魔導少女リリカルなのはVivid‐SEED_16話

Last-modified: 2014-07-09 (水) 03:19:48

陽動作戦。
結局のところ奴ら赤組の採った作戦は、それだった。

 

「な、に!?」
≪警告。防御不能≫

そうと悟ったのは、バインドで固定されて身動きを封じられた俺目掛けて巨大な──約10m程の屈強な岩人形がすっ飛んできた時だった。漆黒の甲冑を着こんだゴーレムが、拳をかざして砲弾のように迫ってくる、悪夢のようなトリガー。
もしこのままぶつかれば、間違いなく俺のHPは容赦無く砕かれ、撃墜されてしまうだろう。

 

確信。
瞬間。

 

頭の中が急激にクリアになって、ドス黒いナニかが湧き上がると同時に悟りは確信に代わったと、何もかもを認識して支配できるのだと、決定できる・・・・・・まるで神様にでもなったかのような感覚を覚えた。
時間の粘度が増す、空間の密度が増す。
何度も何度も危機を救ってくれた、頼もしくとも今は恨めしく思える甘美な感覚は、だけど完全に身を委ねるわけにいかないと俺はもう知っている。
知っているからコントロールする。
まずは第一に真っ先に、状況把握に努める。
あらゆる対象を同時に一瞬で視てやる。

前提。
この赤組と青組とで戦うチームバトルの肝は、一辺50kmの正方形なフィールドの中央にある一際目立つビル群の存在。魔法戦が「非物理破壊設定」を前提にしている都合上、物理的に在るビル群を先に制圧して拠点・要塞化すれば俄然状況は有利になると全員が認識していた。──故に争奪戦があって、そして俺ら青組はそれに勝ちかけていた。もう少しでティアナ率いる赤組を追い出せると。

直感。
そこに、奴らの作戦が仕掛けられていたのだ。
俺がフェイトに、キラがなのはにタイマンを仕掛け、残りは中央区ギリギリで混戦に持ち込んで。まるで必死に決死の防衛戦をやっているように「演出」した。囮だ。
なら本命は? 結局何を狙っていたのか?
それはいわば、ちゃぶ台返し。──なにもかも上手くいかないもどかしさに癇癪を起こした子どものように、前提を破壊してしまおうと。

 

収縮し、確定した事態を羅列する。

 

一つ。おそらくコロナが事前に創っていたであろう高さ10m程のゴーレム『ゴライアス』を、魔法的レールカタパルトで射出して、ビル群の2割を破壊──ついでにフェイトが射線上に誘導、固定させた俺、シン・アスカにブチ当てる。
妥当な判断だ。青組の中核に携わっていると自負している俺を墜とせればバトルの流れは大きく変わるんだから。

もう一つ、ビル群のど真ん中まで後退させられていた20mの巨人『ゴライアスMK‐Ⅱ』が突如サヨナラ! といわんばかりに爆発四散、肉体(?)を構成していた岩塊を四方八方に撒き散らし、青組前衛もろとも更に2割を破壊した。
それらの相乗効果、ドミノ倒しでビル群は最終的にその6割を単なる瓦礫の山にしてしまったわけだ。もうそうなると要塞としての価値はなく、これからのバトルの様相も変わっていくだろう。
──奪われるぐらいなら、その前に破壊してしまえばいいってのか。
乱暴だが有効な戦術だ。

「──やらせるか」

スローモーションに見えても確実に俺に接近している『ゴライアス』と、それを射出したレールカタパルトはかなり目立つ筈なのに発見できなかったのは、予め用意してた上で使用ギリギリまでティアナの幻惑魔法で隠してたってことだ。そりゃただ射出しただけじゃ確実に撃ち落とされるしな。
悔しいのは、こんな単純な作戦を見抜けなかった己の瞳だ。ギリギリの綱渡りのような作戦にハマりにハマっちまってこの結果、誰よりも俺が看破しなくちゃいけなかったのに。じゃなきゃ昔と同じ、目先しか見えてなかったあの頃と同じだ。
だから、こんなところで終われない。
ただただ闘志が湧いてきて、カッと全身が熱くなる。

「こんなんで! 終われるかぁぁぁ!!」

直撃すれば撃墜するゴーレムがなんだっていう。防御も回避もできない状況がなんだっていう。救援を期待できない状況がなんだっていう!

 

強くなると、もう一度決めたのは、望んだのは自分自身だから。
強くなければ、悪足掻きだってできやしないのだから。
ならば。

 
 

『第十六話 この道を選んだ、その理由の全て』

 
 

「──う、おおおぉぁあラァッ!!」
「な・・・・・・んッ、シン!?」

己の意識がブラックアウトしかけていたんだと、他人のように思った。大質量に殴られた自身の肉体が、狂った独楽のように空を飛んではいないことを、逆に理路整然に蒼穹を翔ていることを実感として知った。
身体に襲いかかった凄まじい衝撃は確かに有った。しかし痛みは無く、それこそが魔法の恩恵と理解しているからこそ、まだ生きているんだって思える。
残りHP104、撃墜されてないし、戦闘不能でもない、余裕だと自然に考えられたのは全くもって自然なことだ。

「もう一本だ、デスティニー」
≪了解。アロンダイトを左手に顕現します≫
「・・・・・・バルディッシュ」
≪ロード‐カートリッジ。ザンバー‐フォーム移行≫

アロンダイト二刀を構え、黄金の魔力刃を天に掲げたフェイトと対峙しているうちに、衝撃が抜けてだんだん意識が鮮明に戻ってきた。
──、そうだ。既に歪に【喰われて】いたゴーレムの残り半身を、吹き飛ばされながらでも右の大太刀で叩き切ってやったのが多分5秒前のことで、なら次はその操者自身に左の掌槍をぶつけてやろうと【菫色の霞】を抜けて進路を定めた瞬間に、フェイト・T・ハラオウンが立ち塞がってきたのが2秒前のことだ。
しっかり思い出した。
そして互いの剣を弾き合って、睨み合いをしているのが今。信じられないものを前にしたような、驚愕と疑問の表情を貼りつけた彼女相手に、オートパイロット状態で距離をジリジリ詰めていた躰の制御をようやく取り戻す。
同時に、

(・・・・・・! ・・・・・・キラを仕留め損なったのか、なのは)

頭の片隅に、放ってはおけない事態があると感じては押し留める。

“ちょっと! 大丈夫なの!?”
「──ルーテシア。・・・・・・大丈夫だ、離脱するから援護してくれ」
“なのはさんと、あと、キラさんがそっちに向かってます。そうすれば多分フェイトさんも”
「ああ」

タイマンならまだしも流石にこのHPで混戦は避けたいと思って、思ったところで通信をよこしてきた青組支援役ルーテシア・アルピーノに撤退の意を告げる。言われる前に感じとった感覚は正にその通りだったから。
何故か生き残っているキラが此方に向かって移動して、なのはが追っている感覚。
フェイトは圧倒的な速力と旋回能力を主戦力とした近接寄りのオールラウンダー、つまり俺のデスティニーと同タイプの手強い戦士で、当然片手間に戦える敵じゃない。今なら互角以上に戦えるのに、口惜しいが集団戦じゃ・・・・・・ここで墜ちちゃなんにもならない。

「うん・・・・・・うん、わかったティアナ。タイミングは任せる」

そんな彼女も似たような通信をしていたのか、少しずつ後退をし始めた。なのはが俺を保護するように、彼女もキラを保護して撤退する算段か。

「勝負はお預けみたい、シン」
「半分以上アンタが勝ったみたいなもんだろ」
「でも、まだ本気で戦ったらどうなるかは判らない・・・・・・でしょ? 貴方も私も」
「・・・・・・次は勝つ」
「うん、楽しみだ」

強敵と戦える嬉しさというやつだろうか、自然に浮かべた力強く綺麗な微笑みに呆気にとられているうちに、フェイトは背中を向けて鮮やかな黄金を靡かせ颯爽と去っていった。これは、認めてもらったってことなのかね。
ただ動かずに見送ることぐらいしかできなかった俺には、少し眩しいぞ。

「まだ、弱い。まだ追いつけないなら、いつかは。・・・・・・遠いんだな先は」

躰の外部まで拡大していた意識が通常まで縮み、【菫色】を取り込みさざめいでいた大翼も通常の紅一色に戻って。臨戦体勢を解除する。
・・・・・・本音を言えば、そりゃ俺の中にも強敵と戦いたいって欲求はある。かつてはザフトのトップガン、唯一絶対のスーパーエースだったプライドもある。もっと全力で全力の彼女と剣を交えたかった。
でも彼我の実力差を分析できるぐらいには、糞正直に突っ込んでいきたくなる気持ちを抑えられるぐらいには、大人になったつもりだ。・・・・・・それを少しだけ淋しく思えるのは、あの生意気に反発ばかりしていた生き方に、確かなアイデンティティを感じていた左証ってやつなのかもしれない。
それでも、いつかの熱を喪っても、もっと強くならなくちゃならない。フェイトにはまだ余裕があって、単純な実力では負けていたのは事実。
今は撤退して回復しなければ。
でなけりゃ──、──

 

──こんな俺を、ミネルバのみんなが見たらなんて言うんだろうか?

 

突拍子なく浮かんだその考えの答えは、当たり前のように一つで、その一つを想像するのが無性に怖かった。想像が、一瞬、俺の意識の一部を支配した。

避けては通れない思考だと、構えていたつもりだったのに。

あぁ、16歳の俺と今の俺は、きっと別人なくらい変わっているんだと自覚はしている。でも端的に言えば大人になったと評される変化も、果たして「あのミネルバ」のクルーが納得できる変化なのかと問われれば、自信はないのだ。
ifのことと解っていても。
冷静に状況を鑑み、独断暴走しないで、さらに自身を弱いと分析し、向上心を持つなど。
ありえない、最初からそうでいてくれたら──という想いが、聴こえてきそうで、それはどこまでいっても恐怖だ。
この道を譲るつもりもないが、俺達のような不出来な人間が果たしてこのまま「悪足掻きの為に強く」なっていいのかと、なんてことのない、それは弱気だった。
認めてくれる人がいないと、俺はこんなにも弱い。

 

“ヒトは変わっていくものだ、良くも悪くも。・・・・・・変わっていける明日があるのなら、誰しも”

 

ふと、懐かしい声が、心に直接響いた。

「・・・・・・、・・・・・・レイ・・・・・・」
“胸を張れ、シン。お前はお前の道を、今度こそ前を向いて歩いているんだ。それを否定することは誰にもできやしない”
「・・・・・・サンキュ」

なんとまぁ、珍しくも俺を慰めてくれて。それだけで不思議と怖さは完全になくなっていた。・・・・・・まったくこの親友は何時になっても、俺に優しい。
決して何の解決にもならないのかもしれないけれど。良くも悪くもかつて俺を導いた親友が、今は背を押してくれるというのなら、応えないといけないな。
いや、俺は応えたい。

「いつか絶対、なんとかしてやる。だから、待っててくれ」
“フッ・・・・・・首を長くしているさ”
「それから・・・・・・ステラ」
“なぁに?”
「さっきは助けてくれて、ありがとうな」
“ううん。ステラ、シンが元気だとね、嬉しいの。だから、シンが元気で良かった”
「・・・・・・、あぁ。俺は元気だ」

背負っているものは限りなく多くて大きい。けど、立ち止まるわけにはいかない。
何があろうと、全て背負ってひたすら進むと決めたんだから。

 

さて。なのはが来る前に、涙、拭っとかないとな。

 


……
………

 

「じゃ、そのティアナの狙撃でか?」
「そうなんですっ。わたしも遠目に観ただけなんですケド、ママの捕縛と、キラさんのバインド破壊を同時にしてました。ティアナさんの弾丸!」
「たいがいなバケモンだなアイツも・・・・・・」

興奮覚めやらぬといった面持ちの高町ヴィヴィオが語る、いかに自分が目撃できた光景が凄かったのかという情報は、なんだか内容を聴くまでもなく何故か納得してしまえるような説得力に満ちていた。
視るもの総て、この娘の翠と紅のフィルターにかかってしまえばアっという間に鮮烈なものになってしまうのではないかと、少し羨ましく思えたりもするのは内緒だ。
恥ずかしいからな。

「見蕩れてたらイイの貰ってた・・・・・・なんてこと、ないよな?」
「それはなかったですよー。アインハルトさんってとっても綺麗ですから」
「へ?」
「あ、わっ。わ、技がってことです! どうしたらあんな風に動けるのかなって!」

喉から手が出るほど欲しかったビル群の崩落から、既に3分が経過していた。
ルーテシアの転送魔法で青組本陣まで戻ってきた俺は、同じく転送魔法で戻ってきたヴィヴィオから、菖蒲色に輝く回復結界の中で前線の状況を教えて貰っていた。
おかげで大分全体が読めてきた。やはり直感よりも情報による認識と確認のほうが確実なんだなぁと、いつかレイに怒られた過去を棚に上げ頭のメモに追記していく。

「そうか・・・・・・結局キラはギリ生き残って撤退済み、アインハルトも瀕死で撤退、コロナは魔力切れでリタイア・・・・・・此方はエリオが撃墜、状況はイーブンか」
「手数で言えば、こっちがまだ優勢ですよね」

実際、この娘の観察眼は大したものだった。感受性にも優れ、それを素直に表現できる才覚もある。少々頑固で無茶をしやすいきらいはあるが、これは後学の為に子育てのイロハを母二人に教えて貰ったほうが良いかもしれない。
・・・・・・ああ、でも、こう殴り合い上等なバトルマニアにはならないよう育てたいと思いますハイ。環境の問題かなのかなぁ。

「向こうも承知してるだろ。そろそろ何か仕掛けてくるかもしれない」
「ティアナさん、追い込まれた時に何をしでかすか分からないってママが言ってました。だとしたら・・・・・・」

敵司令ティアナ・ランスターの気質は策謀家でなく、どっちかと言えば素直な武闘家だが、持ち前の射砲撃魔法と幻覚魔法への自信と発想は厄介だと聞いた。大抵デカイことをやってくるらしい。
ならアクションを起こした時に直ぐ様対応できるよう、俺もなるべくHPは多いほうが気兼ねなく突っ込めるってもんだが・・・・・・、・・・・・・まだ1700/2500か。こんぐらいまで回復していれば、近いうちに戦線復帰こそ可能だが足りない。それはヴィヴィオも同様のようで、ソワソワウズウズと全回復を心待ちにしているのだと見受けられた。
回復結界は焦れったいなチクショウ。
・・・・・・にしても、だ。
派手に魔法が飛び交っている戦場を遠目に、今度はどうやって戦おうかとも考えている様子の少女に、隠れて俺は安堵のため息をつく。・・・・・・ふむ。ヴィヴィオのやつ、今朝はなんかちょっと様子が変なように思えたが、この分なら杞憂だったようだな。

「デスティニー。ミラージュ‐コロイドのオートコントロールどうなってる?」
≪現在隠蔽率87%。このペースを維持した場合、5分後には60%を切ります≫
「70%を切ったらマニュアルにしろ」
≪了解≫

いい頃合いだし、青組の被害を再確認するか。
まず、主戦場はガレキ外周部へと移り、散発的な乱戦が続いているってのが今の前提条件だ。・・・・・・あんまり歓迎できない戦況なのは否定できない。てか、こうならないように作戦を立てたってのに・・・・・・いや、コレばかりは仕方ないことだがな。
環境とは生き物だ。

つい2分前のこと、エリオは崩れるビルからリオを庇ってHP半減し、その直後フェイトと会敵してもなんとか互角に戦っていたが、しかしクリーンヒットを入れ彼女を半裸に剥いたところでノーヴェの介入パンチを喰らい気絶した。・・・・・・うん、きっと刺激が強すぎたんだな。よくやったよ男エリオ・モンディアル。

また同時に、長いこと殴り合いをしていたヴィヴィオとアインハルトの戦いに決着がついた。互いの実力・スキルを知った上での戦いは、いつかの練習試合のものよりも高次元で見応えのある打撃痛撃の応酬となったが、これもまた地の強さで碧銀の覇王少女が制した。
『覇王‐断空斬』の直撃でヴィヴィオのHPは668まで低下、ルーテシアに回収されて今ここにいる訳だ。

「今回はもうちょっと粘れるかなって、思ったんですけどねー」
「いや上出来だろ、あれで。・・・・・・次はもっとやれるさ」
「! はい、頑張りますっ!」

俺の知る限り、単純な格闘戦ならここのメンバーでも上位に入るアインハルト相手に、射砲撃を封じられた状態で何発かクリーンヒットを入れただけでも大した実力だ。カウンター戦法もかなり板についた。
まぁその後アインハルトも、前線に赴いて砲撃体勢に入っていたなのはを強襲、パンチでビームを相殺したりバインドを砕いたり一撃御見舞いしたりと謎技術でハチャメチャに善戦したけど、やはりというかなんていうか特大連繋砲撃『ストライク‐スターズ』の奔流に呑み込まれ戦闘不能となったわけだが。
これに応じて赤組司令のティアナが前進、幻覚魔法と狙撃でもって状況をブレイクしにかかった。
結果、前線の戦況は膠着状態に入り、現在は両陣共に落ち着いて戦闘継続者の整理に努めている。
とまぁこんなわけでだな、今のところの戦闘模様は、

 

赤組     青組

ノーヴェ   スバル
フェイト VS なのは
ティアナ   リオ
キャロ    ルーテシア

それぞれ戦闘不能(回復中)が二人、リタイアが一人。

 

こんな感じに随分と小規模になっている。その中でもローテーションで回復しながら戦っているのだから、支援役の二人はまだまだ大忙しだろうが。
最低、ずるずると消耗戦になるのは避けたい。できうるなら早急に此方からアクションを起こしたいとルーテシアも考えているだろう。
何故なら現状、懸念要素を抱えているのは青組なのだ。

「リオの戦力は正直、意外だった」
「炎熱と電撃の二重属性、結構対応するのは苦労するんです。それにリオ自身が力持ちさんですから」
「ああ。・・・・・・おぉ、岩投げた」
「あれで三重属性ですね」

遠く離れた戦場で尚なかなかの存在感を見せつける炎龍と雷龍を使役する、中華拳法っぽい格闘術──春光拳といったか──と馬鹿力で前線を支えるリオ・ウィズリーの勇姿。他と明らかにジャンルが異なる少女はなるほど、慣れないと攻略は難しそうだ。
変身魔法で中学生っぽくなった小学生リオの、歴戦の猛者に負けず劣らずな獅子奮迅ぶりは目覚ましく、少しばかり過小評価していたことは認めざるを得まい。
だが・・・・・・

「ルーテシア、俺を出してくれ」

出撃要請を打診する。
HPは1850まで回復した。せめて2000は欲しいが・・・・・・仕方ない。無茶しなけりゃなんとかなる範囲だ。

“シンさん、まだそのライフじゃ”
「リオは限界だろ、もうアレは」
“それは、解ってますけど。でもここで出して、キラさんを釣るわけにもいかないんです”
「む・・・・・・」

そうか、キラが生きてるってことはHPももう全快近いと。
あの戦況でリオだけがルーキー、いかに能力があろうと体力も技術も他メンバーに及ばず、スキルで誤魔化すにも時間的に限界な筈だ。誰かが加勢しないと確実に潰れるが、確かにこの混戦状態に俺とキラが参加したらそれどころじゃなくなっちまうのも正しい。
なんたってアイツの最も得意とするのは、混戦における高機動連続一斉精密狙撃なんだから・・・・・・下手すりゃ形振り構わない全面衝突に発展する。
せめて状況をもう一度ブレイクしなければ俺は出せないのかよ。
つくづく、キラを討てなかったのが悔やまれる。

“ちょっといいかな、ルーテシアちゃん。いっそシンくんとヴィヴィオを出してみたらどう?”
“・・・・・・囮にするって意味で、です?”
“そう。きっとキラくんは兎も角、アインハルトちゃんのHPはまだ安全域に入ってない筈だから”

そこで、俺とルーテシアの思念通信に青組司令なのはが割り込んできた。
ノーヴェ相手に思念誘導弾をしこたまブチ込みながらの提案は、キラ生存を逆手にとった内容で。確かに現状で敵に揺さぶりをかけるにはそれも一手だ。・・・・・・けどそれ以上に、ヤツを倒せなかった彼女自身の失敗を雪ぐ手段みたいなもののようにも思えた。
当初の予定じゃ、最初に仕掛けた砲撃戦で、仲間を守る為に間違いなく突っ込んでくるであろうヤツをなのはが叩き潰すつもりだったから。
しかし、討てなかった。なのは自身は「ちょっと驚いちゃって、狙い逸れちゃった」と言っていたが・・・・・・多分驚いたことって俺の【行動】そのものにだろうな。加えて、奇しくも俺と同じ状況だったキラの【行動】にもなんだろう。ピンチの時に同じことをしたってのは、妙に気分が悪いものだ。
次出てきたら、確実に墜とすといった意気らしい。強いってことは負けず嫌いってことだし妥当だよな。

“成程、いっそ私たちが誘導すると。・・・・・・、・・・・・・ルーテシアから青組各員へ! 総攻撃、集結して各個撃破を狙ってください。それから、シンさん、ヴィヴィオ!”
「おう」
「はいっ」

そして、ルーテシアは決断する。

“出撃、お願いします”
「「了解!」」

よしきた!
二人揃ってガッツポーズ。だったら善は急げ、行動は迅速にしなくちゃよ。

「これって、ティアナさんを焦らせるってことですよね?」
「そーなる。俺とお前が参戦すれば次に危ないのはノーヴェかフェイトだ。だったら向こうが強引にブレイクしてくれる・・・・・・それに乗ればいい」
≪リニア‐カタパルト、ヴォワチュール‐リュミエール、スタンバイ完了。射出します≫
「よし、行くぞ!」
「はい!」

背負ったヴィヴィオからの確認に答えながら、前線目指して加速を開始する。これが戦場でなけりゃ、背中に確かな存在感を主張する柔らかい物体にちょっとは何かしら思いを馳せらすんだが、ここは戦場だしな。つーか我ながら下品な思考をできるようになったもんだ・・・・・・これも大人になったってことなのか。
それに相手は小学生なんだぞ。キラと違って俺はロリコンじゃねぇ。

“シスコンさんだもんね?”
「黙っとれ!」
「ふぇ!?」
「・・・・・・あ、いや、悪い。独り言だ気にするな俺は気にしない」
「???」
≪クォーターライン通過≫

おっといかんいかん、つい口に出してツッコミしちまったぜ。・・・・・・要らぬ茶々を入れてくれるな妹よ。
っていやいや、そんなことはどうでもいいんだ、重要なことじゃない。問題は俺達が前線に確実に近づいてるってことだろ。流石にデスティニーの最大速度は凄まじく、あっという間に戦いの様子を目視できるようになる。
・・・・・・どうやらノーヴェ相手に追撃戦を仕掛けているみたいだ。赤組は後退中、なら、もうアクションがあってもいい頃だが・・・・・・

“スバル・ナカジマから青組各員へ。ティアが姿を消しました。多分一撃狙ってるものと思われます! 警戒を!”
“うん、報告ありがとうスバル。あと、キラくん出撃したみたい・・・・・・ルーテシアちゃん?”
“ビンゴ! なのはさんは所定の位置へ、相殺お願いします。シフトE!”
“了解!”
“シンさんはそのまま上空に待機してください”
「わかった」

動いたか。
キッカケはティアナ・・・・・・予想通りデカイのを撃ってくるようだ。そう、予想通りに。消耗した状態で敵の増援と敵の密集が重なれば、否が応でも距離をとりたい筈だから。
その為のシフトE、前線にいた青組全員が撹乱しながら四方八方に散り、なのはが後退して砲撃体勢、ルーテシアが前進して防御体勢をとる。これに対し赤組は追撃せず、同じように前線を離脱していく。
まるで、蜘蛛の子を散らずかのような一目散っぷり。ものの数秒でバトルステージから戦いの音が消え失せた。

「赤組のみんなも離脱していきますね」
「向こうも戦いっぱなしだった奴らを下がらせたいだろうし、狙いは一緒だ。けど」
「けど?」

嫌な気配が全身に纏わり付く。
錯覚でなく震える大気は、塵のように世界に遍在する魔力素と、今までの戦闘で戦場に散布されていた魔力の大移動を意味していた。二方向、なのはとティアナに向かっての。
かくして、状況はブレイクされた。このままなら、それでおしまいになる筈だ。
しかし、

「二人共あくまで、攻撃の手は緩めないと思う」
「え──」

そう呟いた瞬間、

 

世界が光に包まれた。

 

◇◇◇

 

『スターライト‐ブレイカー』。
究極的な破壊力と攻撃範囲を有する集束型砲撃は、集束型の名の通り、大気に散らばっている魔力をも集めて取り込んで纏めて射出する必殺魔法。オリジナルは高町なのはのものであり、受け継いだのがティアナ・ランスター。
シフトEは、この二人のブレイカーが激突する展開を想定して実装されたフォーメーションであり、その後の行動指針を含有した計画表だった。

「やぁヴィヴィオちゃん、シン。久しぶり」
「吃驚しましたね」
「あ、キラさん。アインハルトさんも・・・・・・、久しぶりですっ」
「そう、だな。まさかこうなるってのはなぁ」

だったのだが、ねぇ?

「いや、でも流石にびっくりしたよ。まさか前線にいたみんなが撃墜されるなんてさ」
「同感だよホント・・・・・・なんで巻き込まれるかなぁ」
「あ、あはははは・・・・・・」

予定なら。青組と赤組の予定なら、ブレイカー同士の激突にお互い人的被害はなかった。
だって同程度の魔法の激突がお互い判っていて、踏まえて仲良く離脱したんだから。んで俺はリオを保護し、なのはは最後の切り札の準備をするつもりだった。赤組も大体同じつもりだったろう。
しかし予定外なことに、ブレイカーの化学反応とでも言うべき現象が起きてしまったわけで・・・・・・

 

混ぜるな危険。どこか所帯染みた注意文が脳裏を掠めた。

 

世紀末を彷彿させる、融合した桜と橙の光の塊はどこまでも膨らみ続け、離脱して待機状態だった者達を例外なく呑み込み、撃破してしまったのだ!
撃った本人達も呆然、撃たれた者達も呆然、これなんて最終戦争? とぼやきたくなる惨状に暫く動ける者はいなかった。
誰にとっても予想外。生き残りはに全力で上方に逃避した俺withヴィヴィオとキラ。後方にいたアインハルトとなのは、フェイト、キャロとたった7人で、ついでに言うとキャロはたった今なのはに墜とされた。
状況、3対3。

[うぅ。そんなー]
[なんつー締まらない結末・・・・・・!]
[完全不燃焼って感じねぇ]
[あと任せたわー、頑張ってー]

通信魔法を介して響く、完全に巻き添えを食った戦士達の嘆き(?)の声に思わず脱力してしまう。
光が収まった後にゆっくりと俺達のとこまで飛んできたザフト白服姿のキラと、キラに背負われていたアインハルトも同様、あんまりな光景にお手上げなようで。
実質戦闘中だというのにこうしてゆったりと話ができるぐらいには、なんとも気が削ぎれる間抜けな結果だった。
戦闘ってのは不条理と不測の事態の連続であって、予定通りにことが運ぶことはないと解っていても、やっぱりこんなんじゃな。やるせない儚さに身を委ねちまっても仕方ないよなぁ。

「でも、関係ないか。俺達には」
「そうだね。僕達は戦うだけだから」
「? シンさん?」

ああそうだな、実はこんなの俺達には関係ないことだった。
キラの言う通り、目的達成に他のメンバーの状況などどうでもいいことで、お互いを高め強くなる為に、ただ戦うだけだった。
むしろこの状態は歓迎すべきことなのかもしれない。

「なぁ、ヴィヴィオ降ろしてきていいか?」
「勿論。てか僕も降ろしたいし。・・・・・・二人もフェイトもそれでいい?」
「あ、はい」
「わかりました」

これ以上の作戦行動に意味はない。
子ども達の同意に、通信モニター越しにフェイトは困ったような笑顔で、なのはは何処かさっぱりしたかのような笑顔で賛同する。

[仕方ないよこれじゃあ。・・・・・・結局、因縁持ち同士の1対1になっちゃったね]
[にゃはは、思い通りにはいかないものだねー。でも、久しぶりにフェイトちゃんとサシで戦えるのは良い機会かも]
[もう、なのはったら]

まったくだ。折角のチーム戦もここまでお互いがズタボロになっちゃ機能しない。みんな同じ考えだからこそ、個人戦に傾倒する。
俺だって本当に久しぶりに、他の邪魔もなくキラと1対1で戦えるのは願ったり叶ったりだ。意外かもしれないが、あのメサイア攻防戦以降にちゃんと戦ったことなど無いのだから。
想定外と言えど、この試合で最高の素材を見つけられたならば、あとは戦えるだけ戦うだけ。

「なのは達が動いた。僕達も」

言葉は交わさずに、なのはとフェイトは西の方へ飛んでいく。彼女らは彼女らの戦域を求めたのだろう。なら子ども達の戦域は中央、俺達は東だ。尤も、それが遵守されるわけじゃないけど、一応。
俺は先行くキラwithアインハルトに追従し、大地を目指す。

「どうでしたか、アインハルトさん?」
「え・・・・・・?」
「この戦いです。まだ訊くには早いかもですけど」

唐突に、けど自然にヴィヴィオがアインハルトに質問した。端から聞けばなんてことないこと、しかし少女にとっては大事なことのように思えた。
初めてのことばかりだったけど、楽しかったですかって。敵である彼女に正面から訊いて。
対して彼女は、スッと瞳を閉じ、胸の前で何かを掴み取るかのように拳を握り、穏やかに答える。

「ああ・・・・・・、・・・・・・本当に、色々と勉強になりました。まだまだ至らぬこの身、未知の戦術、未知の領域・・・・・・私の世界の可能性を知ることができました。本当に、ありがとうございます」
「まだまだこれからですっ。そりゃ集団戦は終わっちゃいましたけど・・・・・・、・・・・・・アインハルトさん、わたしとの1対1、受けてくれますか?」
「はい。喜んで・・・・・・!」

背負われたままのヴィヴィオとアインハルトの交わした微笑ましいやり取りに、思わず笑みが溢れる。初めて区民センターで会った時よりもずっとずっと良い表情をしていて、少女もまた一つ大人になったのだと思う。
その思いを、今は力に変える。
だから、大地に到達して、二人を降ろして。キラはヴィヴィオとアインハルトの頭を撫でて、俺は二人に拳を突き出して、そうして数歩離れて。
離れて、感傷を棄てた。

「じゃあ、俺達も」
「やろう。全力で」

 

【SEED】を覚醒させて、【極光の翼】を広げて、俺達は対峙する。

 

「・・・・・・!」
「・・・・・・綺麗・・・・・・」

子ども達の驚く豹、ふと溢れた感想も、もはや届かない。既に他人は意識にない。
俺達の意識は唯の一つに。

 

俺の意識はキラの翼に。
赤色の粒子を吹き散らす、白色を滲ませた、底の見えない深い蒼色の魔力翼に。

 

キラの意識は俺の翼に。
菫色と白色を取り込み、鮮やかでありながら禍々しい、二重の紅色の魔力翼に。

 

俺達の。いや、人類の業を顕した罪深くも美しい翼に。どうしようもなく、釘付けにされる。
これは【人の魂を喰らった証】──複数のリンカーコアが織り成す奇跡なのだから。

「いくよ・・・・・・!」
≪シュペール‐ラケルタ転送≫
「こいよ、キラ・ヤマトォ!!」
≪アロンダイト展開≫

逃れられないと解っているから立ち向かう。
俺達は、飛翔する。

 

◇◇◇

 

全てはエヴィデンスの掌の上で踊らされた、破滅へと向かう呪いなのだと、かつてクロノは評した。
キッカケは、ジョージ・グレンが地球に持ち帰った羽鯨の化石『エヴィデンス01』。これによって人類は暴走したのだ。
狂喜と狂気の果てに、鯨の遺伝子情報体を無作為に胎児に埋め込んでみるなどという、想像を絶した行いを実際にやってしまった科学者達のせいで産まれた者達──【SEED】を持つ者──が、種の存続を賭けた戦争の時代を戦い生き抜いて。その身に秘めた力を解放してしまって。
今やエヴィデンスの苗床として、次元世界から消え去ろうとしている世界で。

 

俺達の中には、自分のモノだけでなく、幾つもの魂が存在している。

 

それは【SEED】がエヴィデンスの能力を一部継承しているから。
エヴィデンスは、あらゆるモノを魔力に変換し、己の糧とする能力を持つ。それは物質だろうが霊的存在だろうが環境だろうが何だって問わない。そういうものだ。
この能力があったからこそ、俺達は戦争を生き抜くことができたと言ってもいい。特にキラの例が分かりやすいか。
考えてみろ。【SEED】の能力は長いこと、保有者の反応速度や演算能力といった神経系に関する能力を一時的に、飛躍的に上昇させる因子だと考えられていたが、つーかそんぐらいしか判らなかったのだが、それじゃ説明がつかない点が幾つもあった。

 

まず、そもそも、常識として。
そんな能力があるからといって先の大戦で、素人のキラ・ヤマトが4人のザフト赤服相手に生き残れた訳がないんだ。宇宙コロニー・ヘリオポリスが崩壊し、偶然連合のMS・ストライクに乗ることになって。それからずっとザフトのエリート部隊だったクルーゼ隊に追いかけられて何故無事なのか。
これは後の時代で検証したことだが、キラの母艦アークエンジェルが第八艦隊と合流する直前の戦闘の時点では、アスランらの実力は確実にキラの上をいっていたという。

己の機体に慣れ、連合のストライクに対する油断を捨て、全力で襲いかかった。そして最高のコーディネイターといえども、素養があったと言えども、当時のキラにそれを退ける実力も運も仲間も無かった。
そんな状況を、たかだか頭の回転が速くなった程度で切り抜けられる訳がないんだ。しかし事実キラは【SEED】で乗りきった。のみならず、ソレをキッカケに操縦技術を大きく向上させた。敵の気配を少し感じられるようになったのも、この頃からだと言っていた。
つまり、真実は。

 

キラは【SEED】を利用して無意識に、敵パイロットの実力をコピー・吸収し、また四面楚歌を常とする戦場という環境も吸収したのだ。
吸収していって、格段に強くなっていった。

 

俺にも似たような経験が幾つもある。頭の中がクリアになって、何故か急に強くなったような感覚は確かにあった。
これは仮説だが、リンカーコアとリンクしているエヴィデンスの遺伝子情報体が、身体的・精神的要因により保有者の生命活動が著しく低下した際に、自己保存の為に活動を開始したのではないかとデュランダルさんは推測している。
そして、己の意思で発現・制御しているうちは、吸収能力は抑られているのではと。

 

俺達は、エヴィデンスに生かされていた。

 

だからこそなのか、俺達は無意識に、死者の魂とそのリンカーコアを取り込んでしまっていた。
そして、取り込んだ魂の中でも特に近しく、強い意思をもつ者は自意識を形成した。
だから、

 

俺の中には、
レイ・ザ・バレルが、
ステラ・ルーシェが、
マユ・アスカが。

 

キラの中には、
ラクス・クラインが、
フレイ・アルスターが、
ラウ・ル・クルーゼが、
トール・ケーニヒが、

 

間違いなく、明確に存在している。
魂があって、意識があって、揺蕩っていた。
彼らと話せるようになったのは、彼らを認識した日からだった。あの日、ヴィヴィオとアインハルトの練習試合があって、キラとクロノに真実を教えられたあの日。
そうして一時塞ぎ込み、八神家のみんなに心配をかけてしまったのは記憶に新しい。
だってわけがわからない。
なんでそんなことに。
理不尽すぎて、頭がどうにかなりそうだった。自分の身体のことも、消滅する世界のことも、内に在る魂なことも、なにもかもが。

 

どうしようもなかった。

 

確かに、また逢えて言葉を交わせるのは嬉しいかった。
ステラやレイやマユには、どうしても謝りたかった。
だけどそれ以上に。人殺しである自分から死別すら奪われ、彼女らが未だこの世に縛られている現状が、どうしようもなく悲しくて。
なにより、あらゆるものを奪われた俺達から、死を奪われるのは我慢ならなくて。
戦争だから仕方無い、生命はいつか死ぬ。そんな言葉で片付けられるほど命は軽くない。そんな命が、戦争で死んだ命が、ココに在る。

 

止めてくれと叫びたかった。到底許せるものではなかった。

 

何故、昔の学者はこんな巫山戯たモノにSEED──種子──と名付けたのか、今となってはわからない。
もしかしたら単に、一時期学会で発表され議論されたSEED──優れた種への進化の要素であることを運命付けられた因子──理論に当てはめたかっただけなのかもしれない。
だけど、こんなモノが花咲く未来なんて、こんなモノで進化する人類なんて、俺達は認めない。
絶対に。
だから俺達は・・・・・・

 

こんな運命は壊してやろうと決めた。

 

強くなって、あらゆる素材を利用して、システムG.U.N.D.A.Mを用いて最大限の悪足掻きをしてやる。
復讐みたいなものだ。意地みたいなものだ。
はいそうですかと、せめて俺達が生きたあの世界だけは簡単に消させるものか。あんな糞みたいな世界でも。目標の為なら死者も利用する異常者になってでもだ。
幸か不幸か、【SEED】の内に在る強い魂のリンカーコアは利用可能で、力を解放すれば物質を【喰う】ことだってできた。
これを、純粋な力と見なして。今までの全てを棄てて。

 

俺達は、再び力を得ることを選んだ。
世界の為でもなく正義の為でもなく、見知らぬ誰かの為でもなく、自分自身の為に。

 
 

──────続く

 
 

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