魔動戦記ガンダムRF_特別編

Last-modified: 2011-08-13 (土) 23:17:22

コズミックイラ70、七月七日の正午、シンは自宅の庭にホームセンターで買ってきた笹を立てていた。
「お兄ちゃんなにしてるのー?」
その光景を見て、シンの妹のマユが話しかけてくる。
「いや、さっき買い物行った時にこれが売っててさ…今日は七夕だったなーって思って飾ってるんだ。」
「タナバタ?なにそれ?」
「えっと、なのはが暮らしていた国の風習で…七月七日は笹の葉に願いを書いた短冊を掛けて天体観測するんだって。」
「へぇ~!面白そう!マユも書いていい?」
「うん、いいぞ。」
シンはそう言って何も書いていない短冊をマユに渡した。
「えーっと、何書こうかなー?」
マユはウキウキしながら短冊に何を書くかあれこれ思案していた。そこに…。
「お?何をしているんだ?」
シン達の父親が仕事を終えて帰ってきた。
「あのね、今日は七夕なんだって、だから短冊にお願い事を書くの。」
「ほう…昔学校で外国にそんな風習があるって習ったことあったな…よし、私も書こう。」
「父さんも?じゃあはい。」
「おう、ふむ…何を書くかな?」
短冊を受け取ったシン父は、ボールペン片手に何を書くか思案していた。

 

数時間後…あたりはすっかり暗くなっており、空は雲ひとつない満天の星空になっていた。
「きれい…。」
「ふむ、今日は絶好の七夕日和だな。」
「そうだね。」
そう言いながら庭で星を眺める彼等のもとに、スイカを持ったシン母がやってきた。
「ほら、スイカ切ったわよ、みんなで食べましょ。」
「うわ~!ありがとうお母さん!」
「いっただっきまーす!」
シンとマユは嬉しそうにスイカにかぶりつく。
「母さんも短冊に願い事書いたのかい?」
「ええ、もう掛けてあるわよ、シンに教えてもらってね…でも知らなかったわー、今日がこんなロマンチックな日だったなんて…。」
「?どういうことだい母さん?」
「さっき調べてみたのよ、今日は愛し合った織姫星と彦星が年に一度出会える日なんですって。」
そう言ってシン母は、七夕についての説明文が載っている紙をマユに見せた。
「……?なんで愛し合っているのに年に一度しか会えないの?」
「なんでもイチャイチャしすぎて仕事しないから…王様が二人を引き離したそうよ。でもこっちに書いてる“牛郎織女の神話”はもっとロマンチックな解釈になってるわ。」
「あはは、愛し合いすぎるのも考えものだなあ。」
「そうだね。」
そういってアスカ一家はしばらく星を見上げていた、その時、
「あ!そうだ!あいつ忘れていた!」
そう言ってシンはポケットから相棒のデスティニーを出した。
『何か御用ですか?主?』
「デスティニーも願い事言えよ、俺が書いてやるからさ!」
『私の…願い?』
デスティニーはしばらく考えるように黙り込んだ、そして、
『じゃあ…“主達家族が末永く幸せにくらせますように”でお願いします。』
「え?そんなのでいいのかよ?」
『そんなのもなにも…それが私の一番の願いですから。』
「ふーん…わかったよ。」
そういってシンは短冊にデスティニーの願い事を書く。
その光景を、マユ達は微笑ましく見守っていた。
「お兄ちゃん楽しそう…そういえばお母さんが調べたってことは、こっちの世界とあっちの世界って行事とか風習が同じなのかな?」
「シンが言っていたなのはさんの住む日本という国は…昔東アジアにあった国なんだよ。」
「ふーん、不思議だね、全然違う世界なのに、土地や風習が瓜二つだなんて…。」
マユは置いてあった麦茶をストローで飲みながら、星が輝く夜空を見上げた。
(考えてみれば…織姫と彦星って、まるでフェイトさんとお兄ちゃんみたいだな…。)

 

ホワンホワンホワーン

 

ここからはマユの妄想の中となっており、大昔に書かれた織姫と彦星の物語の元になった中国の「牛郎織女の神話」がベースになっています。
牛郎(彦星)=シン、織女(織姫)=フェイト、彦星と織姫の子=エリオとキャロ、老牛=ザフィーラ(うしフォーム)、牛郎の兄=サイ、その妻=フレイ、天帝=なのは(E:つけ髭)、王母娘娘=クアットロ、天女AとBとCとDとEとF=アストレイ三人娘とセインとディエチとセッテ、鳳凰=デスティニーガンダム(声:デバイスのデスティニー)、ナレーション=坂○真綾を根性で脳内変換してください。

 

種なの劇場~牛郎織女の神話

 

昔々あるところに、牛郎(彦星)という誠実で働き者の若者がおりました。牛郎に親はおらず、兄夫婦の元で暮らしていました。ですが兄嫁がとても意地悪で、
「どうせ本編じゃ私の出番ないんでしょ!!ならここで憂さ晴らししてやるわ!!」
「落ち着いてよフレイ~!」
と言って狭く荒れ果てた田畑と老いた牛を押し付けて牛郎を家から追い出してしまいました。
「理不尽だ…orz」
とりあえず牛郎は、押しつけられた老牛に「牛の兄貴」と名付け、とても大切にしました。
「もっとマシな名前付けろよ…。」
「原作者に言え。」
牛の兄貴は一人ぼっちの牛郎を不憫に思い、自分が嫁の世話をしてやろうと思いました。
「シン、ちょっとこい。」
「なんだよザフィーラ。」
「実は某月某日に、天から七人の天女が下界に降りてきて、天の河で入浴するそうなのだ。そこでお前、隙を見て一人分の服をかっぱらって来い。」
「フ ザ ケ ン ナ!!!!」
「いや損はないぞ!!?もし成功すればその天女をもれなく妻にできるんだ!!」
「アホか!!?通報されるわ!!」
「いいからとっとと行け!!」
牛郎はしぶしぶ、月のおぼろな晩に天の河に向かいました。
「ここか…見つかったらブタ箱行きだよ…(泣)」

 

一方天の河では、天女達が一糸纏わぬ姿で水浴びしていました。
「そ~れ~!!」
「あー!?やったなー!?」
「あはははは!!」
「ディエチ、なんでナンバーズの中で私達3人がこの配役に選ばれたか知ってる?」
「なんで?」
「私達作者のお気に入りなんだって、もしストライカーズ編を書くことがあったらクロスカプ相手も用意するぐらい優遇してやるって言ってた。」
「なんじゃそりゃ。」ビシッ
((おお!セッテが突っ込みを入れた!))

 

一方牛郎は煩悩と激闘を繰り広げながら、天女達の服を探しあてました。
「うう…鼻血が…、とりあえずこの服持って帰ろう…。」
その時、天女の一人が牛郎を見つけました。
「きゃー!?だれアンタ!?」
「どうしたのジュリ…きゃ!下着ドロボー!!」
「ちょ…!まだ上着しか取ってねえよ!」
「死ね変態!!」
「まかせて…」ジャキン
「ちょ!ヘヴィバレルはまずいって!!死ぬから!死んじゃうかr

 

ちゅどーん!

 

天の河から命からがら逃げ出した牛郎は、ぼろぼろの体を引きずって牛兄貴の元に帰ってきました。
「うう…どえらい目にあった…。」
「という割には天女の服をちゃんと取ってきたじゃないか。」
「ホントだ、無我夢中だったから…。」
「どんな無我夢中だ。」
すると彼等の元に、恥ずかしそうに大事なところを大きめの葉っぱで隠した七人の天女のうちの一人、織女(織姫)がやってきました。
「すいません…服返してください…///」
「あ…なんかすいません。」
牛郎は織女に服を返してあげました。そして織女は服を抱きしめたまま顔を真っ赤にして俯いてしまいました。
「うう……///こんな辱めを受けてしまってはもうお嫁にいけない…///こうなったら責任とってください///」
「マジかよ!?」
「カップル成立~♪」

 

こうして牛郎と織女は夫婦になり、三年後には男女一人ずつの子宝に恵まれました。
「フェイトさーん。」
「シンさーん。」
「なんだかんだで子供まで作っちまった…人生ってどう転ぶかわからないよな。」
「私は…シンに服を取られてよかったと思ってるよ。だってこんなに幸せなんだもん///」
「フェイト…!!///」

 

「エリオ君向こう行ってよう。二人はこれから三人目を作るみたいだから。」
「えええ!!!?なに言ってるのキャロ!!?///」

 

ですが、そんな仲睦まじく暮らす牛郎達に、突如暗雲が立ち込めました

 

天界・・・
「なに?フェイトちゃんが下界で暮らしているだと!?しかも結婚して子供まで!?」
「はい~♪とんでもない女ですよね~♪」
「むむむ…許さないよフェイトちゃん!自分だけ女の幸せを掴もうなんて…!!私達はヴィヴィオの世話をしながら一生独身貴族として生きていくの!!王母娘娘よ!フェイトちゃんを連れてきなさい!」
「アイアイサ~♪」
こうして織女は牛郎と子供達から無理やり引き離され、天界に連れ戻されてしまいました。
「おら!とっととこいや!!」
「シン!エリオ!キャロ!」
「フェイト!」
「「フェイトさーん!!」」
そして織女を失った牛郎達は天界に昇る術も見つけられず、死ぬほど悲嘆にくれていました。
牛兄はこの悲劇を見るに忍びず、自分の角を折って一隻の船を造り、牛郎達を乗せました。
「あの、角一本でどうやってこんな船を…?」
「突っ込んだら負けだよエリオ君。」
「それじゃ通り道にある雲とかよけてやるからな。」
「なにからなにまでありがとうザフィーラ。」
そして牛郎達は船に乗り、天界にいる織女の元に向かいました。ですが…。
「へっ!私はハッピーエンドが嫌いなのよ!」
卑劣で残虐でろくでもない腐れメガネな王母娘娘が、嫌がらせで簪を使って牛郎と織女の間にあった天の川に線を引き、荒れ狂う大波を出現させてしまいました。
「フェイト…!」
「シン…!」
二人は嫌がらせにもめげず、荒れ狂う天の川を隔ててお互いの名を呟きながら、ずっと見つめ合っていました。
そこに、たまたま心優しい鳳凰が通りかかりました。
『おお。なんと深い愛で結ばれた二人なのだろう。どれ、私が橋を造ってやろう。』
二人の深愛にいたく感動し鳳凰は、天のカササギを呼び集め、それを使って天の川に橋を掛け渡しました。
「みんなー!!」
「フェイト!」
「「フェイトさーん!!」」

 

こうして牛郎と織女は七夕にめぐりあうことができましたとさ。めでたしめでたし。

 

妄想終了
「まさにお兄ちゃんは彦星で…フェイトさんは織姫、天の川は時空間だね…。」

 

そのころ、デスティニーの短冊を書き終えたシンは、笹にその短冊を掛けていた。
『主は短冊になんて書いたんですか?』
「うん?“皆を守れるぐらい強くなりたい”だな。」
『実に主らしい。』
「そう言えば母さん達はなんて書いたの?」
「俺は“仕事がうまくいきますように”だな。」
「私は“戦争が早く終わりますように”って書いたわ、マユは?」
「えへへー♪内緒♪」
マユはそう言って人差し指を立てて自分の唇に添えた。

 

夜空の風になびく短冊、その拍子で裏を向いていたマユの短冊が表を向いた。そして短冊にはこんな事が書かれていた。

 

“お兄ちゃんとフェイトさんが再び出会えますように”

 

この願いは、少し乱暴な形で実現されることになるけれど、それはもうちょっと先のお話。

 

おまけ
スウェン「ちなみに七月七日にふる雨は“催涙雨”とよばれ、天の川の水量が増して出会う事ができない織姫と彦星が流した涙だと言われている。あとこの話は星の逢引きの話なので、七夕は別名“星合い”とか“星合”と呼ばれている。それと天の川の物語は様々なバリエーションが存在し、今回の話は子供達に読み聞かせるため誰かが近代風にアレンジしたものを、作者がネットサーフィンで見つけたものが題材になっている。以上、七夕トリビアだ。」
ノワール「服盗んで結婚できるなら…全国の下着泥は重婚し放題ッスね。」
スウェン「だからって盗んじゃだめだぞ、天女なら許してくれるかもしれないが、地上の女にそんなことしたら色々抹殺されるからな。」
ノワール「読者の皆さんは妄想までに留めておきましょうね。」
スウェン「それじゃ今回はこのへんで。よい七夕を。」
ノワール「ばいなら~♪」