魔動戦記ガンダムRF_07話

Last-modified: 2011-08-13 (土) 22:51:13

リインの家出事件の次の日、オーブ軍港に一隻の連合軍の戦艦がやってきていた。
「あれか、艦長が言っていた連合軍って…。」
その光景を作業中のヴィーノとヨウランが呟きながら見ていた。
「合同会議の時も思ったんだけどさ…俺達ナチュラルの軍と一緒に戦えんのか?一応2年前にお互いを滅ぼそうとしてたんだぜ?」
「オーブ軍だって内心嫌だろうな…むちゃくちゃな理由で国を焼いた相手と一緒に戦うなんて…。」
そんな二人の会話を、たまたま通り掛ったグリフィスとルキノは複雑な表情で見ていた。
「何か複雑そうですね…。」
「マッドさんの話じゃコーディネイターとナチュラルは二年前、世界を滅ぼしかねないぐらいの戦争をしていたみたいだからね。」
「大丈夫なのかな、大変なことにならなきゃいいけど…。」

 

その数十分後、オーブ軍基地に連合軍の制服を着た三人の少年少女がうろついていた。
「ふーん、ここがオーブ軍の基地か…。」
「話終わるまで時間潰してろっていわれてもな~、何も見るもんねえよなスティング。」
「ステラ、ネオいないからつまんない。」
「しょうがねえだろ、ネオは司令官殿と一緒にオーブとザフトのおエライさんに挨拶してんだから。」
「ふーん…。」
三人組のなかで紅一点の少女はつまらなそうに二人より前を歩く。
「しっかしよー、ここの奴らなんなんだよ、俺達を睨みつけて…。」
よく見ると少年達の周りにいるオーブ軍の軍人達が、畏怖や怒りを込めてチラチラと三人を睨みつけていた。
「しょうがねえだろ、俺達連合軍は憎まれて当然なんだから…。」
「でもよー、俺達はコーディネイターと戦うためにこれまで訓練してきたんだぜ?それを今さら共闘しろだなんて…絶対無理だよ。」
「これも任務だ、割り切れよアウル。」
緑色の髪をした少年…スティングは不満をぶちまける水色の髪アウルを諭す。すると前方からピンク髪の少女が誰かを探しながら歩いてきた。
「フリード!どこー?」
「…?なんでここに子供が?」
気になったスティングはその少女に話しかけた。
「お譲ちゃん、こんなところでなにしてるんだい?」
「あ、あの…!フリードが、これぐらいの竜なんですけど…目を離した隙にどこかにいっちゃって…見かけませんでしたか?」
少女は落ち着きのない様子ながらも、ジェスチャーを交えながらスティング達に質問する。」
「いや、見てないな…。」
「竜?トカゲか何かか?」
「ステラわかんない」
そのときだった。
「すいませーん!その子捕まえてくださーい!」
スティング達の後方から魚を銜えた小さなドラゴンと、基地の職員らしき女性が走ってきた。
「な、なんだ!?」
「フリード!なにやってるの!?」
スティング達は慌てて道を開けてその竜と職員を通す、彼女等は少女の横を通りすぎてどこかへ行ってしまった。
「だ、駄目フリード!そのお魚さんかえしなさーい!」
そのピンク髪の少女も彼女らを追ってどこかへ行ってしまった。
「な…なんなんだありゃあ!?」
「もしかして…。」

 

その頃オーブ軍基地の食堂では…シン、レイ、ルナ、メイリン、そして現在いる八神ファミリー全員が朝食をとりながら今日合流する連合軍について話し合っていた。
「基地に来てたわねー、連合軍の戦艦…。」
「ああ、一隻だけだがな…恐らくオーブとザフトとの情報交換が目的なのだろう。」
「………。」
シンはなにやら考え事をしながら、モーニングコーヒーをスプーンで掻きまわし続けていた。
「どうしたシン?やはり今回の同盟は気が進まないか?」
「もうキラさんの時みたいなことしないでよね、あの時は許してくれたからいいようなものを……。」
「わかってるよ、ただ…うちの家族が連合のせいでひどい目にあったことも事実だしな、それに……。」
シンは隣に座っていたシャマル達に視線を移す。
「「「………。」」」
シャマル達はシンと同様、何か考え事をしていた。
「確かスウェンさんだっけ?あんたと一緒に海鳴ってとこに行った人って…その人、連合の兵士だって言っていたわね?」
「うん……あいつの話だと、なんでも薬物投与やら洗脳やらひどいことされていたらしい……。」
「前大戦のブーステッドマンもそうだったが、ヤツらのやり方は人としての範疇を超えている。」
レイは少しいらつきながら深く溜息をついた。
そんな重い空気の中、メイリンはリインⅡにご飯を食べさせていた。
「はーいリインちゃん、めしあがれー♪」
「わーい♪プチトマトですー♪」
「はあ…こっちは呑気ねえ。」

 

そのころアースラが収容されているドッグでは…キラが破損したアースラのデータ修理の手伝いをしていた。
「…………。」カタカタカタカタ

 

「すごいねキラさん、タイピングのスピードが半端じゃないわよ…!」
「なんでも元は工学科の生徒だったとか……それがどうしてエースパイロットなんかに…。」
「いーよね!かっこいいよね!なんでも出来る男って…彼女いなかったら絶対アプローチしてたのにな~♪」
キラの仕事ぶりを見てうっとりする女性職員達、とそこに。
「こら、喋っている暇があったら手を動かせ。」
クロノとユーノがキラ達の仕事を手伝いにやってきた。
「て、提督!?」
「失礼しましたー!」
そう言って女性職員達は自分達の持ち場に戻って行った。
「まったく…すまないね、うちの職員が邪魔をしちゃって…。」
「え?ああ、大丈夫ですよ。」
「はいこれ。」
ユーノは手に持っていた缶コーヒーをキラに渡した。
「あ、ありがとうございます。」
そう言ってキラは体を伸ばし一息入れる。
「キラくんはすごいな…MSのエースパイロットってだけでなく、そんな特技も持っているんだから…。」
「MSのほうは…半ば成り行きでそうなったっていうか…。」
そう言ってキラはお茶の肴に、前大戦で自分が経験したことをクロノとユーノに話し始めた。

 

「じゃあ君は、住んでいた所をザフトの襲撃で失って…たまたまMSに乗り込んだせいで戦場に出たっていうのかい!?」
「こりゃまた…むちゃくちゃな話だね…。」
キラの話を聞いていたクロノとユーノは目を丸くしていた。
「あの時はマリューさんも必死でしたから…。」
「ホント、なのはみたいだ…。」
「なのはって…昨日いっていた攫われた局員の…?」
キラはユーノの口から出てきた“なのは”という名前に興味をもった。
「なのはも君と同じように…魔法の事なんて何も知らない普通の女の子だったんだ。でもジュエルシードを追いかけて怪我をした僕を助けたことがきっかけで…彼女は魔導士になったんだよ、今では他の追随を許さないエースオブエースなんだ。」
「へえ…。」
キラはなのはの事を語るユーノを見て、思わず微笑んでしまう。
(ユーノさん…なのはって人を本当に大切に思っているんだな…楽しそう。)
だがその時、ユーノは何かを思い出したかのように俯いてしまう。
「でも結果的に…僕は彼女を不幸にしちゃったのかもしれない…魔法に、僕に出会いさえしなければ4年前や今回のようなことにはならなかったのに…彼女の家族まで…。」
「ユーノさん…。」
キラはどう声をかけていいか解らず言い淀んでいた。そのとき、クロノがユーノの頭をポンポンと叩く。
「まったく、悩んでいる暇があったらキラ君の手伝いでもしたらどうだ?君はそれしか能がないんだから…。」
「なあ!?なんだその言い草!?」
クロノの言葉にムカッときたユーノは彼に食って掛った。
「だいたい君は(以下略)このシスコン!」
「そういう君も(以下略)この○獣!」
「ちょ!喧嘩は…。」
「まあやらせてあげて。」
そこにお茶の乗っかったオボンを持ったエイミィがやってきた。
「エイミィさん?」
「あの二人…小さい頃からずっとあんな感じで喧嘩してるの、でも本当はとっても仲がいいんだよ。」
「幼馴染なんですね…僕とアスランみたいだ。」
「なのはちゃんも…魔法と出会ったこと、ユーノ君と出会ったこと、絶対後悔してないと思う。だって本人がそう言っていたしね。まあユーノ君はそれでも自分を責めちゃってるけど…。」
「……僕だってそうです。あの戦争は辛いことが多かったですけど、ラクスやカガリ達と出会えたし…この世界に本気で向き合う事ができたんですから。」
キラのどこまでもまっすぐな瞳を見て、エイミィはうんうんと頷き、今だ言い争いをするクロノとユーノに声を掛けた。
「クロノくーん!ユーノくーん!その辺にして作業始めよ!日が暮れちゃうよー?」
「ん…そうだな。」
「まったく…次はただじゃおかないからな…。」
「ははは…じゃあやりますか。」
そしてキラ達はそれぞれの持ち場に戻って行った…。

 

そのころオーブ軍司令部の会議室では、連合軍から派遣された部隊の司令官達がカガリやタリア達に挨拶をしていた。
「ユーラシア軍所属のアリューゼ・ハンスブルグ大佐であります。」
「同じくネオ・ロアノーク大佐であります。」
「よく来てくれたお二人とも、我が軍はあなた方を歓迎するぞ!」
そう言ってカガリはアリューゼの手を握り握手する。
「我々こそ、前大戦で活躍なされた三隻同盟の一角である方々と共闘できるとは、これほど光栄なことはございません。」
「いやあ、そんなことは…///」
その光景を横で見ていたタリアとアーサーは、聞こえないように小声で話し合っていた。
(アリューゼ大佐といえば…第二次ヤキンドゥーエ戦役でジェネシスで膨大な被害を負った友軍を逃がすために、ダガーを駆って殿を務めた“銀狼”じゃないですか!)
(またすごい大物を派遣したわね、まあ本当の目的は私達ザフトの動向の監視なんでしょうけど。)

 

「ところで港に見知らぬ艦がありましたが…あれはどちらの軍の新型艦ですか?」
ネオは港に停まっていた艦…アースラについてカガリに質問した。
「アースラのことか、あれは…。」
(艦長、いいんですかリンディさん達の事ばらしても…?)
(それは大丈夫みたい、向こうも了承済みだし。)
そしてカガリはこれまでのことやアースラ、時空管理局の事を連合軍であるアリューゼ達に話し始めた…。

 

その数十分後、シン達ミネルバのMSパイロット達はアーサーにより基地のMS格納庫に集められていた。
「今日から我が軍は連合の部隊と共同戦線を張ることとなった、それで皆は向こうのMSパイロットと顔合わせしてもらう。」
「へー、どんな人なんだろうね?」
「私語は慎めルナマリア。」
「はーい。」
レイに注意されて口を尖らせるルナ。するとそこに、黒い仮面を付けたネオ・ロアノークに連れられたスティング、アウル、ステラがやってくる。
「よう!君達がザフトのエースパイロット君達か!」
ネオはフランクにシン達に話しかけた。
(うわ…なにこの人、妙に馴れ馴れしいわね…。)
「えっと…貴方は?」
「おっと、紹介が遅れたな…俺はネオ・ロアノーク、こいつらの隊長をやっているんだ。
「「「………。」」」
そしてルナはネオの後ろにいる三人組のうちの一人をみて、ある事に気付く。
「あれ?もしかして貴女、昨日街にいた…。」
「?」
ルナに指名され首を傾げるステラ。
「ん?ああ!昨日街にいた女の子か!連合軍だったのか!?」
「シンが助けた女の子か。」
「ああ。」
ステラもようやく思い出したのか、手をポンと叩く。
「なんだ~?ステラ知り合いなのか?」
「うん、昨日噴水に落ちそうになったところをあの黒髪の子が助けてくれたの。」
「そうだったのか、いや悪いね、うちのステラがおたくに迷惑をかけたな。」
「いやいや、別にいいですよ。」

 

さらに数分後、シン、レイ、ルナはアーサーに指示され基地の中にスティング、アウル、ステラを案内していた。
「普通オーブ軍の役目だと思うけど…。」
「艦長達がMSパイロット達の親睦を深めるための配慮だ、甘んじて受けよう。」
雑談するルナとレイを見ながら、スティングとアウルも小声で話し合っていた。
(はあ…だるい、なんでコーディネイターと一緒に行動しなきゃなんねーんだよ。)
(アウル、文句が多すぎだぞ。ステラを見習え。)
「へえ、ステラっていうんだ、俺はシン・アスカ、ここオーブの出身なんだ。」
「ふーん。」
(ほら見ろ、もうあんなに打ち解けているだろ。)
(いや…単に警戒してないだけだろ、あいつバカだし。)

 

そしてシン達はスティング達をMSの模擬戦室まで連れて来た。
「ここがMSの模擬戦室だ、俺達のMSもここに置いてあるんだ。」
そう言ってシンはデータ取りのため置いてあったインパルスを見せた。
「俺の愛機、インパルスだ!」
「ほう、あれがザフトの新型…換装して様々な戦況に対応できるのか。」
スティングは関心したかのように頬杖を付いた、そのとき、
「でもよー、いちいち換装していたらそのスキにやられちゃうぜ?それにパイロットがヘボだったら意味ねえし、まっ!俺なら乗りこなせるけどな!」
ピクッ。
そのアウルの言葉に、シンが反応する。
「いやあ、こいつは君には無理じゃないか~?こいつはパイロットを選ぶからな~。」
ムカッ
「少なくとも俺の方がうまく扱えるぜ、お 前 よ り も」
プチッ
「いやいや、君には無理だ。」
「いやいや、お前が無理だ。」
「いやいや、お前(以下略)」
「いやいや、お前(以下略)」

 

「「おい、シン(アウル)…ん?」」
レイとスティングは互いの相棒に突っ込みを入れようとしたら、見事にハモったことに気付いた。
「なるほど…二人とも突っ込み気質なのね。」
「みんななかよく。」
だがステラの願いも空しく。
「上等だテメエ!こうなったらシュミレーターでどっちがすごいか決めようじゃねえか!!」
「望むところだコンチクショウ!!!」
そう言ってシンとアウルはMSのシュミレーターへと向かって行った。
「ああ…ったくあのバカ!」
「まあ本人達の気が済むまでやらせてあげましょう。」
「ガンバレシンー♪」
「アウルがんば。」

 

2時間後
「ぜー!ぜー!」
「はー!はー!」
四つん這いになってへたり込むシンとアウルを見て、レイ達は呆れ返るように溜息をつく。
「45勝45敗10引き分けか…。」
「もうその辺にしとけ、オーブ軍の方々が順番待ちしてるぞ。」
「連コインはマナー違反。」
「変なこと知っているわね貴女。」
するとヘタリこんでいたシンとアウルが起き上がった。
「まだだ!決着はまだ付いてねえ!」
「こうなったら…!」

 

数分後、オーブ軍基地の食堂にて…
シンとアウルが座るテーブルには大量の食べ物が並べられていた。
「大食い対決~。」
「シン…もういい加減にしとけ。」
「アウルもだぞ!」
「いや、こうなったらとことんやってやる…!」
「こいつには負けねえ!」
「はあ…しょうがないわね、じゃあスタート!」
カーン!
ルナの合図と共に、シンとアウルは目の前の料理を手当たり次第口に放り込んだ。

 

数十分後…
「うう…腹がきつい…。」
「おえっぷ!」
「結局二人とも50皿か…。」
「アウルお腹ポコポコ」
ツンツン
「や、やめろ…!出てくるから…!」
「ちょ!こんなところで吐かないでよ!?」
「二人共もうやめたらどうだ?」
スティングはうんざりといった感じで二人にもうやめるよう促す、するとそこに、
「いや、こうなったら決着までやらせようじゃないの♪」
「ですね…。」
ネオとザフトレッドの制服を着たアスランがやってきた。
「ネオ?」
「アスランさん…?制服を着てるってことはザフトに正式に編入になったんですか?」
「ああ、それでさっきはその事で艦長達と話していたんだ。それにしても…。」

 

「よ~し…!次はどうする…?」
「バスケ対決なんてどうだ…?」

 

「一体二人は何をしているんだ?」
「じつはかくかくじかじか」
「なるほどね~♪若い奴は元気があってよろしい!」
「あの二人はただのバカだとおもうがな。」
「気遇ですね、俺もそう思います。」
「んなっはっはっは!!お前らいつの間に仲良くなってんだな!」
ネオはレイとスティングのやり取りをみて嬉しそうに笑った、その姿を見たアスランの心にある疑問が浮かび上がる。
(なんだろう…初対面のはずなのに、この人とは前に会った気がする…。)

 

その後シンとアウルはバスケ対決、水泳対決、太鼓の○人対決など数々の名勝負を繰り広げたが、決着が付くことはなかった。
「このヤロー!しぶといんだよ!」
「ごめんねぇ!しぶとくってさぁ!」
「ねえネオ、そろそろ止めないと殴り合いの喧嘩になっちゃうよ。」
「えー?おもしろいからもうちょっと見てようぜー。」
「何呑気なこと言ってるんだよ!?」
そんな大騒ぎをしている彼等の元に、アルフ(こいぬフォーム)とザフィーラ(人型)とシャマルがやってきた。
「あれー?シン、一体なにやってんだい?」
「うお!?子犬が喋った!?」
子犬の姿のアルフが喋るのを見てネオは驚いた。
「アルフ、彼等は…。」
「あ、やべっ!連合軍は私達の事知らないんだっけ!?」
ザフィーラ(人型フォーム)に注意されたアルフは慌てて人型フォームになった。
「うおおお!?今度はボンキュッボンなネエチャンになった!?」
その光景を見てネオはさらに驚いた。
「アルフ!思いきり墓穴掘ってるぞ!」
「あーもうだめね、アルフちゃん連れ去られて解剖されちゃうわ。」
「えー!?」
シャマルに指摘されアルフは泣きそうになる。そんな彼女を見たネオは慌ててフォローを入れた。
「あ、ああ大丈夫だ、タリア艦長やアスハ代表から君達の事や魔法の事は説明を受けている、ただ初めて目の当たりにして驚いただけさ。」
「え?そうなのかい?」
「まあオーブでの事件で連合の人達も闇の書の闇を目撃しているからな…。」
そしてシャマルは、アウルと睨みあうシンに声を掛ける。
「何?シン君喧嘩しているの?」
「とめるなよ!こいつだけは俺の手で…!」
「そうだ!外野は黙って…!!!?」

 

そのとき、アウルの体に電流が走った。

 

「あ…貴女はあの時(前回参照)の!?」
「?…あ!昨日街でぶつかった子!!」
「なんだシャマル?こいつと知り合いなのか?」
「!!?」
自分が一目ぼれした女性を名前で、しかも呼び捨てで呼ぶシンをみてアウルは度肝を抜かれる。そんなアウルに構うことなく、シンとシャマルは会話を続ける。
「昨日リインちゃんを探していた時に慌てて…、それでこの子にぶつかっちゃったの。」
「お前ほんっと慌てんぼうだな…。」
「で、シン君、この子は?」
「ああ?こいつは…。」
そのときアウルは素早くシンの肩に自分の手を回した。
「どうも、シン君の無二の親友、アウル・ニーダです。」
「はっ!!?」
突然のアウルの行動に、シンは開いた口が塞がらなかった。
「え?シン君連合軍に友達がいたの?」
「いやこいつが勝手に「いやあ、今日出会った瞬間からマブダチになっちゃいましたよ、はっはっはっはっ。」おおい…!」

 

「なんか二人仲直りしたみたいね。」
そんなシン達のやりとりを見てルナはやれやれとため息をついた。
「みんななかよしがいちばん。」
「そうだな、ステラの言う通りだな。」

 

そのころ会議室では、カガリやタリア達がアリューゼからある話を聞いていた。
「エクステンデット…!?彼等が…!?」
タリアはアリューゼから渡されたスティング達の資料を見て驚く。
「はい、彼等は元々コーディネイターに対抗するために洗脳し訓練された強化兵なのです。まあ、とある理由で強化に失敗してお荷物扱いですがね。」
「連合軍め…まだそんな非人道的な事をしていたのか…!」
資料を片手に憤るカガリ、その時タリアがアリューゼにある疑問をぶつける。
「……貴方はなぜこのような情報を我々に?もし他の将校に聞かれたら貴方は…。」
するとアリューゼは机に肘をつき、眉間にしわを寄せて頭を片手で抱えた。
「私には…この子達ぐらいの齢の子供がいます。その子達が敵の返り血を浴びて真っ赤に染まっていくのは見ていて忍びないのですよ。だからこうして彼等の指揮官を買って出た。なるべくなら彼等に戦いをさせないよう、うまく立ち回りたいのです。」
「それはわかります…私にも息子がいますから…。」
アリューゼの言葉に、タリアはうんうんと同意していた。
「アリューゼ大佐…まさか貴方のような方がまだ連合軍にいるということ、私はとても嬉しく思う、彼等の事は任せてくれ、きっと悪いようにはしない。一緒にユウナ達を助けようじゃないか!」
彼の言葉に深く感動したカガリは彼の手を握り、強固たる協力関係を約足した。
「……ありがとうございますアスハ代表、グラディス艦長。」
そう言ってアリューゼは立ち上がり、皆に向かって深々とお辞儀した。
「しかし…何故彼等は失敗作と呼ばれているのですか?こう言ってはなんですが、彼等は兵士としてはとても優秀ですよ?」
その時資料に目を通していたアーサーが、疑問に思っていた事をアリューゼに聞いた。
「確かに彼等は戦闘面においてはコーディネイターにも引けをとりません、しかし…洗脳に関しては何故かうまく出来なかったらしいのです。おかげで…彼等はそれほどコーディネイターに敵意を向けなくなったのです、さらにここ数年、各研究所が謎の黒いMSに襲撃されて研究が捗らなかったのも一因の一つとなっているようです。」
「黒いMS…?」
アリューゼは手元にあったリモコンを操作し、会議室にあったスクリーンにある映像を映し出した。その映像には、黒いMSが研究所らしき建物を次々と破壊している光景が映し出されていた。
「これは…旧式のストライク?しかも黒い…。」
「連合軍のMSを使っているということは施設から逃げ出した兵が復讐のために攻撃しているのか…極秘裏の施設のため、あまり公にできないのですよ。」
「なるほど…これが邪魔するお陰でエクステンデッドの研究がうまくいかないのですね。」
「ええ…あの子達にとっては、まるでヒーローみたいな存在ですよ。なにせ人間らしさを失わずに済んでいるんですから。」

 

そのころネオとアスランとシャマル達と別れたシン達はステラ達を連れてアースラの中にやってきていた。
「ほう、これが異世界の戦艦か…ところどころ俺達の技術とは違うものを使っているな。」
スティングら連合勢はアースラの作りを目の当たりにし、ただただ感心していた。
「まあこの艦は次元を飛び越えるために作られているから。」
「次元…。」
シンの説明を聞いて、ステラは何かを思い出したかのように彼に質問する。
「ねえシン、このお船…“みっどちるだ”に行ける?」
「へっ?なんでステラがミッドチルダのこと知っているんだ?」
シンは何故ステラが教えていない筈の別世界の地名を知っているのか疑問に思った。するとスティングとアウルが思い出したかのように手をポンと叩いた。
「そっか!そういやアイツも魔法世界から来たって言っていたな!」
「こいつらに聞けばアイツの行方が分かるかも!」
「アイツ……?」
そこに、リイン姉妹とキャロとフリードがやってきた。
「まったく…いたずらドラゴンめ、オーブ軍の方々の食事をつまみ食いするとは…。」
「メッ!ですよ!」
「有難う御座いますお二人とも…後でお仕置きだよフリード!」
「キュクー。」
「「「あ!!!」」」
するとステラとスティングとアウルはリインⅡの姿を見て素っ頓狂な声を上げ、彼女の元に駆け寄った。
「へ?なんですか貴方達?」
リインⅡは見知らぬ少年達に詰め寄られて戸惑っていた。そしてステラは彼女を抱き抱え、優しく頭を撫で始めた。
「うわあ…白いアギトだぁ…!」
「「「「「「「アギト?」」」」」」」
「マジだ!マジでアギトだ!」
「そうか…お前らミッドチルダの魔導士だったんだな。」
「????」
シン達は状況が把握できず、ただただ頭に?マークを浮かべていた。

 

消えなかった思い出が、過去の様々な出会いが、種の物語を少しずつ優しいものに変えていった。でも彼等はまだ知らない、これがもう片方の物語を少しずつ、そして確実に破滅へと近付けている事に……。