魔法少年_プロローグ

Last-modified: 2007-11-17 (土) 17:42:12

背中に赤い光の翼を発生させているMSの砲身から太いビ-ムが打ち出され、全身真っ
赤なMSはそれを光を発生させる盾で防いだ。
「シン、もうやめろ。お前も!」
真っ赤なMS<インフィニットジャスティス>のパイロット、アスランは赤い光の翼を発
生させているMS<デスティニー>のパイロット、シンに呼びかける。
「過去にとらわれたまま戦うのは、やめるんだ!そんなことをしても、何も戻りはしない。」
「なっなにをっ!」
「なのに!未来まで殺す気か、お前はっ!!お前が欲しかったのは本当にそんな力か!?」

その言葉にシンは振り返る。
 オーブ解放戦線で家族を失って、自分はなんと誓ったのだったか。あの時自分たちは何
の罪もない一般人だった。なのに、理不尽に殺された。だから誓ったんだ。何の罪もない
人々をすべての理不尽から守り、当たり前のように当たり前の暮らしをさせてあげること
を。
 そうだ。だから力が欲しかったのだ。
「だけど!」
ステラ。ディオキアで偶然にも出会った、連合のエクステンデットの女の子。彼女は確
かに多くの人々を殺した。けれど、その責は彼女をあんなふうにした連合やロゴスにこそ
あるはずだ。彼女には罪は無かったはずだ。失いたくなど無かった。家族を失ってからず
っと開いているこの胸の隙間を埋めてくれるかもしれない女の子。誓いのためにも、そし
て何より自分自身のためにも、彼女には生きて幸せを掴み取って欲しかった。
 その彼女も殺された。また、あのフリーダムに殺された。許せなかった。当たり前のよ
うに正義の味方面して現れ、あれだけの力を持ちながら、ステラを殺すことでしか、事態
を収拾できなかったあいつを憎まずにはいられなかった。
何より、もしあいつのせいでなければ、それはそこにいたもう一人の人物がステラを救
えなかったせい。誓いを守れなかったせい。ということになる。それだけは耐えられなか
った。
そして、フリーダムを倒した。仇を討って、結局の所残ったのは誓い一つ果たせない無
力な自分だけだった。
そうして、自分の無力さを思い知った自分に、けれど議長は新しい力をくれた。嬉しか
った。これだけの力があればきっと今度こそ誓いを実現できると思った。
「だけど!」
<デスティニープラン>議長の唱えるこのプランが、必ずしも人を幸せにするわけでは
ないことくらい自分にもわかる。このプランで守られるのは人の命。このプランで犠牲に
なるのは人の自由。人によってはそれでもいいだろう。しかし、それでは幸せになれない
人たちが出てくるのも事実だろう。そして議長が指名した以上、自分はこのプランの番人。

人の命だけを守る者。誓いを果たせない可能性も裏切る可能性すらある。
「だけど!!」
それでも守れるものがあるなら、それでいいではないか。

 シンはデスティニーに攻撃の動作を入力する。アスランの言葉などもう聞きたくなかっ
た。これ以上聴いていたら自分で認めてしまいそうになる。誓いを裏切り今、罪の無い人々
を、そしてその幸せを危険にさらしているのは自分自身なのだと。だから全力でパルマ・
フィキーナを放つようにデスティニーに命じる。だが、
「シン、もうやめて!アスランも!」
ルナマリア。2年前プラントに渡りアカデミーに入ったとき、なにかと迷惑事を起こして
巻き込んだり、逆に迷惑事を起こされて巻き込まれたりした仲。戦争を通してさらに仲良
くなれた間柄。彼女が割って入った。
「やめろーーーー!!」
デスティニーは攻撃モーションにはいっている。今更解除できない。必死になって叫ぶ。
そして、
「この馬鹿ヤローー!!」
すんでのところでアスランに止められ逆に撃沈され、シンは意識を手放した。

「ううーーん」
意識が覚醒する。辺りを見渡すとここは病室のようだ。何故こんな所にいるのか、そこ
まで考えて思い出す。
「そうか。オレ、アスランにやられて・・・・」
「あら、起きたのね。」
声をかけられはっとする。どうやら医者のようだ。だが、この際それはどうでもいい。
それよりも確認しなければいけない事がある。
「あの!ミネルバは!レジェンド、インパルスは!メサイアやオーブは!戦闘はどうなっ
たんです!!?」
早口でまくし立てる俺に対して困った顔をしてその女医は、
「えーっと・・・。何の事だかわからないのだけど。」
「はあ?!ふざけてるんですか!!月でのプラントとオーブの戦争のことですよ?!!オ
レが参加した戦闘の結果です!!早く教えてください!!」

そう俺が言うと、女医は小言で「この手の事が流行ってるのかしら?」と言ってから、「ち
ょっと待ってて」と言って出て行き、数分して何かの資料を持って戻ってきた。それを見
て驚いた。その資料の内容を信用するなら、ここは過去、しかもCEが始まってさえいない
時代だと言うことだ。
「一時的な混乱による記憶喪失の一種なんでしょうね。とりあえず数日入院して様子を見
ましょう。」
そういって、女医はその後、自分が発見されたときの状況や健康状態に関して問答した。

その後しばらくして、一向に記憶の戻らないため(もともとこの時代の住人ではないの
でそういう扱いになってしまった)身分等がわからず(そもそも存在しない)困っている
自分を、第1発見者の高町なのはちゃんの両親が厚意で住み込みのアルバイトとして記憶
が戻るまで雇ってくれることとなった。自分としては申し訳ない気持ちもあったが、右も
左もわからない状態ではどうしようもなく、いずれ恩は返すと決めて、彼女たちの世話に
なることに決めた。

これよりしばらく後、傷を癒した少年は再び誓いを胸に戦いの場へとその身を投じる。