運命と最強_第15話

Last-modified: 2007-11-19 (月) 13:32:05

「お前は・・・誰を泣かしている・・・答えろ!リインフォース!!」
カナードの問いに沈黙するリインフォース。
「カナード、これには(貴様は黙っていろ」
シャマルが事情を説明しようとするが、拒否をするカナード。
「・・・・主はやてを守るためだ・・・私が生き続ければ、再び狂った防御プログラムを生成してしまう」
リインフォースは立ち上がり、カナードを見据え答えた。
「ほう・・・その『狂った防御プログラム』が生成されるのは何時だ?」
「何?」
「その『狂った防御プログラム』とやらが生成されるのは何時だと聞いている、明日か?明後日か?」
カナードの問いに沈黙するリインフォース、そして
「私にも分からない・・・・だが、今すぐ出ないことは確かだ」
リンフォースの回答に、しばらく沈黙するカナード、そして
「馬鹿か・・・・貴様は」
「何・・・」
カナードはリインフォースを睨みつけながら答えた。
「馬鹿者が!貴様はただ逃げているだけだ!」
「・・・・なんだと・・・」
リインフォースはカナードを睨むが、構わずカナードは言葉を続ける
「お前は何の努力もせず、一番簡単で、なおかつはやてを悲しませる方法を取ったに過ぎん!
『主はやてを守るためだ』か・・・・詭弁だな!貴様の自己満足にすぎん!!」
カナードの言葉に沈黙するリインフォース、その時、カナードの側に転送用魔法陣が展開され
ユーノとプレアが現れた。

 

「エイミィさん、ありがとうございまず」
アースラーのブリッジで二人の転送を行ったエイミィにお礼を言うプレア、その時
「どうやら、カナードと二人は間に合ったようだな」
クロノがブリッジに入ってきた。
「クロノ、一体どういうことなの?」
クロノに問いただすリンディ、
「艦長・・いえ、母さん・・・これからプレアが話すことを・・・よく聞いてください・・」
母を見据え、クロノは答えた。

 

「さて、これからプレアが説明と説教をしてくれる。頼むぞ」
そう言い、カナードは後ろに下がり、その代わりプレアとユーノが前に出た。
「よかった・・・・間に合って・・・」
心から安心したのか、笑顔でリインフォースを見据えるプレア。
「お前達も・・・私を止めに来たのか・・・・」
プレアに尋ねるリインフォース
「はい。貴方を、止めにきました」
そう言い、プレアは懐から、一枚のカードを取り出した。
「なんだ?それは」
取り出したカードについて尋ねるリインフォース
「これは・・・・未完成品ですが、闇の書・・いえ、夜天の書の修復プログラムです」
プレアの言葉に、ユーノとカナード、クロノ以外の全員が驚いた。
「なん・・・・・だと・・・・どこでそれを・・・」
驚き、その出所を尋ねるリインフォース
「これは・・・無限書庫で見つけました・・・・これから、僕が見たことを話します」
プレアは話す・・・・自分が見た光景を・・・・

 

「僕は、リインフォースさんに取り込まれている時に、ある映像を見ました・・」
しばらく間を空けるプレア・・・・そして・・・
「率直に言います。以前の・・・・10年前の夜天の書の主は・・・時空管理局とつながりがあったんです・・・」

 

「なん・・ですって・・・・」
リンディはただ驚くことしか出来なかった。
10年前の闇の書事件、それはクロノの父であり、リンディの夫であるクライド・ハラオウンが殉職した事件だった。
プレアの言葉が事実ならば、10年前のその忌まわしい事件に管理局が関わっていたことになる。
「クロノ君・・・・これって・・・」
エイミィが動揺を隠し切れない瞳でクロノを見据える
「・・・事実だ・・・正確には一部の上層部の連中だけどね・・・・」
エイミィを見据えながら答え、そしてモニターに目を向ける。

 

「夜天の書の力はとても危険でした。今までの主は、私利私欲を満たすためにその力を使い、沢山の不幸を撒き散らしました・・・・」
プレアの言葉に黙って耳を傾ける一同
「ですが、その力に魅力を感じていた人もいました。・・・・管理局の一部の上層部の人達です。
本当は・・・彼らは、早い段階で夜天の書の主を捜し当てていました」
プレアは顔を伏せ、手を握り締めた。
「ですが・・・・彼らは・・・主を捕まえるのではなく、和解を求めるのでもなく、協力を申し出たのです。
『ある程度のことには目をつぶるから、真の主になったら、その力を我々の下で振るえ』と」

 

プレアの言葉にヴォルケンリッターの騎士達は驚きと同時に、納得をしていた。
以前・・・10年前の活動時期は、途中から妙に管理局などの邪魔が入らず、効率よく収集を行うことが出来ていた。
当時の管理局の上層部が事前に手を回していたのなら、この不信感も納得がいった。

 

同時に、アースラーでプレアの話を聞いていたリンディも否応無く納得をしていた。
10年前の闇の書事件は、管理局が後手に回ることが多く、犠牲者が増える一方であった。
当時の上層部が情報操作などの裏工作を行っていたのなら納得がいく話であった。

 

「続けまず、当時の夜天の書の主は、元々は古代ベルカ関係の考古学者でした。
以前は管理局にも在籍して、ロストロギアの研究などにも携わっていたのです」

 

管理局では、押収したロストロギアを研究・解析し、完全に解析が終わり、危険性が無かった場合は
貸し出したり、一戦力として使用することがある。
だが、解析が完全に不可能だったり危険性がある場合は、即座に厳重封印、もしくは破壊すると言う決まりがある。

 

「その彼が、偶然夜天の書の主になりました。彼は、力と同時に考古学者の欲なのでしょうか、完全な夜天の書を求めたのです。
彼は今までの闇の書事件から、夜天の書が壊れていて、近いうちに主を喰い尽すことを知っていました」

 

実際、夜天の書が最終的に主を喰い尽すという事実は、マスタープログラムであるリインフォースしか知らない。
ヴォルケンリッターは記憶を転生のたびに消されているのか、その事実は知らず(ヴィータは不信感を抱いていた)
なのは達も、ユーノによる無限書庫での調査でその事実を知った。(グレアムは知っていたようだが)

 

「夜天の書の完全な完成を目指す彼にとっても、時空管理局の協力は願ってもないチャンスだったのだと思います。
そして彼は、未完成ですが、夜天の書の修復プログラムを作ることに成功したのです」
プレアは持っているカードを見据えながら、話を続けた。
「ですが、そのことを知った当時の上層部は彼を封印しようとしました。『修復プログラムさえあれば、あとはどうとでもなる』と思ったのだと思います。
彼も自分が無事ではすまないと思っていたのだと思います。その保険として、修復プログラムと当時の上層部が関わっていた証拠を
このカードに記録、一冊の本に偽装して無限書庫にしまったのです。ですが・・・・」
「その気になれば探すのは簡単だから、安全性・・自分達の安全だな・・を確保するために有無を言わさずに封印を遂行した・・か?」
カナードの言葉にプレアはうなずいた。
「そういや・・・・10年前のあの時も・・・管理局の大部隊があたし達を待ち伏せしてたな・・・」
ヴィータは思い出した。10年前のあの時、待ち伏せていたかのように管理局の大部隊が現れ、戦ったこと。
数で押され、追い詰められたとき、急にシグナム達が消え、自身も意識がなくなったこと、
今思えば、自分達のコアを使って、無理矢理闇の書を完成させたのだと思うヴィータ。

 

「自らの危険を感じた当時の主は、ヴィータちゃん達のコアを使って無理矢理完成させました。ですが、修復プログラムは未完成品のうえ、
時間が無かったため、修復を実行してなかった夜天の書は暴走、そして・・」
「結果・・・あの・・・悲劇につながる・・・・・か・・・」
リンディは、モニターを見ながら呟いた。
「当時の主を封印した後、連中は沈静化した闇の書に修復プログラムを使おうとしたんだろう。だが、当時の主は手掛りとなるものを事前に消去していた。
手掛りが無い以上、探し出すことは出来ずに暴走。灯台下暗し・・・まさか本局に中にあるとはね・・・」
クロノは腕を組みながら呟いた。

 

「なぜ・・私は、そのことを憶えていなかったんだ」
自分の記憶には全くないことに疑問を抱くリインフォース
「主が故意に消したのだと思います。おそらく、万が一暴走し転生した場合、次の主に自分の成果を知られたくなかったのではないでしょうか?」
「だが、記憶の一部は残留し、その映像をプレアは偶然見た、ということか・・・」
カナードが補足をした。

 

プレアの話が一区切りしたのを見越し、ユーノが話し出した。
「正直に言います。時間が無かったから簡単に調べただけだけど、これは未完成で、貴方を完全に修復することは出来ません。
これを完全に完成させることは出来るかもしれないけど、一年や二年という時間じゃ完成しない・・・」
ユーノの言葉にプレア、クロノ以外が沈黙する。
一年や二年、『狂った防御プログラム』が生成されるには十分な時間である。
「じゃあ・・・やっぱり(だけど」
ヴィータの言葉を遮り、話を続けるユーノ
「だけど、守護騎士プログラム生成に関しての項目が完璧に整っています。管制人格(マスタープログラム)である
貴方を破壊しても、シグナムさん達同様、一人の守護騎士として存続させることが出来ます。ただ・・」
ユーノは俯きながら
「主と肉体・精神の融合を果たすことで主の魔法の手助けとなる「融合型デバイス」としての機能はなくなってしまいます。
はやてちゃんに魔力や蒐集行使のスキルを引き継いで残すことは出来ますが」
「我らのように守護騎士となるからな・・・ということは・・・主とユニゾン出来なくなるということか・・・・」
ザフィーラの言葉にリインフォースは沈黙する。
「いーじゃんかよ!生きてりゃ!それにリインフォースは普通でも滅茶苦茶つえーんだし!」
ザフィーラの言葉に反応するヴィータ。
「私は・・・・リインフォースがいてくれるんなら・・・それでええ!」
はやては涙目でリインフォースを見据えるが、リインフォースは俯き
「ですが・・・私は・・・烈火の将達のように主を守ることは出来なかった。私は、主を殺めることしか出来なかった。
そんな私が・・・生きながらえるなど・・・・」
俯きながら話すリインフォースに
「・・・・・僕の話を・・・聞いてくれますか・・・・」
プレアは静かに語りだした。

 

「・・・・僕は・・・・クローンなんです・・・・」
プレアの突然の発言にカナード以外の全員が驚く。
「僕の、この高い能力空間認識能力は、僕の世界のある兵器を使用するのに必要不可欠でした」
プレアの言葉に黙って耳を傾ける一同
「ですが、この兵器を使いこなせたのは、僕のオリジナルの人物でした。その力を欲した軍が作ったクローン、
それが・・・・・僕です。ですが・・・僕は兵器として生きるのは嫌でした」
プレアはリインフォースを見据え
「リインフォースさん、貴方は『主を殺めることしか出来なかった』といいましたよね、それは絶対に違います!
あなたは主を殺めるために生まれてきたのでは無い筈です。それが嫌だったから、涙を流したのではないのですか」
プレアの言葉に反応するリインフォース
「戦闘での出来事はユーノ君達から聞きました。リインフォースさん、貴方がどのように生きるか、それは貴方がこれから決めていくべきです」

 

フェイトはプレアの言葉を聴き、あの時のことを思い出していた。
フェイトが自分の出生を話したとき。あの大人しいプレアが必死になって自分を怒ってくれたこと。
あの時はまだ、自分が『アリシアの代わり』と思い込んでいる部分があった。
その時、プレアはリインフォースと同じことを言ってくれた。
あれは、『アリシアの代わり』という考えを捨てきれないフェイトへの必死の呼びかけだったのだと、今ならはっきりと思えた。

 

「だが・・・・」
口ごもるリインフォースにプレアは言葉を続ける
「『アストレイ』という言葉を知っていますか?」
プレアの言葉にかぶりをふるリインフォース
「『王道ではない』という意味です。僕は兵器として生まれてきましたが、兵器として生きていくつもりはありません。
僕の恩人が言ってくれました『道なんて自分で選ぶものさ。王道ばかりが道じゃない』と」
プレアは思い出す。あの世界で助けてくれ、『仲間』と言ってくれた人達を。
「リインフォースさん、あなたも『王道ではない』生き方が出来る筈です。管制人格(マスタープログラム)としてではなく
はやてちゃんの家族としての生き方が。それに」
プレアは周りを見渡し
「貴方には、大事な仲間が・・・家族がいます。そんな彼女達がきっと・・・貴方を支えてくれる筈です」
プレアはフェイトのほうを向く、フェイトは感じ取ったのか、ゆっくりと頷いた。
「僕も・・・フェイトちゃんも『王道ではない』生き方が出来ました。今もそうしています。きっと大丈夫ですよ」
プレアは微笑み答えた。
「プレア・レヴェリー・・・・私は・・・」
プレアの言葉に心が揺れ動くリインフォース、その時
「リイン・・・・・フォース」
はやては腕に力をいれ起き上がり、そして・・・立ち上がった。

 

リインフォースに向かい、一歩を踏み出そうとするが
「あっ・・・」
当然歩けるわけもなく、倒れそうになる。
「主!」
リインフォースは咄嗟にはやての元に向かい、はやて支えた。
「主、ご無理をしては(リインフォース」
リインフォースの言葉を遮るはやて
「リインフォース・・・お願いがあるんやけど・・聞いてくれるか」
「はい・・・なんなりと」
はやての言葉にしっかりと頷くリインフォース。
「これからは、嬉しいことや、悲しいこと、楽しいことや、辛いこと、そんな気持ちを分かち合ってくれへんか・・・」
はやてはリインフォースを笑顔で見据え、
「あたし達の『家族』として」
微笑み、尋ねた。
「主・・・私は・・・・・私はぁ・・・・・」
リインフォースは涙を流しはやてに抱きついた。
「もう、駄々っ子なうえに泣き虫やな・・・・・」
そんなリインフォースの頭を優しく撫でるはやて、そして
「はい・・・・主・・はやて・・・」
はっきりと答えた。

 

「まったく・・・・世話のやける奴だ・・・・」
毒つきながらも微笑みながら二人に近づくカナードとヴォルケンリッター
「カナード・・・皆・・・すまなかった・・・ありがとう・・・」
「何故謝る?それに礼ならプレア達に言え。それより、お前に言っておくことがる」
カナードは笑みを消し、リインフォースを見据える
「先ほどユーノから聞いたが、お前をシグナム達のような守護騎士にするには約一週間ほどの時間が必要だそうだ。
その間に『狂った防御プログラム』とやらが、生成されるかもしれん」
カナードの言葉に俯くリインフォース。
「だが、安心しろ。もしそうなった場合、俺達が止めてやる。何度でもな・・・・・だから・・・・」
急にカナードは口ごもり、そして
「自分だけで・・・どうにかしようと思うな・・・俺達を・・家族を頼れ!それだけだ!!」
カナードは回れ右をし、さっさと歩いていった。
「カナードの奴、恥ずかしがってら~」
ニヤつきながらカナードを見るヴィータ
「でも、よかったわ・・・ほんとうに・・・」
涙を流しながら安堵するシャマル
「ああ・・・プレア達のおかげだな・・・・」
同じく安堵するシグナム
「そうなると・・・主には、新たな魔導の器が必要になるな・・・・」
リインフォースにユニゾン能力が無くなる以上、はやてには新たな魔導の器が必要と主張するザフィーラ。

 

「そうなると・・・やはり融合型デバイスかしら?」
「ああ・・・そのほうがいい」
シャマルとリインフォースが提案をする。
「せやったら、つくらなあかんな、リインフォースの妹を」
「妹・・ですか・・私の・・・」
はやての発言にきょとんとするリインフォース。
「そうや、リインフォースに代わる融合型デバイスやから妹、八神家の末っ子や」
はやてが笑顔で宣言する。
「なぁ、はやて!外見はあたしより年下にしてくれよ。アタシはお姉ちゃんになるんだから」
「お前がお姉ちゃんか?心配だな」
「だ~!うっせ~!おっぱい魔人!!」
「なっ、だからそれはやめろといっているだろうが!」
「二人とも、やめなさい!」
さっそく喧嘩を始めるヴィータとシグナム、それを止めようとするシャマル。
その光景を見て微笑むなのは達。
そんな光景を見てリインフォースは
「私は・・・本当に・・・世界で・・・一番・・・幸福だな・・・」
そう呟いた。

 
 

アースラー

 

「うっ・・・・・ううううう・・・」
感動したのか、涙をながすエイミィにクロノはハンカチを差し出す。
「さて、これからが大変ね・・・」
リンディがこれからのことを考えている、その時
「どうやら終ったようだね~」
ブリッジにリーゼロッテが入ってきた。
「ロッテ、どうだった・・・」
リーゼロッテに尋ねるクロノ
「うまくいったよ、証拠をちらつかせたらあっさりボロを出したよ、あの連中」
夜天の魔道書のプログラムのコピーに入っていた、上層部と当時の闇の書の主とのつながりを
照明する証拠を、クロノはグレアムに託した。
真実を聞かされたグレアムはしばらく沈黙し、「私に任せてくれ」と言い、アリアとロッテと共に逮捕に向かった。
「しっかし・・あんなに怒った父様を見たのは久しぶりだわ・・・・」
何を思い出したのか、急に青ざめるロッテ。
「きみが青ざめるなんて・・よほどすごいんだろうな・・・」
クロノは笑いながら答えた。

 

その後、グレアム達の行動により、当時の事件に関わっていた一部の上層部の人間は続々逮捕された。(かなりのスキャンダルになったらしい)
はやて達に関してはクロノやリンディ、グレアム達の計らいで、相当な減刑ということになった。(保護観察などは付くが)
本来ならその程度で済む筈はないのだが、レアスキル持ちと、即戦力のAランク以上の人材が管理局に貢献する事と、
上層部逮捕という功績が後押しをした。

 

こうして、一つの命が生きることを選んだ。

 
 
 
 

       そして

 
 
 
 
 

一つの命が尽きようとしていた。