00-W_土曜日氏_103

Last-modified: 2009-05-19 (火) 20:34:53
 

「俺様、生まれも育ちもAEUフランスだぜ
 ルルドの泉で産湯を使い、
 姓はコーラサワー、名はパトリック
 人呼んで『不死身のコーラサワー』ってのは俺のことだ! イヤッフウ!」

 

♪俺を倒さにゃ 主役と言えぬ
 わかってねぇだろ ガンダムよ
 いつかてめぇが 泣きだすような
 凄い勝ち方 やってやる
 奮闘努力の 甲斐も無く
 今日もイナクト 今日もジンクス
 また落ちる また落ちる♪
(原曲:○はつらいよ

 
 

 フーテンのコラさん。
 ……などとバカなことを言っている場合ではない。
 オラァいいかてめぇら、軍は一流パイロット、フランス、イギリス、イタリアで、白黒目玉の凡人どもから模擬戦で勝ちまくってよ、100が500、600が1000、1000が2000はする勝ち星だが、今日はそれだけで終わらない! イヤッフ、並んだ数字がまず一つ!
 物のはじまリが一ならよ、国の始まりが俺の国、島の始まりが俺の島、エースの始まりがやっぱりこの俺なら、英雄の始まりがやっぱりこの俺ってんだ、な!
 笑うんじゃねえよ、スペシャルってわかるんだからよ、この目つき見りゃあよ!
 続いた数字が二だ(ry
 最後まで口上やってられるかってんだよ、な!

 

    ◆    ◆    ◆

 

「暇だな」
「またそれか」
「だって暇じゃねえかよ」
「もういいっての……」

 

 プリベンターは暇だった。
 新設の軌道EVの警備も一日の仕事、言わば「名前を出した」程度に過ぎないわけで、とにかくアザディスタンの一件以降はほとんど事件らしい事件が起きていないのだ。
 それだけ世界が平和であるという証拠でもあるので、まあ非常にいいことと言えばいいことなわけだが、コーラサワー的に面白いかと言うと、やっぱり面白くないわけで。
 凡才の安寧は天才の平穏ならず、というところか。
 有閑とまでは流石に言えないが。

 

「暇でいいだろう、仮に仕事があったとして、お前だって結婚式まで引っ張られたくないだろ?」
「バカ言え、結婚式は最優先だ」
「……なあ、何度でも聞くが、お前本当に軍人だったの?」
「軍人じゃねえよ」
「は!?」
「スペシャル軍人だ」
「……ははあ」
「スペシャルエースとも言う」
「どう違うのか問いただしてみたいがそれをすると疲れると思うのでしてやらない」

 

 コーラサワーとデュオ・マックスウェルの漫才も相変わらずの応酬ぶりである。
 本気でネタを作って本気で取り組めば、M1グランプリでいいところまで行くかもしれない。

 

「フン、平地に乱を起こすという表現があるが」

 

 と、ここで二人の会話に割って入ったのは、中国服とデコが眩しい張五飛さん。
 かつてはアイアムジャスティスでゴーイングマイウェイな彼であったが、ガンダムパイロット達と数々の死線をくぐり抜けたことで精神的に成長し、今は立派にアイアムスーパージャスティスでゴーイングウルトラマイウェイにまで進化を遂げている。
 なお、この世界では彼の『嫁さん』もきちんと存命しているが、まぁ間違いなく話の中には出てこないのでよろしく。

 

「パトリック・コーラサワー、お前の場合は存在そのものが乱だな」
「褒めるなよ」
「五飛は別に褒めてねーぞ」
「ははは、照れるじゃねーか」
「成る程、存在そのものが乱だなこりゃ」

 

 パトリック・コーラサワーは滅多なことでは動じない。
 いや、動じないと言うか、余程のことがあっても常に「コーラサワー」であり続ける。
 これがどれほどスゴイことかは、すでに諸兄もアニメ本編を視聴されてよくご存じのことであろうと思う。
 例え野球で自分以外が全て負傷して試合に出られなくても彼は言うだろう、それがどうした俺がいる、と。
 うむ、コーラサワーをちょいとイジれば島本○彦のマンガの主人公が務まりそうであるな。
 無謀な目的が常識的な手段で達成されるはずがあるまいっ! てなもんで。
 もう目を瞑っても浮かぶのはただひとつ、俺の准将が見えるッ、てな―――
 ―――話が逸れまくっているな、軌道EVいや軌道修正。

 

「どのみち、あと少しの辛抱ではある」
「へ? どういうこった」
「カタギリ博士が先程連絡を寄こした。新型のMS(ミカンスーツ)、最終段階に入ったそうだ」
「おおお、やっとかよ!」

 

 はい、やっとである。
 いや、作中時間からすればまったくやっとでもガチ○ピンでもコロコロPKでもないのだが、まぁやっとということにしておこう。

 

「動作チェックは俺達が行わなければならないだろう」
「道理であのナルハム野郎が朝からいないわけだ、ポニテ博士のところに行ってるんだな」
「あの男はここんとこずっと行ってるけどな」

 

 そう、ミスター・ブシドーことグラハム・エーカーさんは、新型を作っているという話をビリー・カタギリが持ってきたその次の日から彼の工房に入り浸り状態だったりする。
 定時に出勤、そして「では視察に行ってくる」とカタギリ研究所に向かい、定時に帰ってきて「さらばだ」な毎日。
 プリベンターが忙しくないからこそ出来るわけだが、まあこの人は忙しくても同じことをやるでしょうな、きっと。
 ちなみに最近エーカーさん、精神修養と称してビリー・カタギリの叔父であるホーマー・カタギリの邸宅の庭にある滝壺で打たせ修行しているとのこと。
 「心を無に溶かし、煩悩から解放されることで真の武の境地に達するのが目的」だそうだが、今のところニンジャシュギョーセットを通販で買ったアメリカンボーイ並に効果は現れておりませんな。
 無我の武人がMS欲しさに日々「まだかカタギリ!」をするわけないもの。
 あとホーマー・カタギリさんだが、取りあえずは巨大総合企業【アロウズ】の会長ということでヨロシク。
 出番があるかどうかはまだ未定。

 

「あとだいたい一週間、という話だ。だからそれまでおとなしくしていろ」
「オッケー、そうと決まれば俺もちょっと行ってくるか、ポニテ博士のところに」
「ちょ、何しに!?」
「はやくしろ、って言いに」
「お前、人の話を聞いてたのか!」

 

 聞いてるわけないじゃないですかデュオさん、コーラサワーですよ?
 しかし、十歳以上も年下にお前呼ばわりされる三十代男性というのは果たしてどうなのであろうか。
 あの男扱いなグラハム氏も同じくだが。
 敷居が低いというか、親しき仲に堅苦しい礼儀を要求しないと言うか、ええとだいたいそんな感じの日和であることよろし。
 これ、仲良きことは美しきかなで纏めてしまっていいものやら。
 いいや、纏めちゃえ。
 プリベンターはそんな組織ですよ、と。

 
 

 プリベンターとパトリック・コーラサワーの心の旅は続く―――

 
 

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