とある園遊園地。
今日、ここでプリベンターたちの作戦が決行されようとしていた。
* * *
「ハ~ハッハ! アリーブレラ様が悪の限りを尽くしてやるぜ!!」
園内に設置されているステージ上では悪の怪人が大見得を切っている。
演じているのは、なんとテロリストのアリー=アル=サーシェス。
彼はショーの最中に演技のフリをしてテロを起こそうとしているのだ。
と、その時どこからともなく声が聞こえてきた。
「エマージェンシー(緊急変身)!特捜戦隊プリベンター!」
一瞬、会場を強烈な光が包み込む。
すると戦闘スーツを着た男達が颯爽とアリーの前に現れた。
「貴様ら! 何者だ!!」
「この世に悪がある限り、俺は戦い続ける! プリベンター・レッド!」
トロワがやたら熱いセリフを喋ると爆発音と共に赤い煙が上がった。
「愛故に戦う。 愛があるから戦える。 プリベンター・ブルー!」
またしても後ろで爆発音と青い煙が。
「正義は悪を滅ぼすためにあるものだ! プリベンター・グリーン!」
五飛の登場と共に今度も爆発と緑の煙。
どうやら演出らしい。
「いちいち時間かかるんだよっ! ヘヘっ、今のうちにやっちしちまえばこっちのも………なぬ!?」
アリーは攻撃を加えようとしたが全く動けなかった。
何かしらの強烈な力に押さえ付けられたのだ。
戦隊ヒーロー物の掟・その1 ~自己紹介の前口上を述べているヒーローは無敵~
「戦いの日々は繰り返させません! プリベンター・イエロー!」
カトルが出てくると爆発と黄色の煙(ry
「俺様にかかれば悪人なんてへっちゃらだぜ! プリベンター・ピンク!」
……失敗したようだ。
何も起きない。
そして五人合わせてこのセリフ。
「「「「「特捜戦隊プリベンター!」」」」」
大きな爆発音と共に4色の煙が立ち上った。
ピンクだけまた演出が失敗したようだ。
「貴様らそれじゃ特捜戦隊じゃなくて火薬戦隊だろうが!!」
アリーのもっともらしいツッコミはさておき、彼らの説明をしておこう。
S.P.I (Special Pulibenter Iyyafu)はアリーを捕まえるために結成された戦隊ヒーローなのだ!
「変身スーツは、僕特製の物だよ」
突如登場、ビリー=カタギリ。
独身魔法使い片思い中である。
「彼らのスーツは、僕がみかんの成分を研究して作ったものなんだよ。銃弾を受けてもびくともしないんだから。えっ?何で登場人物がただでさえ多いのにあなたがいるのかだって? それは、必要だからだよ」
戦隊ヒーロー物の掟・その2 ~ヒーロー物には科学者かサポートする人物が必須~
ヒーローの登場に子どもたちから歓声が上がる。
「わ~カッコイイ」
「……ピンクが男っぽい」
* * *
「貴様の悪事もこれまでだ。観念しろ」
五飛が強い口調でアリーに降伏を迫る。
「おまえら、状況がわかってねえみたいだな。野郎ども、やっちまいな!」
アリーの掛け声と共に、黒服の戦闘員(中身はアリーの部下)がプリベンター達に襲い掛かる。
「無駄だっ!」
トロワはキャット空中三回転を繰り出し、戦闘員を怯ませると飛び蹴りを喰らわせた。
「何故戦闘員は○ョッカーなのだ、ガンダムッ!」
無茶苦茶なことを言いつつ、グラハムも敵を薙ぎ倒していく。
五飛はさすが拳法家、まったく敵を寄せ付けない。
ここで、心配なのは格闘戦が弱そうなカトルだが……
「フフッ。……そうですよ。戦争を起こす奴なんて消えてなくなれっ!」
ゼロシステムに取りこまれた黒カトルのような口調で敵を圧倒していた。
一方、コーラサワーは……
「俺はなぁ! スペシャルで! 2000回で! 都営三○線なんだょ!」
支離滅裂なことを言いつつ相手の攻撃を避けまくっていた。
「チッ、こうなったら奥の手その1を使うしかねえようだな!」
アリーは懐からDVDを取り出すと、高らかに言い放った。
「おい、てめえら。コレを見ろ。男なら興味が沸くはずだぜ?」
アリーが持っているDVDには《大佐のシャワーシーン2時間入り!》と銘打ってある。
「た、大佐!?」
思わず『大佐』というフレーズに反応するコーラサワー。
「へっへっへっ。 欲しい奴がいるようだが……これはお預けだっ!」
と、アリーは驚異的な遠投でDVDを遊園地の外へ放り投げた。
「うおぉ~!大佐のシャワーシーンは頂きだぁ!!!」
あぁ、何ということかコーラサワー。
彼は大事な仕事をほっぽり出してDVDを拾いに行ってしまった。
「おい、待つのだバカ……行ってしまった。これが愛という物なのか」
「放っておけ。あいつがいなくてもケリはつく」
呆れた五飛は、コーラサワーを無視して任務を遂行しようとする。
だが……
「なぜだ? 体が重い。 身動きが取れないぞ!」
「身体機能がスーツを着る前より低下している。どういうことだ?」
四人が困惑しているとカタギリから通信が。
『穏やかじゃないねぇ。 そのスーツは五人が近くにいないとフルパワーが出せないんだよ』
「カタギリ!なぜそんな面倒な設計にしたのだ!」
『だって、掟だもの』
戦隊ヒーロー物の掟・その3 ~5人揃ってないと弱い~
「えぇい、私は我慢弱い男だ。脱ぐぞっ!」
グラハムはおもむろにスーツを脱ごうとした。
他の3人も素の力で戦った方が良いと判断し、スーツを脱いでプリベンターの制服姿になろうとしたのが……
「ぬ、脱げない!? どういうことだ、カタギリッ!」
「子どもの夢を壊しちゃいけないもの。人前でスーツを脱ぐのはダメだよ」
戦隊ヒーロー物の掟・その4 ~ヒーローの正体は子どもの前では明かさない~(地球戦隊自重!)
「へっ!5人いないと問題があるらしいな。今のうちに死んでもらおうか」
アリーが4人に詰め寄っていく。
と、その時どこからかアリー目掛けて羽根が矢の如く飛んできた!
「今度は何だ!?」
「投げるならバラだろとか言うな!プリベンター・ホワイト!」
「俺は最初からクライマックスだぜ!プリベンター・ブラック!」
ついに登場のヒイロとデュオである。
戦隊ヒーロー物の掟・その5 ~都合良く助っ人登場~
新たなヒーローの登場に沸き立つ、会場の子ども達。
「わ~黒と白のヒーローだよ。」
「プリベンターだから略してプリ○ュアだね」
突如現れた二人のヒーローに慌てるアリー。
「ちっ!新手か。野郎ども怯むな!相手は2人。たいしたことねぇ!」
新たなヒーローの登場に怯みそうになった部下を鼓舞し、アリーは二人に襲い掛かる。
「遅いっ!」
「なぬっ!?」
ヒイロは目にも止まらぬ速さでアリーの背後を取り、正拳突きを食らわした。
「……ヒイロの動きが速すぎる。何をしたんだ?」
トロワが異常なまでの速さを誇るヒイロを不思議そうに見る。
『ん~実はね、ヒイロ君のスーツにはゼロシス……これ以上言うのはプリベンターの理念に反するからやめておくよ』
「………」
「貴方も科学者なら、あのシステムの危険性を考えてくださいよ!」
「……あいつならゼロシステムを使いこなせる。きっと大丈夫だ。多分」
心配する3人をよそにヒイロとデュオは生き生きと闘っていた。
「それっ!まきびしっ!十字手裏剣20連発!」
「ゼロよ。未来を示してくれ!」
圧倒的な2人。
このままプリベンターの勝利かと思われたが、
「えぇぃ、こうなりゃヤケだ! 奥の手その2!」
なんとアリーは客席に無理矢理入り、子どもを人質に取ったのだ。
「くっ!この卑怯者!」
「卑怯? 卑怯でけっこう、俺は悪人なんでなぁ。さぁ、お嬢ちゃんの顔を見せてもらおうか?」
アリーが人質にした女の子の顔を確認しようとする。
だが、女の子はヒイロも知る意外な人物だった……
(つづく)