルフの声が聞こえた。

 

数分後、時の庭園に轟音が鳴り響いた。
そして眠っているシンとフェイトのもとにプレシアがやってくる。右頬は少し腫れており口元からは一筋の血が流れていた。
「思ったよりてこずったわね…。あの使い魔、この出来損ないとコーディネイターのためによくやるわ。」
そして寄り添うように眠るシンとフェイトを見据える
「まあいいわ、ジュエルシードさえ揃えてさえくれれば…それに彼女がもう一人送り込んでくれるはず…、もうすぐよアリシア…。」
そしてプレシアは静かに、そして狂ったように笑っていた。