起動魔導士ガンダムR_08話

Last-modified: 2011-08-13 (土) 22:08:47

P.T事件から数週間後、海鳴臨海公園
なのはとフェイトはそこで海を見ながら語り合っていた。
「あははは……いっぱい話したい事があったのに……フェイトちゃんの顔を見たら忘れちゃった。」
なのははフェイトと久しぶりに会い、緊張と嬉しさで胸が一杯だった。
「そうだね……私もうまく言葉にできない……だけど嬉しかった。」
「え?」
「私みたいな子に…まっすぐ友達になりたいって言ってくれて……だから返事をしたいと思ったの。」
「フェイトちゃん……。」
そう言うとフェイトは気恥ずかしさで顔を少し赤らめ、そして勇気を振り絞って言った。
「私……君と友達になりたいんだ、それで……君の事『なのは』って名前で呼んでも……いいかな?」
「フェイトちゃん……!!」
なのははフェイトに初めて名前で呼ばれて嬉しさのあまり彼女に抱きつく。
「いいよ…!!いくらでも呼んで……!その方が私…とっても嬉しいから!!」
「うん……なのは…。」
フェイトもなのはを抱き返す、その顔はなのはと友達になったのだという喜びでとても穏やかな笑顔になっていた。

 

「フェイトー、なのはー。」
そこにクロノとアルフとユーノ、そして眼鏡をかけた管理局の制服を着た女性に、乗っている車イスを押されているシンがやってきた。
「シン!アルフ!」
嬉しそうにフェイトはシン達の方を見る。
「どうだった?なのはとは友達になれたか?」
「うん、シンの言う通りだったよ。ありがとうシン。」
「ほーら見ろ!何も心配なかったじゃんか!俺に対して名前で呼んでるようになのはにも言ってあげたら……なのはなら絶対フェイトと友達になってくれると俺は思ったんだ!」
フェイトはここに来る前、不安だったのでどうやったらなのはと友達になれるかシンに相談していたのだ。
「うん、シンの言う通りだったね……。」
「シン君がアドバイスしてくれたんだ……ありがとうシン君!」
「いいよ別に……ていうか俺も名前で呼んでくれるのか。」
「うん!だって私、シン君とも友達になりたいんだ!」
そう言うとなのはは自分の左手を差し出す。
それに応えるようにシンも左手を差し出し二人は固く握手する。周りはそれを暖かく見守っていた。そして、

 

「そろそろ行こうか?シン君?」
シンの車イスを押していた女性に声を掛けられる。
「あ、はい、わかりましたレティさん。」
「シン……行っちゃうんだね……。」
フェイトとアルフはとても寂しそうにシンを見る。
「俺はミッドチルダってところでリハビリと保護観察だからな……みんなとはしばらく会えないんだよな……でも……。」
シンは寂しいという気持ちがみんなに悟られないよう、とびっきりの笑顔を作る。
「もしフェイトが……みんながどうしようもないピンチだったら超特急で駆けつけるよ!だって……みんな俺にとってこの世界で出来た大切な友達だから!大切なものはやっぱり守りたいから!」
「シン……!」
嬉しそうに笑っている者、照れ隠しにそっぽを向くもの、目を潤ませている者、そして暖かな視線を送る者、反応はそれぞれだ。
「じゃあ……そろそろ行くな……。」
シンとレティの足元に魔法陣が展開される。
「シン君!今度私の友達を紹介するからね!」
「今度会ったら君がいた世界のこと、聞かせてくれ!」
「次は負けない……覚悟しておけ!」
「フェイトを……笑顔にしてくれてありがとう!!」

 

「シン……私、ちゃんと伝えたい事があるんだ…だから…またね!」
「アルフ!なのは!ユーノ!クロノ!また絶対会おう!フェイトも……ホントにありがとう!!」
再会の約束とフェイトへのお礼の言葉を残し、シンは転送されていった。

 

「行っちゃったね……。」
「ああ……僕らも名前で呼んでくれたってことは……。」
「友達として認めてくれたってことか……まあ悪い気はしないな…。」
「フフフッ、照れちゃって~。」
「じゃあ……私達も行くね……。」
「うん……フェイトちゃん、シン君にちゃんと告白できたらいいね。」
「うん……ちょ#$%&ゅ@!?」
いきなりのなのはの指摘に、フェイトは驚いて聞き取り不可能な声をあげてしまう。
「どどどどどどどうしてなのはが私がシンを好きだってこと知ってるの!!?」
「いや……あれだけわかり易いリアクションをしていれば……アースラのみんなはもう知っているぞ?」
「いいなーシン……僕もなのはと……。」
「え!?そうだったのかい!?フェイトはシンのこと好きなのかい!?どーりで……。」
「うわ~やめてアルフ~そんな大声で~~!」
「フェイトちゃん顔がトマトみたいなの~」
海鳴臨海公園にとても楽しそうな笑い声が響いていた。

 

そのころシンとレティ
「いいもん見たわ…シン君?」
レティはシンが泣いている事に気付く。
「うう……うええええ………。」
「…涙を見せまいと必死で我慢してたのね……やっば、もらい泣きしてきた。」
レティは仕事であまり会えていない息子のことを思い出していた。

 

これは、決して出会うはずのなかった小さな男の子と、小さな女の子の出会いの物語。
これは、決して出会うはずのなかった子供達の友情の物語。
これは、数多の世界を駆ける魔法使い達と、数多の星の海を駆ける機械人形を駆る騎士達の織り成す物語の、最初の物語。

 

御伽話はまだ、始まったばかり。

 
 

外伝